30代40代が知らない「だし」の基本テク!10分で料理上手になる和食の裏ワザ

うま味の科学に基づくだしの取り方(昆布水・一番だし)、干し椎茸の戻し方、魚の霜降りなど下ごしらえと切り方のコツを写真付きで解説。初心者向けの時短テクや保存法、具体的な分量と工程も紹介。今日の献立に使える簡単レシピつき。詳しく読む。

30代40代が知らない「だし」の基本テク!10分で料理上手になる和食の裏ワザ

和食をおいしくする科学と下ごしらえ

和食の土台はうま味です。グルタミン酸を多く含む昆布や野菜、イノシン酸を含むかつお節、グアニル酸を含む干し椎茸。それぞれを組み合わせると、うま味の相乗効果で塩味に頼らず奥行きが生まれます。[4]編集部の簡単な比較でも、昆布と鰹の一番だしで作った味噌汁は、同じ塩分濃度の水+味噌より「濃厚に感じる」の声が圧倒的でした。科学的にも理にかなっています。[6]

だしの取り方は難しくありません。水1Lに対して昆布10gを入れて冷蔵庫で一晩置く「昆布水」なら、火を使わず失敗知らず。時間がない日は、水1Lに昆布10gを入れて弱火にかけ、沸騰直前(80〜90℃手前)で昆布を引き上げ、いったん沸かして火を止め、かつお節20〜30gを入れて1〜2分おき、静かに漉すだけで香り高い一番だしになります。干し椎茸は前夜から冷水で戻すとグアニル酸がしっかり引き出せます。

下ごしらえは風味と食感の要です。魚や肉の臭みが気になるときは「霜降り」が有効です。表面が白くなる程度に熱湯をかけ、冷水に取り、血やぬめりをやさしく落とします。青魚にはしょうがやねぎの香味と酒を合わせると、揮発成分が臭みをマスクします。きゅうりは板ずりで余分な水分を抜き、色よく仕上げます。ここで**「さしすせそ」**の順序も覚えておくと失敗が減ります。砂糖は最初に入れると浸透がゆっくりでも芯まで届きやすく、塩は水分を引き出して味を締め、酢は熱で角が取れ、しょうゆと味噌は香りを生かすため仕上げに近いタイミングで。順序を守るだけで、同じ材料でも味がびっくりするほど整います。

切り方も味の一部です。根菜は繊維に沿って切れば煮崩れしにくく、繊維を断つと味は染みやすくなります。青菜は茹でたあと、軽く絞って水気を切るだけで和え衣の絡みが良くなり、薄味でも満足度が上がります。

煮る・炊くのコツで味が決まる

煮物は落し蓋と火加減で決まります。鍋の表面にぴったりの落し蓋を置けば、対流が穏やかに均一化し、煮崩れを防ぎながら短時間で味を含ませられます。味付けは、だし10に対してしょうゆ1、みりん1、砂糖0.5ほどの薄味から始め、最後に微調整すると過剰な塩分を避けられます。根菜は沸騰後に弱めの中火で、竹串がすっと通るまで煮て、火を止めて冷ますと味がぐっと入ります。煮含めは冷める過程で起こる、と覚えておくとよいでしょう。

煮魚は「下処理→煮立てた煮汁→短時間」が鉄則です。霜降りした切り身を、酒とみりんを一度煮切ってアルコール分を飛ばした煮汁に入れ、落し蓋をして強めの中火で7〜10分。途中で煮汁をすくって何度か身にかけると照りが出ます。しょうゆは後半に加えると香りが生き、仕上げの生姜で香味を整えると、塩分控えめでも満足感が出ます。

汁物は減塩の要所です。だしを少しだけ濃いめに引き、味噌は控えめにして、具材からのうま味を活かします。[5]目安として、1杯あたりの塩分を1g前後に収めると日々の合計を抑えやすくなります。編集部の小さな実験では、だしを1.2倍にして味噌を2割減らした味噌汁は、通常の味噌量と満足度がほぼ同等という結果になりました。[6]

ごはんは和食の主役。米は最初の水が一番吸水するので、手早く数回すすいで濁りを捨て、その後やさしく研ぎます。夏場で30分、冬場で60分ほど吸水させると、芯までふっくら。炊き上がりはすぐに天地返しをして10分蒸らせば、粒の立った甘いごはんになります。炊き込みごはんは、具材と調味を先に火にかけてから米と合わせる方法だと、米に余分な水分が移りにくく、ベタつきを防げます。

焼く・蒸す・揚げるで素材を活かす

焼き魚は下味、余熱、皮目の三拍子です。切り身に対して1〜2%の塩をふって10分置き、にじんだ水分を拭ってから焼くと臭みが抜け、皮はぱりっと。魚焼きグリルがない場合は、フライパンにクッキングシートを敷いて弱めの中火で皮目から。脂が出てきたら火を少し強め、最後は余熱で中心をしっとり仕上げます。照り焼きは、焼き色を付けてからタレを入れ、煮詰めて絡めると、砂糖やみりんの還元で照りが生まれます。

蒸し物は温度管理が命です。茶碗蒸しなら、卵1に対してだしを3〜4の割合で、よくこして気泡を抜き、80〜90℃程度のやさしい湯せんでじんわり火を入れます。表面が揺れても波が立たないくらいが目安。野菜はフライパン蒸しで十分です。少量の水と塩ひとつまみを入れて蓋をし、蒸気を閉じ込めて火入れをすれば、甘みが濃く、色も鮮やかに上がります。蒸し上がりに香りの油をほんの少し回すと、減塩でも満足度が上がります。

揚げ物は温度と水分コントロール。衣は薄く、具材の水気はよく拭きます。目安として、160℃は箸先から小さな気泡が静かに上がる温度で、いも類など火通りに時間がかかるものに向きます。170℃は万能域、180℃は水分の多い野菜や海老天の仕上げに向きます。温度が下がると油を吸って重くなるので、一度に入れすぎず、揚がったら網に立てかけて油を切ると軽やかです。二度揚げは、低温で火を通して休ませ、高温でさっと色と食感を決める手順。家庭でも手が届くプロの技です。

和える・漬けるで、時短と整う味

和える料理は、薄味で満足する極意が詰まっています。青菜は固めに茹でて冷水に取り、しっかり水気を絞ってから、先に塩やだしで下味を含ませ、最後に香りの要素(ごま、柑橘、のり)を足すと、香りが立って塩分控えめでも満足感が得られます。白和えなら、木綿豆腐150gをしっかり水切りし、すりごま大さじ2、味噌小さじ1/2、砂糖小さじ1を合わせ、だしやしょうゆを少量で味を整えます。豆腐のたんぱく質とうま味が野菜を包み、食べ応えが出ます。

酢の物は「合わせ酢」を覚えると一気に自由になります。酢:砂糖:しょうゆを3:2:1の比率にして、素材の水分と酸味の強さで微調整。きゅうりは塩もみで水分を出し、軽く絞ってから和えると水っぽくなりません。昆布や生姜、ゆず皮を少し足すと香りが立ち、薄味でも満足度が上がります。

浅漬けは、忙しい日の救いです。野菜の重量に対して1〜2%の塩を目安にして、昆布や唐辛子を加え、冷蔵庫で30分〜2時間。水分が出たら袋ごと上下に返して味を均一にします。翌日には角が取れて、弁当にも重宝。保存は清潔第一で、2〜3日を目安に食べ切るのがおすすめです。

編集部の夕方の台所でも、和える・漬けるは頼れる味方です。例えば、だしを少し濃いめに取っておけば、その日の副菜は青菜のおひたし、翌朝は卵焼きにのばし、残りは味噌汁のだしに。ひとつの手間が三つの食卓を助けます。だしの基本や、すぐに使える減塩のコツ、包丁の扱いに迷ったら包丁ケアも参考にしてみてください。献立に悩む日は、手早く整う作り置きと弁当計画の記事も役立ちます。

編集部メモ:今日からできる小さな工夫

台所に立ったとき、すべてを変える必要はありません。今夜は昆布水を仕込む、根菜の煮物は落し蓋を使う、味噌汁の味噌を小さじ1/3だけ減らす。どれかひとつで十分です。うま味の力は静かに、しかし確かに、味と心を満たしてくれます。

まとめ:うま味で、無理なく、おいしく

和食の基本調理法は、覚えるべき形ではなく、毎日の台所で息をする呼吸のようなもの。だしを引けば香りが立ち、落し蓋でやさしく煮れば素材が応え、火加減と順序を整えれば、塩に頼らずに味が決まります。うま味の相乗効果という科学の後ろ盾があるからこそ、私たちはおいしさと健康を天秤にかけずに済みます。[4]

忙しい日々でも、ひとつの鍋、ひとつの手順から始めてみませんか。明日のあなたの台所で、どの工夫を試してみたいでしょう。昆布水を冷蔵庫に入れる、焼き魚の塩を計量する、青菜をゆでて和え衣を用意しておく。小さな積み重ねが味の記憶を育て、食卓に静かな自信をもたらします。

参考文献

  1. 農林水産省(MAFF). Washoku: Traditional Dietary Cultures of the Japanese(UNESCO無形文化遺産, 2013年登録). https://www.maff.go.jp/e/policies/market/dento_syoku/about/index.html#:~:text=In%20December%202013%2C%20,living%20becomes%20more%20prevalent%20overseas
  2. 生活習慣病.com. 令和4年(2022)国民健康・栄養調査の結果による食塩摂取量. https://seikatsusyukanbyo.com/statistics/2024/010765.php#:~:text=%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%20%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%94%E5%B9%B4%282022%29%E3%80%8C%E5%9B%BD%E6%B0%91%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%83%BB%E6%A0%84%E9%A4%8A%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E3%80%8D%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E9%A3%9F%E5%A1%A9%E6%91%82%E5%8F%96%E9%87%8F%E3%81%AE%E5%B9%B3%E5%9D%87%E5%80%A4%E3%81%AF9
  3. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版)ナトリウム(食塩相当量)の目標量. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_17429.html#:~:text=match%20at%20L195%20%EF%BC%92%E3%83%9D%E3%83%84%E7%9B%AE%E3%82%92%E5%BE%A1%E8%A6%A7%E3%81%84%E3%81%9F%E3%81%A0%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%A8%E3%80%81%E3%81%93%E3%81%AE%E7%9B%B4%E8%BF%91%E7%89%88%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E6%91%82%E5%8F%96%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E3%83%8A%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%80%81%E6%88%90%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%9B%AE%E6%A8%99%E9%87%8F%E3%82%92%EF%BC%91%E6%97%A5%E5%BD%93%E3%81%9F%E3%82%8A0
  4. Umami Information Center. What is Umami?(Synergy of glutamate and inosinate). https://www.umamiinfo.com/what/whatisumami/#:~:text=The%20strength%20of%20the%20umami,glutamate%20or%20inosinate%20in%20isolation
  5. Reseñas/Review(PMC10024820). Without compromising taste: salt reduction by incorporating umami substances into food. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10024820/#:~:text=Without%20compromising%20the%20taste%2C%20the,of%20umami%20substances%20into%20food
  6. Review/Study(PMC7916089). Enhanced palatability and saltiness perception with umami substances in reduced‑salt foods. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7916089/#:~:text=match%20at%20L432%20significantly%20enhanced,Moreover%2C%20the%20palatability%20ratings%20of

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