私は今、3歳と2歳の年子を育てながら、医療系の学生として学び直し(リスキリング)をしています。
子育てと学業の両立は、正直言えば簡単ではありません。それでもこの道を選んだのは、揺るがない理由があったからです。
その原点にあるのは、がんを患った父の在宅看取りの経験でした。
家で過ごしたあの最期の時間。家族としてそばにいられたことは大きな支えでしたが、もし私にもっと医療的な知識があれば……。
そう思ったことが、学び直しを決意するきっかけになりました。
そして「学び直し(リスキリング)」という選択が、人生の新しい扉を開いてくれました。
本記事では、私がどのように学び直しを始め、続け、変化していったのかをお伝えします。
父の在宅看取りが気づかせてくれた「学び直しの意味」
がんを患った父を家で看取る経験は、悲しさと同時に、たくさんの「気づき」をもたらしてくれました。
日本では高齢化が進み、在宅医療や介護の必要性は年々高まっています。制度だけでは補いきれない部分を、家族が支えなければならない現実も目の当たりにしました。
実際に、父のケアを行うときは、正しい手順が本当にこれでいいのか不安で、手が震えてしまうこともありました。
特に急変が起こりやすいと言われる夜は、眠れないほどの緊張感に包まれたことを覚えています。
そんな日々のなかで、駆けつけてくれる訪問看護師の方の存在に、どれほど救われたか分かりません。
その経験を通して強く思ったのは「家で看護・介護できる力は、これからの時代に必要不可欠なのだ」ということ。
そして「自分も医療の知識を身につけて、地域の訪問医療に貢献したい」という思いが芽生えました。
私にとってリスキリングは、キャリアのためだけではなく「誰かの人生に寄り添える自分をつくるための選択」でした。
子育てと学業の両立。「家族や周りに頼る」と決めた日から楽になった
私が医療系の学校に入学したとき、子どもはまだ2歳と1歳の年子でした。周囲からは、たくさんの心配の声をかけられました。
「幼い子どもがいる今、学生になる必要があるの?」
「医療系の学校は出席も厳しいけど、本当に続けられるの?」
「子どもが体調を崩したらどうするの?」
そのどれもが、正直に言えば「図星」でした。
10年以上ぶりの学生生活は、想像以上にハードです。
朝から夕方までぎっしり詰まった講義を聞くだけで体力を使い果たし、授業が終われば急いで保育園へ。
夜は寝かしつけのあと、ようやく教科書を開く日々。課題の準備にレポート、テスト勉強……。そして医療系ならではの「病院実習」もあります。
「本当にこの生活を続けられるだろうか?」
そう思わずにはいられない日もありました。
それでも続けてこられたのは、「家族や周りの人に頼ろう」と決めたからです。
具体的には、朝の子どもの身支度はほとんど夫が担当してくれています。
子どもが急に体調を崩した日は、祖母が迎えに行ってくれることも。
そのほかにも、シッターを定期契約したり、病児・病後児保育を積極的に利用したりと、「子育てに必要な“腕の数”を増やす」イメージで体制を整えました。
一人で抱え込むのではなく、周囲の手を借りる。
その選択をした日から、学業と子育てが少しずつ形になっていきました。
リスキリングに医療系が選ばれる理由。学びがくれた新しい軸と自分への自信
医療の勉強を始めてから、ひとつ強く実感したことがあります。
それは、医療の知識はどんな時代でも価値を失わないということです。
AIが急速に進化し、多くの業務が自動化されるようになった今。
それでも、人の身体や心、そして生活に寄り添う医療や看護の知識は、どれだけ技術が進んでも代替がききません。
「人が人を支える」という領域だからこそ、学び続ける意味があると感じています。
過去のキャリアでは得られなかった専門性に触れたことで、気づけば自分の中に一本の揺るがない軸が生まれていました。
誰かの役に立てる知識を持っているという実感が、自分への自信につながっています。
そして医療系の国家資格を目指そうと決心できた理由のひとつに、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金を利用できたこともありました。
社会人の学び直しには費用の不安がつきものですが、この制度のおかげで家計に無理をかけすぎず挑戦できるという安心感がありました。
将来につながる専門性と、制度に支えてもらえる心強さ。その両方が前に進む気持ちを後押ししてくれました。
また、学び続けるなかで、精神的な変化もありました。
- 新しい情報を冷静に見極められるようになった
- AIを理解を深めるための道具として捉えられるようになった
- 国家資格を目指すことで、未来への漠然とした不安が少しずつ薄れていった
- 家族の体調に変化があったとき、必要以上に不安にならず、落ち着いて考えられるようになった
- 働き方の選択肢が広がり、新しい未来への希望が自然と湧いてきた
こうした変化は、単なるスキルアップとは少し違います。
むしろ、「ママになった自分もまだ変わっていける」という感覚そのものが、日々の支えになっています。
リスキリングは、自分を追い込むための挑戦ではありません。自分を肯定し、未来の選択肢を広げるための学び。そう感じられるようになったことこそ、学び直しの大きな収穫だったのかもしれません。
これから学び直しを始めたい人へ。無理なく続ける3つのコツ
学び直しに興味があっても、最初の一歩を踏み出すのは勇気がいるものです。
忙しさや子育て、先が見えない不安……。
だからこそ、大人の学びは大きく構えず、身の丈で始めていいのだと思います。
1:大きな目標はいらない。未来を少し安心させる気持ちで始める
学び直しは、立派な目標がなくても始められます。
将来への小さな不安や「このままでいいのかな」という心の引っかかり。
その小さな気持ちが、一歩目になることは珍しくありません。
私の周りでも、宅建士を目指す人、美容や栄養を学ぶ人、語学をやり直す人など、分野もペースも本当にさまざまです。
それぞれが自分の生活や興味に合わせて、できる範囲から動き始めています。
学び直しに正解はなく、道の選び方も自由。自分に合った方法で、未来を少しだけ明るくするために始めてみる。その小さな行動が、後から大きな変化につながることがあります。
2:小さく始めて、小さく続ける。やめないための環境整備が大切
社会人からの学び直しは、完璧を目指すほど続けるのが難しくなります。
大切なのは、負担のない範囲で「続けられる環境」を整えることでした。
- 毎日10分だけ机に向かう
- 動画を1本だけ見る
- 寝る前に少しだけ本を読む
そんな小さな積み重ねでも、前に進む力になります。
特に子どもがいるママにとって、自分のための時間をつくるのは簡単ではありません。
だからこそ、たとえ10分でも自分の時間があることが、心の支えになりました。
「できた」という体験が次の行動を生み、続ける力になっていきます。
学びを家族に共有して応援してもらったり、SNSに記録を残したり、AIに相談してヒントをもらったり。
ひとりで抱え込まず、手を借りられるものには頼ること。それが、やめないための環境整備につながりました。
3:いきなり学生にならなくていい。自分に合う方法を選ぶ
私の場合は思い切って医療系の学校に入りましたが、必ずしも最初から学校へ通う必要はありません。
今はオンラインで学べる動画や無料コンテンツ、アプリなど、気軽に始められる方法がたくさんあります。通勤の合間や、寝かしつけ後の10分でも十分です。
さらに自治体によっては、お得に受講できる講座やスキルアップ支援制度が用意されていることもあります。
こうした制度を使えば、経済的な負担を減らしながら最初の一歩を踏み出せます。
学び直しのスタイルは人それぞれ。自分に合う方法を選び、無理なく始めることが、未来を変えるきっかけになります。
まとめ:学び直しは「未来の自分を大切にする」という選択
子育てや仕事を抱えながら学び直すことは、決して簡単な道ではありません。
でも、少しでも「未来の安心を得たい」「自分の可能性を閉じたくない」と思えたとき、それは学び直しのサインです。
10分の読書でも、動画を1本見ることでも、誰かに学びの話をしてみることでも十分。
その小さな選択の積み重ねが、やがて自分の軸となり、未来の選択肢を広げてくれます。
自分に合った方法で、自分のペースで。
少しの勇気と小さな一歩が、これからの人生をそっと明るくしてくれるはずです。