40代の生理不順:原因と受診・記録のポイント

24〜38日を外れる、周期差が20日以上、年8回未満――それは“がんばり不足”ではありません。35〜45歳の40代を前提に、生理不順の原因、今日から始められるセルフケア、医療機関を受診すべき目安をやさしく整理。チェックリスト付きで不安を減らします。

40代の生理不順:原因と受診・記録のポイント

生理不順とは何か——40代の「普通」を言語化する

医学文献では、月経周期の正常範囲は24〜38日、持続日数はおおむね4.5〜8日が目安と示されています[1]。周期が24日未満と短くなったり、38日を超えて長く空いたり、毎回の最短周期と最長周期の差が大きくぶれる場合、いわゆる「不規則」と評価されます[7]。特に、1年に8回未満しか月経が来ないなら希発月経、3カ月以上来ないなら無月経の評価が必要とされます[2,8]。アプリで記録している人は、数字だけでなく「出血の量や質(レバー状の血塊の有無)」「痛みの強さ」「PMSの変化」も合わせて残すと、医療機関での説明が格段にスムーズになります。

40代に入ると卵巣からのホルモン分泌が徐々に揺らぎ、排卵のない周期が混じる、黄体期が短くなる、経血量が増える・減るといった変化が起こり得ます[9]。これはからだの自然な移行プロセスの一部ですが、同時に甲状腺機能の変化、プロラクチンの上昇、子宮内膜ポリープや筋腫、子宮内膜増殖症など、検査すべき病態が隠れていることもあります[10]。大切なのは、年齢のせいだと決めつけすぎないこと。年齢による変化は前提にしつつ、数値と症状の“輪郭”を把握することが第一歩になります。

原因をひもとく——ホルモン、生活、そして病気

卵巣ホルモンの揺れと排卵の不安定化

研究データでは、40代に近づくにつれ卵胞の在庫(卵巣予備能)が減り、視床下部—下垂体—卵巣の連携が不安定になることが示されています[9]。排卵が起きない周期(無排卵)が混じると、周期は長くなりやすく、子宮内膜が一定期間剥がれ落ちずに不正出血を起こすこともあります[3]。逆に、卵胞期が短縮し周期が24日未満に詰まってくる変化も起こり得ます[1]。どちらも珍しいことではありませんが、頻度が増える、出血量が極端に多い・少ない、痛みが強いといった変化が重なるなら、医療的な評価で「自然な揺れ」と「対処が必要な異常」を切り分ける価値があります。

睡眠・ストレス・体重変動などの生活要因

睡眠不足や交代勤務は、体内時計とホルモン分泌の同調を乱し、月経周期のばらつきに関連し得ます[6]。慢性的な心理ストレスにさらされると、ストレスホルモンが視床下部のリズムに影響し、排卵を抑制する方向に働くことがあります[8]。短期間での体重変動も無視できません。急に体重が落ちるとエネルギー不足のシグナルが出て排卵が止まりやすく、逆に急速な体重増加はインスリン抵抗性を介して排卵障害につながることがあります[2,8]。過度な持久系トレーニング、極端な食事制限、アルコールやカフェインの過剰摂取なども、個々の体質によっては周期に影響し得ます[6]。

甲状腺、プロラクチン、PCOS、薬剤の影響

甲状腺機能低下症・亢進症は月経不順の頻度が高い代表的な疾患です[8]。乳汁ホルモンであるプロラクチンが高い高プロラクチン血症も排卵を妨げます[11]。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は排卵障害の主因のひとつで、体重・インスリン抵抗性・遺伝要因が絡み合う病態です[2]。授乳期はプロラクチンが高く無月経や希発月経が生じやすく、これは生理的な範囲です[12]。薬剤では緊急避妊薬の服用後に一時的な周期の乱れが出たり[13]、向精神薬や一部の降圧薬でプロラクチンが上がることがあります[11]。子宮筋腫や内膜ポリープは周期そのものより出血量や不正出血として現れやすいものの、本人からは“周期が変”と感じられることも少なくありません[10]。

どこから受診?——セルフチェックと医療の上手な使い方

様子見ができる揺れと、早めに医療につなぐべきサインを分けておきましょう。周期が38日を超える・24日未満が続く、3カ月以上来ない、1年に8回未満しか来ない、妊娠の可能性がある、不正出血が続く、レバー状の血塊が多く貧血症状(息切れ、動悸、めまい)を感じる、鎮痛薬を飲んでも抑えられない強い痛みがある——こうした場合は、婦人科での評価が適切です[1,2,6-8,10]。40代の不正出血は、子宮内膜の評価(超音波、必要に応じて内膜検査)で安心を得ておくことが、長い目でみて自分を守る行動になります[5]。

受診では、最終月経の開始日、周期の幅、出血の持続日数、量の変化、痛みやPMS、体重変動、服薬歴、妊娠の希望の有無を伝えると診療がスムーズです。妊娠反応や甲状腺(TSH)・プロラクチン(PRL)・卵巣関連ホルモン(FSH、LH、エストラジオール)などの血液検査、経腟超音波検査が行われることがあります[3]。PCOSの疑いがある場合は、超音波で卵巣の形態を確認し、代謝関連の採血を追加することも一般的です[2]。治療は原因と希望(避妊の必要、妊娠希望、出血コントロールの優先度)で変わり、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬、黄体ホルモン周期投与、子宮内黄体ホルモン放出システム、鉄欠乏への対応などから選択されます[10]。病名や薬の適応は医師の判断に委ね、納得できるまで質問して大丈夫です。

今日からできる改善法——習慣を微調整してホルモンを支える

睡眠と体内時計を整える

睡眠はホルモンの“司令塔”に直結します。平日と休日の就寝・起床時刻の差をできるだけ小さくし、起床後はカーテンを開けて朝の光を10〜15分浴びるだけでも、脳内時計のリセットが進みます。寝る前のブルーライトはメラトニン抑制につながるため、就寝1時間前は画面から目を離し、照明を少し落とす工夫が効果的です。夜中に目が冴えるなら、呼吸の長さを意識して「4秒で吸って、6秒で吐く」を2〜3分繰り返すと、自律神経が緩みやすくなります。

栄養の土台をつくる

食事は“増やすより抜かない”が基本です。タンパク質と野菜、適量の炭水化物を毎食の土台にしつつ、月経のある世代の鉄は日本の食事摂取基準で1日10.5mgが推奨量とされています[15]。吸収率を高めるために、赤身肉・レバー・貝類などのヘム鉄と、豆類・葉物などの非ヘム鉄を、ビタミンCの多い果物や野菜と一緒にとる工夫が役立ちます。ビタミンDは1日8.5μgが目安で、魚やきのこ、日光での皮膚合成が重要です[15]。朝〜昼にカフェイン、夜は控えめ、アルコールは量と頻度を見直し、翌日に疲れを残さない設計にしていきましょう。

運動は「週150分」を気持ちよく積み上げる

世界的な推奨では、中強度の有酸素運動を週150分程度行うことが、代謝・メンタル・睡眠を通じてホルモンの安定にプラスに働くとされています[14]。息が上がる早歩きやサイクリングに加え、筋力トレーニングを週2回ほど取り入れると体組成の改善につながり、特にPCOSが疑われる場合には体重の**5〜10%**減で排卵や周期の改善が報告されています[2]。運動は“やる・やらない”の二択ではなく、通勤の一駅分を歩く、階段を選ぶ、家でスクワットを10回だけやるなど、小さな積み木の合計で考えてみてください。

ストレスの出口を用意する

ストレスが消える日は来ないかもしれませんが、出入り口をつくることはできます。〆切やケアのタスクが重なる日ほど、5分の休憩を1日3回だけでも予約しておく。目を閉じて肩を下ろす、腕を組んで自分を抱きしめるセルフハグを数呼吸ぶん続ける。これだけでも交感神経優位の状態から少し戻れます。夜に考えごとが暴走するときは、紙に3行だけ「今いちばん気になっていること」「明日やる最初の一手」「助けを頼める相手」を書き出すと、頭の中の“未完了”が可視化され、睡眠の質が上がりやすくなります。

生活を整えても不調が続く、妊娠を希望していて周期の乱れが障害になっている、貧血や痛みがつらい——そんなときは、迷わず婦人科へ。対話のための材料として、直近3〜6カ月の記録をアプリや手帳に残して持参するのがおすすめです。

まとめ——“がんばり”ではなく“設計”で整える

生理不順は、意思や根性の問題ではありません。正常な月経周期の目安である24〜38日、年間の回数が8回未満は要注意といった基準を知り[1,2]、40代のからだに起こりやすいホルモンの揺れを学ぶ[9]。それだけで、不安の正体はかなり輪郭が見えてきます。睡眠、食事、運動、ストレスの出口——どれも劇的でなくていいから、今日できる一歩を設計していく。必要なら医療の力を借りる。個人戦からチーム戦に切り替わる時期だからこそ、自分一人で抱え込まないケアが、いちばんの近道です。

**「最近の周期、どうだった?」**と、まず自分に問いかけてみてください。3カ月ぶんの記録を取りながら、朝の光を浴び、夜の画面を少し減らすことから始めるのはどうでしょう。さらに深く知りたい人は、睡眠を整えるコツをまとめた特集(朝と夜のリズムを整える)、呼吸・瞑想のミニガイド(3分でできるリセット呼吸)、鉄分と貧血ケア(知っておきたい鉄の話)も役立ちます。あなたのペースで大丈夫。揺らぎの中でも、安心できるリズムは少しずつ取り戻せます。

参考文献

  1. Munro MG, Critchley HOD, Broder MS, Fraser IS. FIGO classification system (PALM–COEIN) for causes of abnormal uterine bleeding in nongravid women of reproductive age. Int J Gynaecol Obstet. 2011;113(1):3–13.
  2. Teede HJ, Misso ML, Costello MF, et al. International evidence-based guideline for the assessment and management of polycystic ovary syndrome 2018. Monash University; 2018.
  3. ACOG Practice Bulletin No. 128: Diagnosis of Abnormal Uterine Bleeding in Reproductive-Aged Women. Obstet Gynecol. 2012;120(1):197–206.
  4. 厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト「更年期とは」. https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/menopause.html (参照2025-08)
  5. 日本産科婦人科学会(JAOG)「(2)Ovulation dysfunction:排卵異常」. https://www.jaog.or.jp/note/%EF%BC%882%EF%BC%89ovulation-dysfunction%EF%BC%9A%E6%8E%92%E5%8D%B5%E7%95%B0%E5%B8%B8/ (参照2025-08)
  6. NHS. Irregular periods. https://www.nhs.uk/conditions/irregular-periods/ (参照2025-08)
  7. ACOG. Your Menstrual Cycle (Patient FAQ). https://www.acog.org/womens-health/faqs/your-menstrual-cycle (参照2025-08)
  8. ACOG. Amenorrhea: Absence of Periods (Patient FAQ). https://www.acog.org/womens-health/faqs/amenorrhea-absence-of-periods (参照2025-08)
  9. Harlow SD, Gass M, Hall JE, et al. STRAW+10: Stages of Reproductive Aging Workshop (STRAW) revisited. Menopause. 2012;19(4):387–395.
  10. NICE Guideline NG88. Heavy menstrual bleeding: assessment and management. 2018 (updated 2021). https://www.nice.org.uk/guidance/ng88
  11. Melmed S, Casanueva FF, Hoffman AR, et al. Diagnosis and Treatment of Hyperprolactinemia: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2011;96(2):273–288.
  12. WHO. Lactational amenorrhea method for contraception. https://www.who.int/tools/encyclopaedia-of-health-topics/lactational-amenorrhoea-method-lam (参照2025-08)
  13. 和歌山県赤十字医療センター「緊急避妊(アフターピル)について」. https://www.wakayama-med.jrc.or.jp/webmagazine/detail.php?seq=442 (参照2025-08)
  14. WHO. Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128
  15. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208910.html (参照2025-08)

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