無月経のリスクと対策:原因・受診の目安(3か月/6か月)と年代別の注意点

生理が3カ月以上続かない無月経は、骨や代謝へ影響する可能性があります。35〜45歳のゆらぎ世代向けに、リスクの見極め方、受診の目安、検査の流れやセルフケア、医師へ相談する際のポイントをわかりやすく整理しました。まずは症状チェックを。

無月経のリスクと対策:原因・受診の目安(3か月/6か月)と年代別の注意点

無月経を正しく知る:定義、年代特有の背景、まずチェックしたいこと

統計では、3カ月以上月経がない「無月経」は成人女性の数%にみられ[1]、とくに35〜45歳はライフスタイルやホルモンの変化が重なる時期です[2]。医学文献によると、無月経の背景には妊娠、体重やストレスによる視床下部の機能低下、甲状腺や高プロラクチンなどの内分泌の乱れ、卵巣機能の低下、そして多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など多彩な要因があります[1]。編集部が各種研究を確認すると、放置によって骨密度の低下や代謝リスクが進むケースがあり、早めの評価がその後の健康に影響する可能性があります[3,4,5,7]。数字だけを突きつけるのではなく、生活の文脈で解像度高く捉えるためにも、「3カ月」または「不規則だった場合は6カ月」の無月経は医療機関で相談[1,2]、という基準をいま一度手元に置いておきたいところです。

無月経には大きく二つのタイプがあります。初潮が来ない原発性無月経と、これまであった月経が止まる続発性無月経です[2]。検索意図として多いのは後者で、**定義は「これまで規則的だった人で3カ月、もともと不規則だった人で6カ月、月経がない状態」**と示されます(医学文献による定義)[1]。まず最初に確認したいのは妊娠の可能性で、避妊の有無にかかわらず妊娠検査は出発点になります[1,2]。

35〜45歳は仕事や家庭の責任が増え、睡眠不足やダイエット、運動習慣の変化が一度に起きやすい年代です。研究データでは、機能性視床下部性無月経(FHA)が続発性無月経の2〜4割を占めるとされ、急な体重減少や過度なトレーニング、心理的ストレスが引き金になります[8,3]。一方で、PCOSは生殖年齢女性の約8〜13%にみられ、排卵が不安定なため無月経や過少月経につながります[5]。40歳未満で卵巣機能が低下する早発卵巣不全(POI)は多くはありませんが無視できず、40代前半では更年期移行期の揺らぎが影響することもあります[1,2]。

こうした背景の違いが、のちに述べるリスクの性質を左右します。エストロゲンが不足するFHAやPOIでは骨に負担がかかりやすく、逆にPCOSのようにエストロゲンが相対的に優位でプロゲステロンが不足する無排卵状態では、子宮内膜への影響が蓄積します[3,8,1,6]。まずは妊娠検査で大きな岐路を確認し、次に生活や体調の変化を振り返ることが、受診時のコミュニケーションをスムーズにします[1].

「放置のリスク」を誤解なく掴む:骨、代謝、心血管、子宮内膜、メンタル

無月経のリスクは一枚岩ではありません。エストロゲン不足が続く型(FHAやPOI)では骨密度の低下と疲労骨折の増加が主要な懸念です[3,8]。研究データでは、アスリートの三主徴に代表される低エネルギー利用可能状態と無月経が重なると、ストレス骨折のリスクが有意に高まると報告されています[4]。エストロゲンは骨代謝のブレーキ役でもあるため、長期化すると背骨や股関節の骨密度低下につながり、回復にも時間がかかることが示唆されています[3].

一方で、PCOSのように無排卵が続く型では、内膜が剥がれ落ちる機会が乏しく「単独のエストロゲン刺激」が続くため、子宮内膜増殖症から内膜がんのリスクが上がることが指摘されています[1,6]。すべての人に起こるわけではありませんが、無月経が長く続き不正出血を繰り返す場合は産婦人科での評価が大切です。

代謝や心血管に関しても注意が必要です。PCOS関連の研究では、耐糖能異常や2型糖尿病のリスクが高まる傾向が報告されており[5,7]、脂質異常や高血圧が重なると将来的な動脈硬化リスクにも影響する可能性があります[7]。FHAでも低栄養や高ストレス状態が長期化すると、甲状腺や自律神経、免疫のバランスに波及することがあります[8]。メンタルヘルスの観点では、無月経の不安そのものが気分の落ち込みを助長し、逆にストレスが無月経を維持するという「負の循環」を招くことがあるため、身体と心を同時にみる視点が重要です。

35〜45歳は更年期移行期の入り口にも差し掛かります。ほてり、睡眠の質の低下、集中力の揺らぎなどが重なると、仕事のパフォーマンスや家事育児との両立に影響が出やすくなります[2]。だからこそ、無月経を「様子見」で先送りせず、現状を言語化して適切な支援につなぐことが、長期的な健康資産を守る近道になります。

受診の目安と検査の流れ:不安を減らすための「見取り図」

医療機関に相談する目安はシンプルです。規則的だった月経が3カ月止まった、もともと不規則で6カ月来ていない、妊娠検査が陽性、あるいは陰性でも強い腹痛や大量の出血がある、乳汁分泌や頭痛・視野の異常を伴う、40代前半までにのぼせや発汗が強くなったなど、気になる症状が重なった場合は早めに受診しましょう[1,2]。どれか一つに当てはまるから即異常ということではありませんが、時間を味方につけるための大切なサインです。

受診時の流れは段階的です。まず妊娠の確認が行われ、月経周期、体重変動、食事や運動、服用中の薬、ストレス要因、家族歴などが丁寧に聴取されます[1,2]。身体所見では甲状腺の腫れや乳頭分泌、皮膚や体毛の変化などの手がかりを確認します。血液検査では甲状腺刺激ホルモン(TSH)やプロラクチン、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)、エストラジオール、必要に応じてアンドロゲンや代謝関連のマーカーが評価されます[1]。超音波検査で子宮や卵巣の状態を確認し、高プロラクチンで頭痛や視野の異常がある場合は下垂体の画像検査が検討されます[1]。いずれも一般的な手順で、痛みを伴う検査は限られています。

原因が特定されたら、原因に応じた対応が始まります。FHAではエネルギー不足やストレスの解消を軸に栄養と休息を再設計し、必要に応じて心理的サポートを組み合わせます[3,8]。PCOSでは体重やインスリン感受性の改善を図りつつ、内膜を守るホルモンによる対応や妊娠を希望する場合の排卵誘発などが検討されます[5]。POIでは骨と心血管の保護を意識したホルモンによる対応が選択肢になることがあり、禁忌がないかを慎重に確認します[1]。高プロラクチン血症では原因に応じた薬物による対応で月経が再開する場合があります[1]。ここで大切なのは、「無月経」という共通の結果に至る道筋は人それぞれで、対策もオーダーメイドになるという前提を共有することです。

今日からできる対策:生活の再設計とセルフケアのコツ

生活でできる対策は、原因によらず「体の安全基地」を整える発想が役に立ちます。まずはエネルギー不足を避けることです。忙しさの波に合わせて食事を飛ばしたり糖質やたんぱく質が不足したりすると、脳は生存を優先し生殖機能を一時停止させることがあります[3,8]。日中は軽食でもよいのでエネルギーを分散して補給し、夕食に偏らせない工夫が効きます。体重や体組成の目標がある場合でも、短期間での急な減量はホルモン軸に影響しやすく、緩やかな調整が基本です。

運動は「量」より「回復」とのバランスが鍵です。週に数回の中強度の有酸素運動とレジスタンス運動は代謝や骨に良い影響を与えますが[5]、疲労が抜けないまま高強度を重ねると無月経を長引かせることがあります[4]。睡眠はホルモンの再調整の時間でもあります。7時間前後の安定した睡眠が確保できるよう、就寝前のスマートフォン使用を短くし、同じ時間に眠りにつくリズムを意識しましょう。

栄養素では骨の視点が欠かせません。カルシウム、ビタミンD、たんぱく質は骨の材料と代謝に直結します。日光に当たる時間が限られる人は、魚やきのこ、強化乳製品などでビタミンDを補いながら、食事全体のバランスを整えます[4]。鉄や亜鉛、ビタミンB群も疲労感や代謝に関与するため、偏りが続くと回復を遅らせます。サプリメントは便利ですが、過量摂取や相互作用のリスクもあるため、気になる場合は医療者に相談してください。

ストレス対策は「やめること」を先に決めると動き出しやすくなります。すべてを増やすのではなく、マルチタスクを一つ減らす、30分だけでも一人の時間を確保する、週のどこかで予定のない夜を作るなど、余白づくりがホルモン軸の回復に効きます。無月経が不安を強め、さらにストレスが無月経を維持する循環を断ち切るために、信頼できる人に現状を言葉にして共有することも有効です[3]。「一人で抱えない」が、もっともシンプルで強い対策になる場面は少なくありません。

受診準備としては、最後の月経開始日、これまでの周期の傾向、妊娠の可能性、服用中の薬やサプリ、体重や運動の変化、気になる症状(ほてり、頭痛、乳汁分泌、過剰な体毛やにきびなど)をメモにして持参すると、評価と方針決定がスムーズになります[2]。仕事や家庭の予定と対応を両立させるために、通院しやすい曜日や時間帯、オンライン診療の可否を最初に相談しておくのも現実的な工夫です。

よくある疑問に短く答える:妊娠希望の有無で対策は変わる?

妊娠を希望する場合、排卵の回復が主眼となり、生活調整に加えて排卵誘発などの選択肢が検討されます[5]。妊娠を今は考えない場合でも、骨と代謝、子宮内膜の保護は重要で、月経が戻るまでの間も体を守るアプローチが提案されます[5]。どちらにしても、「いまの目的」を医療者と共有することが最短ルートです。

まとめ:不安の正体に名前をつければ、体は動き出す

無月経は珍しいことではありませんが、放置してよいサインでもありません。妊娠や内分泌の変化、生活の揺らぎなど、背景は一人ひとり異なります。3カ月(不規則なら6カ月)月経がないなら受診[1]というシンプルな基準を合図に、妊娠検査で大きな岐路を確かめ、生活の再設計と医療のサポートを組み合わせていきましょう。骨や代謝、子宮内膜へのリスクは、早く気づけばコントロールしやすくなる可能性があります[3,5,6,7]。今日できる小さな一歩として、最後の月経日を書き留め、睡眠時間と食事の偏りを見直し、不安を信頼できる人に言葉で渡してみてください。あなたの体は、適切な合図を受け取れば反応することが期待されます。

参考文献

  1. Klein DA, Poth MA. Secondary Amenorrhea. StatPearls. 2024 update. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK431055/
  2. ACOG. Amenorrhea: Absence of Periods (FAQ). https://www.acog.org/womens-health/faqs/amenorrhea
  3. Gordon CM, et al. Functional Hypothalamic Amenorrhea: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline. J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(5):1413–1439. https://academic.oup.com/jcem/article/102/5/1413/3072926
  4. De Souza MJ, et al. 2014 Female Athlete Triad Coalition Consensus Statement on Treatment and Return to Play. Br J Sports Med. 2014;48:289–309. https://bjsm.bmj.com/content/48/4/289
  5. Recommendations from the 2023 International Evidence-based Guideline for the Assessment and Management of Polycystic Ovary Syndrome. BMC Med. 2023. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10505534/
  6. Barry JA, et al. An Association Between Polycystic Ovary Syndrome and Endometrial Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8378802/
  7. Myers J, et al. Cardiometabolic risks in polycystic ovary syndrome: a review and meta-analysis. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7053439/
  8. Kondoh E, et al. Functional hypothalamic amenorrhea: pathophysiology and clinical management (Review). 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9592968/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。