食品ロスを防ぐ「賞味期限と消費期限」5つの見極めコツ

家庭からの食品ロスを減らす鍵は賞味期限と消費期限の正しい理解。法律や保存条件に基づく見極め方、期限後の判断基準、保存・買い方の5つの簡単コツ、簡単チェックリストと実例つきで今すぐ使えるアイデアを紹介。

食品ロスを防ぐ「賞味期限と消費期限」5つの見極めコツ

賞味期限と消費期限の“線引き”を言い換える

統計によると、日本の食品ロスは年間で約523万トン(2021年度、環境省公表)にのぼり、そのうち家庭から出るロスは約244万トンです。[1] 冷蔵庫の奥で眠ったヨーグルト、戸棚で忘れられた乾麺——開けてみたら期限が切れていて、迷った末に捨ててしまう。この積み重ねが、環境にも家計にもじわじわ効いてきます。編集部が各種公的資料を読み解くと、原因のひとつに「賞味期限」と「消費期限」の意味の取り違えが見えてきました。前者はおいしさの目安、後者は安全性のリミット。[2] なのに、どちらも“過ぎたらアウト”と受け止められがちです。ここを正しく理解すれば、無理のない節約と、ムダのない台所が手に入ります。

法律上、期限表示は「未開封で、表示どおりの保存方法を守った場合」を前提にしています。[2,3] 賞味期限は“おいしく食べられる期限”の目安で、スナック菓子、缶詰、乾物、飲料など、比較的傷みにくい食品に多く表示されます。[2] 期限を少し過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではありません。[4] 一方で消費期限は“安全に食べられる期限”で、弁当や総菜、生菓子など劣化が早い食品に使われ、過ぎたら食べるべきではないラインと理解してください。[4]

ただ、表示の言葉がやや抽象的なため、私たちの暮らしの中では混線しやすいのも事実です。編集部の冷蔵庫でも、未開封の豆乳を賞味期限当日に慌てて使い切った経験があります。よく確かめれば、匂いも味も問題なく、翌日でも十分においしかったはず。「賞味」は品質のピーク、「消費」は安全の締め切り」——こう置き換えると、判断がぐっとシンプルになります。[2]

「どの食品にどちらが付く?」を具体的に

日持ちする乾麺やレトルト、粉類、缶詰、板チョコ、コーヒー豆の多くは賞味期限表示です。[2] 逆に、手作り総菜や店頭調理の弁当、生クリームのケーキ、サンドイッチのように水分が多く菌が増えやすい食品は消費期限が一般的です。[2] ヨーグルトや牛乳はメーカーや製品設計によって分かれることがあり、棚で隣り合う似た食品でも表示が違うことは珍しくありません。[6] 迷ったらパッケージで表示区分と保存方法(要冷蔵・冷暗所など)を確認するのが最短の防御線です。[3]

よくある誤解をほぐす短いメモ

まず、賞味期限は「未開封×指示どおり保存」での目安です。[2] 開けた瞬間から条件は変わり、開封後は期限表示に関係なく早めにが原則になります。[4] 次に、冷凍庫は魔法のタイムカプセルではありません。品質の劣化は遅らせられても、表示の期限が延長されるわけではないのです(期限は表示された保存条件が前提)。[3] また、消費期限は過ぎたら食べないが基本。[4] もったいない気持ちは大切にしつつも、ここは線を引きましょう。

家庭でできる“見極め”と“守り”のコツ

期限の正しい理解に加えて、台所での小さな所作がロスを大きく減らします。鍵になるのは、見極め、温度、記録の三つの視点です。見極めは、まず見た目。缶詰なら膨らみやサビ、袋物なら破れや結露の跡がないかを観察します。次に匂い。酸っぱさ、アルコール臭、いつもと違う刺激がないかを静かに確かめます。そして少量の味見。乾物や焼き菓子なら風味の劣化に気づけますし、冷蔵品なら舌にピリッとした刺激や舌触りの違和感がないかに意識を向けます。ここまでで「いつもと違う」があれば、無理はしない判断が安全です。

温度については、保存指示に忠実であることが最大のリスク管理です。[3] 牛乳や豆腐、チルド総菜はドアポケットではなく庫内中央の温度が安定する場所に置くと安心感が増します。納豆やヨーグルトは扉の開閉で温度が揺れにくい奥側へ。乾物や粉は湿気を避け、光を遮るだけで風味の持ちが違います。さらに、買い物から帰ったら先に冷蔵・冷凍品をしまい、常温品はそのあとに回す。この順番だけでも、室温にさらす時間を短縮でき、表示どおりの品質をキープしやすくなります。

記録は、開封日を書くというひと手間に尽きます。マスキングテープに日付を書いて貼る。これだけで「いつ開けたっけ?」問題が解消し、賞味期限が切れていても開封後の日数から判断できるようになります。編集部では、味噌や調味だれ、ジャム、海苔、ナッツに日付ラベルを徹底しただけで、週末の“謎の容器”が激減しました。

買い方と使い切りで、期限を“味方”に変える

ロスを最初から生まないためのコツは、買い物かごに入れる前から始まっています。平日の予定をざっくり想像し、外食や残業がありそうな日は生鮮の量を控える。翌朝に使うパンと牛乳は小容量にするか、あらかじめ小分け冷凍の前提で購入する。店頭では、いますぐ食べる予定なら手前から取る「てまえどり」、週末用に日持ちさせたいなら奥の棚で賞味期限が長いものを選ぶ。この“引き算と足し算”の組み合わせで、期限と予定が噛み合い始めます。

使い切りの工夫は、レシピの難易度よりも“流用のしやすさ”がカギです。たとえば、余った青菜はざく切りして下ゆでし、水気を絞って小分け冷凍すれば、味噌汁、炒め物、和え物へすぐに展開できます。半端なきのこはオイルでさっと加熱して常備菜に。食パンが数枚残ったら、フレンチトーストだけでなくクルトンやパン粉にしておくと、サラダやグラタンで出番が増えます。“次の一手が複数ある形”にしておくと、期限に追われないのです。

さらに、週の途中で「在庫の見える化」を一度やっておくと効果的です。水曜の夜に冷蔵庫を軽く棚卸しし、要注意のものを冷蔵庫の手前へ集める。編集部でもこの習慣を始めてから、金曜に焦って消費する”期限ラッシュ”が落ち着きました。

「家庭のルール」で迷いを減らす

期限の理解は個人戦ではなくチーム戦です。家族や同居人と共有ルールを作ると、迷いとムダは目に見えて減ります。おすすめは、冷蔵庫の中段左端を“要先食べゾーン”に設定し、そこに今日明日で食べたいものだけを集めること。ここは誰でも見える特等席なので、家族が自然と手を伸ばします。もうひとつは、「開封日ラベル」を全員の共通語にすること。子どもも読める大きさの字で、日付だけ。シンプルだから続きます。

職場でも応用できます。共有冷蔵庫に入れる飲料やお土産菓子には、入庫日を書いた付箋を貼る。オフィスは人の出入りが多く、誰のものか不明の食品が溜まりがちですが、日付があるだけで判断が早くなるのです。自治体の回収日や資源化のルールを把握することも、最後の”背中押し”になります。多くの自治体のデータでは、燃やすごみの中で生ごみは約3〜4割を占めます。[5] 私たちが台所で一つ行動を変えることは、家庭のごみ袋の軽さにも直結します。

「捨てる・食べる」を決めるための合言葉

最後に、迷ったときの判断軸を一つだけ。消費期限は過ぎたら食べない。賞味期限は“未開封×表示どおり保存”なら状態を見て判断。開封後は早めに。[2,4] この順番を口に出して確認するだけで、慌てずに済みます。見た目・匂い・少量の味見という三段階の見極めと、開封日ラベル、手前どり、週一の棚卸し。どれも大がかりではなく、今日から始められることばかりです。数字に強くなるより、日々の目線を一歩やさしく、具体的に。期限表示は敵ではなく、私たちの味方です。

まとめ:期限に追われない台所へ

賞味期限はおいしさの目安、消費期限は安全の締め切り。違いを理解し、状態を観察して、生活リズムに合わせて買い、使い、しまう——この流れが身につくほど、食品ロスは静かに減っていきます。冷蔵庫の手前に要先食べゾーンを作る、開封日に日付を書く、週の真ん中で在庫を見直す。小さな工夫が続くと、台所の時間にも心にも、少しずつ余白が生まれます。次の買い物の前に、まず冷蔵庫を一度だけのぞいてみませんか。今日すでにあるものを、おいしいうちに、ていねいに食べ切る。その選択が、家計にも地球にもやさしい一歩になります。

参考文献

  1. 環境省. 令和3年度の食品ロスの発生量(推計値)について. https://www.env.go.jp/press/press_01689.html
  2. 農林水産省. 期限表示(消費期限・賞味期限)について. https://www.maff.go.jp/j/syouan/syoku_anzen/bimi/r0212/limit.html
  3. 厚生労働省. 期限表示に関する用語の定義等(食品表示関連資料, 2002年10月28日). https://www.mhlw.go.jp/shingi/2002/10/s1028-10c3.html
  4. 国民生活センター. 消費期限と賞味期限の違いは?開封後はどうするの?(FAQ 1278). https://www.faq.kokusen.go.jp/faq/show/1278
  5. 環境省. 一般廃棄物の実態調査等(厨芥類の比率等の資料). https://www.env.go.jp/recycle/waste/conf_raw_g/06/indexb.html
  6. 農林水産省 aff(2017年6月号). 賞味期限と消費期限の違い(キャラクターインフォメーション). https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1706/characterinformation.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。