40代が知らないと恥ずかしい!今季トレンドの見極め方3ステップ

トレンドは“川上→中流→川下”の時間差で動く。大人に必要なのは追いかける速さではなく整理術。本記事では今季に効く取り入れ法、来季に備える投資判断、そして今日からできる編集部式の3ステップ収集ルーティンを紹介します。

40代が知らないと恥ずかしい!今季トレンドの見極め方3ステップ

トレンドの正体をほどく:層と時間軸で見る

トレンドは点ではなく面で立ち上がります。川上ではパリやミラノのコレクションやデザイナーのインタビューが、色・素材・シルエットの方向性を示します。中流ではセレクトショップの入荷や雑誌・ウェブ特集が解像度を上げ、川下ではSNSの着回しやECの売れ筋が「生活に落ちた形」を教えてくれます。編集部の観測では、この三層が同時に動くのではなく、数週間から数ヶ月のラグを伴って連続します。だからこそ、すべてを同じスピードで追おうとすると疲弊します。

ここで役に立つのが時間軸の整理です。今日すぐ使える微差の更新、今季を通して効く旬の要素、来季以降に備える投資の三つに分けると、情報が一気に扱いやすくなります。例えば、色なら今季は差し色として効く鮮やかなトーンの小物から取り入れる、シルエットなら手持ちのテーラードに細いベルトでウエスト位置を動かす、といった小さな実験が今日の領域です。もし街で同じムードの着こなしが増え、ECの新入荷でも同系統が続くなら、それは今季の核になっている可能性が高い。逆に、まだランウェイや海外のエディトリアル中心で、国内の店頭に波が届いていないときは、来季候補として気長に追う。こうして「いま」と「これから」を分けておくと、必要以上に急がないで済みます。

三層の見方を言語化する

上流ではVogue Runway(毎シーズン約800コレクション、計3万枚超のルックを公開)[4]や各ブランドのルック、デザイナーのノートが手がかりです。そこではディテールよりも、色の温度感、丈のバランス、素材の揺れ感といった“空気”を掴みます。中流では、国内セレクトの仕入れ傾向や雑誌・ウェブの特集タイトルを観察します。同じテーマが別媒体で繰り返されるとき、市場がその気分を受け止めているサインになります。川下では、InstagramのリールやECのランキング、ストリートスナップで、実生活に翻訳された具体を確認します。ここで「自分の生活で再現できるか」を判断軸に加えるのがポイントです。

“今日/今季/来季”の三分法で迷いを減らす

編集部では気になったイメージを保存するとき、今日・今季・来季のいずれに効くのかを必ずメモします。今日の領域にはヘアの分け目や袖口のロール、ベルトの締め位置のような微差が入ります。今季の領域は、たとえば色のアップデートや素材の刷新、定番のシルエットのわずかな変化。来季の領域は、手入れや予算、生活動線の見直しが前提になるアウターや靴の投資候補です。この仕分けができていると、ECのカートに入れる前に「これは今日の微差で代替できるか」「今季だけの気分に終わらないか」と立ち止まれるようになります。

一次情報と二次情報をどう取りに行くか

情報源は「発信地に近いほど抽象度が高い」という特性があります。一次情報はブランドやショー、デザイナー自身の言葉やルックで、方向性を最短距離で掴めます。Vogue Runwayのショー画像やショーノーツ、各ブランドのYouTubeやInstagram、業界メディアの速報などが該当します。この層の利点は、解釈が入る前の“原石”に触れられること。欠点は抽象度が高く、生活への翻訳にひと手間かかる点です。

二次情報は誰かの解釈が加わったまとめやランキング、スタイリング提案です。国内外のファッションメディアの特集、セレクトショップのルックブック、ECの売れ筋や「今週の新着」欄、四半期ごとに発表されるLyst Indexのような検索・購買データの集計がこれに当たります。ここでは「市場で実際に動いているもの」が見えてきますが、PRや広告の影響が混じることもあるため、複数のソースで傾向をクロスチェックするのが賢明です。

無償で使える道具も強力です。Googleトレンドの地域・期間を絞った検索指数は、色名やアイテム名の関心の上下を可視化します。研究では、検索データがファッション消費行動の予測に活用できる可能性も示されています[5]。Instagramの保存数やリールの再生推移は、ムードの浸透度を見る目安になります。国内ではZOZOTOWNなどの「新着」や「ランキング」を曜日ごとに覗き、同じ系統が続くかを見ると、市場の温度が実感できます。海外ECのNet‑a‑PorterやSSENSEの「New In」は、素材や色の微差が連日更新されるので、波の立ち上がりを追うのに向いています。

編集部の“重ね見”テクニック

単独の情報より、層をまたいで重ねると精度が上がります。たとえば、Vogue Runwayで気になった色をスクリーンショットし、その色名でGoogleトレンドを地域を日本、期間を過去12カ月にして検索します。緩やかな右肩上がりなら、ECの新着で近い色合いを探し、Instagramで街の着こなしを保存していく。三つが同時に動いていれば、今季の軸足に置いて良いシグナル。どれか一つしか動いていないなら、今日の微差に留める。こうした“重ね見”を癖にすると、衝動買いが減り、「待つ」判断が上手になります。

信頼できる解釈の見つけ方

二次情報はキュレーター選びが肝です。自分と生活動線や体型、予算感が近いスタイリストやメディアを主軸に置くと、翻訳コストが一気に下がります。編集部では、過去に「これは良い」と思えた提案者のアーカイブを見返し、一貫しているかを確認しています。一回のバズより、半年・一年の軸のブレなさを重視するのがコツです。

日常に組み込む収集ルーティン:10分・週30分・月90分

情報収集は「時間で囲う」と続きます。毎朝の10分は今日の微差のために使います。アプリを二つだけ開き、Vogue Runwayまたは海外ECの新着で色や素材の空気を掴み、Instagramの保存フォルダに「今日」タグを付けて1〜2枚だけ追加します。このとき保存基準を「形・色・素材・着こなしのコンテクスト」のどれに惹かれたか一言メモにしておくと、後から再現するときのヒントになります。朝の10分はここで終わりにして、着替えの前に一枚だけ見返します。ベルトの幅や靴下の丈といった小さな更新に落とし込めれば成功です。

週に一度の30分は、今季の軸づくりです。保存した画像を「今日/今季/来季」に並べ替え、今季フォルダの上位10枚を見比べます。似た要素が三つ以上重なるなら、あなたの今季テーマが浮かび上がってきています。クローゼットを開け、テーマに合う既存の服を抜き出して、足りない要素を一つだけ言語化します。たとえば「艶のある黒の細ベルトがない」「柔らかいオフ白のニットが欲しい」。買い物はここで解像度が上がった一つに絞ります。

月に一度の90分は、来季に備える時間です。気になっているアウターや靴の候補を、天候や移動手段、ケアの手間といった生活条件でふるいにかけます。通勤に自転車が増えた、出社頻度が週二になった、子どもの送迎があるといった文脈の変化をメモし、候補を磨き込む。ここでは予算と保管スペースを必ずセットで考えます。お金の不安があると判断が鈍るからです。服の投資判断を整える考え方は賢い買い物のルールや、働き方に合う装いの軸づくりで補助できます。

保存フォルダを“使える知識”に変える

保存が溜まるだけでは現実は変わりません。見返すときは「何に惹かれたか」を言語化し、同じ要素が重なるものを並べて似ている順に並び替えます。似ているものが多いほど、あなたにとっての再現性が高い証拠です。さらに、実験した記録を残しましょう。袖を一折して出かけた日、いつもよりヒールを低くした日、感情や歩数、所要時間のメモを添えると、次の判断が速くなります。

ノイズを減らす小さな設計

情報の取りすぎは迷いの温床です。おすすめ表示は、いいね・保存・非表示の積み重ねで変えられます。あなたにとってノイズになる発信はミュートにし、生活に役立つ提案者の投稿に反応を返してアルゴリズムを育てます。通知は時間で束ね、朝の10分と週30分の時間にだけ開くようにすると、思考の中断が減ります。編集部では、アプリの配置を「見る」「保存する」「買う」の順に1画面で並べ、終わったらホーム画面から一段隠す設定にしています。開きやすさを下げるだけで、うっかり巡回が減ります。

見極めと“捨てる”判断:自分に合う翻訳へ

最後に、取り入れ方の順番です。失敗コストを抑えるなら、小物からが鉄則です。色や素材の気分は、ベルト、タイツ、靴下、スカーフ、スマホショルダーのような周辺パーツで十分に試せます。ここで違和感がなければ、トップスやニットに進み、ボトムやアウターへと規模を上げていきます。高額で手入れが大変なものほど後回しにし、今季の自分のテーマとの整合性を問い続けると、衝動的な投資を避けられます。

購入前の最終確認として、頭の中で三つの質問を回してください。まず、手持ちの三着以上と確実に合うか。次に、来年の自分も着たいと思えるか。そして、家でケアできるか、またはケアにかかる手間を引き受けられるか。どれか一つでもNOなら、一晩置く。トレンドは逃げません。むしろ翌日も気持ちが残っているなら、それは生活に根づくサインです。

もう一つ、情報の“撤退戦”も用意しておきましょう。興味が薄れたテーマや、自分の生活に合わないと判断した傾向は、フォローを外し、保存を削除し、検索履歴からも消します。空いたスペースは、今季の自分のテーマに関連する要素で埋め直す。これは勇気のいる作業ですが、余白は新しい選択のための最高の投資です。個人戦からチーム戦への移行を感じる世代だからこそ、信頼できる数人とスクリーンショットを共有し、試着に付き合ってもらうのも現実的です。自分一人の目が揺らぐとき、別の生活者の目は強い味方になります。

「最新」より「使える」を選び続ける

大切なのは、“最新であること”より“使えること”。 川上の気分を掴み、川下での翻訳を観察し、あなたの生活に合う形へ整える。この往復こそが、無理のない更新を生みます。情報は追うのではなく、設計する。時間で囲い、層を重ね、少しずつ試す。そうすれば、トレンドはあなたの味方になります。

まとめ:揺らぎのある日々に、軽やかな更新を

完璧でなくていい。毎朝10分、週30分、月90分のリズムで、上流と下流を往復するだけで、装いは確実に変わります。迷いは悪者ではありません。むしろ、変わりたい気持ちのサインです。自転車の送迎、リモートと出社の行き来、季節の体調の波。そんな現実に合わせて、トレンドを自分の言葉に訳していきましょう。今日の一歩は、小物の更新かもしれないし、保存フォルダの整理かもしれない。どちらでも、前に進んでいます。

参考文献

  1. 総務省|令和4年版情報通信白書(メディア利用・信頼に関する記述) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r04/html/nd238110.html
  2. Web担当者Forum「SNSの利用は引き続き増加しており…」 https://webtan.impress.co.jp/n/2021/07/05/40766
  3. 総務省|平成29年版情報通信白書(主要SNSの利用状況の記述) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc111130.html
  4. 東京大学 生産技術研究所ニュース「Vogue Runwayルックの大規模データベース」 https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/3052/
  5. ResearchGate「Googling Fashion: Forecasting Fashion Consumer Behaviour Using Google Trends」 https://www.researchgate.net/publication/332189230_Googling_Fashion_Forecasting_Fashion_Consumer_Behaviour_Using_Google_Trends

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。