アートメイクリップとは?基礎知識と今のトレンド
アートメイクリップは、唇の粘膜または粘膜に接する皮膚層に専用の色素を極細針で入れて、素の唇の色や輪郭をソフトに補整する施術です。一般的な口紅やティントのように表面に塗るメイクではなく、微量の色素を層の中に置くイメージに近いもの。仕上がりは直後が濃く、その後1〜2週間で一段トーンダウンし、4〜6週間かけて定着します。[2] 色持ちは体質や色選びで個人差がありますが、おおむね1〜3年で薄くなり、リフレッシュ(色の入れ直し)を行うケースが多い流れです。[3]
デザインは全面を淡く染めて血色感を底上げするフルリップ、輪郭を整えてにじみを抑えるリップライン、中心に向かってグラデーションをつくるぼかしなどさまざま。[2] 近年は「塗っていないのに血色がある」自然仕上がりが主流で、透明感のあるピンクやコーラル、ローズ系のニュートラルカラーが選ばれやすい傾向です。マスク生活を経て素の状態でも写真映えしやすい口元へのニーズが高まり、忙しい朝のメイクにかける時間を削減したい層から支持されています。
とはいえ、アートメイクは万能ではありません。色素はあくまで「ベース」を整えるもので、グロスのツヤや季節ごとのトレンドカラーは、これまで通りコスメで楽しむのが前提。施術の上に薄くティントやバームを重ねると、質感の調整がしやすくなります。
アートメイクリップの主なメリット
最初に伝えておきたいのは、アートメイクリップのメリットは日々の小さなストレスを静かに減らしてくれる点にあります。リップがカップに移る、色ムラを何度も塗り直す、外出先で鏡を探す。この「都度の手間」をまとめて軽くしてくれるのが半永続的なベース発色です。朝のメイクではベースができていることで塗り重ねが最小限になり、落ちやすい人でも輪郭のにじみが起きにくくなります。
数値で考えると実感しやすくなります。リップメイクに毎朝3分かけていた人が、アートメイク後に30秒で済むようになれば、差は1日あたり2分半。年間では約18時間の短縮です。仕事や家事、育児に追われる日々の中で、18時間分の余白が増えると考えると小さくない効果といえます。さらに、食事やマスクの着脱でも色が残りやすいので、鏡を探す回数そのものが減り、外出時の安心感が高まります。
発色の安定は心理面にも作用します。素の唇のくすみや色ムラに悩むと、どうしてもファンデーションやコンシーラーで口周りを厚塗りしがちですが、ベースの血色が整うと薄塗りでも顔全体の印象が明るく見えやすくなります。顔立ちの左右差が気になる人も、輪郭を数ミリ単位で微調整することで、光の当たり方が均一になり、写真での見え方が落ち着くことがあります。もちろんメイクの自由度は残るため、季節のカラーを重ねて遊ぶことも可能です。
また、運動や屋外活動が多い人には、汗や水分、日差しなどの環境変化の中でもベースの色が保たれる利点があります。海やプール、ランニングの後でも最低限の血色が担保されることで、ノーメイクに振り切らずにいられる心地よさが生まれます。アートメイクは「常にフルメイク」ではなく、「素の自分が少しだけ整っている」状態を標準化する技術、と理解すると選択しやすくなります。
受ける前に知っておきたい注意点
メリットがはっきりしている一方で、現実的な注意点も無視できません。まず、施術直後は発色が濃く見え、唇がむくみやすく、1〜3日ほどは乾燥や軽いヒリつきを感じることがあります。[4] 薄い膜(かさぶたのようなフレーク)が生じ、自然に剥がれていくプロセスを経て色が落ち着きます。この期間に唇をこすったり、皮むけを無理に剥がしたりするとムラの原因になるため、説明に沿った軟膏やバームでの保護が欠かせません。[2] 辛い食べ物や熱い飲み物、長時間の入浴やサウナ、激しい運動は数日控えるのが一般的な指示です。[4]
色の変化にも理解が必要です。定着直後は一時的に淡く見え、「薄すぎたかも」と焦る瞬間がありますが、多くの場合は4〜6週間で内側から色が戻り、バランスが整います。[2] 長期的には紫外線や代謝の影響で徐々に退色し、寒色寄りに転ぶ(くすんで見える)ケースもあるため、初回はやや温かみのある色を選ぶと、抜けていく過程も心地よく過ごせることが多いです。将来的な色の変化まで含めてカラー設計を行う視点が大切です。[5]
痛みの感じ方は個人差がありますが、表面麻酔を用いた場合でも「チクチクする」「擦られている感覚」程度の違和感は生じ得ます。[2] 月経周期や体調、寝不足で敏感になることもあるので、予約はコンディションが整いやすいタイミングに。唇ヘルペスの既往がある場合、施術の刺激で再発しやすいとされるため、医療機関の指示に沿った予防対応が必要になることがあります。[2] 金属アレルギーや色素への反応が気になる人は、事前相談やパッチテストの可否を確認しておくと安心です。[5]
費用とメンテナンスの現実も見過ごせません。相場感は地域や施術者の経験、使用色素によって幅がありますが、初回とリタッチのセットで5〜10万円台前半に設定される例が多く、1〜2年ごとのリフレッシュに追加コストがかかります。[6,2] 「一度入れたら終わり」ではなく、「育てていく」感覚で計画すると、金銭面のギャップが少なくなります。また、万一デザイン修正や除去が必要になった場合、レーザー等の対応でも完全に消える保証はなく、時間と費用を要する点は認識しておきたいところです。[7]
施術者の選び方も重要です。写真を見る際は直後の鮮やかな仕上がりだけでなく、1〜2カ月後の「定着後」の症例を重視すると、日常での見え方をイメージしやすくなります。衛生管理、カウンセリングの丁寧さ、色彩理論への理解、リスク説明の透明性は、クリニックやアーティストの力量を測る手がかりになります。[5] 口コミに頼り切らず、自分の肌色や唇の厚み、生活スタイルに合わせた提案をしてくれるかを確かめていきましょう。
失敗を避ける準備と、アフターケアの現実策
まずは色選びの精度を上げます。鏡の前で素の唇をよく観察し、赤み・黄み・青みのどれが強いかを把握します。そのうえで、普段よく使うリップの中から顔色が明るく見える色を1〜2本選び、そこから半トーン明るいベースカラーを目安に提案を受けると、抜けていく過程も自然です。好みの写真だけを見せるのではなく、仕事や子どもの予定、スポーツの頻度など暮らし方も伝えると、濃度や範囲の調整に反映されやすくなります。輪郭はオーバーにし過ぎると日常で浮きやすいので、まずは素の形から数ミリの微調整に留めると適応しやすい人が多い印象です。
施術の前後1週間は、乾燥対策と紫外線対策を意識するとコンディションが整います。就寝前に保湿バームを薄く重ね、日中はSPF配合のリップバームで紫外線を避ける習慣を整えておくと、定着の土台ができます。[5] 施術当日は口紅は避け、清潔な状態で来院するのが基本。直前のピーリングや強いスクラブ、歯科治療など粘膜に刺激のある予定は近接させないほうが無難です。[2] カフェインやアルコールは一時的に血流を高めるため、体質によっては腫れやすくなることがあります。
アフターケアは、渡された指示に沿うのが最優先です。一般的には最初の数日は清潔・保湿・摩擦回避が柱になります。[2] 唇を舐めるクセがある人は、刺激にならないよう意識的に避ける工夫を。入浴は短時間のシャワーにとどめ、熱い湯やサウナ、激しい運動は控えめに。[4] 皮むけは自然に離れるのを待ち、メイクは落ち着くまで口紅やティントの使用を見合わせるのが無難です。[2] 定着後は色持ちを考えて、SPF入りのリップケアを日課にすると退色の進みが緩やかになります。[5]
スケジューリングもコツがあります。イベントや写真撮影があるなら、最低でも1カ月以上前に初回を済ませ、必要であればリタッチを施して色を安定させておくと、当日に最も自然に見えます。[2] ボトックスやフィラーなど口周りの美容施術を予定している場合は、干渉を避けるため時期を離して計画することが推奨されるケースが一般的です。[2]
まとめ:わたしの生活に合う「ちょうどよさ」を選ぶ
アートメイクリップは、時間の余白と仕上がりの安定をもたらす力があります。同時に、ダウンタイムや色の変化、費用やメンテナンスの現実も伴います。どちらも本当だからこそ、選ぶ前に自分の生活と価値観に照らして考えることが、後悔の少ない近道です。「常に完璧」ではなく「素の自分が少し楽になる」ことに価値を置けるか。その問いに静かに向き合ってみてください。
今日の一歩として、手持ちのリップの中から「顔色がよく見える色」を1本選び、鏡の前で素の唇とのギャップを観察してみましょう。必要な変化の大きさが見えてくるはずです。もしそれが小さな差なら、ケアとコスメで十分かもしれません。大きな差なら、アートメイクという選択肢を検討する価値がある。どちらを選んでも、主役はあなたです。暮らしに合う「ちょうどよさ」を、あなたのスピードで見つけていきましょう。
参考文献
- Google Trends. 日本における「アートメイク 唇」の検索関心(過去5年). https://trends.google.com/trends/explore?geo=JP&q=%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AF%20%E5%94%87
- 医療脱毛クリニック コラム「リップアートメイクのダウンタイム」. https://www.medical-epilation.clinic/column/lip-artmake-downtime/
- 城本クリニック「アートメイクについて」. https://www.shiromoto.to/ct/others/artmake.php
- WILL BEAUTY CLINIC「アートメイクのダウンタイム」. https://will-b.clinic/art/downtime/
- Permanent makeup/medical tattooing: regulation, pigments and adverse events. PubMed PMID: 38901732. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38901732/
- WILL BEAUTY CLINIC「アートメイクの料金相場」. https://will-b.clinic/art/nedan/
- Tattoos and medical tattooing: complications and laser removal considerations. PubMed PMID: 18280902. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18280902/