更年期に体重が増えやすい理由を、科学と言葉で整理する
40代に入ると、年間0.5kg前後の体重増加が起こりやすいことが複数の研究で報告されています[1]。一方で、増えるのは単なる体重だけではありません。医学文献によると、閉経移行期には脂肪のつき方が「腰回り・お腹側」に偏りやすくなる傾向が見られます[2]。編集部が国内外のデータを読み解くと、増加の背景には年齢による代謝のわずかな低下[3]、活動量の減少[4]、そしてエストロゲン低下に伴う体脂肪分布の変化[2]が絡み合っていました。
ただし、これは「更年期だから仕方ない」という話ではありません。研究データでは、食事の構成と活動の仕組み化、睡眠とストレスの整え方を見直した人は、同年代でも体重やウエストの増加を緩やかにできています[4,10]。ここからは、いまの生活を大きく壊さずに体重増加を抑える可能性のある現実的な方法を、数字と手触り感のある工夫で解説します。
まず前提をそろえます。更年期は閉経の前後数年を指し、多くは40代後半から50代前半に重なります。研究データでは、加齢とともに安静時の消費エネルギーは10年でおよそ**1〜2%**程度下がるとされ[3]、同時に日常の自発的な活動量(NEAT)も仕事や家事の負荷の変化で減りがちです[4]。ここにエストロゲン低下が重なると、体脂肪が皮下から内臓側に移りやすくなり、同じ体重でも見た目やウエスト周囲径が変わりやすくなります[1,2]。
重要なのは、増加のすべてがホルモンのせいではないという視点です。医学文献によると、体重そのものの増加は「年齢に伴う生活と代謝」の影響が大きく、ホルモン変化は**「どこにつくか」**を左右しやすいと整理されています[1,2]。つまり、生活側のてこ入れが効きやすいという希望でもあります。
もうひとつの現実は、忙しさです。子どものライフイベント、親世代のサポート、職場での役割拡大。夕方の小腹をスイーツでつなぎ、遅い夕食にアルコールが重なると、いつの間にかエネルギーが積み上がります。睡眠が短くなると食欲を高めるホルモンのバランスが変わり、翌日の選択も甘くなりやすい[5]。これらは気合いでは解決しません。次章では、仕組みで負担を減らすやり方を提案します。
食べ方を変える:量より「配分」と「タイミング」で整える
たんぱく質を軸に、野菜と良質な炭水化物を合わせる
体重を「増やさない」食事の土台は、空腹を無理に我慢しないことです。研究では、たんぱく質を適切にとると満腹感が高まり、総摂取カロリーが自然に整いやすいと示されています[6]。目安は体重1kgあたり1.0〜1.2g/日(例:体重60kgなら60〜72g)[6]。朝食と昼食に20〜30gずつ配分すると安定します[6]。卵や魚、鶏むね、大豆製品、ヨーグルトなど、消化のよい選択肢を生活に合わせて組み合わせましょう。より詳しい食材の選び方は、NOWHの「40代女性のたんぱく質ガイド」も参考になります。
炭水化物は敵ではありません。量を絞りすぎると、集中力やトレーニングの質が落ちて逆効果になりがちです。食物繊維の多い全粒穀物や雑穀、さつまいも、豆類を選び、必ず野菜とたんぱく質と一緒に食べる。これだけで血糖の上がり方が穏やかになり、間食の波を抑えやすくなります。食物繊維は1日20〜25gを目標に、味噌汁に豆と海藻を足す、麺なら具だくさんにするなど、足し算の工夫が効果的です[7].
時間の工夫で「食べ過ぎの場面」を減らす
夕食は就寝の3時間前までに終えると睡眠の質が上がり、翌日の食欲の暴走も起きにくくなります(睡眠不足が食欲調節に影響する知見と併せて考えると理にかないます)[5]。朝から夜までの食事時間帯はおおむね12時間に収めると、夜遅くのつまみ食いが自然に減ります。時間制限食に関する研究結果は混在していますが、生活リズムを整える効果は実感しやすく、体重増加のブレーキになり得ます[8].
アルコールは「休肝日」を仕組みにしましょう。ビール350mlでおよそ140kcal、ワイン120mlで100kcal前後[9]。お酒そのもののカロリーに加え、おつまみも重なります。平日はノンアル、週末は楽しむなど、自分のペースで線引きを。お酒と睡眠の関係は、NOWHの「お酒と睡眠の関係」で詳しく解説しています。
「どれだけ食べるか」に加え、「どう食べるか」も大切です。よく噛む、食卓に野菜を先に置く、器を一回り小さくする。どれも意志より環境でコントロールしやすい工夫です。忙しい日は、コンビニでサラダチキン+カット野菜+おにぎりのように、たんぱく質・野菜・主食の三点セットを意識して選ぶと、総量を数えなくても整っていきます。
運動は「賢く」積み重ねる:筋トレ+歩く+少し息を上げる
週2〜3回の筋トレで、減りやすい筋肉を守る
体重の増えやすさを左右するのは、基礎代謝の土台である筋肉です。研究データでは、40代以降は放っておくと徐々に除脂肪量が減るため[3]、週2〜3回のレジスタンストレーニングが推奨されます。世界的な推奨でも、週に複数回の筋力トレーニングが勧められています[10]。スクワット、ヒンジ(デッドリフト系)、プッシュ(腕立てやダンベル)、ロー(引く動き)の大筋群を中心に、1回20〜30分でも十分です。重さは「あと2回はできそう」くらいの負荷感で始め、フォームを優先。やり方は、NOWHの「40代からの筋トレ入門」で具体的に紹介しています。
時間が取れない週は、家で椅子スクワット10回→テーブルプッシュアップ10回→バックエクステンション10回を回して10分で終える日を作る、通勤のついでに歩く速度を少し上げる、といった「短くても続ける」設計がカギになります。大切なのは完璧より頻度です。
日常の歩数を増やし、有酸素は「心地よい息切れ」を目安に
日常の歩数は体重増加のブレーキになります。研究では、2,000歩増やすとおよそ60〜100kcal程度の消費増につながると見積もられています[11]。エレベーターより階段、最寄り駅のひと駅手前で降りて歩く、電話は立って受ける。どれもNEAT(非運動性熱産生)を底上げするコツです。
有酸素運動は、世界的な推奨である週150分の中強度(早歩きやサイクリングなど)を目安に、自分の生活に溶け込ませます[10]。息が弾んで会話がやや難しいくらいの強度が目安。筋トレと同じ日に10〜15分足すか、オフ日に30分歩くか、やりやすい方で。もし時間がない日は、階段を2段飛ばしで上がる、バス停ひとつ分だけ早歩きするなど、短時間でも心拍を上げる工夫が有効です。
運動後の回復も忘れずに。ストレッチと軽い呼吸エクササイズで副交感神経をスイッチし、睡眠の質を整えるとトータルのパフォーマンスが上がります。呼吸法はNOWHの「4-7-8呼吸のやり方」にも詳しくまとめています。
睡眠・ストレス・記録:見落としがちな“体重スイッチ”を整える
7時間前後の眠りが、翌日の食欲と選択を助ける
短い睡眠は食欲を高め、甘いものや高脂肪食の選好を強めることが研究で示されています[5]。逆に、毎日同じ時刻に起きる、就寝前は強い光やスマホを避ける、カフェインは午後2時以降を控える。この3つだけでも眠りの質は上がり、翌日の食欲コントロールが楽になります。眠りの整え方はNOWHの「40代の睡眠リセット」にもまとめています。
ストレスの出口を、3分単位で持っておく
忙しさと高ストレスは、コルチゾールの乱れを介して腹部脂肪の増えやすさに関わります[12]。とはいえ、ストレスそのものを消すのは現実的ではありません。大事なのは、短時間で切り替える技を持つこと。3分の呼吸法、温かい飲み物をゆっくり飲む、10分の外散歩。これらは気力に頼らずルーティン化しやすく、夜のドカ食いの引き金を減らします。
「結果」ではなく「行動」を記録して、小さな達成感を積む
更年期は体内の水分や浮腫みの影響で、体重の数字が日々揺れます。だからこそ、ウエスト周りの変化や服のゆとり、週に何回動けたか、タンパク質を基準に食べられたか、といった「行動の指標」を記録に残すのがおすすめです。体重計は週1回、同じ条件で淡々と測るくらいがちょうどいい。数字に振り回されず、プロセスに目を向けると継続が楽になります。
もし短期間で急に体重が増減した、強い倦怠感が続く、月経や気分の変化が極端に辛いといったサインがあれば、医療機関で相談を。薬の影響や甲状腺機能など、生活では調整しにくい要因が隠れていることもあります。なお、ホルモン補充療法は更年期症状の緩和が主目的であり、体重減少を狙う手段としては推奨されていないとする医学文献が多い点も覚えておきましょう[13].
今日から始めるための「一歩」を決める
増やさない鍵は、完璧な1日の再現ではなく、続けられる小さな仕組みです。例えば、朝食にゆで卵とヨーグルトを足してたんぱく質20gにする、電車は一駅分だけ歩く、21時以降は食べない、平日はノンアルにする。どれかひとつでも1週間続けば、体重の曲線は緩やかに変わり始めることがあります。慣れたら次のひとつを足す。この積み重ねが、更年期の体重増加を抑える助けになる可能性があります。
最後に自分へ質問を。明日から現実的に続けられる一歩は、どれですか。筋トレを週2回カレンダーに入れることか、たんぱく質のある朝食を準備して寝ることか、それとも就寝前30分はスマホを閉じることか。選んだ一歩を、今この場でスケジュールに書き込んでみてください。あなたの生活に合ったやり方が、近道になり得ます。
参考文献
- JCI Insight. Changes in body composition across the menopausal transition (SWAN). https://insight.jci.org/articles/view/124865
- Lovejoy JC, Champagne CM, de Jonge L, et al. Abdominal fat distribution and menopause: evidence for selective deposition of intra-abdominal fat. Menopause. 2008. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18427349/
- Speakman JR, Westerterp KR. Age-related changes in resting energy expenditure and body composition. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4924163/
- U.S. Department of Health and Human Services. Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition. NCBI Bookshelf (NBK566048). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK566048/
- Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief sleep curtailment is associated with decreased leptin, elevated ghrelin, and increased hunger and appetite. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC535701/
- PROT-AGE Study Group. Evidence-based recommendations for optimal dietary protein intake in older people. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23867520/
- EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on Dietary Reference Values for carbohydrates and dietary fibre. EFSA Journal. 2010;8(3):1462. https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2010.1462
- Lowe DA, Wu N, Rohdin-Bibby L, et al. Effect of Time-Restricted Eating on Weight Loss in Adults. JAMA Intern Med. 2020. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7168819/
- 厚生労働省. アルコール健康障害対策—一般的な飲酒量とエネルギー. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000170795.html
- World Health Organization. WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour (2020). https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128
- Hatamoto Y, et al. Step counts, physical activity intensity, and health in adults: a review. Journal of Physiological Anthropology. 2020. https://jphysiolanthropol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40101-020-00222-0
- Rosmond R, Björntorp P. The role of stress in the pathogenesis of the metabolic syndrome. Obesity Reviews. 2005;6(1):25–40. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15655039/
- Cochrane Review. Hormone replacement therapy has no effect on body weight and cannot prevent weight gain at menopause. https://www.cochrane.org/CD001018/MENSTR_hormone-replacement-therapy-has-no-effect-on-body-weight-and-cannot-prevent-weight-gain-at-menopause