大豆イソフラボンと更年期:基礎知識と研究で示された変化(20〜30%の緩和の可能性)

40代から増える更年期のゆらぎに悩む女性へ。一部の研究で大豆イソフラボンに症状改善の可能性が示唆されていますが、個人差があります。食事での取り入れ方、報告される目安量、続け方と安全ポイントを編集部がやさしく解説します。詳しく読む。

大豆イソフラボンと更年期:基礎知識と研究で示された変化(20〜30%の緩和の可能性)

大豆イソフラボンの基礎知識:体で何が起きている?

40代後半〜50代前半の女性の約7割が何らかの更年期症状を感じるという報告があり、ほてりや発汗、気分の揺れが日常のリズムを乱しやすいことがわかっています[1]。医学文献によると、日本人女性の閉経年齢はおおむね50歳前後で、エストロゲンの急低下が自律神経や体温調節に影響しやすい時期に入ります[1]。研究データでは、大豆由来のフィトエストロゲンであるイソフラボンが、ホットフラッシュなどの更年期症状の頻度と重症度を平均20〜30%ほど緩和する可能性が示され、薬に頼りきらず生活の中で取り入れやすい対策として注目されています[2]。

とはいえ、「どれくらい食べればいいの?」「サプリは必要?」という疑問もつきもの。

大豆イソフラボンは主にゲニステインやダイゼインと呼ばれる成分の総称で、体内でエストロゲン受容体のうちERβに比較的選択的に結合し、弱いエストロゲン様作用を示します[4]。エストロゲンが過剰なときにはブレーキとして働き、低いときにはわずかな補助として働くことがあり、この双方向性が更年期の不調に穏やかに寄り添う理由のひとつと考えられています[4]。

もう一つのキーワードが「エクオール」です。腸内細菌がダイゼインからつくり出す代謝産物で、エストロゲン様作用がやや強く、日本人では約半数がエクオール産生能を持つと報告されています[5]。産生できる人はイソフラボンの体感が高まりやすい可能性が示唆されていますが[5]、食物繊維や発酵食品を含む多様な食生活を続けることが腸内環境の整いに寄与します。特別なことをいきなり始めるより、まずは毎日の食事に大豆食品を少しずつ積み重ねることが近道です。

どのくらい摂ればいい?食品で考える“目安量”

研究データでは、食事からのイソフラボン摂取が一日あたり**40〜50mg(アグリコン換算)**になると、更年期症状の緩和を感じる人が増える傾向が報告されています[5]。食品例でイメージすると、木綿豆腐なら約150gで25〜30mg程度、納豆1パックでおよそ35mg前後、調製豆乳200mlで20mg前後が目安です。製品や銘柄でばらつきはありますが、朝に豆乳、昼に味噌汁と冷ややっこ、夜に納豆というように一日を通じて少しずつ散らしていくと、無理なく目安に近づいていきます[3]。

味噌や醤油などの発酵大豆食品にもイソフラボンは含まれますが、塩分や量を踏まえると主力はやはり豆腐、納豆、豆乳。タンパク質も同時に摂れるため、筋肉の維持や代謝の面でも理にかなっています。食品からの摂取は吸収がゆるやかで、体へのなじみがよいという利点も見逃せません。

サプリは必要?国内ガイドラインと賢い使い方

食事が基本ですが、忙しい日が続く時期にサプリで補いたいと考える人もいます。国内の公的情報では、通常の食生活に加えてサプリで上乗せする場合、一日の追加摂取量を概ね30mg程度(アグリコン換算)までの目安にとどめ、長期大量摂取を避けるよう注意喚起がなされています[3]。妊娠・授乳中、甲状腺疾患の治療中、ホルモン療法を受けている、乳がん・子宮体がんの既往があるなど、ホルモン感受性に関わる背景がある場合は、使用前に医療者へ相談してください[3]。サプリを選ぶ際は、アグリコン換算量の明記や一日摂取目安の表示、第三者による品質確認の有無をチェックし、まずは低用量から数週間かけて様子を見るのが安心です。

エビデンスで読む:更年期症状への“効き方”と限界

研究データでは、イソフラボン補給(食品・サプリを含む)により、ホットフラッシュの頻度や重症度が平均20〜30%程度低減し、特に8〜12週継続した頃からの変化が観察される報告が目立ちます[2,5]。睡眠の質やいらだちの改善を訴える参加者も一定数いますが[5]、効果の個人差は大きく、全員に同じ結果が出るわけではありません。エクオール産生者で効果が出やすい可能性や[5]、体脂肪率、食事全体の質、ストレスレベル、睡眠時間といった生活要因が体感に影響することも指摘されています。

骨代謝や血中脂質への影響については、骨吸収マーカーの軽度改善[7]やLDLコレステロールのわずかな低下[8]といったポジティブな方向性が報告される一方で、臨床的に明確なアウトカム(骨折リスクの低下など)に直結するかは結論が分かれています。つまり、イソフラボンは万能薬ではありませんが、生活全体の土台を整える中で「体の波をならす」一助としては十分に期待できます。

安全性の論点:子宮内膜・乳房・甲状腺

公的評価や複数のレビューでは、食事レベルのイソフラボン摂取が子宮内膜を過度に厚くするリスクは高くないと報告されています[3]。乳がんに関しては、アジアの観察研究で、伝統的な大豆食品を日常的に摂る人ほど罹患リスクが低い傾向が示されていますが[5]、治療中・治療後の方は主治医の方針が最優先です。甲状腺については、ヨウ素が不足する環境ではイソフラボンが甲状腺機能に影響する可能性が指摘される一方、海藻を日常的に摂る日本の食習慣では問題が起きにくいとされています[3]。いずれも「ほどよい量を、食事中心で、長く続ける」ことが安全域と実感のバランスにつながります。

毎日続けるコツ:食べ方の設計図とライフスタイル

続けられる工夫はシンプルです。朝は牛乳の代わりに豆乳でカフェオレを作り、バナナときなこを加えたスムージーにしても満足感が上がります。昼は味噌汁に豆腐とわかめを足してタンパク質とミネラルを一度に確保し、サラダに蒸し大豆を散らすだけで噛みごたえもアップ。夜は主菜を魚や鶏にしつつ、副菜に冷ややっこや納豆を添えると、脂質・糖質のバランスを崩さずに一日の合計が目安量へ近づきます。外食が続く日は、コンビニで無調整豆乳と納豆、豆腐入りのスープを選ぶだけでも十分にリカバリー可能です。

食べるタイミングもポイントです。イソフラボンは一度に大量より、朝昼夕に分けたほうが血中濃度の振れ幅が穏やかになり、体感が安定しやすいと考えられます。タンパク質は体重1kgあたり1.0gを目安に、動物性と植物性をミックスすると必須アミノ酸のバランスが良くなります[9]。運動と組み合わせると、筋量維持や睡眠の質の向上に相乗効果が期待できるため、短時間でもいいので日中のウォーキングや軽い筋トレを取り入れてみてください。ストレスが強い日は、ぬるめの入浴と深い呼吸で自律神経に休む合図を送ることも、ほてりの波をならす助けになります。

編集部で行った読者ヒアリングでは、朝の豆乳置き換えと夜の納豆を2か月続けた人が「寝汗が減って目覚めが楽になった」と語るケースがありました。もちろん個人差はありますが、8〜12週は様子を見る前提で、食事・運動・睡眠をパッケージで整えると、小さな変化が積み上がりやすい実感が得られます。

よくある疑問に答えます:太る?家族は?どれくらいで実感?

「大豆は太るのでは?」という不安に対しては、量と全体のバランスが鍵だとお伝えしたいです。豆腐や納豆はエネルギー密度が低めで、満足感のわりにカロリーは控えめです。揚げ物や甘い味付けと組み合わせると総量が増えやすいので、薬味や出汁、発酵調味料を活かすとよいでしょう。「家族と一緒に食べて大丈夫?」については、多くの場合は問題ありません。子どもや男性が大豆を食べても健康上の利点が期待でき、過剰摂取を避けるという一般的な栄養のルールを守る限り安心です。「どれくらいで実感が出る?」は個人差がありますが、研究の傾向としては4〜8週で小さな変化を感じ、8〜12週で安定してくるケースが多い印象です[2]。日記アプリやカレンダーで、ほてり回数、寝汗の有無、気分の波、睡眠時間を簡単に記録しておくと、主観に頼り過ぎず変化を捉えやすくなります。

最後に、サプリと他の成分の重ね摂りにも触れておきます。ブラックコホシュやレッドクローバーなど植物性エストロゲン様のサプリを同時に複数使うと総摂取量が読みにくくなります。まずは食事を土台にし、どうしても補いたい時だけ単独成分を低用量から、という順番が安全です。気になる症状が強い、生活に支障が出る場合は、ホルモン補充療法を含めた選択肢を医療機関で相談することが、遠回りのようで最短の安定につながることもあります。治療とセルフケアは対立ではなく両輪です。

まとめ:小さな一口を、明日のわたしの味方に

更年期の波は止められなくても、波に揺られながら進む術は選べます。大豆イソフラボンは、食卓に乗せられる現実的な対策のひとつ。目安として**1日40〜50mg(アグリコン換算)**を、豆乳・豆腐・納豆を散らしながら積み重ね、8〜12週は変化を観察してみましょう[5,2]。必要に応じてサプリを低用量から慎重に、背景疾患がある場合は医療者に相談を。眠り、動き、食の三つをそろえたときに、体のリズムは少しずつ整っていきます。

今日の買い物かごに豆腐を一丁、明日の朝に豆乳を一杯。そんな小さな選択が、半年後のあなたの体温と気分を支えるかもしれません。いま感じている揺らぎに、どんな一口を添えますか。次に読むなら、更年期の睡眠課題を深掘りした更年期×睡眠戦略もおすすめです。

参考文献

  1. PubMed ID: 18799275. The prevalence of hot flushes and associated factors in Japanese women. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18799275/
  2. PubMed ID: 25316502. Systematic review/meta-analysis on soy isoflavones for vasomotor symptoms; time to effect typically ≥8–12 weeks. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25316502/
  3. 食品安全委員会: 大豆イソフラボンに関するQ&A(特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方・評価ポイントを含む)。https://www.fsc.go.jp/koukan/qa1508_qa_2.html
  4. Setchell KD, Cassidy A. Phytoestrogens overview(ERβ選択性と作用の概説). PMC: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2587438/
  5. Messina M et al. Health effects of soy isoflavones(更年期症状・エクオール産生に関するレビュー). PMC: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6062095/
  6. PubMed ID: 39708251. Meta-analysis of soy isoflavones on bone turnover markers in postmenopausal women. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39708251
  7. PubMed ID: 37758058. Effects of soy isoflavones on blood lipids in postmenopausal females: systematic review and meta-analysis. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37758058/
  8. 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2020年版). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。