40代女性が職場で一目置かれる「SBI法」3ステップ|部下も上司も動かす褒め方・叱り方

褒める・叱るを評価から情報交換に変えるSBI(状況・行動・影響)の3ステップを紹介。具体例・NG例、言い換えテンプレ、習慣化チェックリスト付きで、転機の女性が短期間で職場の信頼と成果を高める実務ガイドです。

40代女性が職場で一目置かれる「SBI法」3ステップ|部下も上司も動かす褒め方・叱り方

褒める・叱るの前提を変える:評価ではなく情報の交換

まず押さえたいのは、褒める・叱るを「相手の価値を裁く行為」から外すことです。組織行動や教育心理の研究では、行動と結果を結ぶ具体的な情報が学習を加速させると繰り返し示されています。[4,7] だから編集部は、褒める・叱るを「学習を促す情報のやりとり」と定義します。言い換えれば、相手の人格を持ち上げたり、逆に人格ごと否定する必要はありません。必要なのは、何が起き、どんな行動があり、その結果どうなったのかという観察と意味づけです。

この前提を実務に落とす道具が、状況・行動・影響で伝えるSBI(Situation-Behavior-Impact)です。実務研究では、SBI形式のフィードバックはあいまいさを減らし、防御的反応を抑えやすいと指摘されています。[5] 例えば「◯◯さんは仕事が早いね」と属性を褒める代わりに、「昨日の顧客デモで(状況)、事前に想定質問をまとめて配布してくれた行動があり(行動)、進行が滑らかになって受注率が上がったと感じた(影響)」と伝える。ここまで言えたら最後に、何を続けてほしいかの要望を一文添えます。編集部はこれをSBI+R(Request)と呼んでいます。

統計によると、世界の従業員エンゲージメントは2割強、日本は一桁台にとどまる年が続いています。 最新の国際調査では、世界平均はおよそ23%、日本は約6%という報告があります。[1,2] 国際的な調査では、意味のある称賛や建設的なフィードバックが定期的(少なくとも週1回程度)に届く人ほど、仕事への没入や離職意向の低下が有意に高まると示されています。[3] 研究データでも、具体的なフィードバックは学習と成果を促進しやすいと報告されています。[4] 編集部が複数のデータを読み解くと、共通するのは「うまく褒め、うまく叱ること」ではなく、「行動に結びついた情報を、適切なタイミングで返す技術」でした。私たちの世代が直面しがちな、個人戦からチーム戦への移行。ここでつまずくのは能力不足ではなく、たいていフィードバックの設計です。だからこそ、今日から使える“技術”としての褒め方・叱り方を、エビデンスと実例で整理します。

感情と事実を分けると、関係はむしろ温かくなる

「厳しいことを言うと関係が冷える」という不安は自然ですが、実際には逆のことが起きます。事実ベースで、いつ・どこで・どんな行動があったかを先に共有し、その後に自分の感じた影響をIメッセージで差し出すと、相手は「責められた」より「理解された」と受け取りやすくなるからです。Iメッセージはアサーティブな対話技法として体系化されており、相互理解を促す枠組みとして活用されています。[6] 編集部でも、会議のあとに「今日の進行で、議題を時間で切ったのが奏功して、決定が早かった」と具体を返す習慣を取り入れたところ、メンバー同士の称賛が増え、議論の質も上がりました。褒める・叱るの目的が明確化されると、関係はむしろ温かくなる。ここが最初の壁です。

褒め方の技術:再現性をつくる称賛

褒める目的は気分を良くすることではなく、再現してほしい行動を明確にすることです。メタ分析や総説では、形成的(フォーマティブ)で具体的なポジティブ・フィードバックが学習やパフォーマンスを促しやすい一方、抽象的な称賛は効果が薄いといわれます。[4,7] だからこそ、タイムリーに、具体的に、行動と影響を結び、再現したいポイントを言語化することが鍵になります。例えば、締切前に情報が錯綜し始めたとき、メンバーがSlackで関連スレッドをまとめ直した場面を想像してください。「助かった、ありがとう」で終えるのはもったいない。実務の技術としては、「今日15時の混乱時に(状況)、スレッドを一本化して要返答を3件に整理した行動があり(行動)、関係者の判断が5分で揃い、遅延が止まった(影響)。この『一本化→要返答抽出』は今後の緊急時にも続けてほしい(要望)」と結ぶ。こうして称賛は、相手の強みの輪郭をはっきりさせる技術に変わります。

タイミングも効果を左右します。教育・学習研究では、即時性の高いフィードバックは記憶のあいまいさを抑え、学習効果を高めやすいと整理されています。[7] 一方で、実務調査では、内容と伝え方が適切なら、多少時間が経ってもフィードバックの価値は大きく損なわれないことも示されています。[8] 編集部の運用は24時間以内を推奨ラインに設定。会議の閉会前、または当日中に一言返す。短くてもSBIの骨格があれば十分です。「午前のデモで」「質問リストを先回りして」「商談の流れが途切れなかった」。三つの骨を並べるだけで、相手は自分の強みを言語で持てるようになります。

ありがちNGを避ける:比較・性格・過剰演出

称賛の落とし穴は三つあります。まず、他者との比較は短期的なやる気を生む一方で、関係の摩耗や不安を生みがちです。次に、性格ラベルの称賛は再現性につながりにくい。最後に、大げさな演出は信頼を削りかねません。編集部は「事実は具体に、小さく、すぐ」を合言葉にしています。丁寧な一文の積み重ねが、組織の土台を変えていきます。

叱り方の技術:信頼を損なわずに軌道修正する

叱ることの目的は、恐れで動かすことではなく、期待と基準を再設定し、次の一手に合意することです。メタ分析では、否定的なフィードバック単体はパフォーマンスを下げるリスクがある一方、改善可能な具体行動に焦点を当て、支援とセットで提示した場合は、パフォーマンス向上につながるとされています。[9,7] 実務では、DESC(Describe-Express-Specify-Consequences)が役に立ちます。まず事実を描写し、次に自分の影響や懸念をIメッセージで伝え、取ってほしい具体的行動を明確化し、実施しない場合の影響や代替案を話し合う。人格や動機の憶測に踏み込まないのが鉄則です。[10]

例えば、リリース当日のテスト省略で障害が起きたケース。会議室を確保し、まずは「今朝のリリースで、最終チェックリストが未完了のまま進行され、障害が発生した」という事実から入ります。続いて「顧客影響と復旧対応の負荷が大きく、私もチームも困っている」と自分の感情と影響を共有する。次に「リリース前30分のチェックリスト完了と、完了時刻のSlack共有を必須としたい。実行の障壁はどこにあるか、一緒に洗い出したい」と具体行動に落とし込み、最後に「この運用に合意できれば再発リスクは下がるが、合意できない場合はリリース体制の見直しが必要になる」と影響を明確にします。ここで重要なのは、罰をちらつかせることではなく、合意した基準にチームで責任を持つ構図を作ることです。

場づくりと順序が9割:公開処刑を避け、準備する

叱り方の上達は、言い回しよりも前工程にあります。人前での指摘は避け、相手の顔を守る。議事の冒頭で「今日のゴールは原因探しではなく、再発防止策の合意」と宣言し、責任追及モードから学習モードへ空気を切り替える。準備の段階では、事実を時系列で一枚にまとめ、観測と推測を分けておく。ここまで整えると、会議中は相手を追い詰める必要がなくなります。学習を促進する安全な対話環境(心理的安全性)は、高い学習行動やアイデア提案と結びつくことが知られています。[11] 編集部の失敗談を一つ挙げるなら、過去にチャットで厳しめの指摘をしてしまい、意図せず全社チャンネルに流れたことがありました。以降、ネガティブなフィードバックは1on1で、記録は合意事項だけを共有チャンネルに残す運用に変え、関係の修復と再発防止を両立できました。

技術を習慣にする:頻度、比率、仕組み化

技術を身につけても、習慣にならなければ組織は変わりません。高業績のチームほど肯定と是正の比率が高いと示唆される研究もありますが(3:1〜5:1など)、その数値自体には議論があり、状況や課題により最適比率には幅がある点に注意が必要です。[12,13,8] これは「甘くする」という意味ではなく、良い行動を見過ごさずに増やす設計を先に置くという考え方です。編集部では、週1回の1on1に「称賛のSBI」と「改善のSBI」をそれぞれ一つ持ち寄るルールを導入しました。さらに、プロジェクトの節目に15分だけのリフレクションを設け、KPTのように「続けたい行動」「やめたい行動」を言葉にします。こうした軽い仕組みを回すと、叱る場面はむしろ減っていきます。なお、公的機関のガイダンスでも、サーベイ結果などのフィードバックは速やかに共有し、組織全体で結果を共通理解にする重要性が示されています。[16]

頻度の目安は、称賛はこまめに、是正は気づいたときに素早く、重いテーマは週次で対話を確保すること。忙しい日々でも運用できるように、テンプレートを簡素にします。SBIは「いつ・何を・どうだった」で三行、DESCは「事実・影響・要望・合意」で四行。メモアプリに定型を保存し、スマホからでも即座に書けるようにしておくと、技術は自然と体に馴染みます。最後に、フィードバックは一方通行ではないと決めてしまうことも大切です。上司から部下へ、だけでなく、同僚同士、部下から上司へも歓迎する。360度フィードバックの研究では、適切に設計された多面評価がパフォーマンス改善に結びつく可能性が示されています。[14]

“いい人疲れ”を防ぐ境界線:優しさと厳しさの両立

ゆらぎ世代の多くが抱えるのは、優しさで関係を守りたい気持ちと、成果への責任の板挟みです。解決のヒントは、優しさを「相手の長期的な成功を願う姿勢」と再定義すること。目先の気まずさを避けるのではなく、相手が次にうまくやれる情報と機会を差し出すことが本当の優しさです。同時に、あなた自身の時間と感情の境界線も守りましょう。夜間や休日のフィードバックは原則しない、緊急時の定義をチームで決める、合意した基準は全員に公平に適用する。長時間労働が健康に与える悪影響は公衆衛生研究でも一貫して指摘されており、境界線の明確化は個人と組織双方の持続可能性に資します。[15] 境界線が明確になるほど、叱る言葉は短く、褒める言葉は温かくなります。

まとめ:言葉で動かすのではなく、学習を設計する

褒め方・叱り方の技術は、相手を支配するための武器ではありません。働く私たちが安心して学び合うための設計図です。今日の一歩として、直近24時間の出来事から、具体的に称賛できる行動を一つだけ言葉にしてみてください。次に、引っかかっている課題があるなら、事実を書き出し、影響と要望を一文ずつ整えて対話の場を取りましょう。完璧な言い回しより、早い小さな試行がチームを前に進めます。あなたが差し出す短い一文は、誰かの強みを輪郭づけ、明日のミスを一つ減らす力を持っています。さて、最初のSBIは誰に、どの出来事で伝えますか。

参考文献

  1. Gallup, Inc. State of the Global Workplace: 2024 Report. Gallup. https://www.gallup.com/workplace/349484/state-of-the-global-workplace.aspx
  2. ギャラップ社 日本の従業員エンゲージメントは6%にとどまる(2024年プレスリリース). 共同通信PRワイヤー. https://kyodonewsprwire.jp/release/202406122055
  3. Gallup, Inc. Why the best managers give frequent, meaningful feedback. https://www.gallup.com/workplace/232105/coach-managers-give-frequent-meaningful-feedback.aspx
  4. Hattie, J., & Timperley, H. (2007). The Power of Feedback. Review of Educational Research, 77(1), 81–112.
  5. Center for Creative Leadership. SBI Feedback Model: How to Deliver Feedback That Works. https://www.ccl.org/articles/leading-effectively-articles/closing-the-gap-between-intent-and-impact/
  6. Gordon, T. (2001). Teacher Effectiveness Training: The Proven Program for Teachers. Three Rivers Press.
  7. Shute, V. J. (2008). Focus on Formative Feedback. Review of Educational Research, 78(1), 153–189.
  8. ビジネスリサーチラボ. フィードバックの適切な比率やタイミングに関する実務調査(2025/01/23). https://www.business-research-lab.com/250123-2/
  9. Kluger, A. N., & DeNisi, A. (1996). The Effects of Feedback Interventions on Performance: A Historical Review, a Meta-Analysis, and a Preliminary Feedback Intervention Theory. Psychological Bulletin, 119(2), 254–284.
  10. Agency for Healthcare Research and Quality (AHRQ). TeamSTEPPS 2.0 Pocket Guide(DESCスクリプト). https://www.ahrq.gov/teamstepps/instructor/essentials/pocketguide.html
  11. Edmondson, A. (1999). Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams. Administrative Science Quarterly, 44(2), 350–383.
  12. Losada, M., & Heaphy, E. (2004). The Role of Positivity and Connectivity in the Performance of Business Teams. American Behavioral Scientist, 47(6), 740–765.
  13. Brown, N. J. L., Sokal, A. D., & Friedman, H. L. (2013). The Complex Dynamics of Wishful Thinking: The Critical Positivity Ratio. American Psychologist, 68(9), 801–813.
  14. Smither, J. W., London, M., & Reilly, R. R. (2005). Does Performance Improve Following Multisource Feedback? A Theoretical Model, Meta-Analysis, and Review of Empirical Findings. Personnel Psychology, 58(1), 33–66.
  15. World Health Organization & International Labour Organization. (2021). Long working hours increasing deaths from heart disease and stroke: WHO, ILO. https://www.who.int/news/item/17-05-2021-long-working-hours-increasing-deaths-from-heart-disease-and-stroke-who-ilo
  16. 厚生労働省 こころの耳. 職場環境改善のための「快適職場チェックシート」と結果フィードバックのポイント. https://kokoro.mhlw.go.jp/comfort-check/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。