40代女性の8割が知らない「季節別運動法」で年中ムリなく体力キープする方法

厚労省データでは40代女性の運動習慣者は約2割。35〜45歳の忙しい女性向けに、WHO推奨の週150〜300分を季節に合わせて無理なく目指す春夏秋冬の運動メニューと、続けるための設計・安全管理の実践的ヒントをまとめました。

40代女性の8割が知らない「季節別運動法」で年中ムリなく体力キープする方法

なぜ季節で運動を変えるのか

厚生労働省「国民健康・栄養調査」では、40代女性で運動習慣がある人はおよそ20%[1]。一方で、WHOのガイドラインは週150〜300分の中強度の有酸素運動と週2回以上の筋力トレーニングを推奨しています[2]。編集部で各種データを読み解くと、達成を阻むのは「やる気の有無」だけではなく、気温・湿度・日照時間・花粉といった季節の条件が大きく関係していることが見えてきます[3]。

研究データでは、暑熱環境では心拍数や主観的きつさ(RPE)が上がり[4,5]、脱水が0.5〜2%進むだけでパフォーマンスは落ちやすいことが示されています[6]。逆に寒冷では筋の立ち上がりや柔軟性が低下しやすいことが報告されています[7]。さらに、ウェアラブル端末の集計では冬季に歩数が夏より約1割減る傾向も報告されています(地域差あり)[8]。同じメニューを一年中続けるより、季節に合わせて運動のかけ方を微調整したほうが、体にも生活にも馴染みやすいのです。

個人戦からチーム戦へと生活が切り替わるこの年代は、時間の自由度が低く、疲労の種類も増えがち。だからこそ、「季節を味方にする設計」に変えてみる。今回は、科学的根拠を踏まえつつ、春夏秋冬の実践メニューと、忙しくても続く組み立て方をまとめました。

医学文献によると、暑い環境では同じスピードで歩いても心拍数が高くなり、脱水が0.5〜2%進むだけでパフォーマンスは落ちやすくなります[4,5,10]。逆に寒冷下では筋温が低く、可動域が狭まりやすいため、ウォームアップに時間を割くほど怪我の予防に寄与します[11]。日照時間が短い冬は体内時計が後ろ倒しになりやすく、朝の活動の立ち上がりが鈍ることも知られています[12]。こうした季節要因は、運動強度の体感や回復時間、睡眠の質にも影響します。

研究データでは、暑熱順化は1〜2週間で進み、同じ運動で感じるきつさが下がることが示されています[13]。花粉の飛散が強い春は屋外での呼吸器刺激が増えやすく、ペース配分や時間帯の調整がカギに[14]。秋は気温・湿度が安定して持久系の適応が進みやすい季節で、長めの有酸素や筋力のベースアップに向いています[15]。つまり、季節のコンディションに合わせて強度・時間・場所を柔らかく変えることが、無理なく「週150〜300分」を積み上げる近道になるのです。

春夏秋冬の運動メニュー

春:アレルギーと寒暖差に優しい立ち上がり

春は気温が上がり始め、体を動かすハードルが下がりますが、花粉や寒暖差で呼吸や自律神経が揺れやすい時期でもあります。編集部では、まず30〜40分の速歩やゆったりジョグを、RPE(きつさの目安)5〜6/10で積み上げる方法を推します[16]。屋外がつらい日は、空気清浄機を回した室内で低衝撃のサイクリングや踏み台昇降に置き換えると呼吸が楽です。週のどこか2回は下半身と背中を中心に自重筋トレを入れ、スクワット、ヒンジ系、プッシュ・プルの基本動作を各10〜15回、丁寧なフォームで。これで週合計の有酸素は150〜180分、筋トレは2セッションを確保できます。花粉が強い日は早朝や雨上がりの時間帯を選ぶと体感がかなり変わります(地域や気象条件で異なります[17])。

夏:短時間・分割と室内活用で熱をいなす

夏は暑熱で心拍が上がりやすいため、時間帯と場所の選び方が成果を左右します[5]。朝の6〜8時か日没後に屋外で短いウォーク&ジョグを入れ、それ以外は室内で15〜20分のサーキットやバイクを分割して行うのが効果的です。例えば、週の合計150分を一度に長くやるのではなく、15〜25分のセッションを6〜8回に分ける。RPEは6〜7/10で息が上がるが会話はギリギリ可能、を目安にすると無理が出にくい[20]。筋トレはプランクやランジなど体幹・下半身中心に2〜3回/週。発汗が多い日は15〜20分ごとに200〜250mlの水分、長めの運動なら電解質も意識すると回復が早まります[21]。暑熱順化には1〜2週間要するので、序盤は欲張らずに[13]。気温や湿度が高い日は屋外の高強度は避け、プールでのウォーキングやスイムに置き換えると安全です。なお、短時間の分割実施でも健康効果は積み上がります[19]。

秋:持久力の伸びしろを育てる黄金期

秋は気温・湿度が落ち着き、長めの有酸素に適した季節です[15]。週に一度は40〜60分のウォークやジョグでやや長めの有酸素を確保し、平日は30分前後のテンポ走や坂道ウォークで心肺に軽い刺激を入れると、冬の土台になります。筋力はやや重ための負荷で8〜10回×3〜4セットをねらい、ヒップヒンジやローイング系で背面を強くする。これにより姿勢が安定し、肩や腰の不調予防にもつながります。日中の散歩は日光を浴びられるので、体内時計の整い方も実感しやすいはず[12]。家事や通勤での立ち動作と合わせて、1日の総活動量(NEAT)を底上げしていきましょう。

冬:ウォームアップ長め、屋内で粘る

冬は筋温が上がりづらく、関節も硬くなりがち。開始10分は関節可動域を広げる動的ストレッチと軽い昇温運動に使い、その後に有酸素や筋トレへ[11]。屋内ではサーキット形式が便利で、スクワット→プッシュアップ→ヒップヒンジ→ローイング→プランクのように全身を回して20〜30分。有酸素は踏み台昇降や室内バイクを20〜40分で積み上げ、天候のいい日は昼休みに10〜20分の外歩きで日光も取り入れると気分の落ち込みを和らげやすくなります[12]。屋外は路面の凍結や風による体感温度低下に注意し、手首・足首・首を冷やさない装備で。冬は頻度を落とさず時間を短く、を合言葉にするとリズムを崩しにくくなります。

続ける仕組みと安全管理:週・月の組み立て

ガイドラインの週150〜300分は、30分×5日でも、20分×8回でも、10分×15回でも到達できます[21,19]。編集部の「忙しい週の現実解」は、平日に20分×4回を確保し、週末のどちらかで40〜60分の少し長めのセッションを入れる形。こうすれば合計120〜140分+αに到達し、通勤や買い物での歩行を合わせれば基準をクリアしやすくなります。月単位では3週積み上げて1週やや軽め(デロード)にするとうまく回復できます[16]。季節の変わり目や繁忙期は、強度ではなく頻度を守ることを最優先にして、「短くてもやる」を合言葉に。

安全面では、夏は熱中症リスクに直結する暑さ指数(WBGT)が28以上の時間帯は高強度を避け、屋内や水中運動へ切り替えるのが賢明です[22]。冬は開始時の関節保護と転倒対策が鍵。通年で言えば、睡眠不足の翌日はRPEを1段階下げる、生理前後は関節の不安定感や体温変化を考慮して跳躍系を減らす、といった微調整が効きます[23,24,25]。栄養面では、運動日のタンパク質を体重1kgあたり1.2g程度目安に分けて摂ると回復がスムーズ[26]。水分は淡いレモン色の尿を目安にこまめに補いましょう[27]。痛みや持病がある場合は、かかりつけ医の指示を優先してください。

モチベーションは「意志」より「設計」。ウェアやシューズを玄関に出しておく、昼休みに歩く前提で弁当を短時間で食べられる構成にする、子どもの送迎をあえて少し手前で降ろして一緒に歩くなど、行動の前提を変えると継続率が跳ね上がります。ペアやチームで動くのが好きな人は、秋にハイキング、春にお花見ウォーク、夏は朝の公園でラジオ体操と短いジョグ、冬はオンラインの同時トレーニングなど、季節行事と絡めるとイベント感が出て楽しく続きます。

まとめ:季節が味方なら、運動はもっと自由になる

完璧な自分でいられない日が続く時こそ、季節に合わせて強度・時間・場所を柔らかく変えるだけで、運動は驚くほど生活に馴染みます。春は呼吸に優しい立ち上がり、夏は短時間と室内、秋は伸びしろの収穫、冬は温めて粘る。このリズムを意識すれば、WHOの週150〜300分は現実的な目標に変わります。

今日からできる一歩として、次の7日間の中に「20分の動く時間」を4回だけ先にカレンダーに入れてみませんか。あとは天気と体調を見て、屋内外や強度を入れ替えるだけ。季節は待ってくれませんが、いつでも私たちの味方にもなってくれます。あなたの今週の一歩が、来季のからだをつくります。

参考文献

  1. 厚生労働省. 令和4年 国民健康・栄養調査 結果の概要. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r04-houkoku.html
  2. World Health Organization. Guidelines on Physical Activity and Sedentary Behaviour. 2020. https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128
  3. Tucker P, Gilliland J. The effect of season and weather on physical activity: a systematic review. Public Health. 2007;121(12):909-922. https://doi.org/10.1016/j.puhe.2007.04.009
  4. 田中宏暁ほか. 温熱条件が成人の運動時心拍数に及ぼす影響(日本語資料). 日本体育学研究. 該当ページ(J-STAGE): https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjpehss/17/4/_contents/-char/ja
  5. American College of Sports Medicine. Expert Consensus Statement on Exertional Heat Illness. Med Sci Sports Exerc. 2021;53(12):2425-2444. https://doi.org/10.1249/MSS.0000000000002729
  6. スポーツウェザーラボ(ウェザーニューズ). 脱水が運動パフォーマンスに与える影響. https://www.sportsweather-labo.wni.com/heatstroke/effect-of-dehydration-on-exercise-peformance-2/
  7. 公益財団法人 日本スポーツ協会. 「冬のランニングは筋温を上げることが大切」インタビュー記事. https://media.japan-sports.or.jp/interview/34
  8. Chan CB, Ryan DA. Assessing the effects of weather conditions on physical activity participation using objective measures. Int J Environ Res Public Health. 2009;6(10):2639-2654. https://doi.org/10.3390/ijerph6102639
  9. Kenefick RW. Drinking Strategies: Planned Drinking Versus Drinking to Thirst. Sports Med. 2018;48(Suppl 1):31-37. https://doi.org/10.1007/s40279-017-0844-6
  10. Bishop D. Warm up II: performance changes following active warm up and how to structure the warm up. Sports Med. 2003;33(7):483-498. https://doi.org/10.2165/00007256-200333070-00005
  11. e-ヘルスネット(厚生労働省). 体内時計と光. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-004.html
  12. 環境省 熱中症予防情報サイト「熱中症ゼロへ」. 暑熱順化の基礎知識. https://www.netsuzero.jp/learning/le15
  13. 環境省. 花粉症環境保健マニュアル 2022. https://www.env.go.jp/air/osen/kafun/manual.html
  14. El Helou N, et al. Influence of weather on marathon running performance. Scand J Med Sci Sports. 2012;22(4):e208-e214. https://doi.org/10.1111/j.1600-0838.2012.01493.x
  15. American College of Sports Medicine. ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription. 11th ed. Wolters Kluwer; 2021.
  16. 環境省 花粉観測システム(はなこさん). よくある質問(1日の飛散パターンなど). https://kafun.taiki.go.jp/
  17. Piercy KL, et al. The Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition. JAMA. 2018;320(19):2020-2028. https://doi.org/10.1001/jama.2018.14854
  18. Borg G. Psychophysical scaling with applications in physical work and the perception of exertion. Scand J Work Environ Health. 1990;16(Suppl 1):55-58.(CR10スケールに関する代表論文)
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  20. 環境省. 暑さ指数(WBGT)とは. https://www.wbgt.env.go.jp/
  21. Fullagar HHK, et al. Sleep and athletic performance: the effects of sleep loss on exercise performance and physiological and cognitive responses to exercise. Sports Med. 2015;45(2):161-186. https://doi.org/10.1007/s40279-014-0260-0
  22. e-ヘルスネット(厚生労働省). 月経周期と健康. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-05-004.html
  23. Herzberg SD, et al. The effect of menstrual cycle and contraceptives on ACL injuries and laxity: a systematic review. Orthop J Sports Med. 2017;5(7):2325967117718781. https://doi.org/10.1177/2325967117718781
  24. Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine: Nutrition and Athletic Performance. J Acad Nutr Diet. 2016;116(3):501-528. https://doi.org/10.1016/j.jand.2015.12.006
  25. Armstrong LE, et al. Urinary indices of hydration status. Int J Sport Nutr. 1994;4(3):265-279.(尿色法の基礎研究)

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。