30代・40代女性の休職・復職で損しない「傷病手当金」申請の3ステップ

35〜45歳の働く女性へ。体調・収入・職責を同時に整える休職・復職の3ステップを、傷病手当金の期限(最長1年6か月)や申請、主治医・会社への伝え方と共に、実例とチェックリストでわかりやすく解説。今すぐチェックして不安を整理しましょう。

30代・40代女性の休職・復職で損しない「傷病手当金」申請の3ステップ

休職を決める前に整えたい視点

厚生労働省「労働安全衛生調査」では、仕事に強い不安・悩み・ストレスがある人が約5割にのぼります [1]。編集部が公開データや就業規則モデルを読み解くと、休職・復職は「特別な誰か」だけの出来事ではなく、働く誰もが出会い得るキャリアの通過点でした。健康保険の傷病手当金は最長1年6か月(支給開始日から通算)[2]という制度がある一方、実際の現場では「何から始めればいいのか」「どこまで会社に伝えればいいのか」で立ち止まりやすいのが現実です。とくに35〜45歳は家庭・職場での役割が重なり、体調、収入、職責の三つを同時にマネジメントする必要が出てきます。この記事では、休職と復職のプロセスを、感情の揺らぎを否定せず、しかし手続き面では迷子にならないように、順序とコツを整理していきます。

休職の判断は、気合や根性ではなく、情報と記録で支えるのが近道です。まず押さえたいのは、体調の客観視です。睡眠時間が短くなっている、朝の起き上がりに1時間以上かかる、集中力が15分持たないなど、日々の変化を記録しておくと、医療機関での相談が具体化します。研究データでは、睡眠の質低下や不足が注意力・実行機能の低下と関連することが示されており、「数字で語る」準備が、早めの受診や職場との調整を助けます [4]。

次に、制度とお金の見取り図を描きます。休職は労基法に直接の規定があるわけではなく、就業規則に基づく会社の制度として運用されます [5]。適用範囲や最長期間、休職中の給与の有無、賞与・昇給・評価の扱い、社保や住民税の納付方法など、会社ごとに差があります。ここで健康保険の**傷病手当金(待期3日、4日目以降支給、標準報酬日額の3分の2相当)**の条件を確認し [3]、家計のキャッシュフロー表を作ると、焦りが少し落ち着きます。制度の基礎は公的サイトで確認し、詳細は人事・労務に遠慮なく尋ねてください。基礎知識の整理には、編集部の関連記事「傷病手当金の基礎知識」も参考になります。

そして、関係性の地ならしです。伝える範囲とタイミングを決めておくと、心の負荷が下がります。直属上司、人事、産業医の誰に、どこまで話すか。診断名は出さずに「就業に関する能力や配慮事項」を中心に伝える方法もあります。情報の出し方を自分で選べると感じられるだけで、コントロール感が戻ってきます。社内のストレスチェックや産業医制度の活用ポイントは「ストレスチェックの活かし方」「産業医面談の準備ガイド」も合わせてどうぞ。

休職のプロセス:申請から休養設計まで

休職は一気にすべてを決める必要はありません。医療、会社、生活の三つの線路を並行して、少しずつ進めていきます。最初の行動は、体調に気づいた自分を責めずに受診することです。内科やメンタルヘルスの外来で現状を伝え、必要に応じて医師の意見書をもらいます。書類の名称は会社によって「診断書」「意見書」「就労可否意見」など差がありますが、重要なのは就業可否と必要な配慮が記載されること。ここが会社側の判断材料になります。

会社への申請は、就業規則に沿って行います。提出書類、提出先、休職開始日、連絡方法、期中の報告頻度を上司や人事とすり合わせましょう。業務の引き継ぎは、すべてを完璧に整えることにこだわらず、進行中の案件、期限、関係者、リスクの四点を短く共有するだけでも、現場は動きます。**「完璧な引き継ぎ」より「早めの休養」**を優先することが、結果として回復を後押しする場面は少なくありません。

経済面では、在籍のまま給与が止まる期間がある会社も多く、健康保険の傷病手当金の出番が来ます。待期3日が必要で、4日目から支給対象になります [3]。休職開始にあわせて、会社と健保に請求の段取りを確認しておくと、資金繰りの不安が減ります。年休が残っているなら、休職前に一部を使って待期をカバーする運用を許容する会社もあります。待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含まれるため、給与の支払い有無は関係ありません [3]。取り扱いは規程次第なので、会社のルールを必ず確認してください。

休養期の過ごし方は、ただ横になるだけではありません。医師の指示に沿い、**「休む技術」を身につける時間だと捉え直します。起床・就寝のリズムを固定し、日中は短い散歩や湯船に浸かるなど自律神経を整える行動を少量から積み重ねます。SNSやニュースを断続的に見続けると神経が高ぶりやすいため、視覚刺激を減らす工夫も役立ちます。生活を仕事時間と同じブロックで埋めるのではなく、体調の波を前提に「できたらラッキー」**を積み上げる設計が回復を後押しします。

復職のプロセス:戻り方のデザイン

復職は「元に戻る」ことではなく、「新しい働き方の設計」です。合図は三つ。体調が安定して日常生活がほぼ自立していること、医師が就労に一定のゴーサインを出していること、会社側が受け入れ態勢を整えられることです。どれか一つでも欠けているなら、慌てず整える時間を取りましょう。

産業医や人事との合意形成は、復職の土台です。面談では、就業上の配慮事項を具体化します。例えば、始業時間の後ろ倒し、短時間勤務、段階的な業務量、対人負荷の低いタスク配分、テレワーク併用、定期的な面談枠の設定などです。ここで大切なのは、診断名ではなく「業務上の要件」に翻訳して話すこと。業務で困る具体場面、避けたい条件、代替案を準備しておくと、合意を得やすくなります。

リワーク(復職支援)プログラムを活用する選択肢もあります。医療機関や地域で提供されているデイケアでは、生活リズムの再構築、対人コミュニケーション、注意・記憶のトレーニング、職場場面のロールプレイなどを行います。**「仕事の形に体力と集中力を慣らす」**時間を経ることで、復職直後の燃え尽きを防ぎやすくなります。公的・医療のリワークの有無は自治体や医療機関の情報を確認してください。

実際の復職はスモールスタートが鉄則です。週数日から入り、就業時間を短く設定し、負荷を段階的に上げていきます。最初の2週間は日常のリズムに戻ることを最優先にし、その後に難易度の高いタスクを再開します。**「できること」ではなく「続けられること」**を基準にラインを引くと、再発の確率が下がります。家族やチームにも、段階的復職の設計を共有しておくと、期待値のすり合わせが進みます。更年期と重なる時期は、体調の波も読み込みながら調整を。関連記事「働きながら更年期と向き合う」も参考にしてください。

コミュニケーションの鍵は“短く・具体的”

復職面談や定期フォローでは、結論から伝える習慣が役立ちます。例えば「午前中の集中が落ちやすいので、レビュー作業は午後に配置してほしい」「対面ミーティングは1日2本まで」など、時間・頻度・作業の種類で表現できると合意が得やすくなります。自分を守る線引きはわがままではなく、持続可能性の設計です。

評価とキャリアの“速度”を合わせる

復職直後の評価やポジションに不安が出るのは自然なことです。ここで覚えておきたいのは、短期の速度を落としても中長期の価値は落ちないという視点です。役割が変わっても、スキルや知見は失われません。むしろ、セルフマネジメントの経験がリーダーシップの質を高めることは、実務でも多く見られます。上司との1on1では、短期の期待値と中期の成長課題を分けて合意しましょう。

つまずきを減らすコツと再発予防

復職後3か月・6か月の節目に、働き方のチューニングを入れると安定度が増します。最初の3か月は、習慣化したい行動(睡眠、運動、休息、食事)の「最低限ライン」を決め、予定に組み込みます。6か月では、業務範囲と責任の拡張を検討し、できることを少しだけ広げます。重要なのは、うまくいかない日の設計を持っておくこと。睡眠が崩れたら翌日の会議数を一つ減らす、頭が回らない日は事務作業に切り替えるなど、代替プランを事前に決めておくと揺らぎに強くなります。

家庭の負担設計も、復職の成功率を左右します。家事・育児・介護が重なる世代だからこそ、頼れる資源を可視化しておきましょう。外部サービスのスポット利用、家族の担当替え、時短家電の導入、買い物の定期便化など、小さな工夫の積み重ねが体力の底上げにつながります。自分だけが抱え込まない仕組みを先に作ることは、職場への貢献を守る行為でもあります。

つまずきが出たときは、早めに言語化して微調整することで、大きな不調に発展しにくくなります。「朝の通勤がつらい」「会議後に動けなくなる」など具体的な場面として捉えなおし、産業医や上司に相談して配置や時間の工夫を試します。調整は一度で終わらなくて大丈夫。季節やプロジェクトのフェーズで最適解は変わります。変えて、試し、学ぶプロセスを回し続けること自体が、再発予防になります。

よくあるQ&Aを先回りで

休職理由はどこまで伝えるべきかという質問には、**「就業能力と配慮事項を中心に」**と答えます。診断名の開示は必須ではありません。復職時期は誰が決めるのかについては、主治医の意見、本人の希望、会社側の受け入れ状況の三つがそろったときに現実的な日付が見えてきます。給与や評価の取り扱いは規程次第なので、早い段階で書面で確認を。休職中の副業可否も会社規程によって異なり、治療との両立の観点からも慎重な検討が必要です。疑問が湧いたらメモにして、人事・産業医・主治医の誰に聞くのが適切かを振り分けると、答えに早くたどり着けます.

まとめ:あなたの速度で戻っていい

休職・復職は「弱さの証明」ではなく、働き続けるための戦略的ピットインです。痛みも迷いも含めて、ここまでよく踏ん張ってきました。もし今、出口が見えなくても、手続きという地図と、記録というコンパスを持てば、景色は少しずつ開けていきます。今日できる一歩は、体調の記録を始めること、就業規則の休職条項を読むこと、相談先の連絡先をスマホに入れること。この三つだけでも、明日の安心感は変わります。戻り方に「正解」はありません。あなたの速度で、あなたの形で。伴走が必要になったら、社内の支援制度や医療、家族、友人を遠慮なく頼ってください。編集部も、関連ガイドで引き続きサポートします。

参考文献

  1. 厚生労働省 こころの耳「労働者のメンタルヘルスに関する情報(労働安全衛生調査)」 https://kokoro.mhlw.go.jp/nowcat/now-mhlw/page/47/#:~:text=%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%82%84%E8%81%B7%E6%A5%AD%E7%94%9F%E6%B4%BB%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E5%BC%B7%E3%81%84%E4%B8%8D%E5%AE%89%E3%80%81%E6%82%A9%E3%81%BF%E3%80%81%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%84%9F%E3%81%98%E3%82%8B%E4%BA%8B%E6%9F%84%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E3%81%AF55
  2. 厚生労働省「健康保険法の改正(傷病手当金の支給期間の通算化 等)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html#:~:text=%E5%82%B7%E7%97%85%E6%89%8B%E5%BD%93%E9%87%91%E3%81%AE%E6%94%AF%E7%B5%A6%E6%9C%9F%E9%96%93%E3%81%8C%E3%80%81%E6%94%AF%E7%B5%A6%E9%96%8B%E5%A7%8B%E6%97%A5%E3%81%8B%E3%82%89%E3%80%8C%E9%80%9A%E7%AE%97%E3%81%97%E3%81%A6%EF%BC%91%E5%B9%B4%EF%BC%96%E3%81%8B%E6%9C%88%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  3. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/#:~:text=4%E6%97%A5%E7%9B%AE%E4%BB%A5%E9%99%8D%E3%81%AE%E4%BB%95%E4%BA%8B%E3%81%AB%E5%B0%B1%E3%81%91%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E6%97%A5%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E6%94%AF%E7%B5%A6%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%20%E5%BE%85%E6%9C%9F%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E6%9C%89%E7%B5%A6%E4%BC%91%E6%9A%87%E3%80%81%E5%9C%9F%E6%97%A5%E3%83%BB%E7%A5%9D%E6%97%A5%E7%AD%89%E3%81%AE%E5%85%AC%E4%BC%91%E6%97%A5%E3%82%82%E5%90%AB%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%80%81%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E3%81%AE%E6%94%AF%E6%89%95%E3%81%84%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%80%82
  4. 日本睡眠学会関連論文(J-STAGE)「睡眠と認知機能・パフォーマンスへの影響」 https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jjpm/47/9/_contents/-char/ja/#:~:text=%E5%8F%8A%E3%81%BC%E3%81%99%E5%BD%B1%E9%9F%BF%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E6%A6%82%E8%AA%AC%E3%81%97%E3%81%9F,%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AF%2C%E5%8D%81
  5. 真銀座法律事務所「休職制度の法的根拠と就業規則の位置づけ」 https://www.shinginza.com/db/01048.html#:~:text=%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%88%E4%BD%BF%E7%94%A8%E8%80%85%E5%81%B4%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AF%E4%BC%91%E6%A5%AD%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%EF%BC%89%E3%80%82%E5%9B%BD%E5%85%AC%E6%B3%95%E3%81%A8%E7%95%B0%E3%81%AA%E3%82%8A%EF%BC%8C%E5%8A%B4%E5%83%8D%E5%9F%BA%E6%BA%96%E6%B3%95%E3%81%AB%E3%81%AF%E4%BC%91%E8%81%B7%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%E7%9B%B4%E6%8E%A5%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%82%93%E3%81%8C%EF%BC%8C%E9%80%9A%E5%B8%B8%E5%B0%B1%E6%A5%AD%E8%A6%8F%E5%89%87%E3%81%AB%E8%A6%8F%E5%AE%9A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

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編集部

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