**ノーファンデは“塗らない”ではなく“仕立てる”
紫外線の約95%はUVAで[1]、SPF30はUVBを約97%、SPF50は約98%カットするとされます[2]。 肌が“きれいに見える”背景には、光の当たり方と色のムラの少なさがあり、これはファンデーションに限らず、下地やコンシーラー、ハイライトの使い方でも十分にコントロールできます。公開データや皮膚科学の知見から読み解くと、ノーファンデは我慢でも手抜きでもなく、要点をおさえた“配分”の技術です[3]。編集部が実践とデータを突き合わせて示唆されたのは、厚塗りの代わりに、色ムラの原因へ直球でアプローチし、光を味方にすること。それが、ゆらぎやすい世代の現実と比較的両立しやすいメイクだと考えられます。
ノーファンデは“塗らない”ではなく“仕立てる”
ファンデーションを引き算すると聞くと、素肌勝負の勇気試しのように感じるかもしれません。けれど、ノーファンデメイクの真意は、面で覆うのをやめて、点と線で仕立てること。面での均一感は下地の補正力と光の拡散で、気になる部分はコンシーラーのピンポイントで、全体のツヤはハイライトで整える。つまり役割分担を細かくする発想です。医学文献でも、日常の見た目年齢に影響するのはシワやシミの数だけでなく、顔全体の均一性と反射特性と示されます[3]。隠すのではなく、ムラを小さくし、乱反射を減らし、必要なところにだけ視線を集める。ノーファンデはそのための合理的な設計図です。
まず“仕込み”が8割:水分・油分・紫外線カットのバランス
仕上がりの多くはスキンケアで左右されます。洗顔はぬるま湯で皮脂を落としすぎないようにし、化粧水と乳液で角層に水分と油分をバランスよく入れて、肌表面をなめらかに整えます。ベタつきが残るとヨレの原因になるため、手のひらで軽く押さえてから1分ほど置いて“定着の間”をつくるのがコツです。そのうえで日焼け止めを顔全体にムラなく塗ります。研究データではUVBの到達を数値化するSPFが日焼けによる赤み(サンバーン)の抑制に寄与することが示されます[4]、SPF30で約97%、SPF50で約98%のUVBをカット[2]。一方で、波長が長く窓ガラスも透過するUVAは日常の暴露で大きな割合を占めるため[1]、PA表記の高いものを選ぶと、将来の色ムラ要因に備えやすくなります[4]。
“均一さ”は色で整える:赤み・くすみ・影の補正
均一に見せるには、肌色の三大ノイズである赤み、黄ぐすみ、影を小さくします。赤みが気になる頬や小鼻には緑がわずかに入ったトーンアップ下地を薄くのせ、黄ぐすみにはラベンダーやブルー系の補正下地を頬の高い位置にほんのり重ねます。目の下の青っぽい影はピーチやオレンジ寄りのコレクターを米粒大で点置きし、境目だけを指先で温めてぼかすと、厚みを出さずに血色が戻ります。ここまでで“面”の印象はおおむね整うため、ファンデーションの使用が減る場合があります。
手順とテクニック:一日中“素肌っぽい”を保つ
ノーファンデでも崩れにくく、近くで見ても自然な仕上がりにするには、順番と配分が鍵になります。まず日焼け止めを顔の内側から外側へ向かって薄く広げ、フェイスラインは手に残った量で十分です。トーンアップ下地は頬の高い位置と鼻筋の根元に少量、ここで明るさを作っておくと、後のハイライトは控えめで済みます。次にコレクターで影の色を中和し、コンシーラーは“気になる箇所だけ”に点で置きます。具体的には、シミの中心、赤みの強い小鼻の溝、ニキビ痕の一部に絞ってチップを縦に立てるように置き、周囲の未塗布部分と馴染ませるようにブラシでタップ。ここで面で塗らないことが、素肌感の分かれ道です。仕上げに、皮脂が出やすいTゾーンと小鼻の横にだけ微粒子のルースパウダーを薄く。目の下は乾燥しやすいので、粉は基本的に乗せない方が小ジワが目立ちにくくなります。ツヤを戻したいときは、クリームハイライトを頬骨の上、まぶたの中央、鼻先手前に指で軽く叩き込むと、光の“逃げ道”ができて清潔感が生まれます。
コンシーラーは“点”、パウダーは“小面”
気になるところを全部消そうとすると、かえって厚みが出て老け見えにつながります。編集部でテストした際も、点置きで境目だけなじませる方法が比較的素肌に見える傾向があり、オンライン会議での映りが安定することがありました。パウダーは広範囲にのせると光を奪い、乾燥している部分を強調しがちです。テカりやすい場所だけに小面積でのせると、皮脂は抑えつつツヤは残り、質感のコントラストが程よく保てます。
“待つ”と“オフ”で崩れは減る
塗布直後のベタつきをそのまま重ねると、ヨレやすくなります。各工程の合間に数十秒でもいいので待つこと、そしてティッシュで軽く押さえて余分な油分を一度オフしてから次に進むこと。この二つで持続性が改善することが期待できます。仕上げに微粒子のミストを顔全体にふんわり纏わせると、粉っぽさが消えてフィット感が上がります。外出中は、皮脂が気になるタイミングであぶらとり紙で押さえ、パウダーを少量。日差しの強い季節は、パウダータイプのUVやスティックを使って鼻筋や頬の高い位置に軽く重ねれば、ノーファンデの軽さを壊さずに日中のUVリカバーがしやすくなります[2]。日本気象協会などの公開情報でも春から夏にかけての紫外線量は冬より明らかに増えるため、屋外時間が長い日は特に意識したいポイントです[5]。
40代の悩みに寄り添う「色」と「光」の処方
ゆらぎ世代の肌は、同じ悩みでも日によって濃淡が変わります。だからこそ、固定の“正解”ではなく、毎朝の鏡に合わせて微調整できる処方を覚えるのが近道です。くすみが気になる日は、頬の高い位置へ薄くラベンダー下地を乗せ、顔の内側は素肌のままにして立体感を残します。赤みが強い日は、小鼻と頬中央だけをミント系で落ち着かせ、全顔は透明のUVのみにして薄さを担保。シミが気になるときは、コンシーラーの色を自分の肌よりわずかに暗めにして“点”で中心に置き、縁をぼかして周囲の明るさと馴染ませます。こうすると、カバーしたのに明るさは奪わない、視線誘導のメリハリが生まれます。
補色は“ほんの少し”で効く
赤には緑、黄ぐすみにはラベンダー、青にはオレンジという補色の関係は、教科書のようでいて日常でも役に立ちます。ただし、色で隠そうとしすぎると、不自然さはすぐに表面化します。肌色の上で“ほぼ無色に見える”くらいの極薄を狙い、境目だけを丁寧にぼかすこと。下地やコレクターは“色をのせる”ではなく“色を中和する”道具だと捉えると、必要量がぐっと減り、ノーファンデの透明感が保てます。
毛穴と小ジワは埋めない、ぼかす
毛穴や小ジワに固形の下地を押し込むと、一時的にフラットに見えても、時間が経つと段差が目立ちやすくなります。シリカやボール状パウダーが入った“ぼかし系”のプライマーを、頬の内側から外側へ薄くひとなでして、光の拡散で目立ちにくくします。目の下の小ジワゾーンは油分を増やすより、保湿ミストを軽く吹きかけてから指の腹で押さえ、表面をなめらかにしておく方がメイクのノリは長持ちしやすいです。時間がある日は、仕上げにごく細い影を鼻筋の脇や目尻下に忍ばせると、立体感が生まれ、全体の印象が引き締まります。
生活リズムも“ベースメイク”になる
肌は毎日のコンディションの鏡です。睡眠のリズム、塩分やアルコールの摂り方、水分補給、ストレスの質まで、どれも翌朝の“ノリ”に関わります。睡眠が短い日はむくみやすいので、朝の洗顔は冷たすぎない水でやさしく流し、首筋やこめかみを軽くほぐすと血色が戻り、色補正の量を減らせます。日中のPC作業が多い日は目の負担で目周りの影が強く出るため、コンシーラーに頼る前に温めたタオルを1分まぶたに置くと、血行が上がって色が引き、結果として“点”の面積が小さくなります。メイクそのものを上手にする以上に、崩れの原因を前倒しで小さくする意識が、ノーファンデの成功率を高める助けになります。
朝の“3分ルーティン”で続けられる
忙しい朝に現実的なのは、手順を減らすことではなく、塗る面積を減らすことです。洗顔後に水分・油分を馴染ませ、無色のUVを顔全体に薄く。頬の高い位置だけトーンアップ下地で明るさを仕込み、目の下の影にだけピーチ系コレクターを点で置きます。小鼻の赤みをひと呼吸で整えたら、Tゾーンにパウダーをさっと。頬骨の上にクリームハイライトを少し忍ばせ、眉とまつ毛、血色の合うチークとリップで仕上げます。ここまでで鏡の前に立って3分前後。日中のタッチアップはあぶらとり紙とプレストのUVパウダーで十分です。
編集部の小さな実験と気づき
編集部では、ファンデありの日とノーファンデの日を同じカメラ・同じ照明で比べてみました。結果、ノーファンデの日の方が肌の凹凸はわずかに見える一方で、表情の動きにともなうツヤの再現性が高く感じられることがあり、動画会議での“生き生きした感じ”が伝わりやすいという印象を複数名が持ちました。これはあくまで主観的な観察ですが、厚みを出さない設計が表情の影を増やしすぎず、光の動線を確保したためと考えています。
さらに深めたい人へ:読み合わせと選び方
紫外線の基礎や季節ごとの対策を押さえたい人は、UVの選び方や塗り直しのアイデアをまとめた特集記事も参考になります。編集部の「日焼け止めの選び方・最新ガイド」では、SPFとPAの違いやテクスチャー別の使い分けを解説しています。毛穴の凹凸が気になる場合は「大人の毛穴ケア入門」を、むくみ由来のくすみが気になる日は「水分補給のコツ」や「眠りの質を上げるナイトルーティン」も役立つはずです。顔全体の血色と表情を底上げしたい人は、「朝1分のフェイスマッサージ」で巡りを整えてからメイクに入ると、ノーファンデ設計でも“今日の顔”が扱いやすくなります。
まとめ:塗らない勇気ではなく、選ぶ技術を
ノーファンデは、素肌を晒す決意ではなく、必要な場所に必要なだけ手をかける技術です。水分・油分・UVで土台を整え、色のノイズを最小限に中和し、点でカバーして小さく固定し、光でツヤを戻す。この流れが身体に馴染めば、忙しい朝でも無理なく続けられます。揺らぐ日はあります。それでも、今日の肌に合わせて配分を変えられる柔らかさがあれば、メイクは味方であり続けます。
参考文献
- World Health Organization. Radiation: Ultraviolet (UV) radiation — Questions and Answers. https://www.who.int/news-room/questions-and-answers/item/radiation-ultraviolet-%28uv%29/
- The Skin Cancer Foundation. The Skin Cancer Foundation offers tips on choosing and using sunscreen (Japanese). https://www.skincancer.org/ja/press/the-skin-cancer-foundation-offers-tips-on-choosing-and-using-sunscreen/
- What is skin quality? A review of attributes of healthy-looking skin. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8231670/
- 東京都健康安全研究センター. 日焼けと日焼け止めについて(SPF・PAの基礎解説). https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/kj_shoku/cosme/suntan/
- 日本気象協会 tenki.jp. 日本では春〜初秋に紫外線が強まり、4〜9月に年間の約70〜80%が降り注ぐ解説記事. https://tenki.jp/forecaster/k_shiraishi/2023/05/03/23019.html