【週150分でOK】40代女性が知らない更年期症状を和らげる運動のコツ

35〜45代女性向け:更年期の運動ポイントを、強度や回復、骨・心臓・骨盤底の配慮などの観点から整理。150分/週の目安に沿った、ほてりや睡眠の乱れに備える実践的なヒントを丁寧にまとめました。今すぐチェック。

【週150分でOK】40代女性が知らない更年期症状を和らげる運動のコツ

更年期と運動の関係:数字で見る現実

医学文献によると、閉経移行期にはエストロゲンの低下に伴い、自律神経や血管反応が揺れやすくなります。研究データでは、運動が直接ほてりの頻度を下げる効果は一貫しない一方で、抑うつや不安の軽減、睡眠の質、体力、生活の質(QOL)の改善は比較的安定して報告されています[8,9]。つまり、熱感そのものがゼロにならなくても、つらさの総量を減らすことには貢献する、という見方が現実的です。

骨の観点では、閉経前後の骨密度は年1〜2%の低下が一般的で、脊椎や股関節ではさらに大きくなるケースも指摘されています[2,3]。ここに体重支持の運動や筋力トレーニングを組み合わせると、骨密度の維持や転倒リスクの低減が期待できるという報告が重なります[3,6]。心血管の観点でも、加齢とホルモン変化が重なる時期は血圧や脂質プロフィールが変動しやすく、中強度の有酸素運動を定期的に行う人ほど心血管イベントのリスクが低いという傾向が確認されています[6,11]。

数字は背中を押してくれますが、日々の実装はもっと繊細です。更年期は同じ人の中でも日によってコンディションが変わるからです。ここからは、失敗しないための注意点を、身体の安全と続けやすさの両面から具体化します。

注意点:強度・回復・からだの土台

安全な強度の目安と心臓への配慮

強度は数式より体感で管理すると失敗が少なくなります。目安は会話のしやすさで判断する「トークテスト」。中強度は、短い文なら話せるが、歌うのは難しい程度です[7]。数値で把握したい場合は、最大心拍数に対しておよそ64〜76%の範囲が中強度に当たるとされますが、ほてりが強い日や寝不足の翌日は、同じ心拍でも負担が大きいと感じやすいのが更年期の現実です。そんな日は迷わず強度を一段落として、歩行、サイクリング、ゆるい水中運動などに切り替えます。

胸の圧迫感、非日常的な息切れ、冷や汗を伴うめまい、動悸の急な悪化などが出たら、その場で中止して休みましょう。研究データでは、ウォームアップとクールダウンを各5〜10分追加するだけで循環器系の負荷は緩和しやすいとされています。更年期は自律神経が過敏になりやすい時期。始まりと終わりを丁寧にすることが、全体の安全性を底上げします。

筋肉・腱・関節は「回復」で強くなる

エストロゲンは筋肉や腱の修復にも関与します。低下期には筋肉痛が長引いたり、腱の違和感が出やすくなることがあり、回復の設計が鍵になります[10]。重りを扱う日と扱わない日を交互にし、同じ部位を強く使う間隔は少なくとも48時間空けると無理が減ります。関節がこわばる朝は、可動域を広げる動きをゆっくり入れてからメインの運動に移るだけで、その日の痛みが軽くなることが珍しくありません。

体温調節に不安がある日は、高温多湿の環境を避けます。室内であっても扇風機や送風で空気を動かし、運動前後と運動中にこまめに水分をとることが、心拍や体温の暴走を抑えます。カフェインやアルコールがほてりの引き金になる人は、運動2〜3時間前から控えるなど、トライ&エラーで自分の引き金を見つけておくと、当日の選択が楽になります。

骨・骨盤底・栄養の見直し

骨密度の維持には、体重を支える運動と筋力トレーニングの組み合わせが効果的と報告されています[3]。階段の上り下り、速歩、坂道歩行、軽いジャンプを含む動きは骨への刺激になりますが、尿漏れや骨盤底の違和感がある時は高衝撃を避け、骨盤底のリクルート(やさしく締める意識)を先に整えると安心です。呼吸を止めずに、吐く息に合わせてお腹と骨盤底をふっと寄せるように動くと、腹圧の急上昇を避けられます。

栄養面では、閉経前後の出血パターンが不規則になる人は鉄不足に傾きやすく、息切れや倦怠感、運動中の頭痛につながることがあります。朝起きた時点で強いだるさがある、立ちくらみが増えたなどの変化が続くなら、運動の強度を落とし、食事の見直しや受診も選択肢に入れてください。骨のためのたんぱく質、カルシウム、ビタミンDは、運動の効果を受け止める「素材」です。食事で不足しがちな日は、日中の間食に牛乳やヨーグルト、豆製品、魚を合わせるなど、小さな足し算で十分に差がつきます。

はじめやすく続けやすい運動プラン

1週間の組み立てとリスク管理

目標はあくまでガイドラインの週150〜300分の中強度[5]。最初から満点を取りにいくより、10〜20分の短時間を積み重ねるほうが、更年期の波にフィットします[7]。例えば、平日は速歩やサイクリングなどの中強度を20分程度、週末に少し長めのセッションを加えると、合計時間が自然に積み上がります。週2〜3回は筋力トレーニングを入れ、下半身の押す・引く、体幹の安定、上半身の引く・押すといった基本動作を、無理のない重さと回数で丁寧に行います[5]。フォームが安定したら、回数よりも動作の質と呼吸に集中すると、腰や膝の違和感が減りやすくなります。

暑さやほてりが心配な日は、涼しい時間帯を選び、通気性の良いウェアでレイヤーを調整します。室内では扇風機や送風を活用し、手のひら、首すじ、鎖骨まわりを冷やすと体感温度が下がります。寝不足の翌日は、主運動をやめるのではなく、歩きとストレッチに置き換えて体内リズムを崩さないようにつなぐのがコツです。関節に痛みが走る、腫れが続く、夜間痛があるといったサインが出たら、強度を一段下げて様子を見ます。痛みのない範囲で可動域と筋力を保つことが、中長期の回復を早めます。

やる気が続く工夫とメンタルケア

更年期は、昨日できたことが今日できない、という揺らぎがつきものです。そこで役に立つのが、「できた証拠」を残す工夫です。時間や距離だけでなく、睡眠時間、ほてりの強さ、気分、運動後の爽快感を一言メモし、強度との相関を見える化します。眠れなかった日でも、日中の短い散歩で気分が上向いた、という成功体験を記録しておくと、次の一歩が軽くなります[8].

体重計の数字よりも、階段が楽になった、靴紐を結ぶ姿勢が安定した、肩こりの頻度が減ったなど、暮らしの中の機能指標に目を向けると、努力が報われやすくなります。音楽や風景の力も侮れません。お気に入りのプレイリストや、季節を感じるルートをいくつか用意しておくと、外に出るハードルが下がります。仲間と予定を合わせるのが難しければ、同じ時間帯に「それぞれ運動してメッセージで報告する」という緩い約束でも十分です。更年期はチーム戦に移行する時期。完璧を目指すより、助けを借りながら続けられる形をデザインすることが、最短の近道です。

まとめ:今日の自分に合うリズムで

更年期のスポーツは、頑張れば頑張るほど良いわけではありません。身体の声を観察し、強度を微調整しながら積み重ねることが、遠回りに見えて最も確実です。週150〜300分の目安はあくまで灯台。向かうスピードは、あなたの体調と生活リズムが決めてくれます。もし今日は短い時間しか取れなくても、呼吸を整えた10分の速歩は、何もしない10分よりずっと価値があります。

「今の自分にとって心地よい強度はどこだろう」。その問いを胸に、まずは今日、涼しい時間に家の周りをひと回りしてみませんか。汗が落ち着いたら、コップ一杯の水で喉をうるおし、胸を張って「できた」と記録する。次の一歩は、その小さな達成感が連れてきてくれます。きれいごとではない日々だからこそ、運動は自分に優しくする方法のひとつになれる。更年期のあなたのリズムで、無理なく続けていきましょう。

参考文献

  1. 国立長寿医療研究センター. 中高年女性におけるホットフラッシュの有症率および不眠症状との関連(研究紹介). 2021. https://www.ncgg.go.jp/ri/report/20210902.html
  2. Greendale GA, et al. Bone Mineral Density Changes during the Menopause Transition in a Multiethnic Cohort of Women. J Clin Endocrinol Metab. 2006;91(5):1760–1767. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2266953/
  3. 日本内分泌学会. 閉経後骨粗鬆症. 2019. https://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=51
  4. 日本産科婦人科学会. 更年期障害(市民の皆さまへ). 2025. https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
  5. World Health Organization (EMRO). Recommended amount of exercise (Adults 18–64 years). https://www.emro.who.int/health-education/physical-activitiy/promoting-physical-activity/What-is-the-recommended-amount-of-exercise/All-Pages.html
  6. 厚生労働省. 身体活動・運動(健康日本21). https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html
  7. 厚生労働省(KENPOS/kennet). 健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023 成人版推奨シート. https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html
  8. Tan MN, et al. Exercise and Quality of Life in Women with Menopausal Symptoms: A Systematic Review and Meta-Analysis. 2020. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7579592/
  9. Kai Y, et al. 中年女性の更年期症状および抑うつ症状に対するストレッチの効果:ランダム化比較試験. 体力研究. 2020;118:18–27. https://www.jstage.jst.go.jp/article/tairyokukenkyu/118/0/118_18/_article/-char/ja/
  10. 野﨑ウイメンズクリニック. 更年期に起こる筋肉・骨・関節の変化と予防エクササイズ. 2024. https://nozakiwomens.com/healthcare/contributed/menopause3/
  11. 厚生労働省. 身体活動がもたらす健康効果(虚血性心疾患や骨粗鬆症などのリスク低下). 健康日本21 関連ページ. https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b2.html

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編集部

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