マットレスの硬さが睡眠の質に与える影響と選び方 — 中程度の硬さが合いやすい理由

国内調査では約3人に1人が睡眠に不満を抱えています。硬すぎ・柔らかすぎのマットレスは微小覚醒や痛みと関連する可能性が指摘されており、研究で支持される「中程度の硬さ」を軸に、体格・寝姿勢別の選び方と自宅で試せる硬さチェック、パートナーと好みが違う時の調整法まで、35〜45歳女性向けに編集部が実践的に解説します。まずは簡単チェックを試してみてください。

マットレスの硬さが睡眠の質に与える影響と選び方 — 中程度の硬さが合いやすい理由

国内の公的統計では「ここ1カ月、睡眠で休養が十分にとれていない」人が約2割と報告されており、民間の大規模インターネット調査では「睡眠に不満(不満+やや不満)」が4割強という結果もあります[1,2]。医学文献によると、寝具の中でもマットレスの硬さは、背骨のカーブの維持や体圧分散、寝返りのしやすさに直結し、睡眠の連続性や主観的睡眠の質に影響します[3,4]。編集部が各種研究を読み解くと、ただ「硬い=良い」「柔らかい=悪い」という単純な話ではなく、多くの人にとっては“中程度の硬さ”が痛みと中途覚醒(微小覚醒を含む)の双方を抑えやすいという傾向が見えてきました[3]。体格や寝姿勢、腰痛の有無で最適値は変わりますが、ポイントは明確です。今日の身体に合う硬さを手探りするのではなく、科学的な目安を持って選ぶこと。ここからは、その根拠と実践法を、忙しい35〜45歳の私たちに必要な粒度で整理します。

硬さが睡眠に与える影響:科学でわかっていること

研究データでは、硬さが合わない寝具は肩や腰などの圧迫点で痛み受容器が刺激され、脳が小さく目覚める「微小覚醒」を誘発しやすいと示されています[4]。微小覚醒が増えるとノンレム深睡眠が分断され、翌朝の倦怠感や首・肩のこわばりにつながります[4]。硬すぎると体圧が一点に集中し、柔らかすぎると骨盤が沈み背骨のS字カーブが崩れる。どちらも睡眠の連続性を損ないます[3,4]。

医学文献によると、慢性腰痛のある成人を対象に硬めと中程度の硬さを比較した試験では、中程度の硬さで起床時の痛みや日中機能のスコアが有意に改善したと報告されています[3]。また体圧測定の研究では、中程度の硬さは肩・腰の圧ピークを低下させ、寝返りの阻害が少ない傾向が見られました[4]。数値は対象や方法で幅がありますが、こうした傾向は複数研究で整合的です[4]。

硬すぎると起こること

硬すぎるマットレスでは肩や臀部など突出部に荷重が集中し、血流低下としびれ感が生じやすくなります。結果として寝返り回数が増えても睡眠効率は上がらず、浅い眠りが継続することがあります[4]。朝、肩口がこわばっているのに腰は重だるい、そんなサインがあれば硬すぎの可能性があります。

柔らかすぎると起こること

柔らかすぎる寝面では骨盤と胸郭の沈み込み量が過剰になり、腰椎前弯が失われます。仰向けでは腰が落ち、横向きでは背骨がたわんで筋緊張が続き、深部筋が休まりません。寝返りの初動が重くなるため、一晩に複数十回程度起こるのが一般的とされる寝返りが減ってしまい、熱がこもる、汗で目が覚める、といった不快感の原因にもなります[4]。

なぜ“中程度の硬さ”が万人に近いのか

中程度の硬さは、突出部の圧を適度に逃がしながら、腰と胸郭を面で支え、背骨の中立を保ちやすいバランスにあります。体圧分布と寝返りの両立がしやすいため、微小覚醒を減らし、深い眠りを連続させやすいのです[3,4]。ただし、体格や寝姿勢によって最適ゾーンは前後にずれます。ここからは、あなたの条件に合わせた調整法を具体化します。

体格・寝姿勢・不調別:適正硬さの考え方

まず体格です。体重が軽めの人は沈み込みが少ないため、表層に適度な弾性やソフトさがないと肩や骨盤に圧が集中しがちです。反対に体重が重めの人は、支えが弱いと骨盤が沈んでしまうため、コア層にはしっかりとした反発力が必要になります。つまり、**上層で“受け止め”、下層で“支える”**という二層の役割をどう配分するかが鍵になります[4]。

次に寝姿勢です。仰向けが多い場合は、腰椎の自然な前弯が保てることが最優先です。膝裏に手を差し込む必要が出るほど腰が浮くなら硬すぎ、逆に手がまったく入らないほど沈むなら柔らかすぎのサインです。横向きが多い人は、肩が無理なく沈んで首から腰までが一直線に近いことが重要で、上層にある程度のコンフォート性が必要です。うつ伏せが多い人は腰の反りが強く出るため、全体にややしっかりめで沈み込みを抑えるほうが無難です。首の支持に関しては、枕の高さ・形状が頸椎の荷重に影響することが示されており、寝姿勢の変化と合わせて見直すと整いやすくなります[5].

不調の観点では、慢性的な腰の張りや起床時痛みが気になる場合、表層が柔らかすぎると夜間の骨盤沈下が増え、症状が長引きやすくなります。一方、肩こり・腕のしびれが気になる横向き寝では、肩の圧迫が強い硬さは避けたいところです。睡眠中に暑がり、寝汗が気になる人は、表層が密に沈んで通気が妨げられると熱がこもるため、通気構造や熱拡散性のある素材を優先すると快適さが変わります[3,4].

素材ごとの“硬さの出方”も理解しておく

ポケットコイルは荷重に応じて独立で沈むため、体格差があるカップルでも妥協点を見つけやすい構造です。ウレタン(高反発・低反発)は密度と反発弾性で体圧分散と寝返りのしやすさが変わり、高反発は支え、低反発は受け止めに寄ります。ラテックスは反発が強く、沈んでも押し返す「面で支える」感覚が得られます。同じ“ふつうの硬さ”表記でも、素材の戻り方で体感は変わる、と記憶しておくと選択を誤りにくくなります[4].

自宅でできる硬さチェックと、買い替えを失敗しないコツ

まずは、いまのマットレスが身体に合っているかを確かめます。就寝前に照明を落とし、仰向けで5分、横向きで5分、日常に近い姿勢で静かに横になってみてください。仰向けでは、腰とマットレスの間に手を差し入れてみて、すっと入るなら硬すぎ、まったく入らず腰が沈んで張る感じが強いなら柔らかすぎのサインです。横向きでは、耳・肩・骨盤が縦にそろう感覚があるか、肩の外側が痺れたり、上側の膝を前に投げ出したくなる衝動が出ていないかに注意します。どちらの姿勢でも、寝返りの初動が重く感じないか、体のどこか一点だけが熱く感じないかを観察すると、硬さと通気の課題が見えてきます。

買い替え時は、可能なら店舗での試寝と、自宅でのトライアルを組み合わせます。数分の試寝は印象の確認に有効ですが、**本当の評価は数夜をまたいだ「起床時の体感」**に現れます[4]。返品・交換保証があるブランドを選び、目覚めた瞬間の腰・肩・首の違和感、寝返りのしやすさ、夜中に目覚めた回数を2週間ほどメモしましょう。寝具は体に馴染む期間が必要ですが、痛みやしびれが強くなる、寝汗で頻繁に起きるなどの悪化が続くなら、硬さの再調整が必要です。

いまのマットレスをすぐに変えられない場合は、表層の感触だけを変えるトッパーで微調整ができます。硬すぎるなら厚みのあるコンフォート層を追加し、肩や骨盤の圧を逃がします。柔らかすぎるなら薄手で高反発のトッパーを重ね、骨盤の沈み込みを抑えます。枕の高さも連動して見直すと効果的で、横向きが増えたならやや高め、仰向けが増えたなら頸椎のカーブを保つ程度の高さに整えます[5]。マットレスの耐用年数は一般に7〜10年と言われますが、中央のへたりや体圧の偏りを感じたら、年数に関わらず見直し時です[6].

オンライン購入での判断ポイント

ECで選ぶときは、密度やコイル径などのスペックを目安にします。ウレタンなら密度30D前後は身体を受け止めやすく、支持層に40D以上が入ると腰の落ち込みを抑えやすくなります。コイルは線径やゾーニングで硬さの出方が変わるため、肩部はややソフト、腰部はややハードといった構成が記載されているかを確認しましょう。トライアル期間が設定されているか、交換時の送料や条件が明記されているかも、安心して試すための重要な情報です。

パートナーと硬さの好みが違うときの現実解

夫婦やパートナーで体格や寝姿勢が違うと、同じ硬さで満足するのは意外と難しいもの。選択肢はいくつかあります。日本の住宅事情では一枚のクイーンを共有しがちですが、ツインを並べる「ハーフ&ハーフ」は、お互いに最適な硬さを維持しながら距離感も保てる現実解です。スペースの都合がつかない場合は、同一マットレスの左右で硬さを変えられるデュアル構造、あるいは片側だけトッパーで調整する方法も有効です。睡眠は関係性のクオリティを左右する“ベースインフラ”。互いの最適化を認め合う小さな分離が、日中の協調をむしろ強くすることは珍しくありません。

生活リズムが違う場合は、寝返りで振動が伝わりにくい構造を選ぶ、掛け布団を別にする、就寝・起床の照明を個別化する、といった工夫で中途覚醒を減らせます。眠りは“合わせる”より“整える”。ベッドの上での歩み寄りは、ほどよい距離とそれぞれの最適の両立から始まります。

まとめ:最適な硬さは、あなたの身体が答えを知っている

硬さは数値で語られがちですが、ゴールはただ一つ、翌朝「よく眠れた」と身体が言ってくれることです。中程度の硬さを軸に、体格・寝姿勢・不調の三点で微調整し、数夜単位で起床時の体感を観察してみてください。週末に5分×2姿勢の自宅チェックから始めて、気づきをメモに残す。それだけでも、合わない硬さによる微小覚醒を減らし、日中のエネルギーが戻ってくる実感が得られるはずです。

もし次に一歩進めるなら、寝具だけでなく枕や掛け布団、寝室の温湿度も含めて「眠りの環境」をトータルで整えるのがおすすめです。関連記事の「睡眠負債の整え方」「枕の高さの決め方」「腰痛と寝具の科学」も、今日のヒントになるはず。今夜、あなたの身体はどんな硬さを求めているでしょう。そっと横になって、答えを確かめてみてください。

参考文献

  1. 厚生労働省 健康局. 令和4年 国民健康・栄養調査 結果の概要(睡眠関連指標:ここ1カ月休養が十分にとれていない者の割合 20.6%). 2024.
  2. マイボイスコム株式会社. 寝具と睡眠に関するインターネット調査(2025年). PRTIMES. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001601.000007815.html
  3. Kovacs FM, Abraira V, Peña A, et al. Effect of firmness of mattress on chronic non-specific low-back pain: randomised, double-blind, controlled, multicentre trial. The Lancet. 2003;362(9396):1599-1604. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14630439/
  4. Verhaert V, Haex B, De Wilde T, et al. Ergonomics in bed design: The effect of bedding system on sleep quality and body pressure distribution. Applied Ergonomics. 2011;42(1):91-103.
  5. Chen Y, Lee SH, et al. Cervical biomechanics with different pillow heights: a finite element analysis. Biology (Basel). 2022;11(7):1030. https://www.mdpi.com/2079-7737/11/7/1030
  6. Sleep Foundation. How Long Does a Mattress Last? https://www.sleepfoundation.org/mattress-information/how-long-does-a-mattress-last

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。