初心者向け 体幹トレーニング基本:短時間で続ける呼吸と姿勢の整え方

肩こりや腰の重だるさを感じやすい40代女性へ。研究データを参考に、呼吸・姿勢・頻度と5つの定番種目をわかりやすく解説。週2〜3回・1回10分を目安に続けるための工夫や、今日からできる簡単メニューも紹介。

初心者向け 体幹トレーニング基本:短時間で続ける呼吸と姿勢の整え方

体幹=胴体の機能。なぜ今こそ整えるのか

厚生労働省「国民生活基礎調査」では、40代女性の自覚症状の上位に肩こり(約12%)と腰痛(約10%)が並びます。[4] 在宅勤務や長時間の座位が増えたここ数年、背中や骨盤まわりの疲労を訴える声は確実に増えました。研究データでは、体幹(胴体の筋群)を鍛えると姿勢の安定性やバランス能力が向上し、慢性的な腰痛の軽減にも中等度の効果があると報告されています。[1,3] 編集部が関連文献を読み解くと、特別な道具を使わなくても、呼吸と姿勢を整えながら短時間で行う「基本の体幹トレーニング」が、日常の動きやすさを底上げする土台になることが見えてきました。大切なのは、きつさや回数ではなく、正しく効かせるための理解と、現実的に続けられる設計です。

体幹とはお腹や背中、骨盤まわりを包む筋群の総称です。とくに深層にある腹横筋や多裂筋、横隔膜、骨盤底筋は、内側から胴体を筒のように支える役割をもち、重たい荷物を持ち上げる瞬間だけでなく、座る・立つ・歩くといった日常動作のすべてで働いています。[3] 研究では、こうした体幹の安定化トレーニングが、一般的な筋トレと比べて慢性腰痛の痛みスコアをより小さくし、機能面の自己評価を改善した報告があります。[1,2] 痛みの完全消失を約束するものではありませんが、胴体の“支柱”を整えることで、腰や肩に過剰な負担が集中しにくくなるのは理にかなっています。

40代はホルモン変化や生活スタイルの変化が重なる時期です。家事・育児・仕事を同時にこなすなかで、片側に重心が偏る癖や、呼吸が浅くなる習慣が積み重なり、知らない間に体幹の「効率の悪い使い方」が固定化されがちです。体幹トレーニングは腹筋を割るためのものではなく、むしろ呼吸と姿勢を整え、動きの土台を静かに作り直す作業に近いと捉えると、取り組みやすくなります。バランスや反応の速さといった“運動神経”に関わる要素も、体幹の安定と協調が高まることで改善が期待できます。[3]

さらに、体幹の機能が整うと、ウォーキングやジョギング、ヨガなど他の運動の効果も引き出されます。胴体がブレにくくなることで腕や脚の力が無駄なく伝わり、同じ運動でも疲れにくくなるからです。忙しい日々の中で時間が限られているからこそ、まずは「効く土台」を育てることが、遠回りに見えて近道になります。[3]

基本原則:呼吸・姿勢・安全の三本柱

効果を最大化するカギは、呼吸、姿勢、安全の三つに集約できます。最初に呼吸です。お腹をへこませるのではなく、鼻から吸って肋骨と背中、下腹部まで空気が広がるイメージで360度に膨らませ、口から細く長く吐いて下腹部が静かに締まる感覚をつかみます。横隔膜と骨盤底筋が上下で呼応するような、静かな往復運動を作れたら準備は半分完了です。

次に姿勢です。骨盤を前後に揺らして中央の楽な位置(ニュートラル)を探り、みぞおちを少し下げるように肋骨をおさめます。背骨は反りすぎず丸めすぎず、頭のてっぺんが糸で引かれるように長く保ちます。このとき、お腹は力みすぎず、軽くファスナーを上げるように寄せる程度で十分です。がむしゃらに固めると呼吸が浅くなり、かえって効きにくくなります。

最後に安全です。痛みはガイドラインになります。鋭い痛みやしびれが出たら中止し、違和感が残る場合は医療機関に相談してください。体幹トレーニングは「効いている感覚」はあるものの、顔が歪むほどの苦痛で行う必要はありません。研究では、週2〜3回、1回10〜15分の短時間でも姿勢や安定性の指標が改善する報告があります。[3] 大事なのは、フォームを保った質の高い反復です。量より精度を優先し、良い形が崩れる前にやめるほうが、結局は早く強くなります。

今日からできる基本メニュー5種

器具は不要です。呼吸を整え、ニュートラルな姿勢を作ったら、床にヨガマットやバスタオルを敷いて始めます。目安は各種目20〜40秒または8〜10回から。合計10分程度で一巡できる設計です。日によって疲れ具合は変わるので、無理のない手前で止めることを習慣にしましょう。

デッドバグ:胴体を保ったまま手足を動かす

仰向けで膝と股関節を90度に曲げ、腕は天井へ伸ばします。息を吐きながら、腰が反らない範囲で片脚を遠くへ伸ばし、反対の腕を頭上へ送り、吸いながら戻します。左右交互に続け、下腹部が床にそっと沈む感覚を保ちます。腰が浮くなら動きを小さくして構いません。慣れてきたら、息を吐く時間を少し長くし、動作の最後に下腹部を静かに寄せる意識を加えると内側の筋が働きやすくなります。

バードドッグ:背中から骨盤を長く保つ

四つん這いで肩と手首、股関節と膝を一直線に並べ、首の後ろを長く保ちます。息を吐きながら片脚をうしろへ伸ばし、反対の腕を前へ伸ばします。腰が反ったり骨盤が傾いたりしないよう、背中の面を床と平行に。その場で呼吸を2〜3回繰り返し、吸いながら戻して反対側へ。骨盤の上にコップを置いてこぼさないイメージで、静かなコントロールを楽しみます。

プランク:固めず、呼吸できる強さで

肘とつま先で体を支え、頭からかかとまでを斜め一直線に保ちます。みぞおちを軽く引き下げ、下腹部を静かに寄せ、肩はすくめないよう耳から離します。30秒を目安に、呼吸が浅くならない強度でキープします。きつい場合は膝をついて行って問題ありません。逆に余裕が出てきたら、片足を数センチ浮かせる、前腕から手のひらに切り替えるなど、姿勢を崩さない範囲で負荷を微調整します。

サイドプランク:左右差に気づく

横向きになり肘と前腕で上体を支え、膝か足をそろえて骨盤を持ち上げます。体の側面を天井へ伸ばすように保ち、肩がすくまないよう首を長く。20〜30秒キープし、反対側も同様に。左右で難しさが違うのは自然なことです。苦手側は膝を曲げるなどして楽な強度で丁寧に練習すると、日常の立ち姿や歩幅にも変化が出やすくなります。

ヒップリフト(ブリッジ):骨盤と肋骨をそろえる

仰向けで膝を立て、かかとを床に置きます。息を吐きながら下腹部を寄せ、みぞおちと骨盤の向きをそろえたまま、お尻をゆっくり持ち上げます。太ももの前に力が入りすぎる場合は、かかとで床を軽く押し、座骨から膝へ力が流れる道筋を探します。上で一拍呼吸し、背骨を一つずつ下ろす意識で戻します。腰に詰まる感覚がある場合は高さを低くして構いません。

これら5種目は競うものではなく、日々の体調に寄り添うための道具です。時間がない日は二つだけ、余力がある日はゆっくり一巡。重要なのは、毎回のフォームを丁寧に整え、呼吸を乱さず終えること。終えたあと、立ち上がって腕を回したり、数歩歩いたりして、体の軽さや視界のクリアさを確かめると、変化に気づきやすくなります。

続けるための設計:忙しくても10分を捻出する

習慣化のコツは、時間ではなく「きっかけ」を決めることです。編集部でも、朝のコーヒーが沸く3分間に呼吸練習を挟み、夜の入浴前に二種目だけ行うというリズムが最も定着しました。週末は少し長めに取り組み、平日に貯金を求めない。続けるほど、体幹は筋肉が大きくなるというより、動作の「無駄が減る」ことでラクになっていきます。

もう一つの工夫は、他の習慣とつなげることです。たとえばテレビのニュースを一本見終えるまでプランク、歯みがきの間にデッドバグ数往復、という具合に、すでにある行動に寄り添わせます。記録をつけるのも有効です。カレンダーに◯をつける、スマホで30秒のメモを残すだけでも、行動の「見える化」が小さな達成感になり、翌日の自分を後押しします。

効果の実感は、見た目の変化よりも先に、朝の立ち上がりがスムーズになる、長く座っていても腰が重くなりにくい、階段で息が乱れにくい、といった日常の微細な変化として現れます。ここに気づけると、続ける理由が体の内側から湧いてきます。逆に、疲れが強い日や睡眠不足の翌日は、呼吸だけにする勇気も大切です。トレーニングは足し算だけでなく、引き算も実力です。

すでにウォーキングやヨガをしている人は、メニューの前後に体幹を差し込むと相乗効果が出ます。歩く前にバードドッグで背骨を整える、ヨガの前にデッドバグで胴体を安定させる、といった小さな準備だけで、フォームの安定感が変わります。睡眠やストレスケアと併走させると回復も早まります。眠りの基礎についてはこちら、座り姿勢の整え方はこちら、呼吸で整えるストレス対策はこちらも参照してください。歩きを見直したい人は40代のための歩き方がヒントになります。

まとめ:土台が整うと、毎日が軽くなる

体幹トレーニングの「基本編」は、派手さはないけれど、明日の自分を助ける最短コースです。呼吸を整え、ニュートラルな姿勢を見つけ、無理のない強度で5つの定番種目を丁寧に回す。このシンプルな流れを、週2〜3回・10分から始めるだけで、日常の動きやすさは着実に変わります。忙しい一日のすき間に一種目だけでも構いません。あなたの生活のリズムに、体幹のための小さな定位置を作ってみませんか。続けるほど、肩の重さや腰の不安は静かに遠のき、好きなことに使える余白が増えていきます。さあ、今の呼吸を一度だけ深くして、最初の一回を一緒に始めましょう。

参考文献

  1. Systematic review and meta-analysis: Effectiveness of core stability exercises for non-specific chronic low back pain. 2022. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9340836/
  2. Cochrane Review: Exercise therapy for chronic low back pain. https://www.cochrane.org/evidence/CD009790_exercise-treatment-chronic-low-back-pain
  3. Narrative review on core/trunk stability, balance, and performance; includes evidence of improvements in postural control and balance measures with core training programs. 2018. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6110226/
  4. 厚生労働省. 令和4年 国民生活基礎調査の概況(自覚症状の状況等). https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/index.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。