結論から:最適解は“状況で変える”がいちばん正しい
国内の意識調査では、成人女性の約2人に1人が「敏感肌傾向」を自覚していると報告されています。 [1,2] 医学文献によると、肌の不快感や乾燥感は「落とすケア」の摩擦や洗浄力の過不足と関連しやすいことが示されており、研究データでも、メイク残りを落とそうとする過度なこすりは角層の水分保持に影響を与えうるとされています。 [3,4] 編集部が各種データを読み解くと、クレンジング選びの要は「何をどれだけ落としたいか」と「いまの肌のゆらぎ」に尽きます。つまり、クレンジングオイルかミルクかは、性格診断のように一度で決まるものではありません。 メイクの濃さ、季節、皮脂量、所要時間という現実的な条件で選ぶと失敗が減る――それが今回の結論です。
「結局どっちが肌にいいの?」という問いに対して、編集部としての答えはシンプルです。濃いメイクや耐水性の日焼け止めを素早く落とす必要がある日はクレンジングオイルが合理的で、[5] ベースが薄く乾燥が気になる日はミルクが負担を抑えやすいという考え方が現実的です。 [3] 研究データでは、油性溶剤は耐水性顔料やフィルムを効率よく取り込む一方、[5] 乳化系のミルクは水分を多く含むため、角層のうるおいを保ちながら汚れを浮かせる設計がとられることが多いとされています。 [3] どちらが優れているかではなく、どんな状況でどちらが合うのかを知っておくと選択が速く、摩擦も減って肌も気持ちもラクになります。 [4]
判断の軸は4つに整理できます。まずメイクの種類です。リップティントやフィルムタイプのマスカラ、耐水性の日焼け止めなど油溶性・耐水性が強いアイテムは、油で包んで乳化して落とすオイルの仕組みと相性が良好です。 [5] 次に肌状態です。乾燥・赤み・チリチリ感などのゆらぎサインがある日は、ミルクのやわらかな触感とマイルドな洗浄力が安心材料になります。 [3] 三つめは季節と皮脂量で、皮脂分泌が増える夏や湿度の高い日はオイルのすっきり感が心地よく、空気が乾く季節はミルクのしっとり感に軍配が上がることが多いでしょう。 [6] 最後に所要時間と摩擦という現実面です。短時間でメイクが解けるほど手を動かす回数が減るため、結果的に摩擦も減らせます。 [4] 総合すると、忙しい平日の夜に濃いメイクを確実に落とすならオイル、在宅やノーメイクに近い日はミルク、という“2本持ち”の設計が合理的です。
ゆらぎ世代の肌で起きていることを前提にする
35〜45歳の肌は、皮脂量や角層のセラミドが季節や生活リズムで揺れやすく、同じ人でも日によって「落ちやすさ」と「しみる感覚」の許容が変わります。 [6] 医学文献によると、落とす工程の摩擦は角層のバリア機能に短期的な影響を与えうるため、こすらないで済む処方・手順を選ぶことが理にかないます。 [4] ここで重要なのは、オイル=刺激、ミルク=やさしい、と単純化しないことです。実際には処方と使い方次第で肌負担は変わります。つまり、“いまの自分の肌にとっての最小労力・最短時間で落とせる方”が正解です。
クレンジングオイルの実力と誤解
オイルは、油剤がメイクの油性成分や耐水性ポリマーを素早く取り込み、界面活性剤で水になじませて乳化・洗い流す構造です。 [3,5] 研究データでは、油相を主体としたクレンジングは耐水性顔料・UVフィルムの除去効率に優れ、短時間でのメイク離脱に強みがあると示されています。 [5] この“スピード”は摩擦の総量を減らすことにもつながります。 [4] 一方で「オイルは乾燥する」というイメージも根強いのですが、これは一部の高溶解タイプや熱いお湯、長時間のマッサージ的使用など複合要因で起こりやすい現象です。ぬるま湯で短時間、適量で乳化を挟むという基本に立ち戻ると、洗い上がりのつっぱりはぐっと減ります。 [3]
使い方のポイントはシンプルです。手と顔は乾いた状態から始め、指の腹で広い面を滑らせるようにメイクをなじませます。小鼻やキワは最後に短く、強く押さえつけないことがコツです。十分にメイクが浮いたと感じたら、少量の水で白く濁るまで乳化させ、ぬるま湯で丁寧にすすぎます。長く触れているほど良く落ちるわけではないため、時間を区切る意識が有効です。ウォータープルーフのアイメイクは、目元専用のポイントリムーバーを先に使っておくと、全顔のオイル接触時間を短縮できます。マツエクの場合はグルーの種類によって使用可否が異なるので、製品の注意書きに従いましょう。
ダブル洗顔については、製品の設計に従うのが安全です。近年は「ダブル洗顔不要」処方も増えており、過剰な洗いすぎを避ける助けになります。皮脂が少ない夜は保湿に時間を回す、汗や皮脂が多い日は軽く洗顔で仕上げるなど、日々の肌と相談する感覚が心地よさにつながります。より詳しい考え方は、編集部の特集「ダブル洗顔、必要な日といらない日」も参考になります。
こういう日にオイルが役立つ
汗ばむ季節で皮脂や日焼け止めの重なりを素早くリセットしたい夜、ティントやフィルムタイプをしっかり使った日、帰宅が遅く手早く終わらせたい日。そんなシーンでは、クレンジングオイルの短時間リセット能力が味方になります。落とし切ったあとは、水分と油分をバランスよく補うケアに切り替えましょう。保湿の基本設計は「やわらかく入れて、逃さない」。化粧水で肌を湿らせ、乳液やクリームで蓋をするシンプルさで十分です。季節のUV選びの見直しは「日焼け止め、今の生活に合ってる?」で解説しています。
クレンジングミルクの強みと限界
ミルクは水を主体に油分・界面活性剤を乳化した設計で、肌の上で汚れを包みながらやさしく浮かせるアプローチです。 [3] 研究報告では、ミルクタイプは洗浄後の角層水分の低下が小さく、つっぱり感が出にくい傾向が示されています。 [3] とろみのあるテクスチャーがクッションになって指の滑りを良くするため、こする圧を下げやすいのも利点です。一方で、ウォータープルーフや皮脂が多い状態に対しては、ミルク単体では“分”が悪いことがあります。そんな日は、ポイントリムーバーで目元・口元を先にオフしてから、全顔をミルクでやさしく流す二段構えが現実的です。 [5]
上手に使うカギは、量をためらわないことと、時間をかけすぎないことです。ケチって薄く伸ばすと摩擦が増えます。適量を顔の中心から外側へ薄く広げ、テクスチャーが軽く変わるのを合図に、ぬるま湯で丁寧にすすぎます。拭き取り可能な製品もありますが、敏感に傾いている日はタオルやコットンの繊維摩擦が刺激になることがあるため、ぬるま湯でのすすぎ仕上げが安心です。 [4] 朝の洗顔をどうするかという悩みには、皮脂の少ない季節や乾燥の強い朝だけミルクで軽くリセットする選択肢もあります。 [6] 水だけではぬめりが残る、洗顔料だとつっぱる、という日こそミルクの出番です。
こういう日にミルクが心地いい
在宅勤務で軽いBB程度のベースしか使っていない日、肌あれや赤みが気になる日、空調で乾燥した夜。そんなときはクレンジングミルクの出番です。落としすぎないという余白が、翌朝のメイクのりや日中の快適さにつながります。敏感肌ケアの土台は、落としすぎない・こすらない・乾かしすぎないの三拍子。 [3,4] 詳しい保湿の整え方は「敏感肌のための“削らない”スキンケア」で紹介しています。
迷わないための実践プラン:2本持ちの設計図
最短距離で迷いを断つなら、クレンジングオイルとミルクの“二刀流”を前提に一週間のリズムに置いてみるのが賢い方法です。たとえば外出や会食がある曜日はオイルで素早くリセットし、在宅や運動をしない日はミルクで穏やかに整える。生理周期で皮脂が増えるタイミングはオイル寄せ、乾く時期はミルク寄せにスイッチする。旅行や出張では小容量のオイルとミルクを携帯し、目的地の湿度と紫外線指数で使い分ける。こうして生活の地図にクレンジングを当て込むと、選択が“自分の味方”に変わります。
コストの現実も見逃せません。毎日たっぷり使う前提なら、ベースはコスパのよい大容量を、落ちにくい日の切り札として肌あたりが良い一品を小さめサイズで持つ、といった組み合わせが合理的です。サステナビリティの観点では、ぬるま湯の温度を上げすぎない、すすぎ時間をだらだら延ばさない、適量を使って二度洗いを避けるといった小さな工夫が、水とエネルギーの節約にもつながります。日中のUVやベースメイクの選び直しも、夜の負担を軽くする近道です。たとえば“すすぎ落ちやすい日焼け止め”や“お湯オフのマスカラ”を選ぶ戦略は、夜の摩擦と時間の節約に直結します。関連する選び方は「ウォータープルーフとお湯オフの正しい使い分け」も併せてどうぞ。
よくある疑問に編集部がお答えします
Q. 毛穴づまりが気になります。オイルは悪者ですか。
A. オイルそのものが毛穴を詰まらせるというより、落とし残しや長時間の放置、熱いお湯などの使い方が影響するケースが多いです。十分に乳化して丁寧にすすぎ、浴室外の乾いた手で始めるなど基本を守れば、負担は大きく下げられます。 [3] 毛穴悩みは日中の皮脂・UV・ファンデの重ね方とも関係するため、生活全体で調整する視点を持ちましょう。
Q. オイルは酸化して肌に悪いと聞きました。
A. 近年のクレンジングオイルは酸化安定性を考慮した処方が主流です。通常の保管・使用で過度に心配する必要はありません。むしろ、すすぎ残しを避ける・長時間肌に乗せたままにしない・適量を守るといった基本が、肌にとって重要です。
Q. ミルクだとメイクが残りそうで不安です。
A. 耐水性コスメを多用した日は、ポイントリムーバー併用や“オイルの日”に振り分ける運用が安心です。逆に薄いベースの日まで強いクレンジングで臨む必要はありません。メイクの実態に合わせて強度を選べば、残りやすい・落としすぎの両方を防げます。 [5]
Q. どちらか1本に絞りたい場合の基準は。
A. 仕事柄いつも耐水性のベース・ポイントメイクを使うならクレンジングオイル寄り、ほぼ毎日薄いベースで乾燥が気になるならミルク寄りが現実解です。迷ったら季節の前半はミルク、真夏や汗・皮脂が増える時期だけオイルを投入するという“季節スイッチ制”も有効です。ホルモンの揺らぎと肌の変化については「ゆらぎ世代と肌の関係」で背景を解説しています。
使い方のディテールが、最終的な肌あたりを決める
科学的な優劣だけでなく、手の動かし方やお湯の温度、使用量といった“ディテール”が肌あたりを大きく左右します。医学文献では、洗浄行為での物理的摩擦の最小化が角層バリアの維持に有利とされ、短時間で目的の汚れだけを狙い撃ちすることが推奨されています。 [3,4] オイルなら最初の数十秒でメイクを浮かせ、乳化をきちんと挟む。ミルクならクッション性を活かし、押し広げるように軽くなじませてからぬるま湯で落とす。どちらにも共通するコツは、顔の“動かない部分”を無理に擦らないことと、広い面から始めて細部は短く終えることです。仕上げのタオルは押し当てるだけにして、こすらず水気を取る。それだけで毎日の積み重ねが変わります。 [4]
最後に、クレンジングの目的は「肌をゼロに戻す」ことです。ゼロに戻った肌は、次にのせる保湿や美容液の受け入れがよくなります。つまり、落とすケアは“引き算”でありながら、翌朝の“足し算”を最大化する投資でもあるのです。だからこそ、自分の一日と肌に合った道具を、必要な日に必要なだけ使う。その柔軟さが、ゆらぎの多い私たちの毎日を支えてくれます。
まとめ:正解はひとつじゃない。今日の肌に聞こう
クレンジングオイルとミルクは、どちらも頼れる相棒です。濃いメイクや耐水性のベースが主役の日はオイルで素早く、乾燥や赤みが気になる日はミルクで穏やかに。季節や生活に合わせてスイッチするだけで、こすらない・迷わない・疲れない夜に近づきます。まずは一週間、二刀流の運用を試してみませんか。今日はどんなメイクで、肌はどんな声を出しているのか。その問いかけが、あなたの基準を育ててくれます。自分の生活に沿う選び方を見つけたとき、クレンジングは義務からごほうびに変わります。そこから先は、あなたのペースで。
参考文献
[1] RCリサーチデータ(企業調査報告):自分の肌を敏感肌と感じる女性の実態とケア動向(2025年1月 インターネット調査、n=623)。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000155131.html#:~:text=%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%9C%9F%E9%96%93%EF%BC%9A2025%E5%B9%B41%E6%9C%8822%E6%97%A5%EF%BD%9E1%E6%9C%8824%E6%97%A5%20%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%96%B9%E6%B3%95%EF%BC%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E8%AA%BF%E6%9F%BB%20%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%AF%BE%E8%B1%A1%EF%BC%9A20%E4%BB%A3%EF%BD%9E50%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%20%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E4%BA%BA%E6%95%B0%EF%BC%9A623%E5%90%8D%20%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%BC%E6%8F%90%E4%BE%9B%E5%85%83%EF%BC%9ARC%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF,%E8%87%AA%E8%BA%AB%E3%81%AE%E8%82%8C%E3%82%92%E6%95%8F%E6%84%9F%E8%82%8C%E3%81%A0%E3%81%A8%E6%84%9F%E3%81%98%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B20%E4%BB%A3%EF%BD%9E50%E4%BB%A3%E3%81%AE%E5%A5%B3%E6%80%A7%E3%81%AE%E5%86%85%E3%80%816%E5%89%B2%E4%BB%A5%E4%B8%8A%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AF%E7%8F%BE%E5%9C%A8%E3%80%81%E6%95%8F%E6%84%9F%E8%82%8C%E7%94%A8%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B1%E3%82%A2%E8%A3%BD%E5%93%81%E3%82%92%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B [2] 美活部 調査(企業調査報告):敏感肌に関する意識と実態に関するアンケート。https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000159529.html [3] Ananthapadmanabhan KP, Moore DJ, Subramanyan K, Misra M, Meyer F. Surfactants in skin cleansers: an overview. J Cosmet Dermatol. 2013;12(2):107-117. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22927835/ [4] J-Stage(皮膚科臨床):洗浄操作・界面活性剤・pHが角層バリア機能に及ぼす影響の比較検討。https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/110/13/110_2115/_article/-char/ja/ [5] 特許:JP2008184413A メイクアップ化粧料(ウォータープルーフフィルムとオイル溶解・乳化に関する記載)。https://patents.google.com/patent/JP2008184413A/ja [6] 日本化粧品技術者会誌(SCCJ):季節による皮脂量・組成の変動と敏感肌傾向の関連。https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj1979/34/4/34_4_365/_article/-char/ja/