食物繊維18g/日で腸内環境が変わる?30代・40代が知らない「短鎖脂肪酸」を育てる食事のコツ

腸内細菌に関する研究を踏まえ、食物繊維や発酵食品、運動・睡眠を中心とした無理なく続けられる“腸活”習慣を編集部が整理しました。食物繊維の目安(約18g/日)や、数週間以内に変化が示唆される場合がある点についても分かりやすく解説します。

食物繊維18g/日で腸内環境が変わる?30代・40代が知らない「短鎖脂肪酸」を育てる食事のコツ

善玉菌を増やす前に:何を増やすのかを理解する

「善玉菌」とは特定の一種を指す言葉ではなく、腸内で私たちの健康に有益な働きをする細菌の総称です。代表例としてビフィズス菌や乳酸菌、そして酪酸産生菌(ファーミキューテス門の一部など)が知られています[2]。研究データでは、これらが生み出す短鎖脂肪酸が腸のバリア機能を支え、腸内のpHを適切に保つことで、望ましくない菌の過剰増殖を抑える可能性が示されています[2,3]。ここで押さえたいのは、**「ひとつの菌を大量に」より「群としてのバランスと多様性」**が鍵だという視点です[4,5]。

短鎖脂肪酸に届くと腸は変わる

医学文献によると、食物繊維やレジスタントスターチなどの発酵性基質を腸内細菌が分解すると、酪酸・酢酸・プロピオン酸といった短鎖脂肪酸が産生されます[3]。酪酸は大腸上皮の主要なエネルギー源となり、タイトジャンクションの維持や炎症の鎮静に関与します[3]。つまり、善玉菌を増やすためには短鎖脂肪酸が生まれる“材料”を日々届けることが重要です。サプリの有無に関わらず、毎日の食事が基礎となると考えられます。

多様性を育てる「30種/週」発想

研究データでは、週に30種類以上の植物性食品(野菜、果物、豆、全粒穀物、海藻、きのこ、ナッツなど)を食べる人は、そうでない人と比べて腸内細菌の多様性が高い傾向が報告されています[4,5]。量だけでなく「種類」を増やすと、異なる菌がそれぞれの得意な食材を“餌”にでき、群として安定していきます。完璧を目指すより、買い物かごに見た目で“色数”を増やすのが現実的です。

食で増やす:今日からできる現実的な方法

まず基準を決めると迷いが減ります。国内の目安では、女性は食物繊維18g/日以上が推奨とされますが、実際の平均摂取量はそれを下回る傾向が指摘されています[6]。ここからは、無理なく積み上げられる具体策を、実践と研究知見を交えて整理します。

水溶性+不溶性を“混ぜる”意識で量を底上げ

水溶性食物繊維(オーツ麦、海藻、果物、いんげん豆など)は善玉菌の大好物。不溶性(葉物や根菜、きのこ、全粒穀物など)は腸のぜん動を促します[7]。両方を同じ日に入れると、腸内での発酵が安定しやすく、便の形や回数のばらつきが和らぐ人がいます。朝に果物かオートミール、昼にサラダへ豆や海藻をひと握り、夜はきのこと根菜を汁物に入れるだけで、合計が自然に積み上がります。皮ごと食べられる果物や雑穀入りのご飯を選ぶ工夫も役立ちます。

発酵食品とプロバイオティクスは“銘柄より習慣”

ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、乳酸菌飲料などは、日替わりで少量ずつ続けると取りこぼしが減ります。製品を選ぶときは、菌の種類や菌株名の記載があるもの、砂糖や添加物が控えめなものに目を向けてみてください。研究データでは、2〜4週間の継続摂取でビフィズス菌の増加や便性の改善が観察される試験があり、体に合うかどうかは同じ銘柄を2週間ほど試すと判断しやすくなります[8]。お腹が張りやすい人は食後少量から始めて、体調に合わせて量を調整すると負担が少なく済みます。

レジスタントスターチは“冷ます”ひと手間で

冷やご飯、冷製ポテト、豆類はレジスタントスターチが増えやすい食べ方です[9]。作り置きの雑穀ご飯を一度冷やしてから温め直す、ポテトサラダにゆで豆を加えるなど、料理の流れにのせて取り入れると続きます。腸内の酪酸産生菌の“材料”になりやすく、便のまとまりが良くなると感じる人もいます[3].

色の濃い植物とオメガ3で“土台”を厚く

ベリーや緑茶のポリフェノールは腸内で代謝され、特定の菌の増殖を助ける可能性が示されています[15]。青魚、えごま油、クルミに含まれるオメガ3脂肪酸は、食事全体の炎症バランスを整える助けになり、腸の環境が落ち着きやすくなる可能性があります[14]。忙しい日は、缶詰のサバや無糖のプレーンヨーグルトに冷凍ベリーを合わせるような組み合わせでも有効な選択肢になります。

生活習慣で支える:リズムを整えると腸は応える

腸内細菌は時計遺伝子の影響を受け、食事のタイミングや睡眠で日内変動します[11]。研究データでは、適度な運動や十分な睡眠が腸内細菌の多様性や短鎖脂肪酸濃度と関連する報告があります[10,11]。食だけで成果が見えにくいときは、生活のリズムを微調整することが有効なアプローチになることがあります。

週150分の中強度運動を“分割”して積む

まとまった時間が取れないなら、1日20〜30分の早歩きや階段利用をこまめに重ねる方法が現実的です。運動は腸の血流を促し、ストレスホルモンの波を穏やかにします。継続のコツは、予定に先に書き込むこと。昼休みの10分、夕方の買い出しついでの遠回りなど、既にある行動に寄り添わせると続きます。なお、健康維持には成人で週150分程度の中強度有酸素運動が推奨されています[10]。

睡眠の“入口”を整える

就寝90分前の入浴や、寝る前のスマホ閲覧を控える小さなルールは、睡眠の深さに直結します。起床後に朝日を浴びること、毎日同じ時間に朝食をとることも体内時計の同調に役立ち、腸のぜん動リズムが安定しやすくなります[11]。夕食は就寝の2〜3時間前に済ませ、夜食は習慣化しないと、お腹の休息時間が確保されます。

ストレスケアは“噛む回数”から

腸はストレスの影響を受けやすく、交感神経優位が続くと動きが鈍くなります。難しいテクニックより、食事中に噛む回数を増やすだけでも、自律神経が整い満腹中枢が働きやすくなります。食べる場所を片付けて視覚刺激を減らす、最初のひと口だけは深呼吸してから味わうといった儀式化も、忙しい日常でも取り入れやすい方法です。

人工甘味料・抗菌薬との賢い距離感

研究データでは、一部の人工甘味料が一部の人で腸内細菌や血糖応答に影響を与える可能性が示されています[12]。ゼロカロリーの安心感に頼りすぎず、水や無糖の炭酸、無糖の温かいお茶と使い分けるのが賢明です。抗菌薬は必要時に不可欠ですが、服用中・直後は腸内細菌のバランスが崩れやすいため、医療者の指示に従いながら、消化に優しい食事と十分な睡眠で回復期間を支えていきましょう[13]。

よくある誤解と現実解:迷わず続けるために

「何をどれだけ食べたら、いつ変わるのか」という問いに、万能の正解はありません。ただ、医学文献の傾向から言えるのは、**変化の目安は2〜8週間、指標は「種類」と「習慣」**だということです[3,8]。ヨーグルトだけを増やしても十分な材料がなければ善玉菌は定着しにくく、逆に食物繊維だけを増やしても、発酵に関わる菌が少なければ働きが限定的です。プレバイオティクス(食物繊維やオリゴ糖)とプロバイオティクス(生きた有用菌)を日々の食卓で組み合わせる“シンバイオティクス”の考え方が実践的です[2]。

便の変化を指標にする

難しい検査がなくても、毎朝のトイレでヒントは得られます。形がバナナ状でスムーズに出る、色が極端に淡くない、においがきつくないといった感覚的なサインは、腸内発酵のバランスが整ってきた合図になり得ます。突然の食物繊維の急増でガスや張りを感じたら、水分と運動を少し足しながら、数日かけて量を慣らしてみてください。

編集部の小さな実験:2週間の“混ぜ方”改革

編集部スタッフが、朝はオートミールにプレーンヨーグルトと冷凍ベリー、昼はサラダに豆と海藻をひと握り、夜はきのこの味噌汁という“混ぜ方”を2週間続けたところ、3日目から便のまとまりと回数が安定し、昼の眠気も和らいだと話していました。※個人の感想であり、効果効能を保証するものではありません。ポイントは新しいことを増やすより、いつものメニューの一部を置き換えた点にあります。

より深く学びたい方は、腸と睡眠の関係を扱った「40代の眠りを深くする習慣」、買い物かごを変える「食物繊維が増える買い物術」、ストレスとの距離を整える「はじめてのストレスケア」、更年期と腸の関係を解説する「更年期の不調と腸内環境」も参考になります。

まとめ:小さな一歩が腸の“群れ”を変える

腸は毎日入ってくるもので静かに変わります。今日できる最小単位を選ぶなら、買い物かごに植物性食品を1種類増やす、食事に発酵食品をひとさじ加える、寝る前30分はスマホを閉じる。このいずれか一つでも始めやすく有効です。変化のサインは2週間前後で現れることがあり、味覚や便の状態、午前中の集中力に変化が現れることがあります。うまくいかない日があっても、翌日ふたたび同じルールに戻れば、腸の群れはまた整い始めることがあります。

**次に食べる一品を、善玉菌の“材料”にする。**その意識を続けることで、変化は徐々に積み重なることが期待されます。今週は何種類の植物を食べられそうですか。冷蔵庫と相談しながら、ひとつだけ新しい色を足してみましょう。

参考文献

  1. Sender R, Fuchs S, Milo R. Are We Really Vastly Outnumbered? Revisiting the ratio of bacterial to host cells in humans. PLoS Biology. 2016;14(8):e1002533. doi:10.1371/journal.pbio.1002533
  2. 厚生労働省 e-ヘルスネット「プロバイオティクス」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
  3. Short-chain fatty acids and gut health(総説) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5390821/
  4. Dietary diversity and the human gut microbiome(総説) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9535526/
  5. McDonald D, et al. American Gut: an Open Platform for Citizen Science Microbiome Research. mSystems. 2018;3(3):e00031-18. https://msystems.asm.org/content/3/3/e00031-18
  6. 厚生労働省 e-ヘルスネット「食物繊維」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
  7. 公益財団法人 長寿科学振興財団「食物繊維」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/shokumotsu-seni.html
  8. 江崎グリコ TANSA MAGAZINE「GCL2505のヒト試験」 https://tansa-magazine.glico.com/articles/13/detail
  9. Sajilata MG, Rekha S, Singhal RS. Resistant starch – A review. Comprehensive Reviews in Food Science and Food Safety. 2006;5(1):1–17.
  10. World Health Organization. Physical activity guidelines. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/physical-activity
  11. Thaiss CA, et al. Transkingdom control of microbiota diurnal oscillations promotes metabolic homeostasis. Cell. 2014;159(3):514–529.
  12. Suez J, et al. Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota. Nature. 2014;514:181–186.
  13. Dethlefsen L, Relman DA. Incomplete recovery and individualized responses of the human distal gut microbiota to repeated antibiotic perturbation. PNAS. 2011;108(Suppl 1):4554–4561.
  14. Costantini L, et al. Impact of Omega-3 Fatty Acids on the Gut Microbiota. Int J Mol Sci. 2017;18(12):2645.
  15. Cardona F, et al. Benefits of polyphenols on gut microbiota and implications in human health. Food Funct. 2013;4:10–24.
  16. 山田医院コラム「便秘の有病率」 https://www.yamadaiin.net/letter/2813/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。