シワは4種類。まず“見極め”が近道
研究データでは、顔の見た目の老化の約80%が紫外線などの“光老化”に由来するとされ[1]、さらに医学文献によると真皮のコラーゲン量は20代をピークに毎年約1%ずつ低下していきます[2]。数字だけ見ると少し気が遠くなるかもしれませんが、視点を変えると対策のカギも見えてきます。つまり、私たちがコントロールできる外的要因を抑え、肌のうるおいとハリを日々積み上げることが、シワの印象を大きく左右するということ。編集部には「何から始めればいいのか分からない」という声が多く届きますが、答えは意外とシンプルです。まずは種類を見極め、原因に合ったエイジングケアを選ぶ。これだけで遠回りは減らせます。
同じシワでも、でき方も効くケアも異なります。代表的なのは、乾燥で表皮がしぼんで見える細かい「乾燥小ジワ」、笑顔や眉間など表情の動きに連動する「表情ジワ」、紫外線ダメージが真皮に及びハリが低下して刻まれる「真皮ジワ(光老化)」、そして重力や骨格変化、ボリューム減少に伴って折りたたまれる「たるみ由来のシワ」です[3]。洗顔後に何も塗らず鏡を見て、数分で細かな線が目立つなら乾燥小ジワの可能性が高く、笑う・しかめるなど動作と一緒に深くなる線は表情ジワのサイン。目尻や頬の外側にくっきり刻まれた線は真皮ジワのことが多く、ほうれい線やマリオネットラインのように下方向へ深まる溝は、たるみやボリューム変化が関係していることが少なくありません。まずは自分の顔のどこに、どのタイプが多いかを静止顔と動く顔の両方で観察することが、最短のスタートです。
種類別・今日からできるエイジングケア
乾燥小ジワには「水分を抱え込む層」を満たす
乾燥小ジワは、うるおい不足と角層の乱れで起こる見た目のしぼみです。ここではセラミドやヒアルロン酸、グリセリンといった保湿成分で角層をふっくらさせることが土台になります。入浴や洗顔後の肌は水分が蒸散しやすいため、タオルオフ後1〜3分以内に化粧水や美容液を重ね、最後は油分でフタをするイメージで乳液やクリームをなじませます。乾燥による小ジワの目立ちを抑えることが期待される処方は、市販でも増えています[3]。数週間単位での変化を見たいので、同じ製品を朝晩で継続するのがコツ。摩擦は大敵なので、指の腹で優しく面で動かすことを意識してみてください。
表情ジワは「動きの質」を整え、日中乾かさない
表情ジワは笑う・怒るなどの反復で同じ場所に折り目がついた状態です。医療的な介入も選択肢ですが、家庭のケアでできることは二つあります。ひとつは日中の乾燥を防いで、動かすたびに生じる摩擦を最小限にすること。ミストだけで終わらせず、軽い質感の乳液やジェルで薄く油分も足すと、表情の動きに伴う引きつれ感が和らぎます。もうひとつはクセの見直しです。スマホを見る時に眉間を寄せる、モニターの眩しさで目を細めるなどの習慣は、無意識に線を深くします。明るさ設定を上げる、画面位置を目の高さに合わせる、会議中に口角だけで笑って目周りを強く動かしすぎないなど、小さな調整が効いてきます。夜は目元や眉間周りに保湿バームを米粒大で薄く仕込み、寝具のこすれから守る工夫も有効です。
真皮ジワ(光老化)には「守る×攻める」を両立
紫外線、とくにUVAはガラスを通過し、真皮のコラーゲン線維を劣化させます[1]。ここでは毎日のUV対策が最重要です。SPFは日常なら少なくとも15以上(可能なら30程度を目安に)、PAは高めを選びます[5]。顔全体でティースプーン約1/3〜1/2相当をむらなく塗ると規定量に近づき、汗や皮脂で薄れたら約3時間おきに塗り直すと安心です(日本皮膚科学会は顔全体で「真珠粒2個分」を目安としています)[4]。さらにレチノールやナイアシンアミド(ニコチンアミド)、ビタミンC誘導体のような攻めのエイジングケア成分を、肌の調子に合わせて取り入れていきます。レチノールは夜から、週2〜3回・少量で慣らすと刺激を感じにくく[6]、乾燥が出やすい頬や口周りには先にクリームを薄く仕込む“サンドイッチ塗り”も一案です。ナイアシンアミドはバリアサポートや色調・小ジワに関するエビデンスがあり[7]、朝はビタミンCをメイク前に使うと、くすみ感を払いながら日中の酸化ストレス対策の一助になります[1]。どの成分も合う・合わないがあるため、赤みやヒリつきが続く場合は中止し、低刺激保湿へ切り替えて肌の回復を優先してください。UVの基礎は、記事「365日のUVケア入門」でも詳しく解説しています。
たるみ由来のシワは「土台づくり」と姿勢を味方に
ほうれい線や口角下の溝のように下方向へ深まる線は、皮下ボリュームの変化や重力の影響が絡みます。スキンケアではうるおい・紫外線回避・こすらないの三本柱が長期的な土台になります。加えて、画面をのぞき込む首前傾の姿勢はフェイスラインのゆるみを招きやすく、ディスプレイは目の高さ、顎は軽く引いて座るだけで横顔の印象は変わります。顔の運動は気分転換としては前向きですが、強い力でのマッサージや肌を引っ張る習慣はむしろシワの原因になり得ます。やるなら短時間で、クリームで滑りを良くしてから、を合言葉に。睡眠や栄養も忘れずに。とくに睡眠不足は肌の乾燥やバリア機能の乱れに関与する報告があり[8]、コラーゲンの材料になるたんぱく質と、サポートするビタミンCを食事で取り入れることは、肌のコンディションを保つ下支えになります[3]。
効かせる生活習慣:紫外線・睡眠・摩擦をミニマムに
紫外線は“毎日少しずつ”当たるものとして管理する
曇りの日や室内でもUVAは降り注ぎます[1]。だからこそ、晴天のレジャーだけでなく、ルーティンとして毎日塗る。これが一番の近道です。朝の基礎の最後に日焼け止めを顔・首・耳の裏までしっかりのばし、外で過ごす時間が長い日は昼過ぎにクッションやスプレータイプで重ねます。服や帽子、サングラスも味方に[4,5]。紫外線対策は季節行事ではなく“歯みがき”と同じ日課と考えると続きやすくなります。
睡眠が足りないと、乾燥も機嫌も崩れがち
睡眠不足は皮膚の水分保持やバリア機能に影響することが研究データで示されています[8]。寝る直前の画面時間を短くし、照明を落とし、入浴後は時間を置かずに保湿する。そんな基本の積み重ねが翌朝の手触りに直結します。枕カバーは清潔に、頬が沈み込みすぎない高さを選ぶなど、寝具との摩擦・圧力を減らす視点も取り入れてみてください。
摩擦ゼロの気持ちで、でもやり過ぎない
クレンジングは短時間で終え、洗顔は豊かな泡で手と肌が直接こすれ合わないように。タオルオフは押し当てるだけ。スキンケアは広げる・包む・待つの三拍子で、塗り広げたら数十秒置いてなじませると、重ねた分がきちんと生きます。やり過ぎない勇気もエイジングケアの一部です。刺激を増やさず、必要なものだけを丁寧に。
成分選びの踏み込みは「はじめてのレチノール」や「朝のビタミンC美容液ガイド」もあわせてどうぞ。すでに手持ちのラインがある人は、まずは量と順番を見直すだけでも肌の返答が変わります。
まとめ:今日の小さな一手が、数カ月後の横顔をつくる
シワは一夜で刻まれたものではないからこそ、解決も一夜では訪れません。だけど心強いのは、私たちには毎日できる選択があること。自分のシワのタイプを知り、乾燥には保湿、光老化には紫外線対策と攻めの成分、表情のクセには生活の微調整、たるみ感には姿勢と土台づくり。そんな風に原因に合うエイジングケアを一つずつ重ねるだけで、数週間後のメイクのノリや横顔の輪郭は静かに変わっていきます。明日の朝、鏡の前で最初に取り組むのは何にしますか。日焼け止めの塗り直しを決める、夜のレチノールを週2回に設定する、枕カバーを替える。思いついた一手から、あなたのリズムで始めてみてください。
参考文献
- Vierkotter A, Krutmann J. Photoaging and chronologic aging of the human face. PMC4861605. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4861605/
- OAE Publishing. The proportion of collagen decreases about 1.0–1.5% per year. https://www.oaepublish.com/articles/3863
- 持田ヘルスケア「シワの基礎知識」https://hc.mochida.co.jp/skincare/spot/spot1.html
- 日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「日焼け止めの正しい使い方」https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q13.html
- 日本化粧品学会 サンスクリーンガイドライン(UVA防止効果とSPF15以上の必要性)https://www.jcss.jp/journal/guideline.html
- Mukherjee S, et al. Topical retinoids in the management of photoaging. PMC10669284. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10669284/
- Gehring W. Nicotinamide in dermatology. PMC8389214. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8389214/
- 第一三共ヘルスケア 眠りと肌の関係コラム https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/selfcare/goodsleep-02/column02.html