40代女性が知らないと損する「定年延長vs再雇用」手取り収入の差と選び方

定年延長か再雇用か──40代女性の働き方と収入設計を3分で整理。給与・役割・年金・手取りへの影響、キャリアとお金を守る具体策、企業交渉の実践アドバイスまで。要点を短時間で把握して今後の収入設計に活かしましょう。

40代女性が知らないと損する「定年延長vs再雇用」手取り収入の差と選び方

定年延長と再雇用の違いを3分で整理

公的統計では、60〜64歳の就業率は概ね6〜7割、65〜69歳でも約4〜5割に達しています[1]。さらに、2021年改正の高年齢者雇用安定法で、企業は70歳までの就業機会確保に「努力義務」を負うようになりました[2]。つまり、働き続けること自体は特別ではなくなりつつあり、私たちの40代での選択が、60歳以降の働き方や手取り、暮らしの自由度を大きく左右します。

編集部が各種データと現場の声を照らし合わせると、論点はシンプルに二つに収れんします。それが**「定年延長」か「再雇用」か**。同じ「働き続ける」でも、契約形態や賃金、権限、評価、年金との付き合い方まで連鎖的に違ってくるのです。言い換えれば、これは制度の二択ではなく、キャリアとお金の設計を含むライフデザインの選択。ゆらぎ世代にとって避けて通れないテーマを、データと実践で読み解きます。

まず用語を揃えます。定年延長は、会社の定年年齢自体を引き上げて、従来の雇用区分のまま在籍期間を延ばす考え方です[3]。これに対して再雇用は、いったん定年で雇用を区切り、期間契約など新たな条件で働き直す仕組み[3]。どちらも法律の枠組みに沿って企業が用意する選択肢ですが、日々の働き心地や収入カーブにはっきりした違いが出ます。なお、継続雇用制度(再雇用等)は法改正により平成25年度以降、労使協定による対象者の限定が廃止され、希望者全員を対象とすることが必要になっています[3]。

一般に、定年延長は役割や等級、福利厚生の枠が現役時代に近いまま続きやすく、賃金水準の変動も比較的なだらかです。一方で再雇用は、職務や裁量の再定義が起き、評価・昇給のルールも別テーブルになるケースが目立ちます。調査では、再雇用後の賃金が現役時の6〜8割程度になる例も報告されており、同じ仕事感覚のまま移行すると意外なギャップになりがちです[3]。ただし、責任を軽くして時間の自由度を高めたい人にはプラスに働くこともあります。

給与・役割・裁量の違いを見取り図で捉える

賃金は「いくら下がるか」より「どう決まるか」を押さえると見通しが立ちます。定年延長では等級や職責テーブルが継続しやすいのに対し、再雇用は職務給や時間給中心へ切り替わることが多く、目標設定や評価サイクル、昇給ロジックがシンプルになります。役割の面では、定年延長はマネジメントや収益責任を保ちやすく、再雇用は専門作業やサポート、限定的なプロジェクト参画に寄るなど、責任の重さと裁量の幅に明確な差が出やすい設計です。

社会保険・年金・税の関係は「現行ルール×自分の年収」で

60歳以降の可処分所得は、賃金額だけでなく社会保険料や年金の調整で変わります。現行の在職老齢年金は、年金と賃金の合計が一定額(目安は47万円)を超えると年金の一部が調整されます[4]。定年延長で賃金を維持するほど調整にかかりやすい一方、再雇用で賃金を抑えると年金の支給が相対的に安定する、といったトレードオフが生まれます。いずれも制度は改正が続く領域なので[2]、最新の基準額と自分の月次賃金の組み合わせでシミュレーションしておくのが現実的です。

40代のキャリア視点:どちらが伸び代を生むか

選び方の核心は「自分の強みが、どの制度で一番活きるか」です。たとえば部門横断で人を動かすのが得意な人は、権限と影響力を保ちやすい定年延長のほうが成果を出しやすい。一方で、専門スキルを深めて時間配分を柔軟にしたい人は、再雇用の枠組みで業務を絞り、副業やプロボノに学びと経験を広げる設計がマッチします[2]。いずれにしても、40代での仕込み次第で、60歳以降の選択肢は増える。ここが最大のレバレッジです。

マネジメント志向か、専門職志向かで見える景色は変わる

マネジメント志向なら、チーム成果で評価される環境に長く身を置くほど、社内の影響半径は広がります。定年延長で役職や等級を維持し、社内変革や後継育成にコミットすることで、社内市場価値は積み上がりやすい。対して専門職志向は、再雇用で時間裁量を得て、資格更新・高度研修・学会参加・社外登壇などに投資すると、社外市場価値が目に見えて育ちます。編集部の読者アンケートでも、「裁量」と「学びの時間」をどう確保するかが満足度の分岐点になっていました[2]。

もうひとつ忘れたくないのが、ケア責任と健康です。親の介護や子の進路、そして自分の体力の変化は、紙の上の最適解を簡単に揺らします。定年延長でチームの中心に立ち続ける豊かさもあれば、再雇用で週3〜4日に抑え、ケアと両立しながら働く安定もあります。どちらが正しいかではなく、どちらがその時の自分と家族にとって無理なく続くかを軸に据えたいところです。

年収カーブとライフイベントの重ね合わせで判断をクリアに

お金の面は、手取りの時系列で見ると合意が早まります。たとえば60〜64歳の5年間に現役並みの年収を維持できると、教育費の山を越える家庭には効くことがある。一方で再雇用で年収を抑えつつ在職老齢年金の調整を避け[4]、時間を確保して年金・iDeCo・新NISAを積み上げるという選択も合理的です。退職金やポイント制の報奨が「定年延長の在籍年数」と連動する企業では、延長のメリットが相対的に高まりやすいなど、会社ごとの設計も判断材料になります。

45歳からの準備と交渉術:選べる状態をつくる

制度の差を理解したら、次は自分を整えます。最初にやるのは社内規程の読解です。定年年齢、延長・再雇用の条件、賃金決定方式、評価サイクル、退職金の算定、健康・介護の支援制度、そして副業規程。この一式を読み、仮に自分が60歳になった時の「役割」「賃金」「勤務日数」を具体的にメモに落とし込みます。その上で、現在の職務成果をポートフォリオ化し、社内・社外のどちらにも伝わる言葉に磨きます。これは転職用ではなく、社内交渉のための土台です。

次に、スキルの棚卸しと学びの計画を同期させます。マネジメント志向なら、組織開発・人材育成・データドリブン経営の実践知を、目の前の仕事で証明できるよう設計する。専門職志向なら、資格の上位区分や最新ツールの運用、英語・統計・生成AIの活用まで、可視化しやすい資産に変えていきます。ここで副業を小さく始めておくと、再雇用を選んだ時の時間裁量と相性が良く、延長を選んだ場合でも社内での横展開に説得力が生まれます。きっかけ作りには学び直しのロードマップが役立ちます。

人事と上司への伝え方は「希望×条件×代替案」

対話のタイミングは評価面談や半期の目標設定期が現実的です。単に延長や再雇用の希望を伝えるのではなく、達成したい価値と必要な条件をセットで置き、現実的な代替案も用意します。たとえば「事業横断のPMとして60歳以降も成果を出したい、そのために権限と評価軸をこう定義したい。難しければ限定領域の専門職で週4日に絞る案も検討できる」といった具合です。相手に選択肢を手渡すと、制度の枠内でも設計の自由度は上がります。

最後に、健康とお金のセーフティネットを淡々と整えます。年1回の人間ドックと運動習慣の固め直しは、60歳以降の稼働率に直結します。お金は、生命・医療・就業不能の保険の過不足を点検し、住宅ローンの繰上げや金利見直しに当たりを付け、家計の固定費を「小さくて強い」形に整える。こうしておくと、定年延長でも再雇用でも、**選択の自由が本当に「自由」**になります。

まとめ:正解はひとつじゃない。設計すれば迷いは減る

定年延長は役割と影響力を保ちやすく、再雇用は時間裁量と学びの余白を生みやすい。どちらにも強みとリスクがあり、ベストは人とタイミングで変わります。大事なのは、40代の今から制度を理解し、手取りの流れを見える化し、キャリアの重心を言語化しておくこと。そうすれば、会社の制度がどう変わっても、あなたの選択はブレにくくなります。

今日できる一歩として、社内規程を読み込み、60歳時点の働き方をメモに描いてみませんか。3カ月後にはスキルの可視化、半年後には上司との対話、1年後には学びの成果が形になっているはずです。ゆらぎの中でも、設計された迷いは力になります。あなたの未来の働き方を、あなたの言葉で選び取っていきましょう。

参考文献

  1. 内閣府 高齢社会対策: 平成30年版高齢社会白書(概要版) 第1章 高齢化の状況(就業率に関するデータ) https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2018/html/gaiyou/s1_2_1.html
  2. 厚生労働省: 改正高年齢者雇用安定法(令和3年4月1日施行)70歳までの就業機会の確保に関する情報 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/koureisha/topics/tp120903-1_00001.html
  3. 厚生労働省(事業主の方へ): 高年齢者雇用安定法の概要(定年の引上げ・継続雇用制度〈再雇用〉等) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/jigyounushi/page09_00001.html
  4. 日本年金機構: 在職老齢年金(支給停止の仕組み・計算式・基準額) https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/zaishoku/20150401-01.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。