40代女性が知らない「プロテインの選び方」体重1kgあたり1.2〜1.6gの科学的根拠

35〜45歳女性のためのプロテイン入門。ホエイ/カゼイン/ソイ/ピープロテインの特徴と、体重1kgあたり約1.2〜1.6gを目安にした摂取量、飲むタイミング、続けるコツを研究データに基づいてわかりやすく解説。今日から使えるヒント付き。

40代女性が知らない「プロテインの選び方」体重1kgあたり1.2〜1.6gの科学的根拠

なぜ今「プロテイン」か:40代女性の体とデータ

加齢に伴う筋量の減少は珍しいことではなく、運動不足が重なるとペースが早まります。研究データでは、十分なたんぱく質摂取と軽いレジスタンストレーニングの組み合わせで、40代以降でも筋たんぱく合成は有意に高まるとされています[6]。さらに、たんぱく質は満腹感を高め、食後の代謝(食事誘発性熱産生)が炭水化物や脂質より大きいことが知られています[7]。このため、同じカロリーでもたんぱく質は体重コントロールに有利に働きやすいのです[8]。骨の視点でも、たんぱく質はカルシウム代謝や骨形成を支える要素の一つであり、閉経前後の骨密度低下期にこそ“削らない栄養”と言えます[9]

どれくらい必要?体重と活動量から考える目安

医学文献によると、一般的な健康成人のたんぱく質推奨量は体重1kgあたり約0.8gですが[10]、40代以降の筋量維持・体力向上を狙うなら1.0〜1.2g/kg/日、運動を取り入れているなら1.2〜1.6g/kg/日が現実的な目安になります[11,12,6]。例えば体重58kgなら、普段は約58〜70g、トレーニング期は約70〜93gがレンジです。1回の食事での効率を考えると0.3〜0.4g/kg/食が目安で、58kgなら18〜23g程度[14]。これは鶏むね肉100g強や、プロテインパウダーなら1杯(20〜25gのたんぱく質)で達成できる量です。ロイシンは20〜25gのホエイで2.0〜2.7g、ソイで1.6〜2.2g程度が一般的とされ、どちらも設計次第で閾値に届かせられます[15,2]。なお、近年のメタ解析では、筋力・筋量の観点での「上限に近い目安」がおよそ1.6g/kg/日付近と示される一方[6]、系統的レビューでは1.5g/kg/日前後で頭打ちになるという報告もあります[13]

数字だけでは決めない:生活パターンに合わせる

必要量は、ジムに行く頻度、通勤の活動量、食の好み、胃腸の強さでも変わります。朝食を軽く済ませがちなら、朝にプロテインを足すだけで1日のスタートが安定します。夕方に空腹でおやつが止まらないなら、15時前後にたんぱく質20gを挟むと満腹感が持続し、夕食のドカ食い予防に役立ちます。編集部の同世代でも、週2回の自重トレ+在宅ワークという生活では、朝10〜15g、昼20g、運動後に20〜25g、寝る前にヨーグルトなどで10gといった配分が続けやすいという声が多くあります。食事が充実している日はパウダーを減らし、忙しい日はパウダーで補う。柔軟さが続くコツです。

目的別の選び方:ホエイ、カゼイン、ソイ、ピーの違い

プロテインとひと口に言っても、原料と吸収スピード、風味、価格が異なります。製品選びで迷ったら、まず「消化に合うか」「1杯で何グラムのたんぱく質が入るか」「糖質・脂質・甘味料のバランス」「価格と続けやすさ」の順に見ていくと判断がぶれません。一般的に1杯のコストは粉末の種類やブランドで変わりますが、体感では1回分が35〜120円のレンジに収まることが多いでしょう。

乳由来:ホエイとカゼインをどう使い分けるか

ホエイは吸収が速く、運動後のリカバリーに向いています。ロイシン含有量が高いので、1杯20〜25gで筋たんぱく合成のスイッチを入れやすいのが強みです[15,2]。表示で「WPC(コンセントレート)」と「WPI(アイソレート)」を見かけますが、WPIは乳糖や脂質がより除かれているため、乳糖が気になる人やカロリーを抑えたい人に合います[3]。カゼインは吸収が緩やかで、就寝前や食間の空腹を抑えたい場面に向きます[17]。味わいはまろやかでミルク感が出やすく、ホットドリンクにもなじみやすいのが魅力です。

植物由来:ソイとピーで軽やかに続ける

ソイ(大豆)はコレステロールが気になるときにも取り入れやすく、腹持ちが良いのがメリットです。ホエイに比べるとロイシンはやや少ない傾向ですが、1回のたんぱく質量を20〜30gに調整すれば十分にカバーできます[15]。ピー(えんどう豆)はアレルゲンが少なめで、匂いが穏やかな製品も増えています。単体でも使えますが、ソイとブレンドしてアミノ酸バランスを整えるアプローチも有効です。いずれも、甘味料や香料の強さは製品差が大きいので、まずは小容量のパックで試し、自分の舌と胃腸に合うものを見つけるのが近道です。

飲むタイミングと量:1日の設計図

「いつ飲むか」は「何を飲むか」と同じくらい大切です。研究データでは、1日に必要なたんぱく質を等間隔に分ける戦略が、偏った一極集中よりも筋たんぱく合成の合計を高めやすいと示されています[18]。朝にたんぱく質が不足しがちな人は、目覚め後90分以内に10〜20gを確保すると血糖の乱高下が落ち着き、集中力も安定しやすくなります[19]。運動をする日は、トレーニング直後〜2時間の間に20〜30gを1回[24]。仕事や家事で動けない日でも、昼食・夕食と合わせて20g前後を意識すれば、1日の合計は自然に積み上がります。寝る前に小腹が空くなら、吸収のゆっくりなカゼイン系やヨーグルトで10〜20gを加えると、夜間の筋たんぱく分解を抑えやすくなります[21]

平日モデル:58kg・在宅ワーク・週2トレの場合

在宅で座り時間が長く、週2回の自重トレを行うケースを想定してみます。朝はコーヒーだけで済ませがちなら、プロテインを水または無調整豆乳で溶かして200mlのシェイクにし、たんぱく質を15〜20g確保します。昼は主食・主菜・副菜の食事に加えて、足りない分を食後に10gほど上乗せ。トレーニング日は運動後1〜2時間の間に20〜25gをしっかり摂り、夕食は魚や大豆のおかずで調整します。寝る前に空腹が気になる日は、無糖ヨーグルトやホットミルクに少量のプロテインを混ぜて10〜15g。こうして積み上げると、運動日で75〜90g、非運動日で60〜75gのレンジに収まり、体重×1.2〜1.6g/kgの目安に近づきます[11,16]

つまずきやすいポイントとやさしい解決策

お腹が張るときは、量を半分にして様子を見てください。水分をこまめにとり、乳糖が気になるならWPIやソイ、ピーに切り替えるのも一案です[3]。人工甘味料の後味が気になる人は、無添加・微甘味タイプを選び、風味は家にあるココアやシナモン、インスタントコーヒーで調整すると無理なく続けられます。味に飽きたら、朝は水、午後は無調整豆乳、運動後は氷たっぷりのシェイクというように、同じ粉でも“飲み方”を変えるだけで印象が変わります。ダイエット中でカロリーを抑えたい日は、水や炭酸水割りにして、甘さの弱いフレーバーを選ぶと満足度を保ちやすいでしょう。取り過ぎが心配なら、食事アプリで1日の合計をざっくり把握し、「まずは体重×1.2g」を超えない範囲で調整するところから始めると安心です[11]

続けるコツ:おいしい飲み方と小さな習慣

プロテインは“料理”にするだけで続きやすくなります。水150〜250mlに溶かす基本のシェイクは、先に液体を入れてから粉を加え、30回ほどしっかり振るとダマになりにくくなります。朝はバナナ半分と無糖ヨーグルト、シナモン少々をブレンダーにかければ、たんぱく質20g前後のスムージーに。午後はアイスコーヒーに無味のホエイを小さじ山盛りで溶かし、たんぱく質10gの“高たんぱくカフェオレ”に。食事に混ぜるなら、オートミール粥に少量の無味プロテインを忍ばせたり、スープにとろみ付け感覚で加えたりできます。高温での加熱で変性しても栄養価は基本的に失われませんが、風味は変わるので加え過ぎには注意しましょう[22]

習慣化の工夫も効きます。シェイカーを見える場所に置く、朝のマグカップと同じ棚にプロテインを置く、外出用にスティックをバッグに入れておく。こうした“環境設計”は意志の力を温存してくれます。編集部の周りでは、まず10日間だけ「朝に一杯」を決めると、体の軽さや空腹感の安定を実感し、そのまま定着するケースが多く見られます。味やメーカーに正解はありません。あなたの胃腸と舌に合い、家計と時間に優しいものが、最良の一本です。

安全性について知っておきたいこと

健康な人において、日常的なたんぱく質摂取の増加は一般に安全とされていますが[23,24]、腎臓や肝臓に持病がある場合、医療者に相談して設計すると安心です。サプリメントはあくまで食事の延長。まずは普段の食事をベースに、足りない“隙間”をプロテインで埋める発想が、長い目で見ると賢い選択になります。

まとめ:小さく始めて、やさしく続ける

選び方に迷ったら、まずは消化に合う原料を選び、1杯で20g前後のたんぱく質が摂れるものを手に取ってください。朝か運動後のどちらか1回を“固定枠”にし、1日の合計は体重×1.2gを目安に[11]。味は家の飲み物で調整し、無理せず飲める形を探しましょう。続けるほど、体力や体型、気分の安定に小さな変化が積み重なっていきます。

参考文献

  1. 東京都健康長寿医療センター. フレイル予防・対策「サルコペニア」—地域住民2,310人の調査での大腿部筋面積の年次減少率(男性0.6%、女性0.4%). https://www.tyojyu.or.jp/kankoubutsu/gyoseki/frailty-yobo-taisaku/R2-4-1.html
  2. Moore DR et al. Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men. Am J Clin Nutr. 2009;89(1):161-168. https://academic.oup.com/ajcn/article/89/1/161/4596659
  3. Jäger R et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:20. https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-017-0177-8
  4. Aragon AA, Schoenfeld BJ. Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window? J Int Soc Sports Nutr. 2013;10:5. https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/1550-2783-10-5
  5. Phillips SM et al. Resistance exercise–induced changes in muscle protein synthesis last at least 24–48 h in untrained individuals. Review. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3761704/
  6. Morton RW et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training–induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52(6):376–384. https://bjsm.bmj.com/content/52/6/376
  7. Halton TL, Hu FB. The effects of high-protein diets on thermogenesis, satiety and weight loss. Am J Clin Nutr. 2004;81(5):1298S–1305S. https://academic.oup.com/ajcn/article/81/5/1298S/4633284
  8. Wycherley TP et al. Effects of energy-restricted high-protein, low-fat compared with standard-protein, low-fat diets: a meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2012;96(6):1281–1298. https://academic.oup.com/ajcn/article/96/6/1281/4577135
  9. Rizzoli R et al. The role of dietary protein and vitamin D in maintaining musculoskeletal health in postmenopausal women. Am J Clin Nutr. 2014;99(5):1243S–1247S. https://academic.oup.com/ajcn/article/99/5/1243S/4577280
  10. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(推定平均必要量・推奨量:たんぱく質0.8g/kg/日)関連資料. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000041831.html
  11. Bauer J et al. PROT-AGE Study Group: Protein intake recommendations for older adults: a position paper. J Am Med Dir Assoc. 2013;14(8):542–559. https://www.jamda.com/article/S1525-8610(13)00326-5/fulltext
  12. 日本サルコペニア・フレイル学会 ガイドライン2017. 高齢者の栄養・運動介入の推奨. https://jssf.umin.jp/jssf_guideline2017.html
  13. 早稲田大学スポーツ科学学術院 宮地他. システマティックレビューとメタ解析の結果(1.5 g/kg/日で頭打ち)に関するニュース解説. https://sndj-web.jp/news/001988.php
  14. Schoenfeld BJ, Aragon AA. How much protein can the body use in a single meal to maximize muscle-building? Implications for daily protein distribution. J Int Soc Sports Nutr. 2018;15:10. https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-018-0215-1
  15. Tang JE et al. Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis. J Appl Physiol. 2009;107(3):987–992. https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/japplphysiol.00076.2009
  16. Devries MC, Phillips SM. Supplemental protein in support of muscle mass and health: advantage whey. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2015;18(6):535–543. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26024097/
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  18. Mamerow MM et al. Dietary protein distribution positively influences 24-h muscle protein synthesis in healthy adults. J Nutr. 2014;144(6):876–880. https://academic.oup.com/jn/article/144/6/876/4571672
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  20. Moore DR et al. Postexercise protein intake to support MPS(タイミングに関する解説). See ref.2
  21. Snijders T et al. Protein ingestion before sleep increases overnight muscle protein synthesis rates in healthy older men. J Nutr. 2015;145(6):1178–1184. https://academic.oup.com/jn/article/145/6/1178/4585716
  22. Hoffman JR, Falvo MJ. Protein – Which is Best? J Sports Sci Med. 2004;3(3):118–130. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3905294/
  23. Poortmans JR, Dellalieux O. Does a high-protein diet harm renal function in healthy athletes? Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2000;10(1):28–38. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10722779/
  24. Antonio J et al. A high protein diet has no harmful effects: a one-year randomized crossover trial in resistance-trained men. J Int Soc Sports Nutr. 2016;13:3. https://jissn.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12970-016-0151-4

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