40代に現れるプレ更年期の兆候とよくある症状

「最近、いつもの自分じゃない」──35〜45歳の女性に増えるプレ更年期の兆候を、科学的根拠と実践的なヒントでやさしく解説。月経や睡眠、気分の揺れの背景と今日からできるセルフケア、受診の目安まで。まずは症状チェックを。

40代に現れるプレ更年期の兆候とよくある症状

プレ更年期とは何——40代の体で起きていること

日本女性の閉経年齢の平均は約50歳前後ですが、実はその数年前から体と心の揺らぎが始まります。[1] 研究データでは、閉経の3〜8年前に月経周期の不規則化や睡眠の質の低下、気分の波が増えることが報告されています。[2] 編集部が各種統計を確認すると、40代前半でも「なんとなく疲れが抜けない」「前は平気だったのに眠りが浅い」といった自覚を持つ人が少なくありません。これは珍しいことではなく、ホルモンの変動に伴うごく自然なサインです。

医学文献によると、卵巣機能がゆるやかに変化する時期は、エストロゲンが減り続けるのではなく**“乱高下”**しやすいのが特徴です。[2] そのため、ある日は元気、別の日は理由のない不調というように、一定ではない揺れ方を見せます。大切なのは、調子の良し悪しに人格や気合いは関係ないという視点です。これは生理的な変化で、対処法があります。

背景にあるのは、卵胞(卵子のもと)の減少に伴うホルモンの揺らぎです。エストロゲンは自律神経、体温調節、睡眠、骨や筋肉、皮膚、認知機能まで幅広くかかわるため、変動が睡眠の浅さ、動悸、ほてり、肩こり、関節の違和感、頭重感、集中しづらさといった多面的な体感へつながります。[3] さらに、エストロゲンとセロトニン(気分に関係する神経伝達物質)は相互作用があるため、焦りや不安、イライラの波が大きくなることもあります。[3]

注目したいのは、プレ更年期では「減る」だけでなく「急に増える」日もあることです。これが**“乱高下”**の正体で、ホットフラッシュや動悸が強まる日と、むしろ調子が良い日が交互に来やすいゆえんです。体と心のジェットコースターのような感覚に戸惑っても不思議ではありません。自分を責める必要はなく、仕組みがわかれば対処は具体的になります。

「年齢のせい」だけでは片づかない——見極めの視点

プレ更年期の兆候は、更年期以外の原因とも重なります。例えば、貧血や甲状腺機能の低下、睡眠時無呼吸、慢性的なストレスや栄養不足でも似た不調は起こりえます。研究データでは、日本の働く女性で鉄欠乏が一定割合みられ、集中力の低下やだるさの背景になっているケースもあります。[4] つまり「更年期だから仕方ない」と決めつけず、必要なら血液検査で確認する視点を持つことが合理的です。

また、PMS(月経前症候群)との違いもよく話題になります。PMSは月経前の数日〜1週間に現れ月経開始とともに軽くなるのに対し、プレ更年期の揺らぎは時期が限定されず、睡眠や体温調節の不調が長めに続く傾向があります。[2,3] 年齢とタイミング、症状の出方を「カレンダーに書き留める」だけで、見分けのヒントが増えます。

検査でわかること、わからないこと

ホルモンの血中濃度(FSHやエストラジオール)は参考になりますが、プレ更年期は変動が大きく単回の値だけでは判断しにくいのが実際です。[2] 臨床現場では、年齢、月経パターンの変化、症状の種類と頻度、生活への影響を総合して評価します。疑わしいと感じたときの受診先は婦人科や女性外来で、甲状腺や貧血のチェックも同時に進めると、対処の優先順位が明確になります。[2,4]

プレ更年期の代表的な兆候と「よくある勘違い」

まず多くの人が気づくのは月経の変化です。周期が短くなってから急に長くなる、経血量が増減する、ダラダラと茶色い出血が続く——こうしたパターンは珍しくありません。研究データでは、40代女性の一定割合で周期のばらつきが増えることが示され、これは卵胞発育の揺らぎと一致します。[2] 60日を超える無月経が何度か起きたら、より進んだ段階に差し掛かっているサインです。[2]

睡眠の質の低下も典型的です。寝つけない、早朝に目が覚める、夜中に何度も起きる、寝汗で不快——こうした訴えは、体温調節機能の感度変化や、夜間のホットフラッシュ、交感神経の高ぶりと関係します。[3] エビデンスに基づく介入としては、寝室の室温管理、夕方以降のカフェインとアルコール量の見直し、就寝前の光刺激を減らすことなどの効果が報告されています。[3]

気分の揺れも誤解されがちです。「メンタルが弱くなった」わけではなく、神経伝達や睡眠の乱れがブーストをかけることで、焦りや落ち込みが一時的に強まるのです。医学文献では、抑うつや不安が強い場合に心理療法(認知行動療法など)が睡眠と日中機能の改善につながるという結果があります。[3] 必要に応じて専門家のサポートを組み合わせる選択肢を持ちましょう。

身体症状としては、肩や首のこわばり、関節の違和感、めまい感、動悸、肌の乾燥、髪のハリ低下、体重が増えやすい、といった変化が重なります。特に体重については、筋肉量の自然減少や睡眠不足も絡むため、同じ食事量でも体重が上がりやすくなることがあります。ここでも“自分を責める”より“仕組みを知って調整する”が近道です。[3]

「がまん」ではなく、仕組みでほどく

よくある勘違いは三つあります。第一に「気合いで乗り切るべき」という思い込み。実際は生理学的変化です。第二に「運動すると余計に疲れる」という不安。しかし研究データでは、中強度の有酸素運動が睡眠の質とホットフラッシュの頻度に好影響を与えることが示されています。[3,5] 第三に「サプリで全部解決できる」という過度な期待。栄養は土台を支えますが、睡眠・光・運動・ストレス対処といった生活要因と組み合わせて初めて安定感が増します。[3]

今日からできるセルフケア——科学的に効く小さな習慣

睡眠の再設計から始めるのが効果的です。起床時間を毎日ほぼ一定にし、朝の15〜30分は屋外の自然光を浴びます。これにより体内時計がリセットされ、夜の眠気が整いやすくなります。[3] 就寝の90分前に40℃前後の入浴を10〜15分行うと、中核体温が緩やかに下がって入眠を後押しします。就寝1時間前からはスマホやPCの強い光を避け、暗めの照明に切り替えましょう。[3]

カフェインは午後に残りやすい人もいます。午後2時以降は摂取を控えめにし、総量は1日200mg程度を上限の目安にすると、寝つきの悪化を防げます。アルコールは一見眠りを誘いますが、夜間の覚醒を増やします。女性ではエタノール14g/日以下(ビール350ml程度)を上限として、飲まない日を設けると体感が変わります。夜間のほてりが強い日は、吸湿速乾の寝具やレイヤリングで体温調節の余白を作ってください。[3]

運動は「頻度」と「強度」のかけ算です。週合計150分の中強度(会話はできるが歌うと苦しい程度)を目標に、速歩やサイクリングを生活に組み込みます。加えて週2回の筋トレで大筋群を刺激すると、血糖コントロールが整い、日中のエネルギー感が上がります。[3] 研究データでは、体重の**5%**程度の減量でもホットフラッシュの頻度と強さが軽くなる傾向が示されています。[5] 数字に縛られる必要はありませんが、身体が軽くなる実感は大きな動機になります。

食事は「足りていないものを足す」視点で見直します。まずはたんぱく質を毎食手のひら1枚分を目安に確保し、鉄・ビタミンD・カルシウムの不足を避けます。大豆食品を日々の食卓に取り入れるのも一案です。大豆イソフラボンはエストロゲン様作用を持ち、ホットフラッシュの軽減に一定のエビデンスがありますが、サプリでの過剰摂取は避け、食品中心に適量を継続するのが安心です。[3] 胃腸が繊細な人は量とタイミングを少しずつ調整しましょう。

ストレス対処は「短時間・高確率」で効く方法を手元に置きます。ゆっくりとした呼吸(4秒吸って6秒吐く)を3分続けるだけでも自律神経の緊張が和らぎ、動悸と不安の連鎖を断ち切る助けになります。考えごとが止まらない夜は、紙に「明日やること」を3つだけ書き出し、机に置いて寝室から離す。脳に「今は終わった」と合図を送り、睡眠の入口を広げます。これらは単独でも役立ちますが、睡眠・運動・栄養と連動させることで相乗効果が生まれます。[3]

受診の目安——“様子見”をやめるタイミング

次のような場合は、婦人科や女性外来での相談を検討してください。周期の乱れが続き生活に支障が出ている、60日を超える無月経が繰り返される、夜間のほてりや動悸で睡眠が崩れて日中の機能が落ちている、抑うつ感が2週間以上持続している、過多月経で貧血が疑われる——どれか一つでも当てはまれば受診する価値があります。プレ更年期の不調には、ホルモン補充療法や低用量ピル、漢方、睡眠衛生指導、認知行動療法など複数の選択肢があり、あなたの体質と希望に合わせて調整できます。[3,6]

受診に向け、症状日記(開始時刻・強さ・きっかけ)と月経カレンダー、服薬・サプリの情報、既往歴をメモして持参すると、診察がスムーズになります。甲状腺機能や鉄、ビタミンDの採血が同時に行われることも多く、重なっていた別の原因が見つかる場合もあります。なお、ホルモン検査は値が揺れやすいため、結果だけに一喜一憂しない姿勢が役立ちます。[2,4]

仕事・家族・自分——揺らぎと共存する実践知

プレ更年期の揺らぎは、仕事や家庭の役割の変化と重なりがちです。だからこそ、日常のハンドルを少しずつ握り直す工夫が効いてきます。例えば、重要な会議を午前に集中させ、午後は“回復の余白”を含むタスクに置き換える。ホットフラッシュが出やすい人は、会議室の席を出入り口近くにする、薄手のカーディガンや冷感タオルを常備する。睡眠が浅い週は、翌朝の通勤時間帯をずらす交渉をしてみる。小さな調整の積み重ねが、体感を大きく変えます。

家族には「病気ではないけれど、体の調整期であること」「日によって波があること」「具体的に助けてほしい行動」を短く共有すると、協力が得られやすくなります。例えば「夜10時以降は家事を増やさない」「朝のゴミ出しを任せたい」といった明確な依頼は、相手も動きやすいものです。自分自身にも「今日は波がある」と声をかけ、できたことに印をつける。達成の小さな積み重ねは、揺らぎ期の自信を支えます。

編集部では、記録と学習を助けるツールの活用をおすすめしています。カレンダーアプリで月経と睡眠、運動、気分のメモを同じ画面で見られるように設定し、変化のパターンを「見える化」します。データは感情と切り離して扱うのがコツです。「今日は眠れなかった。だから明日は朝の光を増やし、カフェインを控え、早めに湯船に入る」。この因果の鎖を短くすると、自己効力感が回復します。

もっと学びたいあなたへ——信頼できる読み物

NOWHの関連記事も、プレ更年期の理解に役立ちます。まずは基礎から整理したい方は「更年期の基礎ガイド」を。PMSとの違いを深掘りしたい方は「PMSとプレ更年期の見分け方」が参考になります。睡眠を立て直したいなら「40代の睡眠術」、食事のコツは「エストロゲン期を支える栄養」をご覧ください。必要なときに戻れる“自分専用の教科書”を、ここに置いておきましょう。

まとめ——「波」と付き合う力は必ず育つ

プレ更年期は、見えない敵ではありません。からだの仕組みを知り、睡眠・光・運動・栄養という土台を整え、必要に応じて医療や周囲のサポートを借りる。これらを少しずつ重ねることで、波は次第に「予測可能なもの」へと変わっていきます。明日の自分に渡せるのは、完璧さではなく、続けられる小さな手当てです。

今日の行動は、明日の安定をつくります。 明日の朝はカーテンを開けて光を浴び、メモに昨夜の眠りを書き込み、歩ける分だけ歩いてみる。もし不安が続くなら、受診の一歩を。いま感じている揺らぎは、あなたのせいではありません。では、最初の一歩として、何から試してみますか。

参考文献

  1. 日本産科婦人科学会. 更年期について(市民の皆さま). https://www.jsog.or.jp/citizen/5717/
  2. Freeman EW, et al. Menopausal transition: endocrine dynamics, staging (STRAW+10), and symptom patterns. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3580996/
  3. Contemporary management of menopausal symptoms(総説). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11595697/
  4. 厚生労働省 ぼうせいナビ. 貧血(女性の健康). https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/health/anemia.html
  5. Weight loss and vasomotor symptoms(更年期の体重減少とホットフラッシュの関係に関する研究). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3469216/
  6. 日経メディカル. 更年期障害診療ガイドライン概説:MHTやSSRI/SNRI、心理療法などの有効性. https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/guideline/202205/575067.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。