10ステップの価値と、日本での“誤解”をほぐす
**紫外線の大部分はUVAで一年中降り注ぎ[1]、都市部では冬の室内湿度が低くなる日もある。**この2つの事実は、日本でスキンケアを考えるうえで無視できません。さらに、研究データでは洗顔後に角層水分量が一時的に低下し、摩擦や過度な多段ケアが刺激要因になりうることが示されています[3,4,5]。韓国発の“10ステップ”は世界の美容観を更新しましたが、そのまま日本の気候・生活リズムに当てはめると、手間や負担が先に立ちがち。編集部は、核となる考え方は活かしつつも、日本の環境と「続けられる現実」に合わせた設計に置き換えることが、ゆらぎやすい35-45歳の肌には合理的だと考えます。ポイントは、順序のロジックを守りながら、数を減らし、接触と摩擦を減らし、季節と肌状態で“足し引き”すること。ここから、10を盲信しない日本流の最適解を具体的に解きほぐしていきます。
順序は理科、数はライフスタイル
重ねる順序は、水に近いものから油に近いものへ。これは皮膜形成と拡散、溶媒の性質に基づくシンプルなロジックです。化粧水やエッセンスなど水分の比率が高いアイテムから、美容液、乳液、クリームと進むほど、肌の上での滞留性が高まりやすくなります。日中はこの上に日焼け止めが重なります。一方、数は生き方に合わせてよい。仕事、家事、育児、介護など役割が増える35-45歳に、毎日10工程を固定するのは現実的ではありません。編集部のテストでも、工程を絞って接触回数を減らした日ほど、翌朝の赤みやムズつきが出にくいという“続けやすさの実感”がありました。これは肌負担の低減と行動の習慣化、両輪の効果と言えます。
クレンジングは“強さ”より“適切さ”
ポイントは、落とす対象に合わせること。ウォータープルーフのポイントメイクには専用リムーバー、全顔はやさしいクレンジングで十分な日が多くあります。ダブル洗顔は必要なときだけ。皮脂が多くベタつく夏夜は洗顔を一度追加、乾く冬朝は微温水のみなど、季節で可変にすることで、落とし過ぎによる突っ張りを避けられます。研究データでは洗顔直後に角層水分が低下し時間とともに回復するため、クレンジング後は間を空け過ぎず、化粧水や美容液で水分を補い、乳液・クリームで封をする流れが理にかないます[4,3].
日本流“ミニマム5”——朝3分、夜7分の設計図
ここからは、10の思想を保ちながら数をそぎ落とした日本流のコア設計を示します。鍵は**クレンジング/洗顔、化粧水、機能性美容液、乳液・クリーム、日焼け止め(朝)**という核の5領域です。順序は薄いものから厚いものへ。朝は肌のうるおいを逃さずUVから守ることに集中し、夜はその日の蓄積をリセットしバリアを立て直すことに注力します。シートマスクや角質ケア、アイクリームなどの“+α”は、週1-2回の変奏として扱う方が持続しやすく、肌の声に合わせた調整も容易です。
朝は“守る”が主役——水分は最小限、紫外線対策は最大限
冬や乾燥が気になる朝は、ぬるま湯だけで皮脂を残しつつ肌をリフレッシュする選択が合理的です。夏で皮脂が多い日だけ、低刺激の洗顔料を短時間で使う。化粧水は何度も重ねるより、手のひらで一度“均一になじませる”方が摩擦が減り、時短にもつながります。機能性美容液は、日中の酸化ストレスに着目したビタミンC誘導体や、キメを整えるナイアシンアミドなどが相性のよい選択肢。乳液または軽めのクリームでうるおいを閉じ込めたら、仕上げは日焼け止めです。UVA/UVBともに対策できるものを、規定量を意識してムラなく。室内中心の日でも、窓辺の作業や移動がある日は“念のため塗る”が肌の安定を後押しします[2].
夜は“ほどよく落として、足りないものを補う”
帰宅後すぐポイントメイクを先にオフすると、その後の全顔クレンジングをやさしく短時間で済ませられます。洗顔は1回で十分な日が大半。化粧水で角層に水分を補い、機能性美容液は肌の調子に合わせて選びます。ゆらぎやすい時期はセラミドやヒアルロン酸などの保湿系、キメやハリ感を底上げしたい時期はナイアシンアミド、攻めたい夜はレチノールの低濃度から様子を見るアプローチが現実的です。最後に乳液・クリームで封をすると、寝ている間の水分ロスを抑えやすくなります[3]. 角質ケアは週1回程度から、シートマスクは“乾く前に外す”を合図に。やり過ぎの連続は、むしろゆらぎにつながりやすいことを覚えておくと安心です[5].
季節と肌タイプで“足し引き”する日本流チューニング
季節と肌タイプで、同じ人でも最適解が変わります。乾燥・敏感に傾く冬や花粉の時期は、接触回数を減らして成分もシンプルに。例えば、化粧水はアルコール控えめ・グリセリンやヒアルロン酸中心のやさしい処方に寄せ、セラミド配合の乳液やクリームで包みます。タオルは押さえるだけ、コットンは使用するなら柔らかい大判で摩擦を最小限に[5]. シャワーの温度はぬるめ(約38〜40℃)を保ち[5].、入浴後はできるだけ早く保湿を始めると、つっぱり感が出にくくなります[4].
一方、混合〜オイリーに傾く初夏から夏は、水分過多の重ねすぎでメイク崩れや毛穴の目立ちにつながることがあります。ベタつきが気になるTゾーンは、軽いジェル乳液やノンコメドジェニックな処方を選びつつ、頬など乾きやすい部位は従来どおりのクリームで守る“部位別設計”が有効です。皮脂崩れ対策は、日中の過剰なあぶら取りで取りすぎないことも大切。朝の機能性美容液をナイアシンアミドやビタミンC誘導体に寄せると、キメの整い感やメイク持ちが安定しやすくなります。
“日本の空調と紫外線”に合わせた微調整
空調による乾燥は、顔だけでなく首・デコルテにも及びます。夜の保湿は顔から首へ自然に延長し、日中は日焼け止めも同じく首まで。室内作業中心の日は、保湿ミストを近づけすぎず細かい霧で顔全体に薄く。水分だけで終えるのではなく、その後にハンドプレスで手持ちの乳液を米粒ほど追加して軽く押さえると、蒸発を防ぎやすくなります。夏の紫外線ピーク期は、外出前の塗り直しを前提に、朝の乳液・クリームをやや軽めにするバランスも有効です。
“攻め”と“守り”の配分を決める
年齢を重ねると、気になるテーマが増えるのは自然なこと。とはいえ、同じ夜に攻めの成分を多種混ぜるより、1テーマずつ期間を区切って集中する方が、肌も心も安定します。例えば、レチノールの慣らし期間は週2回から様子を見て、他の日は保湿中心に。ビタミンC誘導体は朝に、夜はナイアシンアミドといった時間帯の分担も、刺激と効果のバランスを取りやすい方法です。どう組むか迷ったら、まずはミニマム5の骨格を守り、+αは“1つだけ”の追加から始めると、変化の有無が判断しやすくなります。
続けるためのリアルTipsと、よくある疑問
続く設計は、生活動線の中にスキンケアを置くことから生まれます。朝は3分を目安に、洗面台に置くアイテムを最小限にし、手のひらでなじませることを基本にすると、動作が減って続きます。夜は7分をひとつの上限に。ポイントメイクを帰宅後すぐ落としておく、入浴後できるだけ早く化粧水を始める、シートマスクは家事の合間でも10分以内に外すなど、時間のルールを決めると迷いが減ります。編集部でも、タイマーを3分・7分で鳴らすだけで“だらだら塗り”や“やりすぎ”が減り、翌朝のコンディション管理がしやすくなりました。
Q&A——“それって、どうすれば?”に答えます
化粧水は何回重ねるべき? 摩擦を増やさないことが最優先です。基本は一度で十分。乾きやすい季節や部位だけ、手のひらで軽く追い足しを。重ねる回数より、入浴後や洗顔後の“タイミングの早さ”が効いてきます。
シートマスクは毎日してもいい? 肌に余裕がある時期は楽しんでもOKですが、乾くまで置くと逆に水分が抜けやすくなります。取り外しは“乾く前”。ゆらぎ期や敏感傾向の時は、保湿クリームを厚めに塗る「クリームマスク」的なケアが穏やかです。
ビタミンCとレチノールは一緒に使える? 使えない組み合わせではありませんが、肌が慣れていない時期は刺激が増える要因になります。朝はビタミンC誘導体、夜はレチノールなど、時間帯で分けると判断しやすく、様子見もしやすくなります。
日焼け止めは室内でも必要? 一日中カーテンを閉めた室内であれば過剰に心配する必要はありませんが、窓際での作業やちょっとした外出がある日は塗るのが安心です[2].
まとめ——“多いほど良い”から“合うほど良い”へ
韓国の10ステップが教えてくれたのは、重ねる順序と肌との対話でした。その学びを日本の気候と生活に合わせて削ぎ落とすと、朝は守る、夜は整えるというシンプルな輪郭が見えてきます。紫外線は一年中、湿度は季節で揺れ、役割は日々増える。だからこそ、工程は少なく、順序は理にかなって、接触はやさしく、+αは必要な時だけという設計が、ゆらぎ世代の味方になります。
“ぴったり”は人の数だけあります。 今日の自分に合う最小限から始め、1週間ごとに“増やす・減らす”を試してみてください。3分の朝、7分の夜で、肌も気持ちも余白ができるはず。明日の洗面台に置くものをひとつ減らす——その小さな選択が、続くスキンケアのいちばんの近道です。
参考文献
- World Health Organization. Ultraviolet radiation. https://www.who.int/health-topics/ultraviolet-radiation#:~:text=As%20sunlight%20passes%20through%20the,UVA%20with%20a%20small%20UVB
- Centers for Disease Control and Prevention. Ultraviolet Radiation. https://www.cdc.gov/radiation-health/data-research/facts-stats/ultraviolet-radiation.html#:~:text=all%20of%20the%20ultraviolet%20radiation,UVC%20produced%20by
- Maruho. 皮膚の潤いとバリア機能について. https://www.maruho.co.jp/medical/hirudoid/skin/index.html
- PMC. Article on skin barrier and moisturization. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3425021/#:~:text=concentration%2C%20the%20majority%20of%20the,Additionally
- NS-PACE. スキンケアの基本——洗浄と摩擦の考え方. https://www.ns-pace.com/article/category/feature/skincare-1/#:~:text=%EF%BC%881%EF%BC%89%E6%B8%A9%E6%B9%AF%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%95%B4%20%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E6%B4%97%E6%B5%84%E3%81%AB%E4%BD%BF%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BE%AE%E6%B8%A9%E6%B9%AF%E3%81%AF%E3%80%8138%EF%BD%9E40%E2%84%83%E3%81%AE%E7%86%B1%E3%81%99%E3%81%8E%E3%81%AA%E3%81%84%E6%B8%A9%E6%B9%AF%E3%82%92%E7%94%A8%E3%81%84%E3%80%81%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E3%83%90%E3%83%AA%E3%82%A2%E6%A9%9F%E8%83%BD%E3%81%AE%E4%BD%8E%E4%B8%8B%E3%82%84%E4%B9%BE%E7%87%A5%E3%82%92%E9%98%B2%E3%81%8E%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82