忙しい30代・40代でも使える!たった3ステップで相手の本音を引き出す取材準備術

取材は準備で8割が決まる。本番は全体の2〜4割にすぎない事実を踏まえ、目的設計・質問設計・編集の磨き直しという3ステップで、忙しい編集者や個人記者が短時間で確実に話を引き出す実践チェックリスト付きガイド。

忙しい30代・40代でも使える!たった3ステップで相手の本音を引き出す取材準備術

書き出し:数字が示す“取材の本質”

文字起こしは実時間の3〜5倍かかるのが一般的な目安です[1,2]。条件(専門用語の多さ、話者数、音質など)によっては、5〜15倍とする見積もりもあります[3]。さらに、準備・本番・後工程で見れば、実は本番に充てられるのは全体の2〜4割程度というのが編集実務の経験則です。取材とは、会って話す瞬間だけの仕事ではありません。編集部が日々の制作プロセスを棚卸しすると、限られた時間で良い言葉を引き出す鍵は、事前の設計と、終わってからの“磨き直し”にあると分かります。リモートの普及でインタビューの場は多様になりましたが、聞く力の本質は変わりません。だからこそ、私たちの生活や感情の揺らぎに寄り添いつつ、再現性のある手順で、確実に成果につなげる方法をまとめました。今日の会議と夕方の保育園お迎えの間でも使える、現実的な技術です。

取材は“準備”で8割決まる:目的設計と質問設計

最初に置くべきは「誰のための、どんな変化を起こす記事か」という目的です。読者が明日何を変えられるかまで言い切れると、聞くべき問いが自然に絞られていきます。例えば採用広報なら、読み手は転職を迷う実務者です。彼女が職場を具体的に想像できるだけの情報密度を確保するには、理念の言い換えではなく、行動や仕組み、数字が要ります。目的が定まったら、仮説を一枚にまとめます。「この企業はAが強み。だからBができて、結果Cが起きたはず」という骨子です。仮説は当てるためではなく、外すために持ちます。外れたときに何を深掘りするか、舵を切る基準ができるからです。

依頼文は、相手の時間を尊重する提案書だと考えます。件名は「【取材のお願い/30分】◯◯について」で要点を先頭に置き、本文は掲載媒体・目的・所要時間・候補日時・録音の有無・質問骨子・掲載前確認の可否を一息で読める長さにまとめます。例えば「今回は新規事業Xの意思決定プロセスを中心に伺いたいです。30分のオンライン、録音あり、掲載前の事実確認をお願いします」と明確に書くと、相手が準備しやすくなります。時間設計は、45分なら導入の関係づくりを7分、本題の深掘りを33分、クロージングの確認を5分という配分が目安です。初回は多めに見積もり、オーバーしたら追加の短時間インタビューを提案して約束を守る。信頼は、段取りに宿ります。

質問設計は「オープン→具体→数字→比較→再現」の流れで温度を上げていくのが効率的です。まず「何が起点でしたか?」で物語を開き、次に「そのとき具体的に誰が何をしましたか?」と行動にフォーカスします。続いて「成果はどのくらいでしたか?期間や金額、人数で言うと」と定量化し、「以前と比べて何が変わりましたか?」で差分を明らかにする。最後に「当時の会議室の空気を再現すると?」と情景を取りにいきます。名言は追いかけるものではなく、副産物です。語り手の現場を立ち上げる問いを重ねたとき、自然に生まれます。終盤には「ここまでで強調しておきたい点は?」「オフレコ範囲の再確認をさせてください」を入れると、齟齬を最小化できます。なお、インタビューは一般にオープンな問いから始め、徐々にクローズドな問いで具体化する進め方が推奨されています[4]。

相手リサーチの深さは“1次情報”で決まる

短時間でも一次情報に触れると、質問の解像度が一段上がります。直近のニュースリリース、登壇資料やスライド共有サイト、本人や組織のSNSに目を通し、固有名詞と時系列を押さえます。二次情報の要約に頼ると、言葉が一般論に流れやすくなります。たとえば「ユーザーから好評」ではなく「◯月のNPSが何ポイント上がり、問い合わせの電話が1日◯件から◯件に」という形で、固有の変化を聞き出せる準備を整えます。これだけで、相手のモチベーションが上がり、話の密度が一段濃くなります。事前リサーチで相手の言葉の“核”を見つけてから問いを設計するアプローチは、実務家の推奨とも整合します[6]。

メール依頼の“型”を自分の言葉にする

型は心を空けるための器です。件名は短く、本文冒頭で要点を言い切り、次に背景とメリット、最後にアクション(候補日時の提示や回答期限)という順番で書くと、返信率が上がります。「なぜ今、あなたに」を一文で言えること。これが最短の信頼形成です。断られた場合の二通目は、負荷を下げる提案に変えます。「10分だけ」「メールで」「確認事項を3点に絞る」など、相手の都合が主語の交渉を心がけます。

本番で“引き出す”:聴く技術と時間術

冒頭の90秒は、取材の空気を決める黄金の時間です。場所や接続の確認、録音の同意、目的の再共有までを滑らかに済ませ、「今日はXの意思決定と、その背景の感情までご一緒に辿らせてください」と範囲を共有します。録音は二重化し、メモは名詞と数字のみに絞ると、目線を相手から外さずに済みます。オンラインならカメラ位置を目線の高さに揃え、オフラインなら視線・頷き・沈黙を使い分け、相手のテンポに寄り添います。沈黙は圧ではなく余白です。そこで出てくる二言目に、本音が宿ることが多いからです。

深掘りの技術はシンプルです。相手の語尾を要約して返す「パラフレーズ」で安心感をつくり、「それはいつ、どこで、誰が、何を?」と事実に下ろし、「そのときの数字や物差しで言うと?」と定量化し、「以前と比べると?」で相対化します。感情の層を取りにいくときは「その決断の手前に、迷いはありましたか?」と二段階で聞き、ポジティブ・ネガティブ両方の感情語を用意しておくと、相手は選びやすくなります。終盤は「この記事の読者に、一言だけ掲示板に貼るなら?」と問い、要約の共同作業に入ります。クロージングでは、引用の事実確認フローと公開予定日、画像の扱いを必ず口頭で合意します。なお、終盤に再度オープンクエスチョンを用いて全体の感想や要点を再確認する手法は、実務でも推奨されています[5]。

脱“名言待ち”:エピソードを立ち上げる

抽象は悪者ではありませんが、記事は具体でしか読者の心に触れません。「現場の音」を拾うには、再現可能な問いが効きます。「当日の机の上には何がありましたか?」「Slackで最初に飛んだメッセージは?」「最初に反対したのは誰でしたか?」といった具体の扉を開けると、登場人物が動き出します。そこで初めて、理念や価値観が血の通った言葉に変わります。数字も同様です。「大きく伸びた」ではなく「前年同月比で28%伸びた」「商談1件あたりの準備時間が60分から35分に」など、単位のついた変化を取りにいきます。

トラブル対応:ズレ・守秘・巻き込みを捌く

話が長くなって目的から離れたときは、「素敵な視点です。今日の目的に戻すと、特に◯◯の部分を深く伺いたいです」と感謝を添えてハンドルを切ります。守秘に触れそうなら「数字はレンジでの言及にしましょう」「固有名詞は役職に置き換えます」と提案し、安心してもらいます。同席者が回答を横取りする場合は、「今の問いは◯◯さんの体験を伺いたいです。後ほど補足をお願いします」と順番を明確にします。感情が高ぶったら、一度水を差し、「事実の確認に切り替えますね」とペースを落とします。すべては、相手の安全を守るための編集です。

“終わってから”が勝負:編集・確認・関係構築

取材直後の30分が黄金のリカップタイムです。移動中でも、要点を3つだけ自分宛にメモします。「今日の核」「使える数字」「記事の一文」です。帰社後は、録音の頭出しをしながら、本文の骨子を先に作ります。見出しは読者の行動を促す命令形か問いで置き、「誰に何を届け、何を変えるのか」を一行で言い切ります。文章化の前に、引用候補を3つに絞り、出典とタイムスタンプを併記しておくと、後の事実確認が早くなります。AI文字起こしは強力ですが、固有名詞と数字、否定の表現は必ず原音で突き合わせます。特に製品名や人名は誤変換が起きやすい領域です。

事実確認の依頼は、相手の負担を最小化するのが鉄則です。本文丸ごとではなく、引用と数字、肩書き、キャプションなど“誤ると致命的な箇所”を抜き出してリンクで渡し、期限と修正のルールを明記します。「事実の訂正は歓迎、表現の調整は相談」で線引きを示すと、齟齬が減ります。公開後は、告知用の短文や画像を同封してお礼を送り、SNSのシェアに繋がる導線を用意します。関係は“次”で育ちます。年次の振り返り企画や続編の打診を、相手の成果タイミングに合わせて提案できると、取材は単発の消耗から、互いの資産へと変わります。

30分ルーティン:熱のあるうちに仕上げる

テンポよく進めるために、取材後30分の標準ルーティンを作ります。最初の5分で「核・数字・引用」を三行にまとめ、次の10分で見出し案と導入の200字を下書きします。さらに10分で本文の章立てを書き、最後の5分でお礼と事実確認のメールを送る。これだけで、明日の自分のハードルが劇的に下がります。翌日は、推敲に集中できます。

記事の質を上げる“最後の問い”

公開直前に自問します。「この原稿は、誰のどんな行動を変えるか」「なぜ今、読む価値があるか」「同じテーマの記事と何が違うか」。ここで弱い箇所が見つかったら、具体と数字を足します。関連記事への導線も仕上げましょう。メールの段取りはメール術、問いの磨き方は問いの立て方、メモの整理はノート術、会議の運びは会議ファシリテーションが参考になります。制作はチーム戦です。社内の知恵とリンクで、読者の旅路を伴走します。

まとめ:言葉は関係から生まれる

インタビューは、相手の人生時間を預かる行為です。だからこそ、準備で安全を作り、本番で尊重を示し、後工程で責任を果たす。この3フェーズさえ外さなければ、名言がなくても、読む人の行動を変える記事は作れます。日々揺れる私たちの現実に合わせ、短時間でも回る仕組みに落とし込むことが、続けるコツです。今日の会議の合間に、一本だけ依頼メールの下書きを作ってみませんか。次に話を聞きたい人の名前を一人、メモに書くところから始めましょう。小さな一歩が、確かな言葉を連れてきます。

参考文献

  1. SACScribeブログ「文字起こしに必要な時間の目安(1時間の音声=4〜5時間)」
  2. アドバンスト・メディア AmiVoiceコラム「テープ起こしにかかる平均所要時間(音声長の3〜5倍)」2014年
  3. Rakumoji「文字起こしにかかる時間は音声の5〜15倍」
  4. Lifehacker Japan「オープンな質問から始め、徐々にクローズドに移行する質問術」
  5. ourly「インタビューの質問例と終盤のオープンクエスチョンの活用」
  6. ダイヤモンド・オンライン「事前リサーチで興味点をひとつ言語化する重要性(記事ID:289158)」

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。