食物繊維の種類と上手な摂り方|水溶性・不溶性、粘性・発酵性を知って無理なく1日18gを目指す

同じ「食物繊維」でも水溶性・不溶性で働きは異なります。本記事では40代の女性向けに目安量と朝昼晩の献立例、忙しくても続く時短の摂り方やコンビニでの選び方、今日から試せる簡単レシピを編集部目線で具体的に解説します。

食物繊維の種類と上手な摂り方|水溶性・不溶性、粘性・発酵性を知って無理なく1日18gを目指す

食物繊維の「種類」を知る:水溶性・不溶性、その先の粘性と発酵性

統計によると、40代女性の食物繊維摂取量は目標に届いていません。 国民健康・栄養調査の傾向では、成人女性の平均は1日およそ14〜15g前後で推移し、目標量とされる18gに対して不足が見られます[1,2]。世界の研究データでも、食物繊維の摂取量が多いほど生活習慣関連の指標が良好である傾向が示され、1日25〜29gを推奨する報告もあります[3]。編集部が国内外の資料を照らし合わせると、重要なのは「量」だけでなく、食物繊維の「種類」を組み合わせること。水溶性と不溶性、そして粘性や発酵性という性質が、血糖やコレステロール、便通、そして腸内環境にそれぞれ違う影響を及ぼすといわれています[4,7]。忙しさと体調の揺らぎが重なる私たちの年代だからこそ、がんばりすぎない現実的な摂り方が有用です。

食物繊維は大きく水に溶ける「水溶性」と、溶けない「不溶性」に分かれます[4]。さらに近年は、どれだけトロみをつくるか(粘性)、**腸内細菌にどれだけ食べられるか(発酵性)**という視点が健康影響を左右すると理解されています[7]。研究データでは、粘性のある水溶性食物繊維は食後血糖の上昇を緩やかにすると報告され[4,9]、LDLコレステロールに対して低下方向の影響がある可能性が示されています。例えばオート麦のβ-グルカンを1日3g程度継続した場合に、LDLコレステロールが低下するという報告があります[5]。一方で、発酵性の高い食物繊維は、腸内細菌が短鎖脂肪酸をつくる助けとなり、腸内環境の改善や腸のバリア機能のサポートにつながる可能性があると報告されています[6].

水溶性食物繊維は、海藻、オートミールや大麦、果物(りんごや柑橘の内皮)、豆類などに多く含まれます。ポイントは“トロみ”と“発酵されやすさ”。味噌汁のわかめや、とろろ昆布、もち麦ごはん、りんごの皮つき、生野菜に豆を一握り加えるなど、日常の皿に少しずつ重ねていくと、血糖・コレステロール・腸内環境に対して横断的なメリットが期待されます[4,5,6]。

不溶性食物繊維は、全粒の穀類、野菜、きのこ、豆の外皮、ふすま(ブラン)などに多く、腸のぜん動を促し、便のカサを増す働きがあるとされています[7]。とくに便秘傾向の方には有用ですが、急に大量に増やすとガスやお腹の張りが出ることがあります[8]。この年代に多い「朝は出ない、夕方から重たい」という悩みには、不溶性ばかりを増やすより、水溶性を組み合わせて腸内環境を整えながら、コップ一杯の水とセットで少しずつ増やすのが現実的です[8]。

私たちの年代にフィットする理由

35〜45歳は、ホルモン変化や働き方の転換で生活リズムが揺らぎやすい時期。水溶性食物繊維は食後の血糖の上昇を緩やかにするといわれ、不溶性食物繊維はデスクワークで滞りやすい腸の動きを助けるとされています[4,7,9]。生活習慣の管理を考えるうえでも、量と種類の組み合わせが役立つ可能性があります[3,7]。

どれくらい摂ればいい?目標量と“ざっくり換算”

国内の目標量は成人女性でおよそ1日18gが目安です[2]。世界のレビューでは25g前後まで増やすほど全体的な指標が良い傾向が示されていますが[3]、まずは**“いまより+5g”**を現実的な第一歩にすると続けやすくなります。体感としては、野菜350g(両手山盛り1〜2回)で7〜8g、雑穀やもち麦を混ぜた主食で2〜4g、豆類の小鉢で4〜6g、果物を1つで2〜3gがざっくりの目安です。朝にオートミールと果物、昼にもち麦ごはんとわかめの味噌汁、夜に豆ときのこの副菜を加えると、自然と18gラインが見えてきます。なお、野菜摂取量としては1日350gが健康目標として掲げられています[11].

忙しい日のモデルをイメージしてみましょう。朝は牛乳や豆乳でオーバーナイトオーツを用意しておけば、寝ているあいだに水溶性食物繊維がほどよく水分を吸い、食べるときはベリーやバナナを少し添えるだけ。昼はコンビニの選択を、白いパンより全粒粉のサンド、うどんよりそば、白米おにぎりよりもち麦や雑穀のおにぎりに寄せます。サラダは葉だけでなく豆・海藻・きのこ入りを選び、味噌汁やスープを最初にひと口。こうして**“置き換える”“足す”の小さな選択**を重ねるだけで、数字は動きます。

コンビニ・外食で迷わないための合言葉

「主食は粒を残す」「具は茶色+海のもの」「最初に汁物」。主食に粒感が残るほど不溶性の比率が上がり、海のもの(わかめ、ひじき、めかぶ、もずく)は水溶性が手軽に足せます。最初に汁物をとると、粘性のある水溶性食物繊維が食後血糖の上がり方をゆるやかにするといわれ、満腹感にもつながることがあります[4]。

忙しくても続く摂り方:仕込みとショートカット

平日は「考えない仕組み」をつくるとラクです。米は最初からもち麦を混ぜて炊いておけば、よそるだけで水溶性と不溶性のバランスが整います。冷凍のブロッコリーやミックスきのこ、カットわかめ、蒸し大豆や豆の水煮は、帰宅後5分の副菜を成立させる強い味方。野菜は“生で食べねば”にとらわれず、味噌汁やスープにして量を稼ぐと体も温まります。フルーツは朝に、皮が食べられるものは皮つきで。小腹には素焼きナッツや高カカオチョコ、プレーンヨーグルトにきな粉を合わせると、たんぱく質と食物繊維の満足感が同時にとれます。

編集部でも実践しているのが、「乾物ベースの味方を常備」すること。切り干し大根、ひじき、おからパウダー、押し麦は、洗う・戻す・混ぜるの短い手順で一品が増やせます。たとえばキャベツの千切りにツナとおからパウダーを混ぜ、レモンとオリーブオイルであえるだけで、噛みごたえと満腹感がぐっと上がります。パン派なら、全粒粉パンにフムス(ひよこ豆のペースト)と野菜を厚めに。ごはん派なら、納豆に刻みオクラとめかぶを混ぜて粘りをプラス。水溶性と不溶性の“ペアリング”を意識するだけで、働きは重なっていきます。

体質に合わせて微調整する

お腹の張りやすさ、ガス、便の硬さや軟らかさは個人差が大きく、日によっても揺れます。張りやすい日は不溶性を控えめにし、オートミール、海藻、果物、じゃがいも・長いもなど水溶性寄りにシフトすると落ち着くことが多いです[8]。便が硬いときは、水分と油(オリーブオイルやナッツ)をいつもより少し意識。増やし方は“少しずつ”が鉄則で、食物繊維の量を上げるほどに水も一緒に増やすとトラブルを避けやすくなります[8]。気になる症状や治療中の病気がある場合は、医療機関の指示を優先してください。

サラダだけでは足りない?よくある誤解と答え

葉物中心のサラダはヘルシーですが、食物繊維の絶対量は意外に伸びません。レタス山盛りより、豆や雑穀、海藻、きのこをひとつ足すほうが効率的です[7]。フルーツの糖が気になるときは、食後ではなく食事の最初に少量をとって満足感を先取りするのも手。玄米が苦手なら、白米にもち麦や押し麦を混ぜたハーフ&ハーフで十分です。食パンは日替わりで全粒粉にする、そばやビーフンのような穀類をローテーションに入れるなど、完璧を目指さない置き換えが続きます。

サプリや飲料の食物繊維(難消化性デキストリンなど)は、外食が続く日や忙しい時期の“つなぎ”として活用する選択肢です[10]。ただし、土台は食事から。噛む・混ざる・発酵するというプロセス自体が、腸にとって大事な刺激になります[6]。腸内環境をさらに整えたいと感じたら、基礎から見直すガイドも参考にしてみてください(腸内環境を整える基本)。血糖が気になる日々には、主食の工夫と合わせてこちらの記事も役立ちます(ゆらぎ世代の血糖ケア入門)。

1日の流れに落とし込むミニ・シナリオ

平日の朝、冷蔵庫から前夜に作ったオーバーナイトオーツを取り出し、りんごを皮ごと薄切りにしてのせる。昼は会議前にコンビニで、もち麦おにぎりと豆と海藻が入ったサラダ、わかめの味噌汁を手に取る。夜は家族の好みに合わせて、いつものカレーにレンズ豆ときのこを足して煮込む。どれも特別な料理ではありませんが、**水溶性+不溶性の“掛け算”**を意識した選択です。たんぱく質との組み合わせも満足感を高めるので、参考記事もどうぞ(40代のためのたんぱく質の摂り方)。

まとめ:完璧より「いまより+5g」。種類の掛け算で調子が整うこともある

食物繊維は、ただ“多ければよい”ではありません。水溶性は食後の血糖やコレステロールに関与するといわれ、発酵性は腸内環境に、不溶性は便通に影響を与えるとされています。働きの違いを知り、日々の一皿にささやかな足し算を続けることが、結果的に大きな差になることがあります。まずは今週、もち麦の炊き込み、わかめの味噌汁、豆の小鉢、皮つきの果物という“定番の4つ”のうち、できそうなひとつから。変化は静かに、徐々に現れることがあります。

参考文献

  1. 厚生労働省. 国民健康・栄養調査 結果・報告. https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-23.html (成人女性の食物繊維摂取が目標量を下回る傾向の概要資料)
  2. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000208913.html (18〜64歳の食物繊維 目標量:男性20〜21g、女性18g)
  3. Reynolds A, Mann J, Cummings J, et al. Carbohydrate quality and human health: a series of systematic reviews and meta-analyses. The Lancet. 2019;393(10170):434-445. doi:10.1016/S0140-6736(18)31809-9
  4. EFSA Panel on Dietetic Products, Nutrition and Allergies (NDA). Scientific Opinion on Dietary Reference Values for carbohydrates and dietary fibre. EFSA Journal. 2010;8(3):1462. doi:10.2903/j.efsa.2010.1462
  5. EFSA NDA Panel. Scientific Opinion on the substantiation of health claims related to beta-glucans and maintenance of normal blood cholesterol concentrations. EFSA Journal. 2011;9(6):2207. doi:10.2903/j.efsa.2011.2207
  6. Koh A, De Vadder F, Kovatcheva-Datchary P, Bäckhed F. From Dietary Fiber to Host Physiology: Short-Chain Fatty Acids as Key Bacterial Metabolites. Cell. 2016;165(6):1332-1345. doi:10.1016/j.cell.2016.05.041
  7. Slavin JL. Fiber and Prebiotics: Mechanisms and Health Benefits. Nutrients. 2013;5(4):1417-1435. doi:10.3390/nu5041417
  8. McRorie JW Jr., McKeown NM. Understanding the Physics of Functional Fibers in the Gastrointestinal Tract: An Evidence-Based Approach to Defining Fiber Types and Mechanisms. Curr Gastroenterol Rep. 2017;19(5):16. doi:10.1007/s11894-017-0555-1
  9. Weickert MO, Pfeiffer AFH. Impact of Dietary Fiber Consumption on Insulin Resistance and the Prevention of Type 2 Diabetes. Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2018;21(4):277-285. doi:10.1097/MCO.0000000000000470
  10. 消費者庁. 特定保健用食品(トクホ)制度(難消化性デキストリン等の関与成分の機能). https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/specified_health_use/
  11. 厚生労働省. 健康日本21(第二次). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html (野菜摂取目標350g/日)

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編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。