皮膚科医が教える「洗う・補う・守る」3ステップ|30代40代が今すぐ見直すべきスキンケアの基本

肌老化の主因は紫外線と乾燥。皮膚科学の視点で基礎スキンケアの核「洗う・補う・守る」を図解でわかりやすく整理。朝夜の手順や分量目安、35〜45歳のゆらぎ世代向けの微調整、使用量イラストとNG習慣を含む実践チェックリストつきで紹介します。

皮膚科医が教える「洗う・補う・守る」3ステップ|30代40代が今すぐ見直すべきスキンケアの基本

基礎は「洗う・補う・守る」。これ以上でも、これ以下でもない

スキンケアは無限に増やせますが、肌が実際に必要としているのはシンプルです。角層という薄い保護膜は、過度な洗浄で壊れ、保湿で補修され、紫外線からの防御で守られます。順番はいつも同じで、洗って、補って、守る。ここからは、それぞれの要点を日常語で確認していきましょう。

洗う:落とすのは汚れだけ。皮脂と角層は“残す”

落とすべきは、汗、皮脂の酸化物、花粉やほこり、日焼け止めやメイクです。必要以上の摩擦と高い洗浄力は、かえって乾燥や赤みの引き金になります。ぬるま湯は32〜34℃を目安にし、手のひらでよく泡立てた低刺激の洗浄剤を顔全体に広げ、円を描かない“面”でそっと滑らせます。時間はおよそ1分以内で十分。小鼻の脇やフェイスラインのすすぎ残しにだけ、最後に一呼吸分の丁寧さを足します。タオルは押し当てるだけ。こすらない。この一手間が、のちの乾燥とツッパリ感を大きく左右します。

補う:水分を入れて逃さない。セラミドで要を固める

保湿の骨格は、肌に水分を与えるもの、柔らかさを出すもの、そしてフタをするものの三層構造です。化粧水で角層を素早く湿らせ、グリセリンやヒアルロン酸などの水分保持成分を行き渡らせます。次に、乳液やクリームで油分を足し、セラミドなどの“細胞間脂質”の足りない部分を補います[3]。乾燥が強い日は、米粒半分ほどのワセリンやバームを目元や口元だけに薄く重ねると、にじみも最小限で済みます。大切なのは、パーツによって“足す量を変える”こと。頬はしっかり、Tゾーンは薄く。顔は一枚の皮ではあるけれど、性格は場所ごとに違うからです。

守る:日焼け止めは毎日。量と塗り直しが結果を決める

日焼け止めのSPFはUVB、PAはUVAに対する防御の目安です。一般的にSPF30でUVBの約97%、**SPF50で約98%**をカバーします[4]。差は小さく見えますが、日常の塗りムラや「量が足りない」ことが効果低下につながりやすいため、PA値(UVA防御)の高いものを十分量使うのが現実的です[5]。顔全体の目安は、いわゆる“2本指”。人差し指と中指に線状に出した量で、だいたい0.8〜1.2g前後になります[4]。頬に2、額に1、鼻とあごに1の“点置き”をしてから、面でそっと広げ、最後にもう一度うすく重ねてムラを埋めます。外出が続く日は、昼すぎにもう一度[6]。色つきの下地やクッションを薄く重ねて塗り直す方法なら、メイクを崩さずに防御を足せます。

朝と夜。現実的に続く“正しい順番”と適量

順番はシンプルなほど続きます。朝は、ぬるま湯または低刺激の洗顔で皮脂膜を整えたら、化粧水で肌をしっとり湿らせ、乳液または軽いクリームで水分をホールド。メイクをするかどうかに関わらず、必ず日焼け止めでフィニッシュします。量の目安を数字で持つと迷いません。洗顔料はアーモンドひと粒ほど、化粧水は500円玉大が手のひら全体になじむくらい、乳液はパール粒大を両頬に半分ずつが扱いやすいでしょう。日焼け止めは“2本指”を忘れずに。首には顔の半量を意識すると、年齢の出やすい首筋の印象が変わります。

夜は、メイクや日焼け止めを使った日はクレンジングから。ウオータープルーフのポイントメイクがある日は、目元と口元だけを先に落として、顔全体は摩擦の少ないオイルやミルクで“面でなじませて面で落とす”感覚を大切にします。ぬるま湯ですすいだあと、皮脂が多くない人は洗顔料を省く選択肢もありますが、すっきり感がほしい日や皮脂が気になる日は、やわらかい泡で短時間のダブル洗顔を。保湿は、化粧水→乳液またはクリームの二段。乾燥が強い季節や寝具との摩擦が気になる人は、目元や口元に薄くバームを重ねて眠ります。ベッドサイドに小さな保湿剤を置いておき、歯磨きの前後で指先に“ちょん”と取るルーティンにしてしまうと、抜け漏れがなくなります。

時間がない日こそ“削らないコア”を決める

すべてを完璧にする必要はありません。寝坊した朝は洗顔料を使わずぬるま湯だけにしてもよい。その代わり、保湿と日焼け止めは死守する。残業で遅い夜は、ポイントメイクを先に外しておき、帰宅後にクレンジング→保湿だけで寝る。こうして“削らないコア”を決めておくと、忙しい日でも土台は崩れません。

35〜45歳の肌に効く微調整。成分と季節のさじ加減

ゆらぎ世代の肌は、皮脂量の減少、角層の水分保持力の低下、ホルモン変動やストレス、睡眠不足の影響を受けやすくなります。万能薬はありませんが、“いまの自分”を観察して、成分と使用量を少しずつ動かすことで、肌は静かに応えてくれます。

成分の選び方:整える・守る・底上げする

乾燥やごわつきには、ヒト型セラミドやナイアシンアミドのような“土台を整える”成分が頼りになります。とくにナイアシンアミドは、肌のキメをなめらかに整え、うるおい保持をサポートする目的で日常使いしやすい素材です[7]。くすみが気になる時は、アスコルビルリン酸NaやAPMなどのビタミンC誘導体を朝の化粧水後に少量。日中は必ず日焼け止めと合わせます。乾燥による小ジワを目立たなくしたい夜は、レチノールやレチナールなどのビタミンA系を低濃度から。はじめは頬の高い位置だけに週2回、乳液と混ぜて薄く慣らし、赤みや乾燥が出なければ回数を増やす、といった徐々のステップが安全です。どの成分も“効かせるほど塗る”ではなく“肌が受け入れる量で積み重ねる”。これが、反応の出やすい時期を賢く乗り切るコツです。

季節と生活のリズムに合わせて変える

冬は室内外の寒暖差と低湿度が続くため、乳液の後にクリームを指先ひとすくい足して、目元と口元を囲むように“鎧”を作ります。朝は加湿器のスイッチを入れてから洗顔を始めるだけでも、肌のつっぱりは和らぎます。梅雨〜夏は、ジェル状の保湿剤や軽い乳液で“うるおいは薄く広く”を合言葉に。汗や皮脂が増えて毛穴が気になる日は、夜の洗顔を丁寧にし、クリームの量を少し減らすだけで十分です。長時間のマスクや在宅ワークの日は、摩擦を減らすためにファンデーションを薄くし、クッションタイプで日中の塗り直しを“置くように”重ねると、肌負担を増やさずに清潔感を保てます。

よくある勘違いを更新する。肌はもっとラクに整う

強くこすらないと落ちない、と信じていませんか。皮脂やメイクは、時間と馴染ませ方で落とすのが正解です。力ではなく、やわらかな圧とぬるま湯の温度が汚れを動かします。化粧水だけで十分に潤う、という思い込みも見直したいポイント。水分は蒸発します。水分を入れたら、必ず油分で留める。これが抜けると、一時的にうるおっても、数時間後に乾燥に転びます。高価なアイテムほど効く、という図式もシンプルではありません。肌に合う濃度、テクスチャー、適量がそろってこそ結果が出ます。ドラッグストアの名品を軸に、季節や肌の調子で一品だけ入れ替える。そんな“引き算の上に少しの足し算”が、実は最短距離です。

そして、日焼け止めは季節限定ではありません。曇りの日でもUVAは降り注ぎ、窓ガラスも一部通過します[8,1]。屋内の日差しの差し込むデスクワークこそ、日中の塗り直しが効いてきます。朝に2本指、昼にハーフ分をさっと重ねる。この小さな習慣が、数年後の透明感を左右します[6]。

まとめ:続けられる“最小限の正解”を、今日から

増やすのは簡単、続けるのはむずかしい。だからこそ、基礎スキンケアは「洗う・補う・守る」の最小限の正解を、毎日同じ順番で淡々と重ねるのがいちばんの近道です。朝は、ぬるま湯→保湿→日焼け止め2本指。夜は、落とす→保湿→必要なら部分バーム。忙しい日でも“削らないコア”を胸ポケットに入れておけば、肌は裏切りません。

明日の朝、鏡の前で何から変えますか。もし迷ったら、まずは日焼け止めの量を見直し、頬の高い位置にうすく重ねるところから始めましょう。季節が変わったら、クリームの量を半歩だけ動かす。その小さな一歩の積み重ねが、ゆらぎの波を静かに整えてくれます。

参考文献

  1. NCBI. Skin aging and photoaging (review). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3583883/
  2. PubMed. Photoaging of the skin. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2941202/
  3. NCBI. Ceramide in skin barrier and aging (review). https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9293121/
  4. American Academy of Dermatology (AAD). How to apply sunscreen. https://www.aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen/
  5. American Academy of Dermatology (AAD). How to apply sunscreen — applying enough matters (anchor #2). https://www.aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen/#:~:text=2,is%20unprotected%20and%20can%20burn
  6. American Academy of Dermatology (AAD). How to apply sunscreen — reapplication and other reasons sunscreen fails (anchor #5). https://www.aad.org/public/everyday-care/sun-protection/shade-clothing-sunscreen/how-to-apply-sunscreen/#:~:text=5,or%20used%20an%20expired%20sunscreen
  7. PubMed. Niacinamide: a B3 vitamin with multiple skin benefits. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19017042/
  8. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Sun Safety. https://www.cdc.gov/skin-cancer/sun-safety/index.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。