セラミドとは何か。「飲む保湿」の理屈をやさしく
冬の室内湿度はしばしば40%を下回り、肌の水分蒸散量(TEWL)は乾燥期に増えることが各種研究で報告されています(測定条件や季節・温度で変動する報告もあります)[1,2,3]。保湿剤を重ねても追いつかない日があるのは、角層のバリア成分そのものが揺らいでいるから。研究データでは、植物由来のグルコシルセラミドを4〜8週間摂取すると角層水分量が約10〜20%増え、TEWLが5〜15%低下したとする報告が複数あります[4]。編集部がデータを検討すると、セラミドサプリは「塗るだけでは埋まらない隙間」を内側から底上げする現実的な選択肢になり得ると見えてきました。もちろん個人差はありますが、“飲む保湿”は年齢とともに低下しがちな肌のうるおい保持力をサポートする、エビデンスの蓄積が進むアプローチです。
セラミドは、角層細胞のすき間を埋める脂質の主成分で、水分を抱え込む性質を持ちます。レンガをモルタルで固めるように、角層細胞と細胞の間をセラミドが満たすことで、肌のうるおいが逃げにくくなるイメージです。加齢や季節、強い洗浄、ストレスなどが重なると、このモルタルが痩せてすき間風が入りやすくなります。研究では、年齢とともに角層セラミド量が緩やかに低下する傾向が示され、特に乾燥期に顕著になります[4]。
では、口から摂ったセラミドはどう働くのでしょうか。植物由来セラミドの多くはグルコシルセラミドの形で、消化の過程で分解・吸収され、体内で再合成されると考えられています[4]。動物実験やヒト試験では、摂取後に角層水分量の増加やTEWLの低下が観察され[4,5]、**「バリアの隙間を埋める材料を内側から供給する」**という機序が仮説として支持されています[4]。外側からの保湿が“今ある水分を逃がさない”対処だとすれば、内側からのセラミド補給は“逃げにくい構造を作る”基礎工事に近いイメージです。
40代の乾燥は「量」と「質」のダブルで起きる
35〜45歳の肌は、皮脂分泌の緩やかな低下に加えて、角層のターンオーバーが不均一になりやすく、セラミドの「量」と「質」の両面でバランスを崩しがちです。表面は油っぽいのに中は乾く、いわゆるインナードライもこのバランスの乱れから生じます。化粧水が入りにくい、日中のつっぱり感、ファンデの粉吹きといったサインが積み重なっているなら、素材の足し算としてのセラミドを検討する価値があります。
研究データが示す「実感の目安」
ヒト試験では、摂取開始から4週間前後で角層水分量の有意な増加、8週間でTEWLのさらなる低下が観察された報告が多く、かゆみや乾燥スコアの主観的改善も記録されています[4,5]。一方で、環境(湿度・気温)や生活習慣の影響も大きく、全員が同じ速度で変化するわけではありません。編集部としては、まず8週間を一つの区切りに、季節の谷(秋口・真冬・花粉期)をまたぐ継続を提案します。
セラミドサプリが向いている人、向いていない人
「どこまで期待して良いのか」を見極めるのが大人の選び方。向いているのは、季節の変わり目に頬や口周りの粉吹きが出やすい人、ボディ(すね・背中)がザラつきやすい人、インナードライ傾向が強く日中のつっぱりを感じる人、マスクや花粉で敏感に傾きやすい人です。塗る保湿を見直しても改善の頭打ちを感じているなら、内側の材料不足を補う考え方は理にかないます。
一方で、即効の“潤い爆上げ”を期待する人や、睡眠不足・入浴後の無保湿・強い摩擦といった生活要因が大きい人は、まず外側の習慣を整えるほうが費用対効果は高くなります。重度の皮膚疾患が疑われる場合は医療機関での診断が第一です。また、小麦アレルギーがある場合は小麦由来原料を避けるなど、原材料表示の確認は必須です。妊娠・授乳中、服薬中の人はかかりつけに相談してください。
選び方と飲み方。失敗しないための実践ポイント
まず、原料の由来に目を向けます。米、小麦、こんにゃく、トウモロコシなど植物由来のセラミドが主流で、いずれもグルコシルセラミドを標準化して配合している製品が多く見られます。重要なのはパッケージにある含有量の表記で、研究で用いられる目安としては1日あたりグルコシルセラミド約1.2〜1.8mg相当のレンジが多い印象です[4]。機能性表示食品であれば、「肌の水分を逃がしにくくするのを助ける」などの機能表示と、届出番号、機能性関与成分、摂取目安量が明記されています。ここが整っているかをまず確認すると、比較がしやすくなります[1].
次に、製品の「設計」にも注目します。セラミドは脂質なので、粉末でも油中に分散させても機能は期待できますが、賦形剤や香料、着色料などの添加が気になる人はシンプル処方のものを選ぶと続けやすくなります。カプセルサイズや1日の摂取カプセル数も、毎日の負担感に直結します。続ける前提で、自分の生活のリズムに無理なくはまるかを基準に選ぶと失敗が減ります。
飲み方は難しくありません。胃腸の負担を避けるために食後に摂る人が多く、朝か夜かは習慣に合わせて構いません。大切なのは毎日同じタイミングで、8週間は淡々と続けること。季節の乾燥が深まる少し前、例えば秋口から始めると、冬本番に向けて基礎力の底上げが間に合います。ボディの乾燥が強い人は、同じタイミングでボディクリームの塗布も日課にして、内外からのケアを噛み合わせると体感が出やすくなります。
相性の良い生活習慣も押さえておきましょう。たんぱく質と必須脂肪酸、亜鉛などのミネラルは角層の構造づくりに寄与しますし、睡眠中に進む肌の再構築を邪魔しないためにも、寝る直前の飲酒やブルーライトの浴びすぎは控えたいところです。日中は室内湿度を50%前後に保ち、強い洗浄や長時間の熱いシャワーは避ける。こうしたベーシックが整うほど、サプリメントの「効率」は上がります[1].
外から塗るセラミドとの関係
よくある誤解が「飲むなら塗らなくていいのか?」という二者択一です。実際には、塗るケアは即効性、飲むケアは持続性とベース作りという関係で、両者は競合ではなく補完関係にあります。朝は塗るケアで日中の乾燥をしのぎ、飲むケアでじっくりと角層の素材を満たしていく。数週間スパンで見ると、崩れにくさや「何もしていない素肌時間」の快適さで差が出てきます。
「効いているか」をどう見極めるか。編集部の実感メモ
実感は鏡越しの主観に左右されがちです。編集部が推すのは、数字と行動のセットで記録する方法。具体的には、同じ時間帯・同じ部位の肌をスマホで定点撮影し、頬の粉吹きやメイク崩れの出方、入浴後のつっぱり時間といった行動指標も一緒にメモします。週に一度、手の甲や頬のキメが均一に見えるか、微細な乱れが減っているかを観察する。さらに、リップクリームやハンドクリームを塗る回数、ボディのかゆみで目が覚める頻度なども行動ログとして残すと、**「ちょっと楽になっている」**という小さな変化をすくい取りやすくなります。
実は、この「小さな変化に気づけるか」こそが継続の分かれ道です。大人のケアは派手なビフォーアフターではなく、床暖房のようにじんわり効いて、ある日ふと気づく形で現れます。焦ってやめてしまうより、8週間を一つの約束として、生活の土台とセットで積み上げる。それが最短距離です。
安全性と限界を冷静に捉える
植物由来セラミドは食品として広く利用され、一般的な摂取量での安全性は確認されています[4]。とはいえ、体質や体調によって合う・合わないはあります。胃腸が弱いと感じる日は量を分ける、体調に異変があれば中止する、アレルギー源となり得る原料(小麦・大豆など)が含まれていないかを購入前に確かめる。こうした基本のセルフマネジメントは必要です。機能の表現も「肌の水分保持を助ける」といった生活の質に関わるサポートであり、疾病の治療や診断を目的とするものではありません[1]。限界を知ったうえで賢く使う。それが大人のサプリメントとの付き合い方です。
まとめ:続けられる仕組みに落とし込み、季節を味方に
セラミドサプリは、角層の素材を内側から補い、4〜8週間で「乾きにくさ」を底上げする手段として、データと実感の双方で支持を集めています[4]。選ぶときは原料と含有量、機能表示をチェックし、飲み方は毎日の同じタイミングに固定する。外側の保湿、睡眠、食事、湿度管理と手を取り合うほど、体感は早く確かなものになります。もし今、頬の粉吹きや日中のつっぱりにため息が出ているなら、次の季節の谷が来る前に、今日からカレンダーに8週間のマークを付けてみませんか。小さな“続ける仕組み”ができたとき、肌は静かに応えてくれます。きれいごとだけでは語れない日々だからこそ、実装できるケアを。その最初の一歩に、セラミドサプリという選択を。
参考文献
- 厚生労働省. 機能性表示食品制度 等に関する資料(公的見解・生活者向け情報). https://www.mhlw.go.jp/public/bosyuu/iken/p0419-1.html
- 日本化粧品技術者会誌 52(2):131. 季節および室内温度が角層水分量・経皮水分蒸散量に及ぼす影響の検討. https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/52/2/52_131/_article/-char/ja/
- 日本皮膚科学会雑誌 93(5):491. 身体各部位における角層水分量の季節変動に関する検討. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/93/5/93_491/_article/-char/ja/
- Cosmetics (MDPI). 2017;4(4):37. Dietary plant-derived (glucosyl)ceramides and skin barrier/hydration: review of clinical evidence. https://www.mdpi.com/2079-9284/4/4/37
- PR TIMES. 植物由来グルコシルセラミドの継続摂取による角層セラミド量・水分などの変化(企業発表). https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000028.000012067.html