筋トレで基礎代謝を上げる方法(研究:週2〜3回・12週間でRMRが約3〜7%上昇と報告)

40代女性向けに、筋トレで基礎代謝を上げる現実的な方法を編集部が整理。研究では週2回・12週間の筋トレで安静時代謝が約5〜7%上昇と報告されます。忙しい日常でも続けやすい実践プランと注意点、まずは週1回の短時間メニューから始めるコツも。

筋トレで基礎代謝を上げる方法(研究:週2〜3回・12週間でRMRが約3〜7%上昇と報告)

基礎代謝は「筋肉量×日常」で決まる

統計によると、加齢に伴い基礎代謝は低下し、例として体重70kg男性の推定基礎代謝量は20代で約1680kcal、50代で約1505kcalとおよそ10%低下する[1]。また、研究データでは骨格筋量が30歳以降10年ごとにおよそ3〜5%減少する傾向が示されています[2]。さらに、医学文献によると週2〜3回のレジスタンストレーニングを12週間続けると安静時代謝(RMR)が平均で約3〜7%上昇した報告があります[3]。数字は冷静ですが、日々の現実はもっと揺らぎます。仕事も家庭も重なり、運動のための30分が遠い。それでも「燃える体」を取り戻す近道の一つとして、やみくもな有酸素だけではなく、筋トレを日常に馴染ませることが有効と考えられます。きれいごとではなく、実装できるやり方で基礎代謝をじわっと底上げしていくことが期待されます。

基礎代謝(BMR)は、何もしなくても生きているだけで消費されるエネルギーのこと。内臓や脳に加えて、筋肉が静かにエネルギーを使い続けています。つまり、筋肉量が多いほど基礎代謝は上がりやすい。医学文献によると、筋肉は体重の約30〜40%を占め、同じ重さの脂肪よりも安静時の消費エネルギーが高い組織です[1]。ここにもう一つ、忘れがちな要素が重なります。NEAT(非運動性活動熱産生)と呼ばれる、移動や家事のような“わざわざ運動とは呼ばない動き”です。研究データでは、NEATは人によって1日数百kcalもの差になることがあると示され、筋トレで筋肉を保ちつつ、日常の小さな動きを増やすことが、基礎代謝の底上げを二重で支えてくれる可能性があります[4]。

数字で見る40代の代謝の現実

40代に入ると、ホルモン変化や加齢に伴う筋タンパク合成の効率低下も重なり、何もしなければ緩やかな下り坂になります[2]。統計では、安静時代謝の低下幅は緩やかでも、筋肉量の落ち込みと活動量の減少が合わさることで、1日の総消費エネルギーは年間で数万kcal規模の差に蓄積される可能性があります[1]。これは“突然太った”というより、“少しずつ貯まった”のが正体。悲観する必要はありません。筋トレは、筋肉量の維持・増加を通じて基礎代謝に働きかける、有効なアプローチの一つと考えられます。

筋トレが基礎代謝に効くメカニズム

筋トレは、筋繊維に小さな刺激(損傷)を与え、回復の過程でより強い筋が作られる現象(超回復)を促します。この回復と合成にエネルギーが使われるため、トレーニング日だけでなく、その後の時間帯にも消費が増えることがあります(いわゆるEPOC:運動後過剰酸素消費)。総説では、中強度〜高強度の筋トレ後のEPOCは合計でおよそ50〜150kcal程度に留まる報告が多く、誇張は禁物です[5]。ただ、これが毎週積み重なること、そして何より筋肉量が増えることで24時間の土台となる安静時代謝が上がることが期待されます[3]。つまり、短期の“燃焼イベント”ではなく、からだの“設定温度”を少し上げ続けるイメージです。

週2回・全身30分で上げる設計図

続かない運動は、理論上どれだけ正しくても効きません。編集部がおすすめするのは、週2回・30分の全身筋トレを軸に、日常のNEATを少し増やす設計図です。ポイントは、広い筋群を一度に動かす“複合種目”を中心に、回数は8〜12回で“あと2〜3回できる”くらいの余力(RPE7〜8)を目安にすること。これなら翌日の疲労を引きずりにくく、仕事や家事と両立する現実的な運動強度になります。

まず、下半身と体幹を同時に使う動きを一つ選びます。スクワット系(椅子からの立ち座りをゆっくり行うのも可)やヒンジ系(ヒップヒンジでお尻と腿裏を狙う)など、器具がなくても可能です。次に、上半身の押す動きと引く動きを一つずつ入れます。壁(または台)を使った腕立て伏せは負荷調整がしやすく、引く動きはゴムバンドのローイングやタオルローで代用できます。最後に、持ち上げて運ぶ動き(軽いダンベルや買い物袋を両手に提げて数十歩歩く)を加えると、体幹の安定と握力も同時に鍛えられます。各種目はゆっくり丁寧なフォームで1セット目を行い、余力があれば2〜3セット目に進みます。セット間は呼吸が整うまで60〜90秒。これでおよそ30分です。

自宅でも職場でもできる種目の組み合わせ

自宅なら、椅子・壁・水ボトルがあれば十分です。椅子からの立ち座りをゆっくり10回、壁腕立てを8〜12回、ボトルを持ったヒップヒンジを10回、タオルローを8〜12回、短いウォーキングで締める流れを一筆書きのようにつなげれば、器具なしでも全身に適度な刺激が入ります。職場なら階段を使った上り下りを2〜3分はさみ、会議前後に壁腕立てを取り入れるだけでも、運動のハードルが下がります。重要なのは“完璧なメニュー”より“完了できる運動”。フォームに迷ったら、鏡やスマホの前面カメラで姿勢を確認し、背中が丸まりすぎていないか、膝が内側に入っていないか、首や肩に力が入りすぎていないかをチェックしてみてください。

食事と睡眠が「代謝の味方」になる

筋トレだけでなく、食事と睡眠が運動効果を底上げします。報告では、活動的な成人が体重1.2g/kg/日程度以上のたんぱく質をとると筋タンパク合成や筋量維持に有利になる可能性が示されています[7]。朝食をスキップしやすい人は、ヨーグルトや豆乳にプロテインを半量だけ溶かして、卵か納豆を添える“朝の最小セット”から始めると、運動のない日でも合成の材料が途切れにくくなります。睡眠は7時間前後を目標に、就寝90分前の入浴や、夜のスマホを15分だけ早く切る“スモールルール”を置いてみてください。睡眠時間が短いほど食欲ホルモン(レプチン・グレリン)の乱れが起こり、無意識の間食が増える報告もあります[6]。運動・栄養・睡眠の三角形がそろうほど、基礎代謝の底上げは安定しやすくなります。詳しくは、歩行と日常消費の科学を解説した歩くことの科学、睡眠の整え方をまとめた睡眠の質を上げるコツ、食事面のたんぱく質の摂り方ガイドも参考に。

停滞期・多忙・PMS…挫折ポイントの越え方

現実には、順調にいく週ばかりではありません。会議が続く、子どもの行事が重なる、PMSで気分と体力が落ち込む。そんな時期に必要なのは“ゼロにしない選択”です。いつもの30分が無理でも、5分の運動なら差し込める。椅子からの立ち座りを2分、壁腕立てを1分、軽いストレッチを2分。これでも「運動の線」はつながります。習慣づけは、強度を競うよりも“行う頻度を確保する”ことがカギになりやすいと考えると、心も軽くなります。

3つの指標で変化を可視化する

体重だけを成績表にすると、努力が報われない日に心が折れます。代わりに、トレーニングの重量や回数、ウエストやヒップ周囲の変化、そして階段の息切れや朝の目覚めの軽さのような体感を、同じノートに記していきましょう。例えば、最初は水ボトルで行っていたヒップヒンジが2週間後に少し重いダンベルに変わり、8回が12回まで増えたら、それは進歩の目安です。メジャーで測った数字が1cm動かなくても、階段の途中で休憩しなくなった実感があれば、基礎代謝の土台になる活動量は増えていると考えられます。

「燃え尽き」を防ぐ運動スケジューリング

がんばりすぎを避けるには、3週間かけて少しずつ負荷や回数を増やし、4週目は半分の量で“肩の力を抜く”サイクルが有効です。これはアスリートの世界で“デロード”と呼ばれる考え方ですが、日常の運動にも応用できます。高強度の運動を毎回狙うのではなく、“今日の自分にとって中強度”を狙うと、回復が追いつき、基礎代謝を支える筋肉も育ちやすくなります。月経周期に合わせ、しんどい時期はフォーム練習とストレッチに寄せ、調子のいい時期は回数や重量を少しだけ上げる。波を読む運動こそ、40代の現実に合った筋トレの形です。更年期のゆらぎ期に入っている人は、体調と相談しながらの運動ガイドも参考にしてください。更年期の運動ガイドでは、ホットフラッシュや睡眠の乱れがある時の運動の工夫を紹介しています。

12週間の編集部プランとリアルな期待値

まずの4週間は、フォームと頻度を体に覚えさせる期間です。椅子スクワット、壁腕立て、ヒップヒンジ、ローイングの4種目を中心に、1種目あたり8〜10回×2セット、週2回の運動を淡々と重ねます。呼吸と姿勢を整え、翌日に残る痛みを“心地よい筋肉痛”の範囲に収めるのが目標。続く4週間は、同じ種目で回数を10〜12回へ、余力がある日は3セットに増やし、負荷も水ボトルから軽いダンベルへと段階的に上げます。最初の頃より動きがスムーズになり、運動への心理的ハードルが下がり始めるのを感じるはずです。最後の4週間は、下半身の日と上半身+体幹の日に分ける“なんちゃって分割”に挑戦しても良い頃。片脚スクワットのようなバランス系や、プランク系で体幹の緊張を保つ練習を混ぜ、運動の質を高めていきます。

研究データでは、レジスタンストレーニング未経験〜初級者の成人が12週間の運動を続けると、除脂肪体重が約0.5〜1.0kg増え、安静時代謝が**約3〜7%**上がった報告があります(個人差あり)[3]。EPOCの寄与は控えめですが[5]、筋量の上積みとNEATの積み重ねが、総消費エネルギーを押し上げる可能性があります。週あたりの体重変化に一喜一憂するより、12週間のスパンで「回数が伸びた」「姿勢が安定した」「朝のだるさが減った」という運動の質を指標にしていくと、挫折しにくくなります。

まとめ:小さく、長く。基礎代謝はじわっと上がる

劇的な変化を約束する言葉は一瞬心地よくても、明日の現実は変わりません。だからこそ、今日の自分が“できる運動”を淡々と重ねることに価値があります。週2回・30分の筋トレと、日常のNEATを少し増やす工夫。この地味で確実なセットが、12週間後のからだの“設定温度”を上げることが期待されます。まずはカレンダーに運動の予定を2つ置き、椅子スクワットと壁腕立ての1セットから始めてみませんか。次の一手は、たんぱく質を1食に手のひら1枚分、夜のスマホを15分早く閉じること。今日の小さな選択が積み重なり、基礎代謝が変わっていくことが期待されます。

参考文献

  1. 厚生労働省 e-ヘルスネット「加齢とエネルギー代謝(基礎代謝量の年代差・組織別代謝)」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html
  2. 日本人における加齢に伴う骨格筋量の変化(SMIの年代別比較)。J-STAGE: https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2013/0/2013_0113/_article/-char/ja/
  3. PubMed: 25293431(レジスタンストレーニング介入による安静時代謝・体組成の変化) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25293431/
  4. NCBI Bookshelf: Nonexercise Activity Thermogenesis (NEAT) 概説(個人差と日常活動の寄与) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK279077/
  5. Europe PMC: Excess Post-exercise Oxygen Consumption(EPOC)に関する総説(強度・時間とEPOCの関係) https://europepmc.org/abstract/PMC/PMC2117006
  6. 名古屋ハートセンター「睡眠不足と食欲ホルモン(レプチン・グレリン)の変化」 https://www.nagoya.heart-center.or.jp/div04_7_archive/div04_7_170301.html
  7. 日本栄養・食糧学会関連ニュース「サルコペニア予防とタンパク質摂取」 https://sndj-web.jp/news/000311.php

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。