40代が知らないと損する「疲れが抜けない本当の理由」とビタミンB群の賢い摂り方

体内でATPが大量に再合成される仕組みと、ビタミンB群が関わる理由をやさしく解説。35〜45歳の忙しい女性向けに、続けやすい食事の工夫やサプリの選び方、注意点を具体例つきで紹介します。今すぐチェックして今日の食事に活かせます。

40代が知らないと損する「疲れが抜けない本当の理由」とビタミンB群の賢い摂り方

なぜビタミンB群が「燃やす力」を支えるのか

私たちの体内では、1日に自分の体重と同じくらいの量のATP(エネルギー通貨)が合成・分解され続けていると生化学の研究では語られます[1]。気力や集中力という感覚の裏側で、分子レベルの“発電所”は休みなく働いているのです。そして、この発電サイクルを回す潤滑油が、ビタミンB群。糖質・脂質・たんぱく質をATPへ橋渡しする補酵素として、目立たないけれど不可欠な役割を担います。編集部が国内外の栄養基準や研究レビューを確認すると、ビタミンB群の不足はパフォーマンス低下やだるさの一因になり得る一方、十分量の摂取は代謝の土台を安定させるという共通点が見えてきました[2]。忙しさ、役割の重なり、ホルモンのゆらぎ——35〜45歳の毎日で、B群をどう味方にするかを具体的に整理します。

エネルギー代謝のルートを一度、地図のように眺めてみます。食事で入ってきた糖質は解糖系を通り、ピルビン酸からミトコンドリアに入り、TCA回路(クエン酸回路)と電子伝達系でATPへと変わります。この道のりの要所要所でカギを握るのがビタミンB群です。ビタミンB1(チアミン)はピルビン酸を次の工程に進める“関所”に必要で、ここが詰まると糖からのエネルギー化が滞ります[3]。ビタミンB2(リボフラビン)とビタミンB3(ナイアシン)は、それぞれFADとNADという形で電子の受け渡し役になり、発電ラインの電力を運びます[4,5]。ビタミンB5(パントテン酸)はコエンザイムAの構成成分として、脂質・糖質双方の“合流点”をつなぎ、ビタミンB6(ピリドキシン)はアミノ酸代謝やグリコーゲン分解に関与して、状況に応じた燃料切替を助けます[6,7]。さらにビオチンは脂肪酸合成などのカルボキシラーゼ反応に不可欠で、葉酸とビタミンB12は赤血球の成熟やDNA合成を支えることで、酸素運搬や細胞の入れ替わりの基礎体力を底上げします[8,9]。

「エネルギーが足りない気がするのに、食べる量を増やしても重だるい」——そんな違和感の背景には、入力(食事)だけでなく処理(代謝)の滑らかさが影響していることがあります。医学文献によると、ビタミンB群は水溶性で体に貯めにくく、毎日の食事でこまめに補う設計です[4]。日本の食事摂取基準(成人女性の目安量)では、例えばB1は約1.1mg/日、B2は約1.2mg/日、B6は約1.1mg/日、B12は約2.4μg/日が示され、ナイアシンはトリプトファン由来も含めた当量での充足が推奨されています[10,5]。数字自体は小さく見えても、働きは大きい。少しずつ、しかし確実に日々の“発電効率”に関わるのがB群です。

「糖質オフ」と疲れやすさの意外な関係

体を軽くしたい、午後の眠気を避けたい——そんな理由で炭水化物を極端に減らすと、糖のスタート地点で働くB1の相対的不足を招きやすくなります。研究データでは、低エネルギー食や飲酒習慣のある人でB1不足リスクが上がることが示されています[2,3]。糖質を全否定するのではなく、朝や昼に“使う分を心地よく入れる”発想に切り替え、同時にB群の多い食品を合わせることで、だるさや集中の落ち込みを和らげられる可能性があります。

赤血球の入れ替わりと「体感」のタイムライン

葉酸とB12は赤血球の成熟に関わり、赤血球の寿命はおよそ120日です[11]。つまり、食事やサプリメントでの立て直しは、数日で劇的に変わるというより、2〜4週間でじわりと“息切れしにくい”体感が芽生え、数カ月で土台が固まるという時間軸でとらえるのが現実的です。即効性よりも、習慣の持続可能性が勝ち筋になります。

35〜45歳の毎日に起きている代謝のリアル

この年代は、仕事の裁量が増え、家庭やケアの役割も重なり、休むより切り盛りで1日が終わることが珍しくありません。睡眠時間が短くなると食欲や血糖のコントロールに関わるホルモンバランスが崩れやすく[12]、ストレス反応は代謝の優先順位を“今この瞬間をしのぐ”方向に寄せます。研究データでは、慢性的な寝不足や高ストレスで、食事の質が落ちやすくなる傾向が示されています[13]。ここで大切なのは、自分を責めないこと。完璧な食卓でなくていいので、代謝の要所要所にB群を差し込む“現実解”を持つことです。

加えて、閉経周辺期の入り口に立つ人も増えるタイミング。エストロゲンの揺らぎは脂質の使い方や体温リズムに影響し、同じ食事・同じ動きでも“燃え方”の手ごたえが変わることがあります。こうした生理的な前提を踏まえたうえで、B群の補給をライフラインとして配置し直すと、毎日の小さな復調が積み上がります。

忙しさの中で「抜けやすい食事」の穴を埋める

朝食を抜く、単品で済ませる、遅い時間にまとめて食べる——よくあるパターンのいずれでも、B群の摂取が薄くなりがちです。例えば朝に玄米や雑穀入りのおにぎりと、豚肉や卵、納豆、海苔、青菜の味噌汁を合わせると、B1・B2・葉酸・B12まで自然にカバーできます。昼はそばに温泉卵やサバの小鉢を足して、夜は生姜焼きやレバー少量とたっぷり野菜、締めに少量のごはん。甘いものが欲しい午後は、ヨーグルトにきな粉と刻みナッツを添えると、砂糖だけに偏らずB群とたんぱく質を積み増せます。完全な理想形ではなくても、こうした“合わせ技”が続けやすさのカギです。

「飲み会」「出張」「連日残業」──例外日に効くリカバリー

アルコールの代謝過程でもB群は使われます[14]。飲む予定がある日は、開始前の軽食でおにぎり+チーズや、そば+サラダチキンなどを先に入れておくと、血糖の乱高下を抑えやすくなります。翌日は豚汁や具だくさん味噌汁で水分とB群、ミネラルをまとめて補い、昼は魚、夜は鶏といった具合に燃料と補酵素のバランスを取り戻します。出張や残業が続く週は、冷蔵庫に納豆や卵、ヨーグルト、カット野菜、冷凍のサバやブロッコリーを“いつもいるメンバー”として待機させておくと、迷わずB群を確保できます。

食事で満たすB群、サプリメントで埋める“すき間”

基本は食事。とはいえ現実には、波のある日々で毎回ベストを選べないこともあります。そんなときの選択肢がサプリメントです。考え方の軸はシンプルで、食事の土台を作り、サプリメントで“すき間”を埋めるという順番を守ること。ビタミンB群は水溶性なので、過不足を体が調整しやすい一方、長期の過剰には注意が必要な成分もあります。研究データでは、B6の高用量(100mg/日以上)を長期間続けると末梢神経への影響が報告されています[15]。反対に不足が気になるとき、まずは食品からの摂取に加えて低〜中用量のBコンプレックス(B1・B2・B6で各10〜30mg、葉酸200〜400μg、B12で50〜100μg程度)を目安に検討するのがバランス的です。食後に飲むと胃への負担が少なく、吸収も安定しやすくなります。

ナイアシンは種類にも注意点があります。ニコチン酸型は血管拡張による“フラッシュ”と呼ばれるほてりが出ることがあり、一般的なマルチビタミンやBコンプレックスではフラッシュの起きにくいナイアシンアミド(ニコチンアミド)がよく採用されています[14]。製品表示を読み、生活に合う設計かを確かめましょう。加えて、葉酸は妊娠を計画・希望する人で推奨量が上がる局面がありますし[9]、特定の薬(例:一部の抗結核薬とB6、長期メトホルミンとB12など)との関係も知られています[16,17]。服用中の薬がある場合や妊娠・授乳の可能性がある場合は、自己判断で高用量のサプリメントに進まず、医師や薬剤師に相談するのが安心です。

サプリメントの品質は、原料の由来や製造管理(GMPなど)、第三者検査の有無が判断材料になります。広告のうたい文句よりも、配合量が食事と両輪で成立するか、自分の体調記録(睡眠・気分・肌の調子・月経のリズムなど)と照らして“効いている手ごたえ”があるかを静かに観察してください。2〜4週間を1サイクルとして見直し、必要なら別のブランドや配合に切り替える柔軟さも大切です。サプリメントはゴールではなく、日々の選択肢を楽にするためのツールと捉えると、依存ではなく活用ができます。

具体的な食材の組み合わせで、自然にB群を積み増す

豚肉はB1が豊富で、しょうが焼きや薄切りを味噌汁に少量入れるだけでも日常の摂取を底上げできます[3]。B2は乳製品や卵、うなぎ、レバーなどに多く、朝のヨーグルトやチーズ、休日の卵料理で取りやすい栄養素です。ナイアシンはカツオやサバ、鶏むね肉、きのこに多く、週に数回の魚料理や鶏ハム作り置きで自然と稼げます。B6はマグロや鶏肉、ジャガイモ、バナナにも含まれ、葉酸は枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、納豆などの豆類・緑の野菜が頼りになります。B12は貝類や魚、卵、海藻に多いので、しじみの味噌汁や焼き海苔を常備するのも一手です。こうした食材を“よく使う引き出し”に入れておくと、特別なレシピがなくても日常の一皿がB群リッチに変わります。

続けるためのミニ習慣:測る、記録する、調整する

栄養の話はどうしても抽象的になりがちです。そこで、日常に落とすミニ習慣を3つだけ決めてみます。朝食の“主食+たんぱく質+B群源”を写真に収める、昼食に“もう一品”として卵・納豆・ヨーグルト・小魚のどれかを足す、そして寝る前にその日の体調を10点満点でメモする。たったこれだけでも、自分の“燃え方”の傾向が見えてきます。見えてくると、調整も効く。疲れやすい週は、朝だけは炭水化物を抜かない、出張帰りは2日間だけBコンプレックスを添える、夜のカフェインを控えるなど、短期で効く打ち手を選びやすくなります。こうして“自分の代謝の取扱説明書”を更新し続けることが、揺らぎの時期をしなやかに越える力になります。

もっと深く知りたい人は、睡眠や鉄、たんぱく質の観点も合わせて読み解くと、全体像がクリアになります。睡眠負債と午後のだるさの関係はこちらの記事で、鉄とだるさ・冷えのベースはこちらで、たんぱく質のとり方はこちらで丁寧に解説しています。それぞれのテーマとビタミンB群は、体内で確実に交差しています。

まとめ:小さな選択を積み重ねて、代謝の手触りを取り戻す

発電所のように働く体に、毎日すこしずつ燃料と補酵素を届ける。その地道な繰り返しが、午後の落ち込みが浅くなる、飲み会明けの回復が早い、朝の立ち上がりが軽いといった日常の“微差”につながります。エネルギー代謝は、気合いではなく設計で変えられる——そう思えたら、最初の一歩はもう半分、進んでいます。明日の朝、主食とたんぱく質、そしてB群の食材をひとつ添えてみませんか。仕事が立て込む週だけBコンプレックスのサプリメントを味方にしてもいい。2週間後の自分に、どんな変化が芽生えているか。小さな実験を、今日から始めてみてください。

参考文献

  1. Milo R, Phillips R. Cell Biology by the Numbers. How many ATP molecules are produced per cell per second? 2015. https://book.bionumbers.org/how-many-atp-molecules-are-produced-per-cell-per-second/
  2. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Thiamin Fact Sheet for Health Professionals. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Thiamin-HealthProfessional/
  3. 公益財団法人 長寿科学振興財団(健康長寿ネット). ビタミンB1(チアミン). https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b1.html
  4. 公益財団法人 長寿科学振興財団(健康長寿ネット). ビタミンB2(リボフラビン). https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b2.html
  5. 公益財団法人 長寿科学振興財団(健康長寿ネット). ナイアシン(ビタミンB3). https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-niacin.html
  6. Linus Pauling Institute, Oregon State University. Pantothenic Acid. https://lpi.oregonstate.edu/mic/vitamins/pantothenic-acid
  7. 公益財団法人 長寿科学振興財団(健康長寿ネット). ビタミンB6. https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b6.html
  8. Linus Pauling Institute, Oregon State University. Biotin. https://lpi.oregonstate.edu/mic/vitamins/biotin
  9. 公益財団法人 長寿科学振興財団(健康長寿ネット). 葉酸・ビオチン. https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-yousan-biotin.html
  10. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2025年版). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177189.html
  11. Merck Manual Consumer Version. Overview of Red Blood Cells. https://www.merckmanuals.com/home/blood-disorders/biology-of-blood/overview-of-red-blood-cells
  12. Spiegel K, Tasali E, Penev P, Van Cauter E. Brief communication: Sleep curtailment in healthy young men is associated with decreased leptin levels, elevated ghrelin, and increased hunger. J Clin Endocrinol Metab. 2004;89(11):5762-5768. doi:10.1210/jc.2004-0609
  13. Dashti HS, Scheer FAJL, Jacques PF, Lamon-Fava S, Ordovás JM. Short sleep duration and dietary intake: a systematic review and meta-analysis. Am J Clin Nutr. 2015;102(2):411-427. doi:10.3945/ajcn.115.113571
  14. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Niacin Fact Sheet for Health Professionals. https://ods.od.nih.gov/factsheets/Niacin-HealthProfessional/
  15. Institute of Medicine (US). Dietary Reference Intakes for Thiamin, Riboflavin, Niacin, Vitamin B6, Folate, Vitamin B12, Pantothenic Acid, Biotin, and Choline. (Chapter: Vitamin B6). National Academies Press; 1998. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK114313/
  16. 日本薬剤師会. イソニアジドはビタミンB6群のリン酸化に必要な酵素を阻害し…(臨床症状・発症時期・要因). https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=39307&dbMode=article
  17. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements. Vitamin B12 Fact Sheet for Health Professionals. https://ods.od.nih.gov/factsheets/VitaminB12-HealthProfessional/

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編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。