失敗しないテーマ型投信の5つの注意点と資産を守る選び方(初心者向け簡単チェック)

注目テーマの魅力に惑わされず資産を守るための簡単チェック。手数料・分散・設定時期・評価・出口の5つの注意点を具体例で解説し、35〜45歳の資産形成者向けに新NISA活用や今すぐ使えるチェックリスト付きで紹介します。

失敗しないテーマ型投信の5つの注意点と資産を守る選び方(初心者向け簡単チェック)

テーマ型投信とは何か——魅力と設計のクセ

テーマ型投信は、生成AIやEV、脱炭素など、特定の概念や潮流に沿って銘柄を絞り込む投資信託です。一般的なインデックス型のように市場全体を広く持つのではなく、「物語」を手がかりに投資範囲を限定するのが発想の出発点。これがワクワクを生み、「つい今買いたくなる」心理を刺激します。

流行する理由は明快です。ニュースで毎日耳にするキーワードは、将来性があるように感じられます。メディア露出が増えると関連企業の株価が上がり、足元の成績が良く見える。そこに新規設定が重なると、「実績があるように見える時期」に投資家が集まりやすい。結果として「高値でつかみ、平時の停滞を持ち続ける」構図が起きがちです。研究データでは、テーマファンドの新規設定が注目度のピーク近辺に集中する傾向が繰り返し示されてきました。[10]

どこに投資しているのかを言葉で確認する

目論見書を読むと、採用基準は「売上の何%が関連領域」「特許保有」「指数への採用」などさまざまです。つまり、同じテーマ名でも中身は大きく違うことがあります。[9] 投資対象の国・業種・時価総額の偏り、そして為替ヘッジの有無は、値動きの振れ幅に直結します。名前の魅力に引っ張られず、実際の上位構成銘柄と組入比率を確認することが、最初の現実チェックになります。

テーマ型投信の注意点——「熱狂」の裏側にある5つの現実

まず意識したいのはタイミングの罠です。研究データでは、テーマが話題化してからの3〜5年で相対的なアンダーパフォームが生じやすいとされています。[3] 理由はシンプルで、期待が先行した局面でバリュエーション(割高感)が積み上がるから。設定初期は上がりやすく見える一方、その後のノーマル化で伸び悩む、というパターンが起きがちです。

次に集中リスク。テーマ型投信は特定領域に絞るため、景気や政策、規制変更の影響をまともに受けます。半導体メモリ価格、電池原材料の供給、保険償還の制度改定——どれもテーマの根幹を揺らし、価格が短期間で大きく上下する要因になります。一般的な広範インデックスと比べ、最大下落幅(ドローダウン)が深くなりやすい点は覚えておきたいところです。[4,5]

三つ目はコストの高さ。テーマを選別・運用するためのリサーチ費用がかかる分、信託報酬はインデックスより高くなる傾向があります。年0.1〜0.2%台が珍しくないインデックスに対し、テーマ型では数倍の水準も珍しくありません。長期になるほど、この差は複利で効いてきます。信託財産留保額や為替コストまで含めて、実質的な保有コストを合算で捉える視点が必要です。[1]

四つ目は評価の難しさ。多くのテーマに純粋な「市場平均」が存在しないため、何と比べて良し悪しを判断するのかが曖昧になりがちです。[9] たとえばグローバル株式インデックスをベースに、ボラティリティや下落局面の耐性を加味して相対評価する、といった自分なりの基準づくりが求められます。月次レポートのグラフだけに頼るのではなく、3年・5年・10年の期間比較で見ると、見え方が落ち着きます。

最後はプロダクトの寿命リスクです。研究データでは、テーマファンドの長期の生存率が低く、数年で繰上償還や他ファンドへの統合に至るケースが一定割合で見られます。[2] 途中でなくなると、希望するタイミングでの非課税枠活用やリバランス計画が崩れることも。つまり、テーマ型投信は「短距離走の選手が長距離を走る」ことになりやすい設計なのです。

新NISAとの相性をどう考えるか

非課税で成長投資枠を活用できる新NISAは魅力的ですが、非課税=損をしないではありません。非課税制度は値動きの性質を変えないため、広く分散した土台を先に用意し、テーマはサテライトに留めるという組み方が、家計全体のブレを抑えます。基礎固めにはインデックス投資の基礎を押さえ、制度面は新NISAの始め方で整理しておくと、判断が楽になります。

買う前のチェックと設計——「好き」と「現実」を両立させる

まず、目的を言葉にします。教育費の準備なのか、将来の自由時間のための資産形成なのか。使う時期が10年後なのか3年後なのかで、選ぶべきリスク量は変わります。短期で使う可能性があるお金は、値動きの大きいテーマ型投信に乗せない。この線引きが最初の安全装置です。

次に、ポートフォリオの中でテーマ型投信をどの位置に置くかを決めます。編集部が確認した複数の家計の例では、テーマは総資産の5〜10%程度のサテライトにとどめ、コアは全世界や国内外の広範インデックスで固めるやり方が、心の揺れを小さく保ちやすい印象でした。上がった時の高揚感も、下がった時の落ち込みも、生活の質に響かないサイズにする。そのサイズ決めこそ、継続の鍵です。

評価とメンテナンスのルールも、最初に決めておきます。たとえば「年に一度、コアとサテライトの比率を原点回帰させる」「テーマのバリュエーション指標(売上倍率や利益倍率)が一定水準を超えたら比率を落とす」「3年で仮説検証し、継続・縮小・撤退を判断する」といった具合に、事前の合意事項を自分に手紙のように残す。そのルールがあると、相場のニュースに心がさらわれにくくなります。

コストは数字で線を引きます。信託報酬は年◯%まで、トータルコストは◯%までと自分の上限を決め、候補を並べて比較します。毎月の積立なら、同じ積立額でもコスト差が複利で効くことを、電卓アプリで一度体感しておくと納得感が違います。加えて、為替ヘッジの有無が長期の収益とコストにどう影響するかも、目論見書で確認しておきましょう。

情報の取り方——ラベリングに酔わない

「サステナブル」「ディスラプティブ」など、魅力的な言葉は投資の世界でも効果的です。けれども、言葉を外して銘柄リストだけを見た時に、それでも納得できるか。本当に欲しいのはテーマ名ではなく、キャッシュフローを生む企業の集合です。ニュースは感情を動かします。だからこそ、数値(売上・利益・バリュエーション)に一度戻る癖をつけると、判断が安定します。[9]

ありがちな失敗と、すり抜けるための工夫

例えば、40歳・共働き・小学生の子どもがいるAさん。生成AI関連のニュースを毎日目にして、テーマ型投信にボーナスの半分を一括投資しました。最初の数カ月は順調。ところが翌年、金利上昇と決算の未達で関連銘柄が売られ、評価額はピークから**−35%**。気持ちが持たず、底に近いところで売却して、数十万円の損失を確定しました。Aさんが口にしたのは「好きだから買ったのに、好きでいられなくなった」という言葉でした。

同じテーマに惹かれても、設計次第で違う結末になり得ます。たとえば、買う前にコア90%+テーマ10%の枠組みを決め、テーマ部分は毎月の積立で12カ月に分けて購入。価格が上がってテーマの比率が15%を超えたら自動的に利確して10%に戻し、逆に大きく下がった時も15%までしか増やさない。こうした先に決めた動きを機械的に実行していれば、ニュースに一喜一憂する時間は減り、損失も限定されやすくなります。損をゼロにする魔法はありませんが、ダメージを家計が飲み込める範囲に保つ工夫はできます。

さらに、テーマが広がるほど銘柄間の「明暗」が分かれやすいことも押さえておきたい点です。同じ生成AIでも、チップ設計、製造装置、データセンター、電力、ソフトウェアと、収益ドライバーは違います。テーマ型投信の中身がどこに重いのかで、結果は変わります。**「テーマへの賭け」ではなく「収益構造への仮説」**で向き合うと、流行語の熱が冷めても、投資判断を続けやすくなります。[5]

まとめ——物語に惹かれる自分を責めないで

テーマ型投信は、未来への参加券のように見えるから魅力的です。その直感は間違っていません。ただし、期待が集まるほど値段も上がるという投資の現実は、いつも横に並びます。だからこそ、コアを広く分散で固め、テーマは小さく、ルールは先に、評価は長めに。たったこれだけで、同じテーマでも結果の振れ幅は小さくなります。

**「好き」を投資に持ち込むのは悪いことではありません。**むしろ、続ける力になります。大切なのは、家計と心の安定を守る設計に変換すること。今日は、手元の投信一覧を開き、目的・比率・評価ルールを一行ずつメモしてみませんか。そこから見える余白に、どんなテーマを、どれくらいのサイズで招き入れるか。あなたのペースで決めていきましょう。迷ったら、まずはインデックス投資の基礎に戻って、土台を整えるところから始めて大丈夫です。

参考文献

  1. Morningstar. Global Thematic Fund Landscape. https://www.morningstar.com/lp/global-thematic-fund-landscape
  2. Morningstar Newsroom. Morningstar’s Global Thematic Funds Landscape Report. https://newsroom.morningstar.com/newsroom/news-archive/press-release-details/2022/Morningstars-Global-Thematic-Funds-Landscape-Report
  3. Morningstar. Despite Recent Struggles, Thematic Funds Are Here to Stay. https://www.morningstar.com/funds/despite-recent-struggles-thematic-funds-are-here-stay
  4. 日本総合研究所(NLIリサーチ). テーマ型株式インデックス・ファンドの動向. https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=66855
  5. Morningstar HK. Booming but Be Wary: Your Guide to Thematic Funds. https://www.morningstar.hk/hk/news/234243/booming-but-be-wary-your-guide-to-thematic-funds.aspx
  6. Reuters. Investors flee thematic ETFs as stock benchmarks soar. 2024-10-22. https://www.reuters.com/markets/us/investors-flee-thematic-etfs-stock-benchmarks-soar-2024-10-22/
  7. Morningstar Newsroom. Global Thematic Funds Landscape Report Shows Record Inflows… https://newsroom.morningstar.com/newsroom/news-archive/press-release-details/2022/Morningstars-Global-Thematic-Funds-Landscape-Report-Shows-Record-Inflows-into-Thematic-Funds-Since-the-Start-of-COVID-19-Pandemic/default.aspx
  8. Morningstar. Global Thematic Fund Landscape (anchor: need for comprehensive due diligence). https://www.morningstar.com/lp/global-thematic-fund-landscape#:~:text=significant%20growth%20over%20the%20years%2C,need%20for%20comprehensive%20due%20diligence
  9. Morningstar HK (anchor: no market standard; little overlap). https://www.morningstar.hk/hk/news/234243/booming-but-be-wary-your-guide-to-thematic-funds.aspx#:~:text=There%20is%20no%20market%20standard,surprisingly%20little%20overlap%20in%20holdings
  10. Morningstar Business Insights. Thematic Investment Funds. https://www.morningstar.com/business/insights/blog/funds/thematic-investment-funds

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。