車を売ると税金はどうなる?確定申告不要の3つの注意点で家計安心

個人の自家用車を売っても原則非課税で確定申告は不要。ただし事業用や投資目的は例外。確定申告不要の3つの注意点と売却前の簡単チェック、ケース別の還付や消費税の扱いも図解で解説。今すぐ確認して不安を解消。

車を売ると税金はどうなる?確定申告不要の3つの注意点で家計安心

結論:多くの個人は非課税。確定申告も不要

まず押さえたい全体像は、家庭で使う自家用車を売却した場合、売却益が出ても原則として課税されないという点です。税法上、衣服や家具、通勤用の車などの「生活に通常必要な動産」に該当するものは、売って利益が出ても譲渡所得の非課税とされています(国税庁タックスアンサー等に基づく一般的な取扱い)[3]。このため、個人の車売却時に所得税や住民税が追加でかかるケースはまれで、通常は確定申告も不要です[3]。

ただ、例外はあります。たとえば事業用として青色申告している車両を売却する場合は、会計上の固定資産の売却に該当し、所得計算や消費税の取扱いが生じます。また、投機目的で保有していた希少価値のある車(生活に通常必要とは言いにくいケース)では、扱いが異なる可能性があります。この記事は生活者の日常の売却を想定していますが、事業用・法人名義・投資目的が疑われる場合は個別の確認が安全です。

なぜ非課税なのか:生活用動産の考え方

非課税の根拠は、暮らしを支える動産の売却まで課税対象にしてしまうと実務も生活も過度に煩雑になる、という発想にあります。車は通勤や通学、家族の送迎、買い物など日常生活に直結しやすく、多くの場合は「生活に通常必要な動産」に該当します。宝飾品や貴金属、美術品などは30万円超で課税対象となる例外として知られていますが、車はこの例外の範囲に含まれません[3]。つまり、売却価格がいくらであっても、自家用として使っていた限り、原則は非課税という整理です[3]。

“売却益”はそもそも出にくい

もうひとつ、肌感覚と税法の両面から確認しておきたいのは、車は新車登録した瞬間から値落ちが進むため、購入額を上回る価格での売却が発生しにくいという現実です。人気車種で相場が強かったり、供給不足の局面で一時的に価格が上振れすることはありますが、生活用動産の非課税の枠組みの中では、こうしたケースでも原則は課税されません。むしろ気をつけたいのは、税金が「戻る・戻らない」についての誤解です。

「売ると税金が戻る?」の正体:戻るのは制度と精算の二つ

ネットでよく見かける「売ったら税金が戻る」という表現には、二つの異なるものが混ざっています。ひとつは都道府県に納める自動車税(種別割)の月割還付という公的な制度。もうひとつは、売却の相手方(多くは買取店やディーラー)との間で行う未経過相当額の精算です。この二つは似て非なるもので、対象になるタイミングが違います。

普通車の自動車税:抹消登録で月割還付、名義変更では還付なし

まず自動車税(種別割)は、毎年4月1日時点の所有者に1年分が課される年税です。ここで公式に税金が戻るのは、普通車を抹消登録(永久抹消・一時抹消)した場合に限られます。たとえば事故や故障で廃車にした、あるいは海外輸出のために一度日本の登録を抹消した、といったケースでは、残りの月数に応じて月割で還付されます。これが公的な「還付」です。

一方で、ただの売却や買い替えのように名義を他人へ移すだけ(移転登録)では、公的な還付は発生しません。この場合、売却月以降の未経過分は、取引価格の中で相手方と精算するのが慣行です。買取店が「自動車税の未経過分をプラス評価します」と案内することがありますが、これは行政の還付ではなく、あくまで査定・買取価格に含める商慣習です。

加えて、軽自動車税(種別割)には原則として月割還付の制度がありません。軽を廃車にしても、年の途中で税金が戻る仕組みは基本的に用意されていないため、「売れば税金が戻る」という期待は持たない方が現実的です(なお、廃車時は自賠責保険の未経過期間や自動車重量税が還付対象となる場合があります)[4]。

重量税・環境性能割・消費税の扱い

もうひとつ勘違いが多いのが、自動車重量税です。重量税は車検のタイミングで前払いする税で、解体を伴う抹消登録(解体返納)を行い、かつ残存有効期間が1か月以上ある場合に限って、未経過分の還付制度が用意されています[5]。売却して名義を変えるだけでは、重量税の還付はありません。

「環境性能割」は購入時に一度だけ課されるもので、売却時には関係しません。

消費税については、個人が自家用車を売る場合、売手側で消費税の納税は発生しません。課税事業者ではない個人が売却代金に消費税を上乗せすることはなく、買取店や販売店が流通段階で取り扱う消費税は、事業者側の会計の中で処理されます[6]。

なお、リサイクル預託金は税金ではありません。新車や中古車購入時に先払いした預託金は、売却先が事業者であれば査定・買取価格に含めて清算されるのが一般的です。個人間売買では別立てでの受け渡しになることもありますが、税金とは切り分けて考えましょう[7]。

確定申告が必要になるケースは?—“個人の自家用”なら原則不要

ここまでが暮らしの現場で多い「個人の自家用」の話です。この前提なら、車売却時の税金は非課税・確定申告不要でほぼ間違いありません[3]。では、申告が話題になるのはどんなときでしょうか。

ひとつは、個人事業主が事業用として計上している車両の売却です。これは固定資産の売却に当たり、帳簿価額や減価償却の状況に応じて、売却損益を事業所得等に組み入れます。さらに、消費税の課税事業者であれば、売却が課税取引に該当することがあり、消費税の申告・納付に影響します。家計の車と事業の車が混ざっている場合は、名義・使用実態・帳簿上の区分をあらためて確認しておくのが安全です。

また、法人名義の車を処分する場合は、法人税や消費税の論点になり、会計処理の対象です。会社から個人へ名義を移す「名義変更」や「現物支給」に近い取引も、税務上の評価が必要になるため、会社の経理や税理士に早めに相談しましょう。

これらのケースに当てはまらず、あくまで生活用の自家用車を手放すだけなら、税務上の手続きはほぼ発生しないというのが実務の実感です。念のため、売買契約書や査定明細、振込記録などの売却記録は数年間保管しておくと安心です。

4月1日を意識する:時期で変わる“損しない”コツ

税金というより実務のコツですが、4月1日の所有者名義が自動車税の課税先を決めるため、売却タイミングは小さく効いてきます。翌年度の納税通知を自分に届かせたくないなら、3月中に名義変更まで完了させるのが理想です。もっとも、名義変更は相手方の手続き速度にも左右されます。買取店やディーラーに売るなら、いつまでに名義変更・抹消まで進めるかを契約書に明記しておくと、のちの連絡やトラブルを防げます。

普通車を廃車(解体返納)にする予定であれば、3月中に抹消登録が完了すれば、月割還付の対象期間が最大化されます。名義変更だけの売却なら、税の還付は出ないものの、翌年度の課税を避けるという意味でのメリットはあります。逆に、4月1日をまたいでからの売却は、新年度の自動車税は一旦あなたに課税される前提で、相手方と未経過分の精算をどう扱うかを合意しておくのが現実的です。

納税証明や未納の確認は“トラブル予防策”

売却手続きに際して、自動車税の未納がないかは事前に確認しておくとスムーズです。最近は継続検査用の納税証明の省略が進んでいますが、買取店から証明書の提示や納付状況の確認を求められることは珍しくありません。未納があると名義変更が遅れ、4月1日をまたいで余計な手間やコストが発生することもあります。小さなひと手間が、結果的には家計の防衛線になります。

今日からできるチェックリストを“文章で”共有

ここまでのポイントを、忙しい毎日の流れにのせて整理します。まず、「自家用の車を手放すとき、車売却時の税金は原則非課税で、確定申告は不要である」という土台を持っておくこと[3]。次に、売却相手が事業者なら、未経過の自動車税分が公的な還付ではなく価格の精算として扱われることを理解しておくと、査定明細の読み解きに迷いません。さらに、普通車で廃車・抹消が前提なら、月割還付は抹消が完了してはじめて発生します。名義変更だけの売却では還付はありません。加えて、売る時期は4月1日をまたがない方が心理的にも実務的にもラクになりやすいので、可能なら3月中に「名義変更または抹消まで」完了できる段取りを、契約書に日付付きで残しておくと安心です。最後に、事業用・法人名義・投資目的のどれかに触れるなら、一般の非課税と区別されると覚えておき、専門家や経理への早めの相談を検討しましょう。

まとめ:税金の不安を“事実”でほどく

車売却時の税金については、自家用なら原則非課税、確定申告も不要というのが大前提[3]。さらに、自動車税の月割還付は抹消登録時のみ、名義変更の売却では未経過分は価格で精算という仕組みを知っていれば、迷いはぐっと減ります。4月1日の名義、納税状況の確認、契約書への明記という小さな準備は、将来の自分を助ける心強い貯金です。

参考文献

  1. 自動車検査登録情報協会(AIRIA)「自動車保有台数の統計」https://www.airia.or.jp/publish/statistics/number.html
  2. 日本自動車販売協会連合会(自販連)・全国軽自動車協会連合会 等の集計に基づく業界資料「中古車登録・届け出台数の概況(2024年度)」https://www.aba-j.or.jp/info/industry/23937/
  3. 国税庁タックスアンサー No.3105「生活用動産の譲渡による所得」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  4. グーネット「軽自動車の廃車で還付されるお金(軽自動車税は還付なし、自賠責・重量税の還付の有無)」https://www.goo-net.com/kaitori/kaitori-satei/haisya-gimon/8340/
  5. 国税庁「使用済自動車に係る自動車重量税の廃車還付制度について」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/jidoshajuryo/01.htm
  6. カーセブン「個人の自家用車売却における消費税の扱い」https://www.carseven.co.jp/guide/news/6267/
  7. チューリッヒ保険会社「自動車リサイクル預託金とは(税金ではないこと、勘定科目等)」https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-recycling-deposit/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。