マスクネ対策:ゆらぎ世代のための守りながら整えるスキンケア習慣

摩擦・蒸れ・乾燥。マスク生活の三重要因が気になる“マスクネ”に繋がることも。朝・日中・夜それぞれの具体ケア、素材選びや生活の工夫まで、忙しい35〜45歳女性向けに編集部と専門家の視点で今日から始められる実践法を分かりやすく解説。

マスクネ対策:ゆらぎ世代のための守りながら整えるスキンケア習慣

マスクネはなぜ起こる?ゆらぎ世代の肌で起きていること

統計によると、長時間マスクを着用する人の約55%が顔の皮膚トラブル、約31%がニキビ(acne)を経験すると報告されています[1]。医療従事者を対象にした研究データでは、マスクやフェイスシールドなどの保護具の使用により、75%以上が何らかの皮膚症状を報告したという結果もあります[2]。既存のニキビが悪化したという報告も複数あります[5]。摩擦、蒸れ、汗、そしてこすれによるバリア機能の低下。これらが重なると、毛穴の出口が詰まりやすくなり、いわゆる「マスクネ(マスク×アクネ)」が生まれます[1,3]。編集部が複数の研究を読み解くと、過度な洗浄や油分カット一辺倒のケアは逆効果になりやすいことが見えてきました[4]。特に乾燥と敏感が同時に起きやすい35〜45歳のゆらぎ世代は、皮脂量のムラとバリア機能の揺らぎが重なり、同じケアでも反応がブレやすいのが現実です。だからこそ、「守りながら整える」発想が、マスクネ予防の軸になります。

医学文献によると、マスクネは「アクネ・メカニカ」と呼ばれるタイプのニキビに近く、摩擦(friction)と閉塞(occlusion)が主因といわれています[3,1]。マスクの内側は湿度と温度が上がりやすく、汗と皮脂が混ざることで角質がふやけ、毛穴の出口が柔らかく詰まりやすくなります。そこに繊維の擦れが加わると微細な炎症が起こり、肌の守りである角質層と皮脂膜のバリアが乱れていきます[3]。バリアが乱れると、同じ刺激でも赤みやヒリつきにつながりやすく、結果としてニキビの前段階である面皰(めんぽう)が増え、ポツポツが表面化しやすくなります。

ゆらぎ世代の肌では、皮脂分泌はTゾーンに残りつつ、頬や口周りは乾燥しやすいというアンバランスが起きがちです。研究データでは、ホルモン変動やストレスが皮脂分泌と角質のはがれ方に影響することも示されています[4]。同じマスク習慣でも、寝不足の週は急に荒れやすく、季節の変わり目には赤みが長引く——そんな「ブレ」を前提にケアを組み立てることが、現実的でやさしい戦略になります。

過剰に“落とす”より“守る下地”をつくる

多くの人がやりがちな対処が、こまめな洗顔や拭き取りのやりすぎです。確かに清潔は大切ですが、度重なる洗浄は角層の脂質まで奪い、バリアの穴を広げます[4]。弱酸性のやさしい洗顔で短時間にすませ、こすらず泡を転がすこと[4]。落としすぎないことが、結局はトラブルの入口を閉じる近道です。洗顔後は水分が逃げやすい“30分の窓”があると言われます。タオルオフ後はノンコメドジェニック(ニキビの元になりにくい)処方の保湿で薄く素早くフタをして、摩擦に強い「守りの下地」をつくるイメージで整えましょう[3].

“薄く、均一に、重ねない”がメイクの合言葉

メイクは厚いほど崩れ、崩れは摩擦を増やし、摩擦は刺激になります。ベースはスキンケアの延長と捉え、保湿→UV→必要な部分のみコンシーラーという引き算の順番が理にかなっています。皮脂テカリが気になるなら、皮脂吸着パウダーをTゾーンにうっすらのせる程度に。落としにくいウォータープルーフや重ね塗りは、マスク内の負担とクレンジング負荷を両方増やし、巡り巡って肌のブレを招きやすくなります.

今日からできる:朝・日中・夜のスキンケアルーティン

朝は、寝ている間に出た皮脂と汗を落としつつ、過剰な脱脂は避けます。ぬるま湯か低刺激の洗顔でさっと洗い、すぐに化粧水で水分をチャージします。次にナイアシンアミドやセラミドを含む保湿で角層の隙間を埋めるように整え、マスクで擦れやすい鼻や口周りにはワセリンを“米粒半分”ほど薄く広げてクッションを作っておくのも一手です[3]。その上で、ノンコメドジェニックのUVをムラなく塗り、必要な部分だけベースメイクで仕上げます[3]

日中は、崩れた部分をこすらず“置き換える”感覚がポイントです。汗や皮脂で湿ったときは、ティッシュを肌に軽く当てて吸わせ、必要なら敏感肌向けのミストで水分だけを補います。編集部では、マスクを外せるタイミングで頬と口周りをさっとぬるま湯ですすいでから保湿を薄く重ね直す“リセット3分”を習慣化したところ、化粧直しの回数が減って摩擦の機会そのものが減ったと感じました。※個人の感想であり、効果効能を保証するものではありません。交換可能な環境なら、マスクは湿ったら取り替えることが、シンプルで効果が期待される対策のひとつです[3]

夜は、その日の負担を翌日に持ち越さないための時間です。クレンジングは、ポイントメイクだけ専用リムーバーで先にはがし、ベースは肌負担の少ないタイプで短時間にオフします。熱いお湯は避け、ぬるま湯で洗い流したら、赤みやヒリつきがある日はアルコールフリーの化粧水を手でやさしく重ね、セラミド・コレステロール・脂肪酸など角層に近いバランスの保湿で仕上げます。角栓が気になる日は、低濃度のサリチル酸やPHAを含む拭き取りや美容液を“部分使い”し、連日の使用は避けて様子を見ることが、ゆらぎ世代には安全です[3]

マスクを外した直後の“リセット”が効く理由

研究データでは、湿潤と摩擦の繰り返しが角層の水分保持力を下げることが示唆されています[1]。帰宅後すぐ、あるいはランチ後などマスクを外せる直後に、ぬるま湯ですすぐ→水気を押さえる→薄い保湿の再構築という最短ルートを取ると、汚れや汗が滞在する時間を短縮でき、二次的な刺激を減らせる可能性があります。ここで大切なのは、こすらず、少ないステップで済ませること。肌が疲れているときほど、ケアもミニマルに寄せるのが合っています。

素材とつけ方の工夫:マスクが“刺激物”にならないために

同じマスクでも、素材とサイズ感で肌への影響は変わります。繊維の目が粗く硬い素材は摩擦係数が高く、反対に内側がなめらかな不織布やコットンライクな素材は擦れを減らします[1,3]。肌あたりを優先しつつ、フィルター性能を満たすものを選ぶのが前提です。サイズは、頬と鼻のカーブに沿い、口元に空間が保てるフィットが理想。小さすぎると擦れが増え、大きすぎると動いて擦れの回数が増えます[1]。耳ひもがきついと頬の圧迫で赤みが出やすいため、アジャスターややわらかいひもに替える配慮も有効です[3]

つけ外しの所作も見直しどころです。装着時は、肌の上でずらしながら位置決めするのではなく、両手で外縁を持って空間を作ってからそっと置く。外すときも、耳から外して前面に触れずに捨てる、もしくは洗えるタイプはその日のうちに中性洗剤でやさしく洗う[3]。繊維に残った皮脂やファンデーションは次の刺激になり、におい成分も肌のストレスになります。香りの強い柔軟剤は避け、よくすすぐことが肌のためです.

“ノーメイクの日”より“負担の少ないメイクの日”

マスク内はメイクをしない方がいい、という声もありますが、素肌のままよりも、UVと薄いパウダーで皮脂と汗をコントロールした方が、結果的に摩擦が減る場面があります。大切なのは、クレンジングで負担が増えない選択をすること。落としやすい処方、薄く均一、部分補正。この三つを守ると、ノーメイクの日との肌差は小さくなります。

長引かせないための生活習慣と“やめることリスト”

研究データでは、睡眠不足と高ストレスが皮脂分泌や角質のターンオーバーに影響し、ニキビの悪化と関連する可能性が示されています[4]。ゆらぎ世代にとって、忙しさの波に合わせて睡眠の“質”を底上げする工夫は、スキンケアと同じくらい効いてきます。寝る90分前の入浴で体温リズムを整える、カフェインのタイミングを昼までにする、スマホの強い光から目を休ませる——どれも翌朝の皮脂と赤みに静かに効く生活の味方です。

一方で、習慣に潜む“やめること”もあります。まず、無意識に頬やあごを触るクセ。指先の皮脂と摩擦が重なり、繰り返す赤みの温床になります。次に、長時間のマスク再利用。湿り気の残ったマスクは摩擦が増え、繊維に付着したファンデや皮脂が新たな刺激になります[1,3]。そして、刺激の強い角質ケアの連投。ザラつきを一気にリセットしたくなる時こそ、間隔を空けて肌の反応を観察する余白を作りましょう[4]

編集部メンバーの実感と、小さな指標

編集部の40代メンバーは、昼に“リセット3分”を取り入れ、つけ置き洗いできるマスクに替えたところ、夕方の頬の赤みが目立ちにくくなったと話します。さらに、帰宅後すぐの洗顔をぬるま湯のすすぎ+保湿に切り替えた日は、夜のかゆみが出にくい日が続いたとのこと。※個人の感想であり、効果効能を保証するものではありません。客観的な指標としては、枕カバーの汚れ方や、朝の洗顔後に頬が突っ張らないか、同じファンデーションのノリがどう変わるかを“肌の声”として記録しておくと、習慣の効き目を可視化できます。

ゆらぎ世代への最終アドバイス:足し算より“引き算+継続”

マスクネ対策は、多くの場合、特別な1品よりも、小さな負担を減らす積み重ねが効きます。こすらない、重ねない、湿らせたままにしない。素材を選ぶ、装着の所作を丁寧にする、肌の“窓”の時間に素早く保湿する。どれも今日から始められて、翌週の肌の振れ幅を小さくしてくれる動きです。揺らぎはゼロにはなりません。けれど、振れ幅が小さくなるだけで、鏡に向かう気持ちはずいぶん軽くなります。

まとめ:完璧な肌より、ブレに強い肌へ

マスクネは、摩擦と蒸れという避けにくい現実から生まれます。けれど、朝は“守る下地”を用意し、日中は“リセット3分”で滞在時間を短くし、夜は負担を翌日に持ち越さない。そこに素材選びと所作の見直しが加われば、肌の振れ幅は小さくすることが期待されます。完璧を目指すのではなく、ブレに強い肌を育てる。そんな視点で1週間、試してみませんか。もし変化を感じたら、その小さな成功を続ける合図に。今日の選択が、明日のやさしさになります。

参考文献

  1. Lim YS, Yew YW. Facial dermatoses induced by face masks: A systematic review and meta-analysis of observational studies. Contact Dermatitis. 2022;87(3):441–466. doi:10.1111/cod.14203. Available at: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9539048/
  2. Aydın G, et al. Skin problems associated with the use of personal protective equipment by healthcare workers during COVID-19 pandemic in Türkiye. East Mediterr Health J. 2023;29(4):238–246. doi:10.26719/emhj.23.037. Available at: https://joomla.emro.who.int/emhj-volume-29-2023/volume-29-issue-4/skin-problems-associated-with-the-use-of-personal-protective-equipment-by-healthcare-workers-during-covid-19-pandemic-in-tuerkiye.html
  3. Teo WL. Diagnostic and management considerations for “maskne” in the era of COVID-19. J Am Acad Dermatol. 2021;84(2):520–521. doi:10.1016/j.jaad.2020.09.063. Available at: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7528820/
  4. 日本皮膚科学会編. 尋常性痤瘡治療ガイドライン2017. 日皮会誌. 2017;127(6):1261–1302. Available at: https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/127/6/127_1261/_article/-char/ja
  5. Journal of Pakistan Medical Association. Adverse skin reactions in healthcare workers using personal protective equipment during COVID-19 (Article ID: 12057). J Pak Med Assoc. 2022. Available at: https://www.archive.jpma.org.pk/article-details/12057

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。