ゆらぎ世代が知らない「ジェンダーレス着こなし」3つの設計ポイント

35〜45歳向けに、身体線の見せ方・素材の落ち感・配色の3設計ポイントでジェンダーレス着こなしを実践的に指南。通勤〜休日の具体例とサイズ選びのコツも掲載し、今日から服選びがもっと楽になります。

ゆらぎ世代が知らない「ジェンダーレス着こなし」3つの設計ポイント

ジェンダーレスは「似合う」を広げる設計思想

検索データでは関心が右肩上がりです。 編集部がGoogleトレンド(日本)を確認すると、「ジェンダーレスファッション」の相対的な検索関心は過去5年でピーク時に約3倍まで伸びています[1]。Z世代の話に見えがちなトピックですが、コロナ禍を経た働き方の変化やドレスコードの緩和、体型や役割の変化が重なる35〜45歳にとっても現実的な選択肢になりつつあります。耳障りのいいスローガンではなく、毎朝の「何を着るか」を軽くする実用の文脈で、ジェンダーレスを考えてみましょう。鍵になるのは、身体の線をどう扱うか、素材の落ち感をどう生かすか、そして色のコントラストをどこでつくるか。言葉よりも設計の話です。

ジェンダーレスファッションは「女性らしさ」や「男性らしさ」を消すことではありません。医学文献や研究データのような医学的根拠を要する領域ではありませんが、ファッション史と市場動向を見ると、ユニフォームやワークウェアに起源を持つ直線的なパターン、落ち感のある生地、フラットな色設計が、年齢や体型の差異を越えて機能することが知られています[2]。つまり、誰かの規範に合わせるのではなく、自分の生活と身体に合わせて選べる「余白」を増やすアプローチです。

言葉を整えると、ユニセックスは同一アイテムを複数の体型向けサイズで展開する「提供側の設計」。一方でジェンダーレスは着る側の視点で、サイズタグや性別表示に縛られずに最適解を組み立てる「編集の行為」に近い概念です。35〜45歳のいま、筋力や骨格の見え方が変わり、重心も20代と異なります。その変化に対して、肩線をわずかに落とし、股上を深くし、足首や手首の骨感をアクセントにするなどの調整が、無理なく「似合う」をアップデートします。

言葉の整理:ユニセックスとジェンダーレスの違い

「ユニセックス=誰でも同じ」「ジェンダーレス=無性別」という理解には少しズレがあります。前者は型紙とサイズ展開の話で、後者はスタイリングの自由度を指します。たとえば同じ白シャツでも、ユニセックス設計の身幅を活かして体から離すのか、あえて小さめを選んでタックインして重心を上げるのかで印象は変わります。どちらを選ぶかは体型の特徴だけでなく、職場や家庭での役割、移動距離や気温といった生活要因も含めて決めるのが実用的です。

「年齢と体型の揺らぎ」と相性がいい理由

揺らぎ世代にとって嬉しいのは、直線基調のパターンが体型の変化を受け止めやすいこと。肩線はジャストから**+1〜2cm落とすと腕の可動が楽になり、二の腕の張りも目立ちにくくなります。パンツはヒップトップに食い込まない深めの股上**を選ぶと、ウエストの浮きや腹部の丸みを気にせず座れます。足首や手首など骨が出る部位は細いままなので、袖口や裾で「抜け」をつくると全体の重心が整い、過度に大きいだけのシルエットになりません。素材は落ち感のあるウールトロやテンセル混、コットンブロードなど、肌離れのいいものが昼夜の体温差にも対応し、日中の疲労も軽減します。とくに暑熱環境では、軽量で通気性・吸湿発散性の高い素材やゆったりとしたシルエットが推奨されています[3,4]。寒い時期は、ベース・ミドル・アウターの重ね着で保温性と体温調整性を高める方法が有効です[5]。近年の酷暑化に伴い、ライトで通気性の高い服の需要が高まっているという市場報告もあります[6]。

今日からできる、さりげない取り入れ方

最初の一歩は「全部変える」ことではなく、よく着るアイテムの置き換えです。たとえば通勤なら、短めのタイトスカートの代わりにセンタープレス入りのストレートパンツを投入します。裾幅は靴のボリュームに呼応させ、ヒールならやや細め、ローファーやスニーカーなら気持ち広めに。トップスは身体から2〜3cm離れる程度のシャツやジャケットで直線を重ねると、凛とした印象は保ちながら圧迫感が抜けます。休日はデニムをストレートかバレルに替え、メンズサイズのシャツを第2ボタンまで開けてタンクトップを覗かせるだけで空気が変わります。行事や学校関連では、黒一色に頼らず、チャコールとミッドグレー、オフホワイトの3色以内でまとめると、静かな強さが生まれます。

通勤:ジャケットは「短すぎず、長すぎず」

ヒップトップにかかる着丈の一つボタン、あるいはノーボタンのボクシージャケットは、胸の立体や腰位置の個人差を受け止めやすい万能選手です。肩パッドは薄めで、袖は手首の骨が少し見える程度に詰めると、手元が軽く働きます。インはバンドカラーのシャツや、天幅が広すぎないクルーネック。色はネイビー、グレー、カーキなどのミドルレンジを軸に、白の余白で清潔感を足せば、会議室の照明下でも硬くなりすぎません。

休日:デニムとシャツの重心調整

休日は動きやすさと清潔感のバランスです。ハイライズのストレートデニムに、わずかに長めのシャツを羽織り、裾だけ前を軽くタックイン。ベルトでウエストを括りすぎず、足元はレザーのミニマルなスニーカーかローファーにすると、気負いのないきちんと感が出ます。アクセサリーは量ではなく位置。耳たぶに近いフープや、鎖骨線に沿う短めのネックレスが、直線的な服に対して余白の「点」をつくり、顔まわりを寝不足の日でも明るく見せます。

行事:素材と仕立てで「きちんと」を担保

セレモニーや学校行事では、黒のワンピース一択から離れても大丈夫。ウールトロのセットアップに、光沢を抑えたシルクブレンドのブラウスを重ねると、写真映えのコントラストが緩みます。ヒールは低めでも、甲がほどよく開くプレーンな形なら十分にフォーマル。バッグは台形のストラクチャー型にして縦線を補えば、全体の印象がシャープに締まります。

買い物のコツ:サイズと試着の視点を変える

ジェンダーレスファッションの肝は「いつものレディースM」に固定しないこと。ユニセックスやメンズのラックも覗き、鏡の前で肩・袖・裾の3点を観察します。肩は縫い目が上腕に落ちすぎない位置で、袖は手首の骨が見えるくらいに詰め、裾は靴のボリュームと対話させます。メンズシャツなら、胸の pull(引きつり)が出ない身幅を基準に選び、着丈が長ければタックインで調整。パンツはウエストよりヒップで選び、必要ならウエストだけ詰めると、座り姿が圧倒的に楽になります。サイズ表の数字も活用しましょう。肩幅は実寸より**+2〜4cmで可動域を確保し、股下は靴に合わせて±2cm**を目安に裾上げ。ニットは洗濯後の伸縮を想定し、店頭でフィットしすぎないものを。

色の設計:60/30/10で迷わない

配色は「主役60%・準主役30%・差し色10%」の60/30/10で設計すると、忙しい朝でも破綻しません。たとえば、チャコールのジャケットとパンツで60%、白シャツで30%、靴かバッグのネイビーで10%。季節が変わったら、主役の素材だけを入れ替えればよく、ワードローブの更新コストも抑えられます。メイクは服のコントラストに合わせ、眉とリップの彩度を半歩だけ上下させると全体がつながります。

サステナビリティと長く着る工夫

流行記号から距離を置くジェンダーレスは、結果的に長く着られるワードローブをつくります。衣服の使用期間を延ばすことは環境負荷低減に寄与することが各種報告で示されています[8]。費用対効果で考えてみましょう。たとえば15,000円のシャツを週1回着れば年間約52回。1回あたり約288円です。3年着れば約96円まで下がります。買う瞬間の値札より、着る回数で割ったコストが軽いものを選ぶのが賢明です。ケアは家事の延長で無理なく。シャツはネットに入れて脱水短め、ウールはスチームで回復させ、靴は履いたら1日休ませる。気づいた糸の飛び出しや裾のほつれは、その日のうちに小さく直すと、ダメージが連鎖しません。手放すときはリセールや寄付も視野に。企業側でも、品質・耐久性を高め長く着られる服作りを重視する動きが報じられています[7]。ジェンダーを限定しない設計は、次の持ち主を見つけやすいという利点もあります。

クローゼットのアップデート:一軍10アイテムで再設計

手持ちの服を全部入れ替える必要はありません。よく着る10アイテムを机の上に並べ、色の比率、直線と曲線の配分、素材の厚みを見直します。そこに足りないのがテーラードの直線なのか、落ち感のあるパンツなのか、あるいは白の余白なのかを見極めて、一点ずつ置き換える。こうして編集する時間そのものが、自分のいまを確かめるリチュアルになります。

まとめ:服は「自分の余白」を取り戻すツール

私たちの毎日は、きれいごとだけでは流れていきません。役割が増え、体調の波があり、時間は足りない。それでも、服は小さな味方になれます。ジェンダーレスファッションは、誰かの理想像に合わせるのではなく、自分の生活と身体に寄り添う設計思想です。タグの性別やサイズの先にある「ちょうどいい」を選び取る。その積み重ねが、鏡の前のため息を一つ減らし、通勤電車の窓に映る自分を少しだけ好きにします。次の買い物で、メンズのラックにも手を伸ばしてみる。明日の朝、ジャケットの下をシャツに替えてみる。小さな一歩から始めてみませんか。

参考文献

  1. Google Trends. ジェンダーレスファッション(日本・過去5年). https://trends.google.com/trends/explore?geo=JP&q=%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3&date=today%205-y
  2. Paoletti, J. B. (2015). Sex and Unisex: Fashion, Feminism, and the Sexual Revolution. Indiana University Press.
  3. World Health Organization (2023). Heat and health. Guidance for the public on staying safe in hot weather. https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/climate-change-heat-and-health
  4. Time (2023). The best clothes to wear in hot weather, according to experts. https://time.com/6981614/best-clothes-hot-weather/
  5. Associated Press (2024). How to dress in freezing weather: layering advice and materials. https://apnews.com/article/720e871a5181ba939f3f8219b39eccdb
  6. Financial Times (2024). Heatwave demand boosts Uniqlo as shoppers seek breathable summer basics. https://www.ft.com/content/980a6285-445c-4e72-a816-e41a39e659a1
  7. Associated Press (2024). Uniqlo owner focuses on quality and durability to drive sustainable growth. https://apnews.com/article/a37ecb0c4539dde266573ef76b2afc3c
  8. Ellen MacArthur Foundation (2017). A New Textiles Economy: Redesigning Fashion’s Future. https://www.ellenmacarthurfoundation.org/publications/a-new-textiles-economy-redesigning-fashions-future

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。