稼ぎ方の地図:案件タイプと収入設計
動画編集で稼ぐ方法は、案件のタイプを理解すると一気に見通しが良くなります。最も始めやすいのは、YouTubeのカット編集とテロップ入れ、そしてInstagram ReelsやTikTokの短尺編集です。これらは素材が支給され、不要部分を切り、字幕とBGMを加え、縦横比を整える反復作業が中心。最初の実績づくりに向き、納期が短い分、早めに回転させやすいのが特徴です。相場感は編集範囲や品質で幅がありますが、短尺1本で数千円から、YouTubeの10〜20分動画で1万円台から数万円へと階段状に上がるイメージを持つと判断しやすくなります。
次に、企業や店舗の紹介動画、採用動画、ウェブ広告用のクリエイティブなど、目的がはっきりしている案件があります。ここでは企画の骨子や台本の整え、ロゴアニメーションやカラー調整など、編集に加えて「伝え方の設計」が価値になります。単発の単価は上がりますが、提案力が必要です。もう一つの柱は、月額の継続契約です。例えば週2本の短尺納品や、YouTubeチャンネルの定期運用。作業単価はやや抑えつつ、月あたりの安定収入をつくる考え方です。収入の凸凹に悩まされにくく、時間設計もしやすくなります。
編集部の視点で重要だと感じるのは、編集だけに閉じず、周辺価値と組み合わせることです。サムネイル制作、字幕のスタイル統一、フォーマット化、分析に基づく改善提案などは、実は学習コストがそこまで高くありません。編集+αの提案ができると継続率と単価が同時に上がる。このシンプルな構図を覚えておくと、遠回りをしなくて済みます。
最初の10万円を90日で作る現実的な道筋
短距離走のように追い込む必要はありませんが、節目を切ると前に進みやすくなります。最初の2週間は道具に触れる時間を集中的につくり、Premiere ProやDaVinci Resolve、あるいはCapCutなど、あなたのPC環境で軽快に動くツールに一本化します。基礎は、カット、テロップ、BGM、簡単な色調整、縦横比の切り替え。この5点がスムーズに回れば、実務の7割は動きます。続く2週間で模擬案件を3本仕上げます。家族旅行の映像や無料素材サイトの動画を使い、1本はYouTube向け、もう1本は縦動画、最後は企業紹介風にまとめて、ポートフォリオとして公開します。
1カ月目の終わりから2カ月目にかけて、告知と打席数を増やします。SNSの固定投稿にポートフォリオを置き、プロフィールに対応可能な範囲、納期目安、得意分野を明記。クラウドソーシングでは応募数を絞らず、しかし提案文はテンプレにせず、相手の過去投稿や商品ページを読み込み、改善案を1つ具体的に添えて送ります。モニター価格で2件受け、納期厳守とコミュニケーションの丁寧さで信頼を獲得します。3カ月目は、同じ領域で横展開し、紹介やリピートを促すための小さな特典(次回の短尺1本サービスなど)を用意。ここまでで数本の短尺と数本の長め動画を納めれば、合計10万円到達は現実的な射程に入ります。
単価が上がる「編集+α」
単価は魔法のように上がりません。けれど、編集に付随する付加価値をひとつずつ積み上げると、継続と紹介につながります。代表的なのはサムネイル制作で、クリック率に直結するため価値が伝わりやすい領域です。カラーパレットとフォントを先に定め、被写体の顔に光が当たるように明るさを微調整し、強い動詞を含む短いコピーを置く。こうした基本をパッケージ化してセット提案にします。字幕は読みやすいサイズ、行間、キーワードの色分けをスタイル化し、テンプレに登録。BGMは商用ライセンスの管理が肝心で、再利用可能なお気に入りリストを作っておくと時短になります。
さらに、構成台本のたたきを事前に共有する運用は、撮影段階の迷いを減らし、編集時間も短縮します。公開後の視聴維持率や離脱ポイントを見て、次回に反映するサイクルを回すと、仕事は作業から編集ディレクションへと進化します。「単発で終わらせない仕組み化」こそが、安定と単価アップの最短ルートです。
クライアント獲得の方法:打席と精度を同時に上げる
動画編集で稼ぐ方法の核心は、技術よりも「見つけてもらい、選ばれること」にあります。最初にニッチを仮決めすると、言葉が具体化します。例えば「女性向けヘアサロンのInstagram Reels特化」や「士業のYouTube解説動画」「地元の飲食店プロモーション」など、誰のどの課題に強いのかを一行で言える状態にします。ポートフォリオは、ビフォーアフターの比較が伝わる形にまとめ、完成動画に加えて、どこをどう短くしたか、字幕や色で何を意図したかを短文で沿えると、相手の想像が追いつきやすくなります。
提案文は、挨拶と自己紹介を簡潔にし、相手の現状に触れた上で、改善アイデアをひとつだけ具体的に書き、納期と編集フロー、連絡手段、修正回数、料金の目安を明確に示すと信頼につながります。最初は応答率を上げるため、返信のしやすさを意識し、候補日時をこちらから提示するのも効果的です。受注後は、初回キックオフで目的、ターゲット、使用先(YouTubeかSNSか)、尺、トーン&マナー、素材の受け渡し方法、著作権の扱いをすり合わせます。このとき「修正は2回まで」「サムネイルは別料金」「BGMは商用許諾素材のみ」など、運用ルールを文書で残すとトラブルを未然に防げます。
集客チャネルは分散させると波に強くなります。クラウドソーシング、SNS、知人経由、地域の商工会やコミュニティ、いずれも可能性がありますが、どれか一つを主戦場に決め、毎週振り返って改善するリズムが効きます。SNSでは固定投稿とハイライトに実績をまとめ、制作過程の短いビフォーアフターを発信。地道ですが、検索に拾われやすい土台ができます。営業が苦手でも、公開情報をよく読むこと、具体案を一つ添えること、約束を守ること。この三つは才能ではなく習慣です。
契約・権利・お金の基本をおさえる
契約は難しい専門書がなくても要点を押さえれば十分です。納品物の範囲、修正回数と追加費用、著作権と二次利用、クレジット表記の可否、秘密保持、支払いサイトと請求方法。この七つを文章で取り交わすだけで、ほとんどのリスクは下がります。BGMやフォントは必ず商用ライセンスを確認し、クライアント支給素材でも権利の所在を記録に残します。請求業務に不安があれば、インボイスの基礎や適正な見積もりの考え方を事前に学んでおくと安心です。請求や見積もりの基礎は、NOWHの関連特集「フリーランスの請求・インボイス」も併せて参照してください。
時間の読みは最初ほど甘くなりがちです。初回は余裕を持った納期で受け、実作業時間とコミュニケーション時間を分けて記録します。次の見積もりで反映でき、結果的に双方が楽になります。著作権と請求の基本を押さえておくことは、単価を守るだけでなく、信用をつくる最短の近道です。
忙しい35-45歳の時間設計と学び直し
働き方がチーム戦に移る時期は、自分の時間が細切れになりがちです。動画編集は集中力がいるため、30分の隙間でも進む設計が鍵になります。下準備として、プロジェクトテンプレートを用意し、フォルダ構成、命名規則、字幕スタイル、BGMの候補を最初からセットしておきます。こうしておくと、作業のたびに悩まなくて済み、短時間でも前に進みます。撮影や素材の整理を朝、カット編集を昼の合間、字幕と書き出しを夜に回すなど、工程ごとに時間帯を分けると、家事やケアと干渉しにくくなります。
学び直しは、目的から逆算すると迷いません。YouTubeの長尺を狙うのか、短尺の量産でいくのか、企業の採用やプロモーションに寄せるのか。方向が決まれば、使うツールも自然に絞れます。Windowsで軽快に動かしたいならDaVinci Resolve、Adobeの連携を活かすならPremiere Pro、スピード重視ならCapCut。どれもプロが使える水準で、重要なのは一つを使い倒すことです。機材投資は後回しにしても構いません。まずは今のPCと外付けSSD、作業に没頭できるヘッドホンがあれば十分。目と肩のケアを意識しながら、無理のないペースで積み上げましょう。
迷いや不安は自然な感情です。「自分探し」の延長で教材ばかり増えるより、一本の動画を完成させるほうが学びは濃くなります。完成品は最高の先生です。編集部からの提案として、迷ったら「30秒の縦動画を週に2本、4週間続ける」と決めてしまうのがおすすめ。結果はポートフォリオになり、提案時の会話の材料にもなります。継続する仕組みを整える話は、NOWHの「時間ブロック術」「インポスター感の扱い方」も参考になりますし、ゼロからの副業設計は「はじめての副業ロードマップ」に詳しくまとめています。
価格戦略とコミュニケーションのコツ
価格は「相場」と「価値」の間で決まります。最初は範囲を明確にしたエントリーパッケージを用意し、追加で価値を積み上げる設計にします。短尺なら本数と尺、テロップの有無、BGMと効果音、納期を明記。長尺なら構成の支援やサムネイルをセットにするかを選べるようにします。値上げは、成果や改善のエビデンスとともに、次回更新のタイミングで提案すると受け入れられやすいものです。コミュニケーションは、返答の速さと一度に答える量のバランスが大切。読点の多い長文より、要点を短く区切った丁寧な文章が伝わります。納期に影響しそうな変更は早めに共有し、相手の確認負担を減らす工夫を続けると、次の仕事へ自然につながります。
まとめ:小さく始めて、仕組みで強くなる
動画編集で稼ぐ方法は、特別な才能の話ではありません。目的を明確にし、使う道具を一つに絞り、ポートフォリオを公開し、打席に立ち続ける。やることは地味ですが、積み重ねるほど再現性が増していきます。編集+αの価値をひとつずつ足すたびに、継続率と単価は静かに上がる。忙しさに揺れる毎日でも、短い時間で進む仕組みを作れば、仕事はあなたの生活に寄り添い始めます。
最初の一歩は、今日つくる30秒の縦動画かもしれません。あるいは、プロフィールに「何ができるか」を一行で書き直すことかもしれません。次の行動として、ポートフォリオの公開、3件の提案送信、そして一つのツールに腰を据えること。あなたのリズムで、でも確実に。ここから、収入も、働き方の自由度も、少しずつ広がっていきます。
参考文献
[1] TechCrunch. Google says 2 billion logged-in monthly users are watching YouTube Shorts. 2023-07-25. https://techcrunch.com/2023/07/25/google-says-2-billion-logged-in-monthly-users-are-watching-youtube-shorts/ [2] Advanced Television. Cisco: IP video 80% of traffic. 2015-05-27. https://www.advanced-television.com/2015/05/27/cisco-ip-video-80-of-traffic/ [3] ETCentric. Cisco Projects 80 Percent of Internet Will Be Video by 2019. 2015. https://www.etcentric.org/cisco-projects-80-percent-of-internet-will-be-video-by-2019/ [4] StreamingMedia.com. Online video’s strong growth will account for the vast majority of entertainment traffic. 2016. https://www.streamingmedia.com/Articles/ReadArticle.aspx?ArticleID=118716 [5] PCMag. TikTok Now Has Over 1 Billion Active Users. 2021-09-27. https://www.pcmag.com/news/tiktok-now-has-over-1-billion-active-users