リフィル対応コスメの今:環境効果と“使い心地”の両立
リフィル対応コスメとは、ケースや外容器を繰り返し使い、中身だけを交換できる設計のメイク製品のこと。コンパクト型のパウダーファンデやアイシャドウ、リップカートリッジ、スキンケアの詰め替えパウチなどに広がっています。研究データでは、容器の再使用によって素材使用量が減るぶん、製造と廃棄の双方で環境負荷が下がる可能性が示されています[2,4]。ブランドの開示値でも、中身のみ交換する設計によりプラスチック使用量を大幅に削減できる事例が報告されており[2]、環境省も「詰替えタイプ」で廃棄プラスチック量が約81%削減できると紹介しています(製品・素材・運用により効果は異なります)[3]。なかにはCO2排出を相対的に抑えたLCA結果を公開する動きもあります[2]。
もちろん、環境配慮だけではメイクの現場は動きません。35〜45歳の読者にとって重要なのは、仕上がりと時短の両立です。編集部で半年間、パレットとリップカートリッジを中心に切り替えテストを行うと、最初の装填に30秒ほどの慣れは必要でも、以降は“切らしたタイミングで中身だけ入れ替える”という動線が定着しました。パレットは粉飛びや密着感、発色の持続を重点チェックしましたが、最近のリフィル設計は磁石やスナップの精度が高く、仕上がりの再現性が高いことが印象的でした。こうした「使いやすさ」や所要時間の短さが受容性を左右することは、一般のリフィル容器研究でも指摘されています[5]。環境効果と使い心地のトレードオフは、少なくとも主要カテゴリでは小さくなっていると言えます。
どこが環境に効くのか:目に見えない“減らす力”
環境効果は、目の前のゴミ袋の体積だけでは測れません。製造時の素材・エネルギー、輸送の距離や重量、そして使用後の処理までが積み重なって、ようやく全体像が見えてきます。リフィル対応コスメは、ケースの再利用により新規素材の投入量を抑え、同時に輸送時の重量や容積も軽減しやすい設計です[4]。編集部が確認したLCAの公開例では、コンパクトケースを長期使用する前提で、特に2回目以降の購入で相対的なCO2排出が下がる傾向が示されていました[2]。こうした効果は使用回数が増えるほど効いてきます。だからこそ、長く使いたくなるケースの品質とデザインが実は環境効果の土台になります[5]。
“わたし目線”の実感:朝のメイク台で起きている変化
編集部でリフィル対応に切り替えて驚いたのは、散らかりが減ることでした。空き容器の一時置きがなくなり、スペアのリフィルを薄いスリーブのまま引き出しに控えさせるだけで、メイクの導線がすっきりする。視界が整うことで選択の迷いが少し減り、結果としてメイク時間が短くなる朝もありました。環境配慮のための仕組みが、日々の煩わしさの削減につながる。“面倒を増やさず、むしろ手間を減らす”ことができるのが、続けられる環境配慮なのだと実感します。
選び方の基準:長持ちするケース、確かな中身
リフィル対応コスメ選びは、ケースと中身の両方を“長期戦”目線で見るのがコツです。まずケースは、蝶番や留め具の精度、磁石の強さ、表面加工の耐久性が肝になります。毎日の開け閉めに耐える堅牢さがなければ、環境効果の前提である“長く使う”が揺らいでしまうからです。店頭では、片手で開け閉めしてガタつきがないか、鏡の歪みや角の仕上げに粗さがないかも確認したいポイントです。オンライン購入の場合は、重量や素材表示、ユーザーレビューの中でも“長く使っている”という記述に目を通すと、耐久性のヒントが得られます。
中身は、メイクそのものの満足度を左右します。パウダリーなら粉質の均一さや密着、皮脂に触れた後の変化、リップならカートリッジを繰り返し差し替えても芯がぐらつかないか、発色の再現性にブレがないかといった観点が重要です。色や質感が流行で変わるカテゴリでも、ベースやニュートラルカラーは長く使える軸になるので、まずはよく使う色からリフィル化するのが現実的です。“毎日使う一本”からの置き換えは、環境効果と満足度のバランスが取りやすいアプローチと言えるでしょう。
また、ブランドのエコ設計の情報開示にも目を向けると選択がしやすくなります。素材の比率、再生材の使用、パッケージの分別しやすさ、詰め替えパウチの材質など、具体的に語られているブランドは実行度が高い傾向にあります[4]。“どれくらい減らせたか”を数字で伝える姿勢は、長く付き合うパートナーとしての信頼につながります[2]。
衛生と品質を守る運用:詰め替えの所作を小さく整える
メイクは肌に直接触れる行為です。だからこそ、リフィルの取り替えは清潔に、短時間で。編集部では、手を洗い、作業前にアルコールで指先とピンセットを軽く拭い、乾いた状態でケースからカートリッジを外して新しいリフィルを装着する流れに落ち着きました。所要時間は1分程度。詰め替えパウチのスキンケアも、注ぎ口を直接肌や容器の縁に触れさせないよう意識するだけで、衛生面の不安が和らぎます。最後に日付を書き留めておくと、使用期間の見える化ができ、肌トラブル時の振り返りにも役立ちます。こうした“所作の標準化”は、気負いなく続けるための小さな工夫です。
リスク回避の視点:互換性と安全性に気を配る
リフィル対応といっても、ブランド間の互換性は限定的です。サイズが近いからと無理にはめ込むと、脱落や破損、粉割れの原因になります。記載の適合機種を守るのが基本です。また、香料や保存料の配合が変わる新色・新処方でまれに肌が驚くことがあります。新しいリフィルの初回使用は、状態の良い日に部分的に試し、問題がないことを確かめてからフルメイクに移るのが安心です。“合う・合わない”の感覚を軽視しないことが、快適さと持続可能性の両立に直結します。
コスト・時間・気持ち:続けられる仕組みに変える
環境配慮の習慣は、財布と気持ちにも無理がない方が長続きします。編集部で試算したところ、ケースを一度購入し、中身だけを3回入れ替える前提では、同等品を毎回新品で買い替える場合に比べて総支出が軽くなるケースが複数見られました。もちろん価格構成はブランドによって差があり、ケースが凝ったプレミアムラインでは初期投資が高くなることもあります。それでも、二回目以降の支出が軽くなる設計は、心理的にも“次もリフィルでいい”という背中を押してくれます。
時間の面では、補充の頻度が下がると買い物の手間が減り、朝のメイク台の整頓が簡単になる実感がありました。新色を迎えたい時には、中身だけを迎え入れる柔軟さがあるので、“今のケースを活かしながら遊ぶ”こともできます。環境配慮が“がまん”ではなく“身軽さ”につながると感じられた瞬間から、選択は習慣に変わります。
編集部のスモールステップ:一本から、場所から
最初の一歩を小さく切ると、負担は一気に下がります。編集部でおすすめしているのは、毎日使うベースメイクのどれかを一本だけリフィル対応に置き換えること。ファンデーション、パウダー、アイブロウなど、自分の“消耗の速い軸”に合わせると効果を実感しやすくなります。加えて、保管場所を決め、スペアのリフィルを“見えるけれど邪魔にならない”場所に置く。これだけで在庫管理のストレスが減り、“なくなったら中身だけ替える”というシンプルな流れが定着します。
未来のメイクボックス:デザインと循環のアップデート
リフィル対応はゴールではなく、循環の入口です。最近は、金属ケースや再生樹脂、バイオ素材など、手触りや美しさとサステナビリティを両立させた提案が増えています[4]。長く持てるデザインは、愛着を生み、結果として環境負荷の低減につながります。さらに、回収プログラムやポイント還元、店舗での空容器回収の仕組みと組み合わせると、家庭内だけでは達成できない循環が動き始めます。メイクの愉しみを広げながら、廃棄の行き先まで視野を伸ばす。そんな“半歩先の当たり前”が、静かに定着しつつあります。
ブランド選びでは、LCA結果やリサイクル性、再生材の比率など、情報の透明性に注目すると、思想と実装がそろった相棒に出会いやすくなります[2,4]。愛着の持てるケースを選び、日々のメイクの動線に合う中身を迎え、丁寧な所作で回していく。メイクの満足と環境配慮が両立する時代に、わたしたちは立っているのだと思います。
まとめ:一本から始める、小さくて確かな変化
明日からできることは、案外小さいものです。まずはよく使うメイクの一本をリフィル対応に変え、装填の所作を自分なりに決めてみる。ケースを長く使うと決めたら、好きな手触りと見た目を選ぶ。スペアの保管場所を定め、補充のサイクルを暮らしのリズムに組み込む。これだけで、ゴミ袋の軽さとメイク時間のスムーズさが少しずつ実感に変わっていきます。環境配慮は“正解”を一気に取りにいくものではなく、続けられる小さな選択を重ねる営みです。あなたのメイク台で、どの一本から始めますか。気分が上がる色、仕事の相棒、週末のリラックス。そのどれからでも、十分です。続けやすい小さな一歩を、今日の自分にプレゼントしてみてください。
参考文献
- OECD. Plastic pollution is growing relentlessly as waste management and recycling fall short. Press release, 22 Feb 2022. https://www.oecd.org/environment/plastic-pollution-is-growing-relentlessly-as-waste-management-and-recycling-fall-short.htm
- 資生堂. サステナビリティレポート 2021:パッケージ(「つめかえ・つけかえ」容器とLCAの評価を含む). https://corp.shiseido.com/sustainabilityreport/jp/2021/environment/products/packaging/
- 環境省 Re-Style. 3Rキャンペーン2024(「詰替えタイプで廃棄プラスチック量約81%削減」等の解説). https://www.re-style.env.go.jp/3r-campaign/2024/
- 日本化粧品工業連合会. 化粧品容器包装に関する環境配慮設計指針(2022年度). https://www.jcia.org/user/approach/sustainability/packaging
- Elsevier(ScienceDirect). Refillable packaging: consumer acceptance and required features/infrastructure. Article ID S2667378922000360 (2022). https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2667378922000360