梅雨時期に起こる肌トラブルの正体
統計によると、日本の梅雨時期(6〜7月)の平均相対湿度は主要都市で75〜80%前後まで上がります[1]。さらに気象データでは、**曇天でも紫外線量は晴天時の約60〜80%**に達することが示されています[2]。医学文献や研究データでは、高温多湿の環境は皮脂分泌を促し[3]、汗や摩擦、閉塞(マスク等)が重なると角層のバリアが乱れやすいことが指摘されています[4,6]。編集部が各種データを読み解くと、梅雨時期の肌は「ベタつくのに内側は乾く」「毛穴が目立つ」「マスク蒸れや汗で赤みが出る」「曇りでも日焼けする」という複合的なトラブルが重なりやすいことが見えてきます。だからこそ、湿度・汗・摩擦・UVAという4つの要因をまとめてコントロールする発想が、梅雨時期の肌トラブル対策の近道になると期待されます。
医学文献によると、湿度が高い環境では角層が一時的に水分を抱え込みやすくなりますが[5]、同時に汗や皮脂が増え[3]、毛穴の出口で汚れと混ざりやすい状態になります。そこにマスクや前髪、衣服の接触といった日常の摩擦が加わると、角層に微細なダメージが生じ、肌は刺激を受けやすくなります[6]。**表面はテカるのに内部は乾く「インナードライ」**が起こるのは、このバランスの崩れが理由です。研究データでは、高温多湿下での汗と皮脂の増加[3]、そして長時間の閉塞環境(マスク、帽子など)が、吹き出物や赤みの一因になり得ることが報告されています[4,6]。
ベタつくのに乾く——インナードライのメカニズム
湿度が高いと、一見うるおっているように感じますが、汗で角層の天然保湿因子が流れやすくなり、エアコンの除湿で屋内に入ると急に乾燥側に振れます。この湿度の急変が、皮脂の過剰分泌やつっぱり感を招きます[3,5]。さらに、強すぎる洗顔や拭き取りで必要な皮脂まで取り去ると、肌は守ろうとして余計に皮脂を出すループに陥ります。結果として、テカリと乾燥が同居する不安定な状態が続くのです。
マスク蒸れ・汗・毛穴の関係
梅雨時期は汗で肌表面がやわらかくなり、そこにマスクの揺れや摩擦が重なると、頬や口周りに赤みやポツポツが出やすくなります[4,6]。通気の悪さや蒸れは肌荒れの一因になるため[4]、帰宅後のやさしい洗顔と清潔なタオルの使用が有効です。編集部内でも、肌あれが起こりやすいエリアの繊維接触を減らし、帰宅後すぐにぬるま湯でリセットするだけで、夕方のかゆみが落ち着いたという声が複数ありました(※個人の実感です)。
曇りでも届くUVAという見えない負荷
UVAは波長が長く、雲やガラスを通過しやすい性質があります[2]。研究データでは、曇天でも紫外線量が晴天時の6割以上に達するケースが示され[2]、梅雨時期の「なんとなく焼けた」「シミが濃く見える」感覚の背景にこのUVAが関わります。梅雨時期の肌トラブル対策を考えるなら、保湿と同じくらいUVA対策を年間を通して意識することが有用です。
梅雨時期の肌トラブル対策:今日から変えられるケア
まず洗顔は、朝はぬるま湯か低刺激の洗顔料で皮脂と汗だけを軽く落とし、夜は日焼け止めやメイク、皮脂をていねいにオフします。こすらず、手のひら全体で泡を転がすイメージに変えるだけでも、摩擦をぐっと減らせます。タオルは押し当てるだけにし、繊維の毛羽立ちが少ないものに替えるのも一手です。
保湿は、軽めの水分補給+薄膜の油分が基本です。化粧水を手でなじませ、吸い付く質感になったら、乳液やジェルで薄くフタをします。インナードライが気になるときは、ヒアルロン酸やグリセリン、セラミドなど、水分保持をサポートする成分を含むアイテムを選ぶとバランスが取りやすくなります。暑い日は乳液の量を半分にして、その分ミストで水分を重ねると化粧崩れが軽くなることもあります。編集部でも、この配分調整で午後のテカリが落ち着いたという実感がありました(※個人の感想であり、効果を保証するものではありません)。
毛穴やざらつきが気になる場合は、角質ケアを低頻度・低刺激に切り替えます。例えば、週に一度だけマイルドな酸を配合した拭き取りを行い、ほかの日はしっかり保湿に徹する、といった緩急のある設計が梅雨時期には向いています。毎日の強いスクラブは、汗と摩擦が多い季節ほど刺激になりやすいので、物理的な負荷を最小限に抑える視点が役立ちます。
日中の紫外線対策は、PA表示を重視してUVAを意識したアイテムを選びます。外出が短時間でも、朝のケアの最後に薄く均一に伸ばし、汗をかいたらティッシュで押さえてから少量を足すと、ムラなく保ちやすくなります。曇りの日でも、窓際や車内でのUVAは侮れません[2]。在宅勤務の方も、窓の近くで作業する日は日焼け止めを習慣化するとよいでしょう。関連する詳しいケアは、編集部のUV特集「曇りの日のUV対策、どこまで必要?」も参照してください。
メイクは、皮脂吸着タイプの下地をTゾーンにだけポイント使いし、全顔は薄づきに。ファンデーションはスポンジで軽くたたいて密着させ、仕上げに微粒子のルースパウダーをふわっと重ねると、梅雨時期でも厚ぼったくならずに崩れにくくなります。崩れたら一度すべて重ねるのではなく、ティッシュで余分な油分を取ってから、下地かパウダーを薄く戻す「引き算直し」に切り替えると、ヨレた質感が自然に整います。
マスク蒸れや汗対策には、綿やシルク混など肌当たりのやさしい素材に見直し、サイズは小さすぎないものを選びます。帰宅後は早めに洗顔して、肌を素の状態に戻す時間を確保します。スポーツや外回りで汗をかく日は、首元やこめかみの汗をこまめにハンカチで押さえるだけでも、顔の摩擦を減らせます。汗が残りやすい生え際は吹き出物が出やすいエリアなので、シャワー時に泡を置く時間を少し長めにすると清潔を保ちやすくなります。
生活環境の整え方:湿度・汗・睡眠を味方に
肌はスキンケアだけでなく、環境に強く影響されます。梅雨時期はエアコンの除湿や空気清浄機のドライ運転を取り入れ、室内湿度をおおむね50〜60%に保つと、ベタつきすぎず乾燥しすぎないバランスが取りやすくなります[5]。扇風機やサーキュレーターで空気を回し、換気と組み合わせると体感温度が下がり、汗の量も適度にコントロールできます。部屋干しが避けられない日は、浴室乾燥や衣類除湿剤を活用してカビの発生を抑えると、肌に触れる衣類の清潔も守れます。生活まわりの改善アイデアは、特集「梅雨を快適に過ごす除湿テク」も参考になります。
睡眠は、自律神経と肌の回復力の要です。就寝1〜2時間前にぬるめのシャワーで汗と皮脂をリセットし、寝具は通気性の高い素材を選びます。枕カバーはこまめに替えると、頬のトラブルが落ち着く人が少なくありません。食事は、タンパク質とビタミン、ミネラルが偏らないようにし、水分はこまめに。冷たい飲み物ばかりでは体が冷えて汗の蒸発が滞りやすくなるため、常温の水や温かいお茶を間に挟むと体調も整えやすくなります。睡眠の整え方は「寝つきをよくする夜のルーティン」で詳しく紹介しています。
在宅勤務の日は、仕事前に洗顔と日焼け止めまで済ませ、昼休みに短時間のストレッチや軽い拭き取りでリフレッシュする習慣を取り入れると、午後のテカリやくすみが軽くなります。外出が多い日は、ハンカチ・ミニ日焼け止め・小さなパウダーの3点をポーチに。足し引きのメンテナンスをこまめに行うことが、梅雨時期の肌トラブル対策では大きな安心につながります。
迷いやすいアイテム選びのコツ
梅雨時期は、重すぎる油分や強い洗浄力に偏りやすい季節です。テクスチャーの軽さと成分のバランスを見極める視点があると、過不足のないケアに近づけます。保湿はみずみずしい使用感の化粧水で水分を補い、乳液やジェルで薄膜をつくる方向へ。肌あれしやすい人は、アルコール濃度や香料の強さにも注意を払い、マスク蒸れが多い日はより低刺激設計のものに切り替えます。毛穴が気になるときは、過剰なカバー力のファンデーションより、下地で皮脂をコントロールしてから薄く仕上げるほうが、時間が経ったときの見え方が整いやすくなります。
日焼け止めは、曇りでも使い続ける前提で、塗りやすくて落としやすいものを選ぶと継続しやすくなります。汗をかく日はウォータープルーフを選び、帰宅後は適切な洗浄でオフできる組み合わせにしておくと、肌への負荷を最小限にできます。敏感に傾いているときは、腕の内側で試し塗りをしてから顔に使うと安心です。マスク生活が続く方は、「マスク荒れをやさしくリカバーする」もチェックしてみてください。
まとめ:梅雨でも、肌はごきげんにできる
湿度が高く、汗と摩擦、そして曇天のUVAが重なる梅雨時期は、肌にとって負荷の多い季節です。でも、落としすぎない洗顔・軽やかな保湿・UVAを意識した日焼け止め・こまめなメンテナンスという4つの軸を押さえれば、手ごたえに変化が期待されます。今日は洗顔をやさしくする、明日は乳液を薄くしてミストを一吹き、週末は寝具を替えて室内の湿度を整える——そんな小さな一歩が有効なこともあります。あなたが今いちばん気になっているのは、テカリでしょうか、赤みでしょうか、それとも曇りの日のうっかり日焼けでしょうか。ひとつ選んで、この記事の中から試せそうなことを今夜のルーティンに一つだけ足してみてください。梅雨が明ける頃、鏡の前で「今年は乗り切れた」と静かに思えるかもしれません。
参考文献
- 気象庁. 平年値(相対湿度など). https://ds.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/nml_sfc_ym.php
- 気象庁. 天気とUVインデックス(雲と紫外線量の関係). https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/env/uvhp/3-73uvindex_mini.html
- Lee SJ, et al. Seasonal variation in skin biophysical parameters. PubMed PMID: 24528115. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24528115/
- 持田ヘルスケア. 夏と汗・皮脂、マスクによる蒸れと肌バリアへの影響. https://hc.mochida.co.jp/skincare/atopic/atopic12.html
- 日本皮膚科学会誌. 室内環境(湿度40%と80%)における角層水分量の差に関する報告. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/97/8/97_953/_article/-char/ja
- ユースキン製薬. マスクの着脱と摩擦が肌に与える影響. https://www.yuskin.co.jp/hadaiku/detail.html?pdid=107