いまさら聞けない基本を更新する:時期・相手・のしの考え方
お中元は関東で7月初旬〜15日頃、関西では7月中旬〜8月15日頃、お歳暮は全国的に12月初旬〜20日頃が目安[1,2]。この“暦の常識”は長く変わっていませんが、働き方と同じように贈答の実務は静かにアップデートされ続けています。オンライン手配の普及で“いつ誰に何を贈ったか”が可視化される一方、コンプライアンスの観点から企業は受贈の上限や辞退方針を明文化するケースが増えました(判断は企業ごとに異なるため、事前確認が有効です)[6]。編集部で話題にのぼるのは、忙しさや関係性の変化の中で「贈る・贈らない」の判断に迷う瞬間が増えていること。気持ちを届けたいのに、形式だけに追われてしまう——そのズレを埋めるために、中元・歳暮の“いまの常識”を、ビジネス目線でやさしく整理します。
まずは時期の確認から。中元は地域差があり、関東では7月初旬から15日頃、関西は旧盆に合わせて7月中旬から8月15日頃までがおおよその目安です[1]。お歳暮は12月初旬から20日頃までに手配すれば十分に丁寧です[2]。これを外した場合も気持ちが遅れたわけではありません。夏なら「暑中御見舞」「残暑御見舞」と表書きを変えて贈ればよく(遅くとも8月中に)[1]、年始なら「御年賀」(松の内の期間:関東は1/7、その他は1/15まで)を、松の内を過ぎたら「寒中御見舞」(立春の前後まで)[2]とすれば、礼を欠くことにはなりません。
誰に贈るかは、今年一年の「お世話になったこと」が基準です。継続的に支えてくれた取引先の担当者、異動後も橋渡しをしてくれた社外パートナー、プロジェクトの節目で助けてくれた社内の他部署などが候補になります。ただし個人に直接贈るのが適切か、相手企業の規程に抵触しないかは事前確認が肝心です。会社名義で総務宛に送るのが安全な場合もあります。編集部でも、担当者宛てに届いた品が総務で受領不可となり返送になったケースがあり、贈る前の一通の確認メールが結果的に双方の手間を減らしました。
のし紙の基本もここで押さえておきましょう。中元・歳暮は何度あっても良いお祝い事ではないため、蝶結びの紅白の水引を用います[3]。表書きは「御中元」「御歳暮」。名前は送り主のフルネームか、会社名+部署名+氏名の順が読みやすく、連名にするなら主たる責任者を右側(上座)に置くと整います。配送伝票の記載とのしの名義が一致していると、社内での仕分けもスムーズです。

ビジネスで失礼しない:相場、選び方、避けたいつまずき
相場感は、関係の深さと贈る主体で変わります。個人の立場で取引先に贈るなら3,000〜5,000円程度が中心で、重要な関係や部署連名であれば5,000〜10,000円が目安になります[4]。高額にするほど良いわけではなく、相手の社内規程に抵触しないこと[6]と、職場で分けやすい・持ち帰りやすいという実務性が喜ばれるポイントです。常温で日持ちする菓子や飲料の詰め合わせ、個包装のグルメ、調味料のセットは配布のしやすさで支持されています。
贈り物選びでは、好みや宗教・健康上の配慮が欠かせません。アルコールは強い嗜好が出るうえ、社内の配布には不向きな場合があります。ナッツや甲殻類などアレルギー表示の確認は基本で[5]、動物性原料を避ける方やハラール対応に配慮が必要な場面も増えました。冷蔵・冷凍品は職場の保管スペースを圧迫することがあるため、事前に在席状況と受け取り環境を確認できると安心です。相手の負担を減らすという視点で選ぶと、気遣いが伝わりやすくなります。
のしや包装は“見た目の礼儀”ですが、添えるメッセージが印象を決めます。形式的な定型文だけでなく、今年の具体的な出来事に触れながら短く締めるのが編集部の推しです。例えば、「新規プロジェクト立ち上げでは多大なご協力を賜りました。暑さ厳しき折の一服にお役立てください。」といった一文があるだけで、贈り手の顔と文脈が立ち上がります。

贈らない・断る・受け取るの作法:コンプラ時代の丁寧さ
「贈らない」という判断が失礼に当たらない場面は、以前より増えています。企業が贈答の受領を原則辞退している場合や、立場上の利害関係が誤解を生む恐れがある場合は、挨拶状やメールで感謝を丁寧に伝えることが礼儀になります。表現は簡潔でかまいません。たとえば、平素より格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。当社は贈答品の受領を控える方針のため、季節のご挨拶に代えさせていただきます、と先に方針を示せば、相手も判断しやすくなります[6].
受け取れない場合の断り方も、理由と代替案を添えると角が立ちません。編集部で用いるテンプレートは、まず感謝を置き、社内規程を根拠として示し、返送・辞退・寄付などの選択肢を伺う流れです。返送する際は、発送伝票番号と到着予定日を記しておくと相手の不安を減らせます。個人宛の贈り物を会社で受領した場合は、社内規程に従い、部署で共有する、総務に届ける、私物として持ち帰る、のいずれかを責任者判断で決め、記録を残すとトラブル防止になります。
贈る側も、先方の辞退方針に出会うことがあります。その時は落胆よりも、相手のリスクマネジメントへの敬意を返すことが大人の応対です。短いお礼状で「今後はお気遣いなく」と言ってもらえる関係を目指すと、贈答に頼らない健全なパートナーシップが育ちやすくなります。季節の言葉を添えた手書きカードや、成果に直結する小さな助力のほうが、相手にとって価値があることも少なくありません。

デジタルで整える“抜け漏れゼロ”:EC、eギフト、記録と共有
オンライン注文が主流になった今、抜け漏れを減らす仕組み化が実務の品質を左右します。宛先、役職、昨年の贈答履歴、アレルギー情報、方針(辞退・上限)を、社内でアクセス可能なリストにまとめ、期日の1〜2週間前にレビューするだけでミスの大半は防げます。編集部では、注文時のスクリーンショットと受注番号、配送予定日を簡易ログに残し、到着確認とサンクスの返信が来たかまで追いかけます。これにより、二重送付や宛先ミスの再発はほぼゼロになりました。
eギフトやカタログ式の選べるギフトは、相手の好みや在席状況に配慮できる手段として定着しました。URLやQRで受け取り、好きなタイミングで品を選べるので、配布の手間をかけたくない相手には合理的です。一方で、味気なさを避けるために、メール本文やカードにひと言の温度を加えるのがコツです。「今年もご一緒できて心強かったです。寒さ厳しき折、ご自愛くださいませ。」といった短い言葉が、デジタルに温度を灯します。
忙しい季節の“駆け込み”を避けるには、上半期・下半期の振り返りと同時に贈答先のメンテナンスを行うのが現実的です。上半期の節目に中元候補、下半期のキックオフで歳暮候補をリストアップし、異動や組織変更を反映しておく。予算計画に組み込めば、直前の焦りや、過剰・過少の迷いから解放されます。過去の履歴から、毎年同じものではなく、気候や世相に合わせた“今年らしさ”を一つ加えると、形式に血が通います。
よくある迷いに編集部が答えます
「時期を逃したらどうする?」という問いには、表書きを季節の挨拶に切り替えれば問題ありませんとお伝えしています。むしろ、遅れた理由と近況を短く添えると、意図がクリアになります[1,2]。「先方が喪中のときは?」は、華やかなパッケージや赤の強い配色は避け、のしを掛けない簡素な掛け紙にするなど、静かなトーンで整えるのが安心です。「毎年続けるべき?」には、感謝を伝える手段が贈答だけとは限らないと考えましょう。関係が変わったときは、挨拶状や成果で報いる選択肢もまた礼儀です。

まとめ:形式よりも、関係をあたためる選択を
中元・歳暮の常識は、年中行事というよりも、関係の温度を確かめる対話のきっかけに近づいています。暦を押さえ、相場に無理をせず、相手の規程と状況に寄り添う。そのうえで、今年の具体的な感謝をひと言添える。たったこれだけで、形式は心に変わります。迷ったら、相手の時間と手間を減らす選択を取るのが、いまのビジネスで失礼のない最適解です。
あなたの“今年のひと言”は何でしょう。 カレンダーに小さなリマインダーを置き、候補先を三つ書き出してみてください。ひとつでも「ありがとう」を形にできたら、それは十分に実のある季節仕事です。次のメールの下書きに、短い挨拶を入れるところから始めてみませんか。
参考文献
- 楽天市場 お中元の時期とマナー(お中元の季節・地域差・暑中見舞い/残暑見舞い) https://event.rakuten.co.jp/ochugen/howto/season/
- 楽天市場 お歳暮の時期とマナー(12月初旬〜20日頃・御年賀/寒中見舞い・松の内) https://event.rakuten.co.jp/oseibo/guide/season/
- 有村屋 熨斗の選び方(蝶結び=何度あってもよいお祝いに用いる) https://arimuraya.co.jp/熨斗の選び方/
- 中村藤吉本店 お歳暮の豆知識(相場3,000〜5,000円/5,000〜10,000円) https://tokichi.jp/es/pages/oseibotrivia
- 厚生労働省 食物アレルギー表示に関する情報(特定原材料等の表示) https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2009/01/05.html
- 日本郵便ネットショップコラム お歳暮とコンプライアンス(判断は企業により異なる) https://www.shop.post.japanpost.jp/column/oseibo/oseibo_konpuraiansu.html