40代でも関節を痛めない!水泳・アクアビクスで全身を効率的に鍛える始め方

水泳とアクアビクスは、関節にやさしく全身を鍛えやすい“続けやすい運動”。浮力により関節への負担が大きく軽減されるとされ、水の抵抗で筋力が働きやすくなる点が魅力です。編集部が科学的根拠と実践メニュー(40分例)、始め方と注意点をわかりやすくまとめました。今すぐチェック!

40代でも関節を痛めない!水泳・アクアビクスで全身を効率的に鍛える始め方

関節にやさしく全身に効く:水泳・アクアビクスの身体メリット

胸まで水に浸かると体重負荷は陸上の約50%、肩〜首までなら約10%まで下がる——リハビリ領域の資料で知られるこの事実は、水中運動が“ラクなのに効く”理由を端的に示します。実際には、おへそ付近の水位で約50%、胸(剣状突起あたり)で約30%、肩〜頸(C7)までで約10%が目安です[1]。さらに、研究・運動処方の実務では水中での心拍数は陸上より10〜15拍/分ほど低く出やすいことが知られており[2]、一方で全身の大筋群を動員して酸素を運ぶため、心肺機能へのトレーニング効果が期待されるとされています。編集部で医学・運動生理の文献を横断してみると、アクアビクスを含む水中有酸素運動はおおむね中強度(約3〜6METs)、ラップスイム(連続泳)は中〜高強度(約6〜10METs)に相当することが示されており[3]、WHOが推奨する週150〜300分の中強度運動の達成に役立つことがわかります[4]。

体も心も揺らぎやすい35〜45歳。関節の違和感、体力の目減り、睡眠の浅さ、そして仕事と家庭の板挟み。陸上のランや筋トレが続かなかった人こそ、水泳・アクアビクスは現実的な選択肢です。浮力が痛みの不安を下げ、抵抗が運動効率を高め、静水圧が回復を後押しするといわれる、他の運動種目にない“水の三拍子”がそろうからです[5]。ここでは、科学的根拠にもとづくメリットと、忙しい日常に落とし込むコツを編集部視点で丁寧にまとめます。

浮力は、ひざや腰にかかる荷重を大幅に軽減することがあり、おへそ付近の水深で体重負荷は約50%、胸までで約30%、肩〜首までで約10%という目安は臨床現場の資料で繰り返し示されています[1]。これにより、陸上では避けがちなひざの曲げ伸ばしや股関節の可動域トレーニングが、痛みの恐怖心を抑えながら実施しやすくなることがあります。水中ではバランスをとるために体幹や殿筋群が自然に働き、フォームを意識しなくても全身の協調性が高まる傾向があります。

一方で、水は空気よりはるかに高い抵抗があります。速く動けば動くほど抵抗は二乗的に増えるため、軽い動作でも筋持久力の刺激になることが多いです[1]。アクアビクスのように音楽に合わせて動く場合、上肢・下肢・体幹を連動させることで、肩甲帯や背中、二の腕、臀部までバランスよく鍛えやすい傾向があります。また水中では、動作速度や姿勢、手足の開き具合で抵抗を微調整しやすく、痛みや体力に合わせて強度調整がしやすいという長所があります。ランや自重スクワットが膝に響いて挫折した方でも、水中なら反動や着地衝撃が抑えられるため、継続しやすくなる場合があります。

心肺機能への効果:低心拍でもしっかり鍛えられる可能性

研究データでは、水中運動プログラムを8〜12週間継続すると、最大酸素摂取量(VO2max)などの心肺指標が有意に向上した報告が複数みられます[6]。心拍は水圧と温度の影響で陸上より低く出やすい[2]のですが、酸素の需要は全身運動で高まるため、自覚的運動強度(RPE)で12〜14程度を目安に呼吸が弾むペースを保つと、効率的に心肺に働きかけることが期待されます[2]。クロールや平泳ぎが苦手でも、アクアジョグや水中ウォーキング、ビート板キックで有酸素負荷をかけられる場合があります[3]。

呼吸面でもメリットがあります。水の抵抗や水圧により胸郭や呼吸筋が適度に働くため、呼吸効率の改善が期待できます[5]。水温が28〜30℃程度のプールでは、過度な寒冷ストレスを避けつつ、適度な熱放散で長く動き続けやすいのも利点です[6]。

関節・痛み・体型への現実的な手応え

変形性膝関節症や腰痛傾向のある人を対象にした水中運動の試験では、疼痛スコアや機能スコアの改善が報告されています[7]。もちろん個人差はありますが、荷重が減ることで運動“直後の違和感”が少なく、その結果として継続しやすくなる傾向があるという報告もあります[8]。体脂肪に関しても、週2〜3回・40分前後の水中有酸素運動を数カ月続けると、ウエスト周囲や体脂肪率の低下が見られた報告があります[6]。筋トレ的な刺激は水中でやや弱くなりがちですが、フォームを意識したプル(引く動き)やキックで、姿勢筋や殿筋群に対して負荷をかけられることがあります。骨密度は荷重刺激が必要になるため、週1回の陸上のレジスタンストレーニングや散歩を組み合わせると、より長期的な健康にプラスになる可能性があります[9]。

ストレス・睡眠・自尊心:心に効く“水の時間”のメリット

水に入ると、静水圧が全身をやさしく包み込みます。この圧は末梢から中心への血流を助け、副交感神経の優位を促すと考えられています[5]。研究では、水中での軽〜中強度の有酸素運動後に、不安感の低下や気分の改善が自己評価で示されるケースが多く、習慣化すればストレス耐性の向上も期待できます[6]。編集部の取材データ(統計資料のレビュー)でも、週2回以上の継続者は、睡眠の主観的満足度が上がる傾向を示していましたが、観察研究でも週2〜3回の運動習慣を持つ中年層は、不眠リスクが低く、睡眠時間を十分に確保できる割合が高いことが報告されています[10]。

“ブルースペース”と呼ばれる水辺環境の心理的効果も見逃せません。反復するストロークと水の揺らぎは、マインドフルな集中を生みやすく、頭の雑音を静める時間になります。35〜45歳のゆらぎ世代に特有の、仕事の役割変化や家庭内のタスク増で張り詰めた神経を、プールという“区切られた場所”がリセットしてくれることがあります。水辺環境(ブルースペース)への曝露は、メンタルウェルビーイングの向上と関連するとの系統的レビューもあります[11]。

自律神経と気分:短時間でも効果は積み上がる

20〜30分の中強度アクアビクスで、運動直後の気分尺度が改善したという報告は少なくありません[6]。水中では心拍が控えめでも、血液循環や体温変化でセロトニンやエンドルフィンに関連する反応が起こりやすく、終わった後の“スッキリ感”につながることがあります。取り組みのコツは、完璧を求めないこと。残業後にプールへ向かう日は、ウォームアップとメイン各10分、クールダウン5分の計30分でも満足感を得られることが多いです。

睡眠に関しては、夕方〜就寝3時間前までに中強度のセッションを入れると、入眠潜時の短縮や中途覚醒の減少が示された研究が見られます[12]。就寝直前の高強度は交感神経が優位になりやすいので、終盤にゆるやかなウォーキングやストレッチ泳を取り入れ、体温をゆっくり下げる意識が役立ちます[12]。ホルモン変化に伴う気分の波やPMS、更年期移行期のホットフラッシュに悩む人も、水中運動のリズムと冷却効果が“しのぎやすさ”を生むことがあります(医学的治療が必要な症状は受診を)。

忙しい人のための始め方:頻度・時間配分・安全対策

スタートはシンプルで大丈夫です。最初の2〜3週間は週1〜2回・30〜40分を目安に、呼吸が弾むペースで続けます。慣れてきたら合計時間を週150分に近づけるイメージで、1回あたり45分に伸ばすか、平日に30分+週末に60分と分割しましょう[4]。心拍計がなくても、会話が短文でやっと続く強度(RPE12〜14)を指標にすると迷いません[2]。泳ぎが苦手なら、水中ウォーキング→アクアビクス→キック練習の流れにすると、徐々に負荷を上げつつフォームの基礎が身につきます。

安全面では、体調と水温の確認が基本です。アクアビクス向けの水温は**28〜31℃**が一般的[6]。寒く感じる日はウォームアップを長めにとり、プールから上がったら素早く体を拭いて冷えを避けます。耳や肌・髪のケアも現実的な課題ですが、事前に洗い流さないトリートメントを毛先になじませ、スイムキャップを正しく装着すればダメージを最小限にできます。塩素臭が気になる場合は、シャワーでしっかり流し、保湿とUV対策を忘れずに。鼻や耳に水が入りやすい人は、ノーズクリップやイヤープラグの活用を検討すると快適です。

費用や段取りも、続けるための重要ポイントです。回数券を使って1回あたりの費用を抑えたり、職場と自宅の中間にあるプールを選ぶと移動時間のストレスが減ります。夕食の下ごしらえを先に済ませてから出る、子どもの見守りをパートナーや家族に30分だけお願いするなど、日常の“仕組み化”が継続を後押しします。NOWHの関連特集「睡眠の質を上げる小さな工夫」「ストレスとの付き合い方」「はじめての有酸素運動ガイド」も、習慣化のヒントとして役立ちます。

40分で完結:泳げなくてもできるメニュー例

平日の夜、疲れが残る日を想定した40分セッションを紹介します。更衣を終えたら、まず5〜7分かけてゆっくり水中ウォーキングを行い、足首・膝・股関節の可動を引き出します。次に10分間はアクアビクスの基本ステップ。腕は大きく開閉し、胸の前で水を押す感覚を意識します。呼吸が弾みはじめたら、10分間のキック練習へ。ビート板を持ち、腰が反りすぎないようお腹を軽く締めて進みます。最後の8〜10分はクールダウンとして、歩行とストレッチ泳(背浮きでゆっくりキックや、平泳ぎの手だけなど)で呼吸を整えます。物足りない日は、メインのステップまたはキックの時間を各5分ずつ延長すれば、45〜50分の中強度ワークに仕上がります。

泳げる人なら、アップ5分の後に、ややきついと感じるペースで100m×5本を休息短めで回し、間にイージーの50mを挟むとメリハリがつきます。種目はクロールと平泳ぎを交互にし、最後は背泳ぎで整えると、肩周りのこわばりが抜けてデスクワーク明けでも快適に終えられます。いずれも“もう少しできそう”で止めるのがコツ。達成感を残すことで、次回の自分がまたプールに向かいやすくなります。

続けるためのリアル術:抵抗感を小さく、習慣を大きく

理想だけでは続きません。独特のにおい、髪や肌のケア、更衣の手間、そして「今日はもう遅いから」という自分の声。そこで編集部が推すのは、準備袋を“常備薬”化することです。水着・キャップ・ゴーグル・小さめのタオル・トリートメント・ボトル飲料をひとまとめにして玄関に置き、帰宅動線上で手に取れるようにしておくのです。出発までの意思決定をなくすだけで、ハードルは大きく下がります。プールの受付時間やレーンの混雑傾向を把握し、**自分の“空いている30分”**に合わせて行くのも現実的。レッスン型のアクアビクスは、予約が“半強制力”になってサボりにくいという声も多いです。

もうひとつの壁が「スキルの不安」。完璧なフォームでなくてかまいません。むしろ、水中ウォーキング+アクアビクス+補助具を使った基本動作の三本柱で、最初の3カ月を乗り切るのがおすすめです。週1回の短時間でも、心肺や気分に変化が見られることがあります。フォームを磨きたくなったら、1回だけでもスクールの基礎クラスに参加して、呼吸とキックのポイントを押さえれば、その後の伸びが変わります。

まとめ:水のやさしさを味方に、今日から動ける

水泳・アクアビクスのいちばんの魅力は、やさしさと強さが同居していることです。浮力で最大で約90%軽減する報告もあり[1]、全身を使って心肺に働きかけることが期待されます。水の抵抗は努力が反映されやすく、静水圧は回復をそっと手伝うことがあります。忙しさや気持ちの波がある日々でも、水の中なら“できる範囲”で前に進める可能性があります。

もし今、運動を再開する勇気が少し足りないなら、まずはプールの見学だけでもかまいません。更衣ロッカーの位置や水温、レーンの雰囲気がわかれば、次の一歩はぐっと軽くなります。バッグを玄関に置いて、今週どこかで30分の“水の時間”をつくってみませんか。あなたの生活に合うリズムを探す旅は、もう始まっています。

参考文献

  1. 亀田総合病院コラム「水中運動の特徴」 https://www.kameda.com/post/detail/02554.html
  2. American College of Sports Medicine. ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription. 10th ed. Philadelphia: Wolters Kluwer; 2017.
  3. Ainsworth BE, et al. 2011 Compendium of Physical Activities: a second update of codes and MET values. Med Sci Sports Exerc. 2011;43(8):1575-1581.
  4. World Health Organization. WHO Guidelines on physical activity and sedentary behaviour. 2020. https://www.who.int/publications/i/item/9789240015128
  5. 厚生労働省 e-ヘルスネット「水中運動(アクアエクササイズ)」 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-071.html
  6. 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団)「アクアビクス」 https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/aquabics.html
  7. Bartels EM, et al. Aquatic exercise for the treatment of knee and hip osteoarthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2016;(3):CD005523.
  8. Waller B, et al. The effectiveness of aquatic exercise for musculoskeletal conditions: a meta-analysis. Arch Phys Med Rehabil. 2014;95(9):1776-1786.
  9. Kohrt WM, et al. Physical Activity and Bone Health. Med Sci Sports Exerc. 2004;36(11):1985-1996.
  10. 特定健診・保健指導のポータルサイト「運動習慣と睡眠に関する10年追跡研究」2024年 https://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2024/012980.php
  11. Gascon M, et al. Outdoor blue spaces, human health and well-being: A systematic review. Int J Hyg Environ Health. 2017;220(8):1207-1221.
  12. Stutz J, Eiholzer R, Spengler CM. Effects of Evening Exercise on Sleep in Healthy Participants: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2019;49(2):269-287.

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。