ハイライトの基本:光で「骨格」を描く
肌に置く光の面積がほんの1cm広がるだけで、額の広さや鼻筋の長さの見え方が変わる。意外なようで、これは視覚の基本です。人は色よりもまず明るさの差で形を認識します[1]。つまり、立体感は「陰影」ではなく、私たちが日々コントロールできる「光の置き方」で動かせるのです。とはいえ、テカリとツヤの境界が揺らぎやすい40代の肌では、若い頃のやり方がそのまま通用しにくいのも事実。皮脂腺の活動や照明条件によって、皮脂の反射はテカリにもツヤにも転びやすく[2]。結論から言うと、少量・小面積・高い面の中央に置いて、境目だけをぼかす。この原則さえ守れば、顔立ちは無理なく引き締まって見えます。
ハイライトの基本:光で「骨格」を描く
ハイライトは、顔の高い位置に明るさを足して周囲とのコントラストをつくるメイクの要です。影を描くシェーディングとは違い、余白を広げることなく形を起こせるのが利点。光と陰影の配置は顔の形の知覚に直接作用し、ハイライトやコントゥアは顔立ちの見え方を変える手段として機能します[6]。40代の肌は、皮脂の量や水分の巡りが時間とともに変動しやすく、毛穴の開きや小ジワの「凹凸」がハイライトの光を拾い過ぎてしまうことがあります[2]。だからこそ、光の質と置き方を丁寧に選ぶことが、立体感づくりの近道になります。重要なのは、のせる場所は「最も高い面の中心」だけに絞ること。広く塗るほどツヤは拡散し、狙った立体感がぼやけます。
40代の肌とツヤのバランス
午後の乾燥や夕方の皮脂戻りなど、時間でコンディションが変わるのがこの世代のリアルです。顔面の皮脂腺は部位差が大きく、特にTゾーンは分泌が活発で、環境刺激やホルモンの影響も受けやすいため、ツヤとテカリの見え方が揺れます[2,5]。乾いた面にはクリームやリキッドがなじみやすい一方、毛穴が気になるTゾーンに油分の多いハイライトを重ねると、光が点ではなく面で反射し「テカリ」に見えやすくなります[2]。ここで役立つのがテクスチャーの使い分けです。日中の自然光やオフィス照明では、粒子の細かいパウダーを頬骨の高い位置に薄く。夕方以降の暖色照明やオンライン会議では、極少量のリキッドやバームを内側からにじませるように仕込むと、画面越しでも立体感が届きます。肌の調子が不安定な日は、まずスキンケアで角層をふやかし、薄い保湿の膜を作ってからベースメイクに入ると、ハイライトがムラになりにくくなります。十分な角層水分は表面の微細凹凸を整え、光の乱反射を穏やかにします[3].
テクスチャー選び:パウダー、クリーム、リキッド
質感は大きく三つの方向性があります。パウダーはふんわりとした拡散光で、毛穴のある面にも比較的やさしい反射を作ります。クリームやバームは湿度のあるツヤで、頬の高い位置や目頭の少面積に効果的。ただし量が増えるとフチが目立つため、米粒1〜2個ぶん以下を指先で温め、点で置いて境目だけをぼかすのがコツです。リキッドは透明感のある薄膜で、薄く伸ばしやすく失敗しにくい。朝の時短にはリキッド、夜はクリーム、日中の化粧直しはパウダーといった具合に、時間帯で切り替えると扱いやすくなります。色味は、肌の明るさに半トーンだけ明るいシャンパンベージュが万能。白すぎるものは白浮きや毛穴の強調につながるため、手の甲で必ず発色を確認してから顔に触れさせましょう[6]。
立体感を作る配置の「地図」
配置は、顔の地形を読む作業です。まずは鏡から少し離れ、正面・斜め・横の順で顔の高い面を見つけます。頬骨の一番高い点、目尻の下のカーブ、眉山の少し下の骨、鼻根(両目の間の起点)、上唇の山、顎先。これらは多くの顔で共通する「光が乗る台地」です。ここにだけ、点で光を置きます。頬骨は黒目の外側あたりからこめかみに向けて、幅は指1本分にとどめると横に広がりすぎずシャープに見えます。鼻筋は始点の鼻根を一番明るく、そこから鼻先手前までを極細の線でつなぎます。鼻先は丸みを強調しやすいので、あえて抜く選択が顔をすっきりさせます。上唇の山は、口角が下がりやすい日でも口元全体を持ち上げて見せる小さなスイッチ。顎先は顔の下の重心に光を足して、顔の輪郭を立て直す役割を果たします。
顔型によって、効果的な光の方向は少しずつ異なります。丸顔の方は縦のラインを強めるとバランスが整いやすく、鼻根から顎先にかけてのポイントを丁寧に結ぶと、顔の中央に軸が通ります。面長の方は横の広がりを意識して、頬骨の高い位置に短めのハイライトを置き、眉下の骨にほんの少し光を足すと、目元と頬の距離が近づいて見えます。エラが気になる四角顔の方は、頬骨の外側を丸く光らせるのではなく、頬骨の内側からこめかみの手前で止めると、輪郭の角をソフトに感じさせられます。いずれも、置きすぎないことが最大のテクニックです。
オンカメラと日常光では「強度」を変える
スマホやPCカメラは露出補正で肌の明るさを平均化しやすく、現実よりもツヤがフラットに写ります。オンライン会議では、頬骨の高い位置にクリーム系を米粒半分だけ、さらに目頭のくぼみと鼻根にごく少量足すと、画面越しでも顔の中央に立体感が戻ります。日常光の下では、光源が一方向から当たることが多いため、光の当たりやすい額や鼻先はあえて足さず、頬骨の内側と上唇の山だけで十分なことがほとんどです。夕方以降の暖色照明では、同じ量でもツヤが穏やかに見えるので、目尻の下のCゾーンに薄く足しても過剰になりにくいでしょう。鏡を30〜50cm離して、顔全体を一枚の写真として眺める「距離チェック」を挟むと、光の置きすぎを防げます。
ツールと量、崩れにくい「ぼかし」の技術
ツールで仕上がりは変わります。小さめのハイライトブラシは、粉の量を均一に運びやすく、頬骨や眉下の骨のカーブに沿ってふわっと置けます。扇形ブラシはさらにヴェールのような薄さを作るのが得意で、たとえばオフィスの日にはこれ一つで十分です。指は体温でクリームやバームを柔らかくし、点で置くのに最適。薬指の腹で軽く叩き込み、境目をスポンジのエッジで“消す”と、ツヤだけが残ります。スポンジは余分な油分や粉を拾いながら表面をならす役で、仕上げの一手として非常に優秀です。
量は常に控えめから始めます。ハイライトは足すのは簡単ですが、引くのは手間がかかるからです。指先で取り、手の甲で一度“撫で落とし”してから顔へ。頬骨であれば、黒目の外側の高さに一点を置き、そこからこめかみに向けて2〜3回だけ短く往復させます。ここでブラシを大きく動かすと光の面積が広がり、立体感がぼやけます。ぼかしは常に境目だけ。中心の輝度は残して輪郭を溶かすと、肌の内側からにじむような自然な立体感になります。
崩れにくさは順番で変わります。下地→ファンデーション→コンシーラーのあと、クリームやリキッドのハイライトを点で仕込む。その後、薄くルースパウダーで全体をセットし、必要ならパウダーのハイライトをベールのように重ねます。油分が多いTゾーンはクリーム系を避け、パウダーのみで反射をコントロールすると長持ちします[2]。マスク着用の日は、上唇の山や顎先は摩擦で取れやすいので、会議前など必要なタイミングでピンポイントに足す「オンタイム足し」がスマートです。色選びは肌色に寄り添うことが最優先で、血色感を足したい日はごく薄いピンクベージュ、赤みが出やすい日はニュートラルなシャンパンを選ぶと、トーンの揺らぎを抑えられます。
シーン別の設計と、よくある失敗のリカバリー
オフィスや昼の外出では、光は「動き」で見せるより「存在感」で効かせます。頬骨の高い位置にパウダーをうすく、眉下の骨に点で、上唇の山は必要な日だけ。額の中央と鼻先は汗や皮脂で光りやすいので、まずは足さない判断が賢明です[2]。夕方以降の会食や舞台照明のある空間では、点の光を一つ増やすだけで写真写りが変わります。具体的には、鼻根と上唇の山に極少量を。仕上げに鏡から一歩離れ、顔の中央が明るく、サイドが少し落ちているかを確認します。ここで中央が明るすぎれば、スポンジの面を清潔な側に替えて、軽く押さえるだけで均されます。
オンライン会議は画面とレンズの位置が鍵です。顔が暗く見えるときは照明の前に座るのではなく、顔の斜め前45度に光源を置き、頬骨の光がレンズに向かって届く角度を作ります。ハイライト自体は、目頭のくぼみと頬骨の一点で十分。これ以上足すと画面の自動補正で白飛びし、表情の陰影が失われます。汗ばむ季節は、Tゾーンのハイライトを抜き、頬骨だけを残すと清潔感が続きます[5]。乾燥が気になる季節は、パウダーの前に仕込んだリキッドをうすく、粉でセットした後にごく微量のパウダーで“面を整える”イメージに切り替えると、粉っぽさが出ません[3].
入れすぎたときのリカバリーは、順番を間違えなければ簡単です。まずティッシュでこすらずにそっと押さえ、表面の油分だけを移します。次に、無色のルースパウダーを小さなブラシにとり、ハイライトのフチだけをなぞるようにぼかします。さらに強い輝度が残るときは、ファンデーションスポンジの“何もついていない面”で軽くスタンプし、反射を半分だけ落とすと、肌の質感を壊さずに戻せます。ラメ感が強いアイテムで毛穴が目立ってしまったときは、毛穴の上を通らないように配置を微修正し、次回からは粒子の細かい「シマー」質感に切り替えるのが賢明です。
立体感は顔全体の設計の中で完成します。
参考文献
- 篠森敬三. 色の見え,認識される色と色表現の関係性. 日本視覚学会誌. 2022;43(3):78–82. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjvissci/43/3/43_43.78/_html/-char/ja
- NCBI PMC. Sebaceous gland biology and regulation: review article (PMC9428133). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9428133/
- NCBI PMC. Skin barrier function and stratum corneum hydration: review article (PMC7859014). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7859014/
- Journal of the Society of Cosmetic Chemists of Japan(香粧品科学会誌). 環境刺激(紫外線など)と皮脂腺の反応に関する概説. https://www.jstage.jst.go.jp/browse/koshohin/40/1/_contents/-char/en
- ClinicalPub. The effects of contour and highlighting makeup on the perception of facial form. https://clinicalpub.com/the-effects-of-contour-and-highlighting-makeup-on-the-perception-of-facial-form/#:~:text=%E2%80%A2%20Facial%20contour%20and%20highlighting,respectively%2C%20changing%20perceived%20facial%20anatomy