たるみ対策としての表情筋エクササイズ:メカニズムと研究エビデンス

40代女性向け。頬のボリューム低下やフェイスラインのぼやけは年齢以外の要因も。表情筋の使い方と習慣で印象を整えるヒントを、研究で示唆される知見を交えて1日10分の安全な方法と続け方のコツを編集部がわかりやすく解説。まずは今週から試してみましょう。

たるみ対策としての表情筋エクササイズ:メカニズムと研究エビデンス

たるみのメカニズムと、表情筋が担う役割

真皮コラーゲンは加齢に伴い低下することが皮膚科学のレビューで繰り返し示されています[1]。さらに、整形外科領域の解析では首が約30度前傾するだけで頭部の見かけの負荷が大きく増加することが報告されており[2]、フェイスラインや首元のたるみ印象を助長しうることが示唆されます。医学文献によると、肌という土台の変化に加え、使われにくくなった表情筋や慢性的なうつむき姿勢が、たるみの見た目に重なって影響しうることが示されています[3]。

一方で、顔の筋肉は小さく神経の再学習が起きやすいという特性があります。研究データでは、表情筋トレーニングを継続した群で頬のふくらみ(ミッドフェイスのフルネス)が改善し、見た目年齢が若く評価されたとの報告があり[4]、実践の価値があると考えられます。一方で、体系的レビューではエビデンスはまだ限定的で研究の質に課題があるとの指摘もあります[3]。

たるみの正体は一つではありません。皮膚のコラーゲンやエラスチンの減少[1]、皮下脂肪の移動や支持組織(靭帯・筋膜)のゆるみ、紫外線など外因による組織劣化が重なって、輪郭の「支え」が弱くなります[5]。医学文献によると、顔には数十の表情筋があり、その多くは皮膚に直接付着します。つまり、筋の張力が変わると皮膚の位置や折れ目の出方が変化し、たるみの見え方にも直結するのです[3]。

とくに40代は、仕事や家事でスクリーンを見る時間が長くなりがち。下向き姿勢と口を閉じずに浅い呼吸をする癖が続くと、顎下の筋が働きにくく、首の前側が短く固まり、顔の前側に重心が落ちやすくなります。これにより、ほうれい線やマリオネットラインが深く見え、口角が下がって見えることがあります。逆に、頬を持ち上げる筋や口輪筋、顎を引き上げる深層の筋が目覚めると、土台から持ち上がる感覚が戻り、表情も明るく映ります。

研究データでは、1日30分・20週間の顔トレーニングで頬のボリュームが改善し、第三者評価で見た目年齢が若く見える傾向が示されました[4]。もちろん日常で30分を毎日行うのは現実的でない場合が多いですが、1回10分を生活の隙間に積み上げることでも意味があると考えられます。なお、この研究では8週間時点でも評価の改善が認められました[4]。大切なのは、姿勢と呼吸を整え、狙う筋だけに効かせる精度を少しずつ高めること。急がず、でも止めない。このリズムが取り組みを継続するうえで有効とされています。

効果を引き出すための原則:姿勢・呼吸・頻度

まず姿勢です。椅子に浅く座り、坐骨で座面を感じながら背骨を一本の柱に見立てて伸ばします。顎をほんの少し引き、頭頂を天井に向けるイメージを持つと、首の前後がバランスよく伸び、顔の前面に余計な力が入りにくくなります。スマホを見るときは目線の高さを上げる癖をつけて、フェイスラインが前に落ちない土台を整えます(下向き姿勢は頸椎への負荷増を招きます)[2]。

次に呼吸です。鼻から吸い、ゆっくり鼻から吐く鼻呼吸に切り替えるだけで、口周りの余分な緊張が抜け、口輪筋が働きやすくなります。舌先は上あごの「スポット」(上前歯のすぐ後ろの膨らみ)にそっと触れておくと、下顔面の支えが入りやすく、二重顎の予防にも寄与します。呼吸を丁寧にすると、エクササイズ中の「顔の力み」が減り、狙った筋だけを動かす精度が上がります。

最後に頻度です。表情筋は繊細です。1日10分を目安に、週5〜6日を続ける設定が現実的で、4〜6週間で変化の兆し、8〜12週間で写真でも違いが感じられることがある、という報告や体験が多くあります。参考として、前述の研究では8週間時点で第三者評価の改善が示されています[4]。大切なのは回数よりも質。鏡の前で代償動作(眉間のしわ、首の力み、肩のすくみ)が出ていないかを確認しながら、ゆっくり・正確に動きましょう。

今日からできる実践エクササイズ

頬の土台を上げる「スマイルスライド」

口角を横に強く引くのではなく、斜め上にそっと滑らせるイメージで微笑みをつくります。上の奥歯で名刺を軽く噛むつもりで奥歯同士を近づけると、頬骨の下あたりが内側からふくらむ感覚が出てきます。そこで呼吸を止めずに5秒キープし、力をふっと抜く。これを数回繰り返していくと、口角の「自然な支点」が見つかり、ほうれい線の起点に影が落ちにくくなる可能性があります。鏡で眉が上がっていないかを確認し、頬だけが仕事をしていることを確かめながら進めてください。

ほうれい線の折れ目を浅くする「オー・イー・アー」

唇を丸くすぼめて「オー」の形をつくり、口輪筋をきゅっと集めます。次に歯を見せずに横に広げて「イー」と発音する形に移り、頬の外側が持ち上がる感覚を探ります。最後に「アー」の形で口を縦に開き、顎の付け根が伸びる心地よさを味わいます。形を素早く切り替えるのではなく、呼吸を乗せながら滑らかに移行させるのがコツです。しっかり閉じる、しっかり広げる、しっかり縦に開くという三方向の刺激が、ほうれい線周辺の皮膚の折れ癖を浅くしていくことが期待されます。

フェイスラインを整える「顎引き&舌スポット」

背骨を伸ばし、顎先を数ミリだけ内側に引きます。舌先を上あごのスポットにそっと添え、上下の歯は触れない距離を保ちます。このまま鼻から静かに5呼吸。首の前側が長く保たれ、顎下が内側から支えられる感覚が出てくれば正解です。顎を強く押し込むと首肩に力みが出て逆効果なので、あくまで「長さ」を保つ意識で。デスク作業の合間に取り入れると、前方に落ちた頭の位置をリセットできます[2]。

むくみ対策と法令線ケアに「舌ぐるり」

唇を閉じたまま、舌先で口の内側をなぞるように円を描きます。上唇の内側から頬の内側、下唇の内側を経て元の位置に戻るまでをひとつの円として、ゆっくり丁寧に進めます。頬の内側から外に向かう圧がリンパの流れを助け、朝のむくみが気になる日に役立つことがあります。顎に力が入らないよう、目元や肩の力も抜きながら行いましょう。回数にこだわるより、なめらかな軌道と呼吸の連動を大切にすると、顔全体の巡りが整いやすくなります。

目元の印象を上げる「まぶたリフト」

人差し指を軽くこめかみに添えて、眉が持ち上がらないよう見張り役になってもらいます。視線を正面に置いたまま、上まぶたの開閉だけで目をゆっくり見開き、ゆっくり閉じます。額の横じわを出さずに上まぶたの筋肉だけが働く感覚がつかめると、目の開きが自然に大きくなり、上顔面のリフト感につながることが期待されます。乾燥が気になるときはスキンケア後に行うと摩擦が減らせます。

どのエクササイズでも、皮膚を強く引っ張らないこと、痛みが出るほど力まないことが大前提です。違和感があればすぐに中止し、翌日に持ち越す判断も立派なセルフケアです。顎関節症の既往や歯列に関して医師の指導を受けている方は、主治医の方針を優先してください。

変化を促す生活習慣と続ける工夫

顔は単独で存在していません。睡眠不足の翌日はむくみやすく、塩分過多やアルコールの翌朝は輪郭がぼやけがちです。水分は小まめに、夕食は就寝3時間前までに整え、塩分やアルコールは控えめに。紫外線対策も見た目のたるみ対策では重要です。日焼け止めや帽子、サングラスで光老化の負荷を減らすと、せっかく目覚めた筋の影響が見た目に反映されやすくなります[1]。

咀嚼の習慣も見直しポイントです。よく噛む食事は頬や口周りの筋に自然な刺激を与えますが、片側噛みの癖は左右差を招きます。食事の最初の数口だけでも左右交互に噛む意識を入れると、偏りの矯正につながります。マッサージで咬筋を強く押すよりは、舌をスポットに置いて姿勢を整え、噛む力がまっすぐ降りる通り道を日中からつくる方が、結果としてフェイスラインのシャープさに寄与することがあります。

続け方はゲーム感覚が鍵です。朝のスキンケア後にスマイルスライドを、電子レンジの待ち時間に舌ぐるりを、オンライン会議前の3分で顎引き&舌スポットを、というように既存の行動にくっつけると忘れにくくなります。週の初めにスマホで正面・45度・横顔の写真を撮り、4週間同じ条件で比較すると、小さな変化も見逃しにくいものです。変化が数字で欲しい方は、口角の高さや鼻下〜顎先の距離を指で計り、メモに残しておくのも良いアイデアです。

最後にスキンケアとの相性です。乾燥は小じわを深く見せ、リフト感を損ねます。洗顔はやさしく、保湿は化粧水で柔らげてから乳液やクリームで水分を逃がさない工夫を。エクササイズは摩擦の少ないタイミング(入浴後や保湿後)に行うと肌負担が減らせます。

まとめ:今日の10分が将来の印象に寄与する可能性がある

たるみは「年齢だから仕方ない」という一言では片づけられません。姿勢と呼吸を整え、表情筋を狙って丁寧に動かすことで、顔の土台に少しずつ変化が期待されます。ポイントは、強く・多くではなく、正しく・続けることです。1日10分、4週間の積み重ねで写真に写る印象に変化が現れることがある一方で、個人差があり、必ずしも全員が同じ変化を得られるわけではありません。

鏡の前で、まずはスマイルスライドをひと呼吸ぶん。次に舌をスポットへ。肩の力を抜いたら、今日のあなたの顔に「よくやってるよ」と優しく声をかけてみてください。その一歩が、未来の輪郭に穏やかな影響を与えていくかもしれません。次にどのエクササイズから始めますか。始めやすいものを一つ選んで、今この瞬間から動かしてみましょう。

参考文献

  1. Han X, et al. Collagen is the major structural protein in the dermis and declines with intrinsic aging and photoaging. Review article. PMC Article: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10707495/
  2. Hansraj KK. Assessment of Stresses in the Cervical Spine Caused by Posture and Position of the Head. Surgical Technology International. 2014;25:277-279. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4606313/ (alt overview)
  3. De Vos E, et al. Facial exercises for facial rejuvenation: a systematic review (evidence and methodological limitations). PubMed: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24327764/
  4. Alam M, et al. Association of Facial Exercise With the Appearance of Aging Women. JAMA Dermatology. 2018;154(3):365–367. PMC: https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5885810/
  5. JP2018508778A. 皮膚の老化機序(真皮コラーゲン/エラスチンの変性、皮下脂肪の減少、UVによる加速)に関する記載を含む特許明細書. https://patents.google.com/patent/JP2018508778A/ja

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編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。