40代が知らないEGFとFGFの使い分け|ハリ・キメ悩みに効率的にアプローチする選び方

EGFとFGFはどちらも成長因子ですが、届く部位や得意分野が異なります。研究データを参照しつつ、40代のハリ・キメ悩みに合わせた現実的な使い分けと安全な併用手順を、具体例とともに分かりやすく解説します。続きをチェック。

40代が知らないEGFとFGFの使い分け|ハリ・キメ悩みに効率的にアプローチする選び方

EGFとFGFの基礎:どこに届き、何が得意か

研究データでは、EGFを配合した外用製品を8〜12週間使った被験者で肌の質感や小じわ評価が有意に改善した報告が複数あります[1,2]。一方で、FGFは医薬品として創傷治療に用いられる実績があり、真皮で働くことが確認されています[3,4]。ただし、医薬品と化粧品は設計も有効性も別物。編集部が文献を精査すると、化粧品のEGF・FGFは“肌のコンディションを整えるサポート役”として期待できる一方、即効的・劇的な変化をうたうのは現実的ではないという結論に落ち着きます[2,5].

40代の肌は、表皮のターンオーバーがゆっくりになり、真皮のコラーゲン・エラスチンの質も低下しがち。つまり“表面の乱れ”と“内側のしぼみ”が同時進行します[2]。そこで鍵になるのが、表皮にアプローチするEGF(Epidermal Growth Factor)と、主に真皮の線維芽細胞に働きかけるFGF(Fibroblast Growth Factor)。同じ“成長因子”でも、得意領域が違うからこそ、悩みに合わせた使い分けが効いてきます。[1,4]

EGFは“上皮成長因子”という名の通り、主に表皮の細胞に関与します。基礎研究ではEGFが受容体(EGFR)に結合すると、角化細胞の増殖・分化シグナルが活性化し、角層のコンディションが整いやすくなることが示されています[1]。化粧品では「ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1(sh-Oligopeptide-1)」などの表示で配合され、うるおい感やキメの滑らかさ、つや感のサポートに位置づけられます。

FGFは“線維芽細胞成長因子”の総称で、なかでもbFGF(FGF-2)がよく知られています。受容体(FGFR)を通じて真皮の線維芽細胞にシグナルを伝えるため、基礎研究ではコラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸の産生に関わることが報告されています[4]。日本ではbFGF(トラフェルミン)が創傷治療の医薬品として使われていますが、化粧品のFGF様成分は“整肌・保湿”のサポートに限定される点を区別して理解しておきたいところです[3,5].

EGFが向く悩み、FGFが向く悩み

キメの乱れ、乾燥による小じわ、くすみが気になるフェーズには表皮コンディションを整えるEGFが役立ちやすい傾向があります[1,2]。逆に、ハリの低下や弾力不足、いわゆる“たるみ毛穴”のような印象にアプローチしたいときは、真皮に関わるシグナルをサポートするFGF系を選ぶという考え方が現実的です[4]。もちろんどちらか一方というより、まずはEGFで表面を整え、次にFGFで内側のハリ感を支えるという二段構えも、40代の複合悩みにはフィットします。

化粧品表示名と“本物のFGF?”問題

成分表では、EGFは「ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1」と表記されることが多く、FGFは「ヒト遺伝子組換ポリペプチド-11(bFGF)」などで見かけます。一方で、FGFのシグナルに似た働きをねらった合成ペプチド(たとえばアセチルデカペプチド-3など)が採用されるケースもあり、“FGF”と書かれていても中身はFGF様ペプチドの場合があるのが実情です。どちらが優れているという話ではなく、安定性や刺激性、価格、製剤設計まで含めて製品ごとに完成度は変わります。ラベルの全成分表示を確認し、ブランドが安定化や容器にどれだけ配慮しているかもチェックポイントにしてみてください。

研究データで読み解く“期待”と“限界”

EGF外用については、8〜12週間の継続使用で小じわ評価や肌の粗さが改善したという小規模臨床報告があり、写真評価や触診評価でも差が示されたケースがあります[1,2]。バイオマーカーの変化や表皮厚のわずかな増加が観察されたという報告もあり、短期のうるおい・つやの実感に加えて、数カ月単位で質感が滑らかになる可能性が示唆されています[1]。ただし、被験者数が多くない試験が中心で、製剤ごとの設計差も大きいのが現状です[2].

FGFに関しては、医薬品のbFGF(トラフェルミン)で創傷治療の有効性が確立していますが、これはあくまで医療の領域[3]。化粧品としてのFGFやFGF様ペプチドは、真皮環境のコンディションを整えることを目指した“整肌・保湿”のサポートとして評価されます。数十名規模の使用試験で弾力計測値が改善したり、ハリ感の自己評価が向上した事例もありますが、個人差が大きく、劇的な変化を約束するものではないという理解が妥当です[4].

誇大に期待しないための視点

成長因子という言葉は強力に聞こえますが、化粧品は角層までのアプローチです[5]。EGF・FGFを含む処方が肌の見た目を上向かせることはあり得ますが、レチノールやビタミンC誘導体、日焼け止め、十分な保湿といった土台ケアのほうが、エビデンスの蓄積は多いのも事実です[2]。だからこそ、EGF・FGFは“仕上げの微調整”として賢く取り入れるのが現実的。基礎の柱を整えつつ、成長因子コスメで手触りやハリの微差を積み上げる、そんな戦略がゆらぎ世代には合っています。

さらに学びたい人への参考

EGFの外用に関するレビューや、成長因子ブレンド製品の臨床研究、bFGF(トラフェルミン)の医薬品情報などが公開されています。学術的な背景を押さえたい方は、PubMed掲載のレビューや各国薬局方の解説も一読の価値があります[1,3,4]。なお、医薬品データをそのまま化粧品に当てはめないという線引きは忘れないようにしましょう[5].

賢い使い分け:悩み・時間帯・併用の設計図

乾燥小じわやキメの粗さが気になるときは、まずEGFの美容液を夜のスキンケアに組み込み、角層コンディションを整える土台を作ります[1,2]。ハリ不足やたるみ印象が前面に出ている場合は、FGFまたはFGF様ペプチドの配合クリームを重ねて、うるおいを閉じ込めながらハリ感の手応えを狙う構成が取り入れやすいでしょう[4]。“EGFで表面の乱れを整え、FGFで奥のしぼみを支える”という二層アプローチは、40代の複合悩みに理にかなっています。

朝・夜の時間帯で分けるのも現実的です。朝は軽めのEGF美容液でメイクのりを損なわずにキメを整え、夜はテクスチャのあるFGF配合クリームでじっくり保湿。とくにレチノールなど攻めの成分と併用する日は、同じ夜に重ねすぎず、交互の夜に分散するほうが刺激リスクを抑えられます。酸(AHA/BHA)や高濃度ビタミンCと同時併用するときは、処方の安定化次第ではペプチドの働きが損なわれる可能性もあるため、ペプチド系は洗顔後すぐ、酸やレチノールは別日の夜に回すと覚えておくと無理がありません。

重ねる順番は、水っぽいものから油分の多いものへが基本です。化粧水で整えたらEGF美容液をなじませ、FGF配合のクリームや乳液でふたをします。日中は必ずUVケアで仕上げましょう。紫外線は表皮・真皮ともにダメージの主因になるため、どんな先端成分よりも日焼け止めの継続が投資対効果は高いというのが皮膚科学の定説です[6]。

選び方:ラベル、容器、濃度より“設計”

成分名はEGFなら「ヒト遺伝子組換オリゴペプチド-1」、FGFなら「ヒト遺伝子組換ポリペプチド-11」などが目印になります。加えて、エアレス容器や遮光設計、冷暗所保管の推奨など、繊細なペプチドを守る工夫があるかも大切です。濃度表示は製品間で単位がバラバラ(ppm、%、IUなど)で単純比較が難しく、むしろ処方全体の安定化や皮膚科学的なテストの有無に注目したほうが選びやすくなります。初めてなら小容量から試し、2〜3カ月で写真や手触りの変化を確認しながら継続可否を判断しましょう。

併用の相性:ビタミンC、レチノール、保湿

ビタミンC誘導体は、くすみ・毛穴の目立ちに強みがある定番成分。朝はビタミンC誘導体、夜はEGF+FGFという分担も取り入れやすい組み合わせです[2]。レチノールはエイジングケアの代表格ですが、乾燥や赤みを伴いやすいので、レチノール夜の翌日はEGF中心で“整える日”に切り替えるとバランスがとれます。保湿はいつでも最優先。セラミドやヒアルロン酸などの保湿基材をベースにしつつ、ペプチドを“上乗せ”する順序で考えると迷いません。

まとめ:今日から始める小さな実験

EGFとFGFは同じ“成長因子”でも、届く場所も得意分野も違います。表面の乱れを整えるEGF、内側のしぼみを支えるFGF。40代の肌悩みは一つではないからこそ、土台ケアを崩さずに、悩みに応じて二つを上手に使い分ける視点が力になります。朝は軽やかなEGFでキメを整え、夜はFGF配合クリームでじっくり保湿。レチノールやビタミンCとは夜を分け、2〜3カ月単位で写真と手触りの変化を記録する。そんな小さな実験を重ねることが、鏡の前の“なんとなくいい”を積み上げる近道です。

次に選ぶ一本、あなたはどこから整えますか。キメからか、ハリからか。それともまずはUVと保湿を固め直すか。今日の肌に合う一歩を、無理なく始めてみてください。

参考文献

  1. Epidermal Growth Factor (EGF) in skin: wound healing and aging. PMC. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6199234/
  2. Cosmeceuticals for aging skin: evidence and recommendations. PMC. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8423211/
  3. トラフェルミン(遺伝子組換えbFGF)製剤情報(国立医薬品食品衛生研究所 生物薬品部). https://www.nihs.go.jp/dbcb/Biologicals/trafermin.html
  4. Role of fibroblast growth factors (FGFs/FGFRs) in skin homeostasis, repair, and aging. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31352445/
  5. 化粧品に許容される効能表現と薬機法の枠組み(解説記事). https://digitalidentity.co.jp/blog/pmd-act/cosmetic.html
  6. 厚生労働科学研究:紫外線照射による皮膚老化と酸化ストレスに関する報告. https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/7366

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。