副業禁止の会社で取るべき3つの現実的対策(35〜45歳向け)

副業禁止の会社で悩む35〜45歳向けの実践ガイド。就業規則のチェックポイント、住民税で“バレる”仕組みの対処、許可交渉や代替収入まで、具体例・テンプレ付きでリスクを抑えつつ収入・キャリアを守る方法を短時間で把握できます。

副業禁止の会社で取るべき3つの現実的対策(35〜45歳向け)

会社の「副業禁止」はどこまで有効か:まず“定義”と“根拠”を読む

統計によると、日本の複数就業者(同時に二つ以上の仕事を持つ人)の割合は公的調査で数%台にとどまる一方[1]、民間の意識・実態調査では「副業経験あり」は一割前後に達します[2]。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」は2018年以降、改定を重ねて原則容認の姿勢を明確化してきました[3]が、現場では依然として「副業禁止」や「事前許可制」が残る企業も少なくありません。期待と現実の間にあるこのギャップは、35〜45歳の私たちにとって切実です[11]。キャリアの節目に差し掛かり、収入や経験の多角化を図りたい一方で、規則や評価、生活の安定も守りたい。きれいごとだけでは進めないからこそ、法と会社のルール、そして“バレる”仕組みを正しく理解し、現実的に動くことが鍵になります。

副業を考えるとき、最初にするべきことは検索ではなく、就業規則と労働契約の精読です。会社が副業を制限できるのは、業務への支障、秘密保持、競業のおそれ、信用失墜など、合理的な理由がある場合に限られるというのが一般的な整理です[3,5]。厚生労働省ガイドラインも、原則容認を前提にしつつ、これらの観点からの必要かつ相当な範囲の制限は認めうるとしています[3]。つまり“全面的な一律禁止”が常に妥当とは限らず、各社の規定の書きぶりと運用が実態を左右するのです。とりわけ、2018年のモデル就業規則改定では従来の包括的禁止の文言が見直され、副業・兼業に関する規定の整備が進みました[4]。

規則を読む際は、副業・兼業の定義がどこまで広いか、対象行為に「業務委託やフリーランス、役員就任、販売・転売、継続的な講演・執筆」などが含まれるか、逆に「資産運用やボランティア」が除外されているかに注目します。申請フローや判断基準(勤務時間外であること、会社設備を使わないこと、職務と利益相反がないこと)、そして違反時の措置(注意・指導から懲戒まで)の記載も見逃せません。ここが曖昧なら、人事に規程の最新版と運用方針を確認する価値があります。社内イントラのFAQや過去の許可例が参照できることもあります。

禁止の対象になりにくい活動と、逆にリスクが高い活動

一般に、上場株式や投資信託、債券といった受動的な資産運用は「副業」に当たらないと整理されることが多い一方、日中のデイトレードのように本業に支障が出る可能性がある行為は注意が必要です。地域の無償ボランティアやプロボノは除外されがちですが、継続的で有償の受託業務や、会社の事業領域と重なる活動はチェックの対象になりやすい。競合関係や情報流用の疑いが生じる活動は、禁止や不許可の可能性が高いと理解しておくと判断がぶれません。

“バレる”仕組みを知る:住民税・年末調整・情報発信の三つの経路

感情的に「バレないようにする」ではなく、事務の流れを理解して誤解を防ぐ発想が大切です。まず税務面では、前年の所得に基づく住民税が翌年6月以降に決定し、特別徴収(給与天引き)が原則のため会社に通知される額が増えると、副収入の存在が推測されることがあります[7]。確定申告時に住民税の徴収方法として「自分で納付(普通徴収)」の選択肢が提示されるケースもありますが、自治体の運用や所得の種類によっては選択できないこと、また会社規則や就業規則の届け出義務が先にあることを忘れないでください。税務の選択は“隠すため”ではなく、説明の齟齬を生まないための整合性確保として扱うのが健全です。

次に年末調整です。給与所得以外の所得がある場合、年末調整では完結せず確定申告が必要になります[6]。副収入の形態が給与(他社での雇用)だと、社会保険や源泉徴収票の突合で見える化されやすい点も知っておきたいところ。雇用ではなく業務委託の場合でも、支払調書やマイナンバーの扱いなどで痕跡は残ります[8]。最後が情報発信の経路です。SNSやポートフォリオ、名刺やウェビナー登壇といった可視の活動は、社内外での偶然の発見を招きやすい。プロフィールに所属企業名を安易に併記したり、会社の成果を個人活動として語ったりするのは誤解や規則違反の種になります。公開範囲の設定、記載内容、発信のタイミングを意識し、個人と会社の線引きを明確にしましょう。

トラブルを防ぐ実務ルール:時間・道具・情報は混ぜない

副業が許可制であれ黙認であれ、実務のルールはシンプルです。勤務時間中に副業をしない、会社のPC・クラウド・メールを使わない、社内情報や未公開資料を持ち出さない。この三つを可視化できる形で守ることです。作業ログは自分で残し、契約書には守秘義務と著作権の扱い、納品物の範囲を明確にする。日中はリサーチだけでもしない、という自分ルールも有効です。線引きが徹底されていれば、万が一の説明も筋道立てて行えます。

正攻法で許可を得る:申請書と会話の“勝ち筋”

許可を取りに行くとき、訴える順番が大切です。会社へのメリット→利益相反の回避策→時間管理→収益の規模感の順で構成し、「個人的な小遣い稼ぎ」ではなく「業務に資するスキル開発とネットワーク拡張」であることを示します。例えば、申請書にはこう書けます。対象業務の内容は既存業務と非競合で、獲得スキルは自社案件の品質向上に資する。稼働は平日夜と週末のみで、1週間あたりの上限時間を明記。会社設備・アカウントは一切使用せず、納品物と守秘義務の線引きを契約書に反映済み。収益は月数万円規模の想定で、四半期ごとに実績と学びを報告する。さらに、まずは3か月の試行許可を提案すると、判断側の心理的負担が下がります。

上司への説明は、冒頭で不安を先回りして解くのが効果的です。「本業のパフォーマンスが落ちないことを、時間管理と成果で保証します」「利益相反は発生しないように案件選定と契約条項でブロックします」「得られた知見は社内に還元します」。この三点を短く言い切り、その後に具体の案件説明へ。問いかけで合意をつくることも忘れずに。「どの点が気になりますか?」「どこまでなら会社として許容できますか?」と相手の条件を引き出し、二人三脚でガードレールを設計する姿勢が信頼につながります。

申請が通りにくい領域を避け、通りやすい設計に変える

会社の事業や顧客に近い領域、同じターゲットを奪い合う可能性がある活動、採用広報や営業の“顔”としての露出が高い活動は、どうしてもリスク高と見なされがちです。そこで、同じスキルでも用途や対象をずらす工夫が効きます。BtoBのプロであればBtoCの小規模案件に寄せる、クライアントの属性を地域や業種で変える、成果物をテンプレート化したコンテンツ販売に置き換える、といった発想です。やりたいことの“核”を守りつつ、衝突を避ける設計が現実解になります。

それでも難しいときの代替案:お金・学び・社会参加の三本柱

どうしても許可が見込めない、組織文化的に風向きが悪い。そんなときは、短期の収入増だけに視野を狭めず、中長期の選択肢を太らせる動きを優先します。まずお金の柱です。つみたてNISAやiDeCoなどの積立投資は「副業」ではなく資産形成で、就業規則の対象外として整理されることが一般的です[9,10]。家計の固定費を見直し、積立の原資をひねり出すことは、手取りを増やす副業と同じ効能を持ちます。“稼ぐ”だけが選択肢ではないと頭を切り替えると、できることが一気に増えます。

次が学びの柱です。生成AI、データ可視化、ノーコードの自動化、プレゼン設計など、本業に直結するリスキリングは堂々と進められます。認定講座や資格は会社の福利厚生で補助されることもありますし、社外コミュニティへの参加はプロボノや勉強会の形で「無償の社会参加」として会社の理解も得やすい。そこで築いた関係が将来の機会に変わることは珍しくありません。

最後が社会参加の柱です。自治体やNPOの委員、学校のキャリア講話、地域のイベント運営など、小さく外に出るアクションは信用の母体をつくります。報酬がなくても、実績としては十分に強い。実務で使うスライドやテンプレートを自作し、ナレッジをnoteやスライド共有で公開するのもよいでしょう。著作権や守秘の線引きを守りながら、名前で検索したときに「この人は何者か」が伝わる“静かな発信”を積み上げておく。副業が解禁されたとき、あるいは転機が来たときに、そこから一気に回転が始まります。

来年のための“下ごしらえ”:税務と時間の筋トレ

副業ができない今こそ、税と時間管理の基礎を固めます。確定申告の流れをシミュレーションし、帳簿アプリを使って架空プロジェクトの売上・経費を入力してみる。領収書のデジタル保存や科目の考え方に慣れておくと、始めた瞬間の混乱が激減します。時間は週に3時間を“未来のための常設枠”として先に確保し、読書や実験、サンプル制作に使う。「時間はあとからは空かない。先に確保する」という逆算が効いてきます。

まとめ:禁止の壁にぶつかったら、設計を変える

副業禁止の壁は高く見えますが、壁の内側を正しく把握すれば、登るのか、脇道をつくるのか、来年のための土台を厚くするのか、動き方を選べます。就業規則の定義と根拠を読み込み、住民税や年末調整など“見え方”の経路を理解し、許可のとり方を会社のメリットから設計する。もし難しければ、資産形成・学び・社会参加の三本柱で地力を上げる。きれいごとではなく、現実に効く順序で一歩を置くことが、揺らぎの季節を抜ける近道です。今週は就業規則の最新版を読み、疑問点をメモに落としてみませんか。来週は1時間だけ、申請書のドラフトを書いてみる。関連して、社内外の学びをどう還元するかを言語化してみる。それぞれの一手が、未来の選択肢を増やします。

参考文献

  1. 総務省統計局. 労働力調査(長期時系列データ・就業者関連)03roudou. https://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/03roudou.html
  2. HRzine. 正社員で副業をしている人は10.9%、副業容認企業は約5割に、パーソル総合研究所が調査結果を公表(2019). https://hrzine.jp/article/detail/1466
  3. 厚生労働省. 副業・兼業の促進に関するガイドライン(2018年策定、2020年・2022年等改定). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html
  4. 厚生労働省. モデル就業規則(平成30年1月改定). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
  5. マネーフォワードBiz. 従業員の副業は全面禁止できる?就業規則と法的な考え方. https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/93399/
  6. 国税庁. 確定申告が必要な人(タックスアンサーNo.2020). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm
  7. 東京都主税局. 個人住民税(特別徴収)について. https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/syomin/toku.html
  8. 国税庁. 法定調書の提出の手引(報酬・料金等の支払調書 含む). https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hotei.htm
  9. 金融庁. つみたてNISAの概要. https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/tsumitate/overview/index.html
  10. iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会). iDeCoの基本. https://www.ideco-koushiki.jp/overview/
  11. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT). 調査シリーズNo.245 副業者の就労に関する調査(2024). https://www.jil.go.jp/institute/research/2024/245.html

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