35〜45歳女性向け|仕事で使えるプログラミング思考3ステップ

コード不要のプログラミング思考を分解・パターン発見・抽象化の3ステップで解説。35〜45歳の働く女性向けに、会議や資料作成、業務改善で即使える具体ワークとすぐ使えるコツを紹介します。

35〜45歳女性向け|仕事で使えるプログラミング思考3ステップ

プログラミング思考はコードではなく「問いの整え方」

世界経済フォーラムの報告では、2027年までに労働者のスキルの44%が変化に直面するとされています(Future of Jobs 2023)[1]。同時に、経済産業省の試算では2030年に最大79万人のIT人材が不足する見込みが示されました[2]。数字だけを見ると身構えてしまいますが、ここで伝えたいのは「今すぐコードを書けるようになること」ではありません。編集部が各種データを読み解いた結論は、私たちがまず身につけたいのは、プログラミングそのものよりも、課題を構造化して再現可能な手順に落とし込むプログラミング思考だということです。

研究データでは「分析的思考」や「問題解決力」が今後の中核スキルと繰り返し示されています[3]。専門用語で「コンピュテーショナル・シンキング(Computational Thinking)」と呼ばれるこの力を、日常語に置き換えるなら、問題を分解し、似た事例からパターンを見つけ、本質だけを抽象化し、誰がやっても同じ結果になるように手順化して、最後に動作を検証する一連の思考のこと[4,6]。会議が長引く、依頼が漏れる、資料作成が間に合わない——そんな職場の“モヤモヤ”にこそ効きます。

なぜ「35–45歳」に効くのか

ゆらぎ世代は、個人の成果だけでなくチームの運営や育成を求められる移行期です。自分で手を動かす時間は減る一方、意思決定と調整の密度は増える。ここでカギになるのが、情報の流れを整理し、判断の条件を言語化する力です。プログラミング思考は、経験を持つ大人が直感に頼りすぎないための「言葉のフレーム」。既に持っている現場感覚に、構造化という補助線を一本引くイメージで機能します。

分解・パターン・抽象化・手順化:4つのレンズで“モヤモヤ”をほどく

プログラミング思考を日常の仕事に重ねるとき、役立つのが4つのレンズです。難しい理論ではありません。いま抱えている課題をこの順で見直してみる。それだけで、次の一手が見えやすくなります。

1. 分解:大きな問題を小さく切る

「月末のレポートがいつも遅れる」という悩みは、一枚岩ではありません。実際には、データの収集、整形、解釈、可視化、承認という小さな工程の集合体です。ここで大切なのは、「どの工程で何が詰まっているか」を特定すること。たとえば収集に時間がかかっているなら、データの所在が散らばっているのか、アクセス権の問題なのか、依頼のタイミングなのか。それぞれ改善策は異なります。大きな問題を分けるほど、打つべき手は具体になります。

2. パターンを見つける:繰り返しに気づく

ミスの再発、質問の頻出、想定外の手戻り。これらはランダムに見えて、ほとんどがパターンです。McKinseyの分析では、ナレッジワーカーは業務時間の相当割合を情報探索や再作業に費やすと指摘されています[5]。自分やチームの仕事を週単位で振り返り、同じつまずきがどこで起きるかをメモに残すだけでも、改善の入口が見えてきます。「毎週火曜日の午前は承認が滞る」「A部署からの依頼は要件が曖昧になりがち」といったパターンに名前がつくと、対策は一段具体になります。

3. 抽象化:本質だけを残してモデル化する

抽象化は、状況に引きずられずに原則を取り出す作業です。たとえば「Aさんからの依頼は急で困る」という愚痴を、「締切と優先度のラベルが未定義の依頼は受けない」という原則へ置き換える。人ではなく条件に注目することで、運用ルールは公平になり、伝達もしやすくなります。資料作成でも同じです。フォーマットが毎回違うと作る側も見る側も疲れます。目的、結論、根拠、次のアクションという骨格に抽象化して固定すれば、内容が変わっても迷いは減ります。

4. 手順化と検証:誰がやっても同じ結果に近づける

最後は、具体の行動に落とし、動作確認までセットにすることです。たとえば採用面談なら、日時の確定、事前資料の共有、評価観点の統一、当日対応、振り返りという手順を一枚にまとめる。実行後に「どこで詰まったか」「次回何を変えるか」を記録して次の運用に反映します。これはソフトウェアのテストと同じ発想です。一回の施策で完璧を狙うのではなく、小さく回して改善する。これがチームの学習速度を上げます。

今日から使える実装術:会議、メール、資料作成が軽くなる

抽象論で終わらせないために、現場にそのまま持ち込める工夫を紹介します。どれも特別なツールは不要です。紙のメモ帳でも十分に機能します。

会議を「入出力」で設計する

会議招集のテキストを、入出力の二行で書き換えてみます。「入力:各自、先月の売上と課題トップ3を事前共有」「出力:来月の重点施策と担当者、期限」。開始時にこの二行を読み上げ、終了時に出力が満たされたかを確認する。これだけで主目的からの逸脱が減り、意思決定が前に進みます。議事録も、出力に揃えて簡素に残せます。

メールの方針をIf-Thenで言語化する

対応が迷子になりやすいメールは、条件と反応のひな型を作っておきます。「もし添付がない依頼なら、ファイル形式と提出期限を明確に尋ねる」「もしCCに決裁者が含まれない相談なら、判断保留で決裁者の追加を依頼する」。人に依存しない判断の軸ができると、対応スピードは安定します。共有フォルダに数行のメモを置き、チームで毎週更新するとさらに定着します。

資料は“骨格→肉付け”の順で作る

スライドを開く前に、紙に四つの枠を書きます。「目的」「結論」「根拠」「アクション」。先にこの骨格だけを埋め、上司や関係者とすり合わせる。その後で初めてグラフや図表を足していく。順序を守ると、手戻りが激減します。編集部でもこの順番に切り替えてから、初稿までの時間が短くなり、フィードバックの往復も減りました。

朝の10分“バグ報告”でムダを洗い出す

毎朝、昨日の業務で起きた「バグ」を三つだけ書き出します。たとえば「依頼の締切が曖昧だった」「同じ質問に二度答えた」「承認プロセスがわからなかった」。次に、その原因を仮説レベルで一言添える。「依頼テンプレがない」「FAQの置き場所が見えない」「承認フロー図が古い」。最後に、今日やる小さな修正を書きます。テンプレのひな型を一つ作る、トップにFAQリンクを張る、フロー図の日付を更新する。三日続けると、驚くほど仕事の通り道が良くなります。

学びを定着させる3週間プラン:小さく始めて、確実に残す

新しい思考法は、短距離走では身につきません。三週間を一区切りに、負荷の低いサイクルで体に馴染ませていきましょう。最初の一週間は、現場の観察に徹します。会議、メール、資料作成の三領域で、自分とチームの動きを記録し、繰り返すつまずきに印をつける。解決しようとしなくて構いません。パターンに名前をつけることが目的です。

二週目は、名前をつけたパターンを一つ選び、分解と抽象化に取り組みます。「どの工程で止まるか」「人ではなく条件は何か」を紙に書き出します。ここでも完璧は目指しません。粗くて良いので、工程と条件が見えるだけで半分終わっています。可能なら同僚と5分だけ見せ合い、抜けや思い込みを指摘し合うと精度が上がります。

三週目は、最小の手順化と検証です。入出力の二行、If-Thenの一行、資料の骨格の四枠。どれか一つを選び、日常に組み込みます。実行後は必ず「何がうまくいき、何が噛んだか」を一言で記録する。うまくいかなかったら、翌日に条件を一つだけ変えて再テストします。小さく回すのがコツです。結果は、週末に1ページのメモにまとめ、次週の一手だけを決めます。

まとめ:問いを整えれば、仕事は軽くなる

変化の速い環境で、私たちは「もっと頑張る」以外の選択肢を持つ必要があります。プログラミング思考は、意志の強さに頼らず、仕事を軽くするための技術です。分解して、パターンに気づき、抽象化して、手順に落とす。この一連の動きを、今日の一場面にだけ適用してみてください。たとえば次の会議招集を、入出力の二行で書いてみる。メールの返信方針をIf-Thenで一つだけ決める。資料の骨格を先に描いてからアプリを開く。どれも10分以内に始められます。

**きれいごとではなく、明日が少し軽くなる工夫を。**思考は筋肉のように鍛えられます。あなたの現場で起きている“モヤモヤ”に、4つのレンズを一つだけ当ててみませんか。最初の小さな成功が、次の一歩を連れてきます。

参考文献

  1. World Economic Forum. Future of Jobs Report 2023 日本語プレスリリース. https://jp.weforum.org/press/2023/04/jp-future-of-jobs-report-2023-up-to-a-quarter-of-jobs-expected-to-change-in-next-five-years/#:~:text=%E3%83%88%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%80%8B%E3%80%85%E3%81%AE%E5%8A%B4%E5%83%8D%E8%80%85%E3%81%AE%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%B9%B3%E5%9D%8744%EF%BC%85%E3%82%92%E6%9B%B4%E6%96%B0%E3%81%99%E3%82%8B%E5%BF%85%E8%A6%81%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A8%E6%8E%A8%E5%AE%9A%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  2. NTTコミュニケーションズ Bizon. 経済産業省がみずほ情報総研に委託した「IT人材需給に関する調査」によれば、IT人材は2030年に最大で79万人不足する可能性。https://www.ntt.com/bizon/d/00491.html#:~:text=%E7%B5%8C%E6%B8%88%E7%94%A3%E6%A5%AD%E7%9C%81%E3%81%8C%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E6%83%85%E5%A0%B1%E7%B7%8F%E7%A0%94%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE%E3%81%AB%E5%A7%94%E8%A8%97%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%8CIT%E4%BA%BA%E6%9D%90%E9%9C%80%E7%B5%A6%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB%20%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%80%8D%EF%BC%88%E2%80%BB%EF%BC%89%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%80%81IT%E4%BA%BA%E6%9D%90%E3%81%AF2030%E5%B9%B4%E3%81%AB%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%A779%E4%B8%87%E4%BA%BA%E4%B8%8D%E8%B6%B3%E3%81%99%E3%82%8B%E5%8F%AF%E8%83%BD%E6%80%A7%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A8%E8%A9%A6%E7%AE%97%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  3. World Economic Forum. The Future of Jobs Report 2023 – Digest(Analytical thinking and creative thinking…). https://www.weforum.org/publications/the-future-of-jobs-report-2023/digest/?fbclid=IwAR3grCjqXcfdjPKk_Hz7dCAghQWCwWx7BdCmYxnJ2RcvGi9aTTEwWt4ifKE_aem_AQWnXIN1JZago4uwCP05NkqXPwcM6_eOdcdqz3mF5X0awV4JBNaLnoBo9TbDf_xxyBc#:~:text=Analytical%20thinking%20and%20creative%20thinking,thinking%2C%20another%20cognitive%20skill%2C%20ranks
  4. EdTechZine. コンピュテーショナル・シンキング(用語集). https://edtechzine.jp/glossary/detail/%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0#:~:text=1960%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%81%99%E3%81%A7%E3%81%AB%E5%AD%98%E5%9C%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F%E8%80%83%E3%81%88%E6%96%B9%E3%81%A0%E3%81%8C%E3%80%81%E6%9C%AC%E6%A0%BC%E7%9A%84%E3%81%AB%E6%B3%A8%E7%9B%AE%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%AF%E3%80%812006%E5%B9%B4%EF%BC%88%E5%B9%B3%E6%88%9018%E5%B9%B4%EF%BC%89%E3%81%AB%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%AE%97%E6%A9%9F%E5%AD%A6%E4%BC%9A%E8%AA%8C%E3%81%AB%E5%AF%84%E7%A8%BF%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%81Jeannett%20e%20M,%E3%83%88%EF%BC%88%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E7%A7%91%E5%AD%A6%E8%80%85%EF%BC%89%E3%81%AE%E6%80%9D%E8%80%83%E6%B3%95%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%AE%9A%E7%BE%A9%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%8A%E3%80%81%E5%85%B7%E4%BD%93%E7%9A%84%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%8C%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%81%8C%E4%BD%95%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8B%E3%82%92%E7%90%86%E8%A7%A3%E3%81%97%E3%80%81%E8%AA%B2%E9%A1%8C%E3%82%92%E9%81%A9%E5%88%87%E3%81%AB%E8%A7%A3%E6%B1%BA%E3%81%99%E3%82%8B%E6%96%B9%E6%B3%95%E3%82%92%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%8D%E3%81%A8%E8%AA%AC%E6%98%8E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%80%82
  5. McKinsey & Company. Rethinking knowledge work: A strategic approach. https://www.mckinsey.com/capabilities/people-and-organizational-performance/our-insights/rethinking-knowledge-work-a-strategic-approach.#:~:text=The%20problems%20of%20free%20access,management%20and%20have%20an%20incomplete
  6. AMP. コンピュテーショナル・シンキングとは何か(アルゴリズム的思考の解説). https://ampmedia.jp/2019/01/27/computational-thinking/#:~:text=,%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0%E7%9A%84%E6%80%9D%E8%80%83%EF%BC%88%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%97%E3%80%81%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%94%E3%81%A8%E3%81%AB%E6%89%8B%E9%A0%86%E3%82%92%E6%98%8E%E7%A2%BA%E3%81%AB%E3%81%97%E3%81%9F%E6%8C%87%E7%A4%BA%E6%9B%B8%E3%82%92%E4%BD%9C%E6%88%90%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%89

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