パウダーとリキッドの違いを、仕上がり・持ち・肌負担で読み解く
Googleトレンド(日本、過去5年)では『リキッドファンデ』の検索人気が『パウダーファンデ』の約1.3倍という結果が出ています[1]。一方で、日本の梅雨から夏にかけては高湿度の日が続き、テカりや崩れが気になる季節も長い。編集部が市場動向とベースメイクの処方特性を突き合わせて見えてきたのは、人気と相性は必ずしも一致しないという現実でした。35−45歳の肌は、乾燥と皮脂が同居しやすく、毛穴やくすみ、うすい小ジワなど複数のサインが同時に現れます。きれいごとだけでは選べないからこそ、どちらが“良いか”ではなく、あなたの今日の肌と予定に“合うか”で考えることが近道になります。本稿では、仕上がり、持ち、肌負担、そして生活者目線の時短まで、実用性にこだわって比較し、最後に使い分けの具体策までまとめます。
パウダーファンデーションは、板状や球状の粉体に色材や皮脂吸着成分を組み合わせた固形処方が中心です。粉体は光を乱反射させるため、毛穴や凹凸をふんわりぼかすのが得意で、セミマットからマット寄りの均一感を出しやすいのが特徴[4]。皮脂を吸着する性質から、崩れにくさや快適な軽さも得やすい半面、乾燥が強い日の頬や目周りでは粉っぽさを感じることがあります[3]。リキッドファンデーションは、水や揮発性オイル、シリコーン系成分をベースに顔料を分散させた液状処方が主流で、肌に塗布すると揮発成分が飛んで薄い膜が密着します[5]。薄膜で肌と一体化するため、ツヤや自然な血色感を残しながらカバーでき、くすみが気になる年代でも厚塗り感を抑えやすいのが強みです。ただし、皮脂が多いTゾーンでは時間とともにテカりやヨレが出やすく、毛穴落ちに注意が必要になります[4].
肌への負担という観点では、どちらが絶対に軽い・重いと断言するのは難しく、処方と使い方に左右されます。パウダーは顔料と粉体の物理的な付着が中心で、洗浄も比較的スムーズ。一方リキッドは密着性が高いぶん、クレンジングとの相性が大切になります[8]。いずれも、薄く重ねて落としやすさを担保し、帰宅後に長時間放置しないことが肌への優しさにつながります。また、資生堂の検証ではファンデーションは「毛穴を埋めない」「肌呼吸を止めない」ことが示されています[2]。マスク移りや衣服への付着は、一般にパウダーの方が少なめですが、近年はリキッドでも揮発後の被膜や油水設計を最適化した“ロングラスティング”系が増えており、皮脂によるくすみや色のにごりを抑える技術報告もあります[7]。持ちと移りの問題は、仕上げのパウダーやミストの使い方で大きく改善します。
カバー力とツヤ・質感:年齢サインをどう“見せる”か
くすみや色ムラが気になる日は、リキッドの薄膜カバーが頼もしく、頬の高い位置に残したツヤがフレッシュさを演出します。小ジワや法令線にファンデがたまるのが悩みなら、パウダーのソフトフォーカス効果で輪郭をぼかすと、陰影がやわらいで見えます[4]。編集部の検証では、顔全体をツヤで統一するより、Tゾーンはテカりを抑えて、頬とCゾーンだけにツヤを残すほうが、オンライン会議や蛍光灯下でも清潔感が保ちやすいと感じました。色補正は下地で整えると厚塗りを避けられます。くすみにはラベンダー、赤みにはグリーン、黄ぐすみにはブルーやライトベージュなど、コントロールカラーをうまく仕込むと、リキッドでもパウダーでも一度で仕上げられる確率が上がります。色補正の基本は、関連記事『色ムラを整えるコントロールカラー入門』も参照してください(内部リンク)。
持ちと崩れ:皮脂・汗・湿度にどう対抗するか
湿度や汗で崩れる日は、皮脂吸着力のあるパウダーが理にかないます[3]。ただ、皮脂が出る前の“乾いた状態”で重ねすぎると粉浮きの原因になります。朝は薄く、日中に出てきた皮脂と混ざるタイミングで軽く押さえるイメージが、最もきれいな時間を長く保つコツです。リキッドは、塗布直後に揮発成分が飛ぶまで数十秒待ち、その後に薄くルースパウダーでセットすると密着が安定します。毛穴が気になる日は、下地の段階で凹凸をフラットに整えるタイプを併用すると、後工程の量が減り、結果として崩れにくくなります[6]。毛穴下地の選び方は『毛穴をぼかすプライマーの科学』で詳しく解説しています(内部リンク)。
肌質・季節・シーン別に“合う”を選ぶという発想
混合肌の人は、Tゾーンの皮脂量と頬の乾燥度が違う日が多いはず。そんなとき、どちらか一方に決めるより、部分で最適解を変えるのが合理的です。たとえば、頬はリキッドでうるおいとツヤを確保し、テカりやすい鼻と額だけをパウダーファンデで薄く仕上げる二刀流。逆に、肌が全体的にゆらいで刺激感が出やすい日は、粉体のシンプルなパウダーで摩擦を抑えつつ、色ムラはコンシーラーでポイント対応するほうが快適な場合もあります。乾燥が強い冬は、保湿下地とリキッドの相性が良く、時間が経つほどになじんでツヤが増す“育ち方”が美しい。一方、梅雨や真夏は、パウダーの軽さとふんわり感が味方になり、通気性のよさが化粧持ちに効きます[4]。オンライン登場が多い日は、カメラで飛びすぎないセミマット寄りの質感が安定し、対面のレセプションや夜の予定には、頬にだけツヤを残すと写真映えします。
時短の観点では、パウダーのコンパクトは鏡前に座れない朝でもサッと完了できる強みがあり、移動中のリタッチもスマートです。リキッドはスポンジやブラシでのなじませ時間が必要ですが、慣れると薄膜一発でベースからハイライトのニュアンスまで作れる効率性があります。SPFの重ね方は、日焼け止めで土台をつくり、ファンデは仕上がりで選ぶのが基本です。マスク移りが気になる日は、リキッドを極薄にしてからセッティングミストで密着を補強すると、パウダー派と同等の耐久性に近づきます。ミストの選び方や使い方は『メイクが落ちにくい仕上げミスト活用術』も参考に(内部リンク)。
混合肌・乾燥肌・敏感肌で変わる最適解
混合肌は、皮脂が多い部位をパウダー、乾燥部位をリキッドにする部分最適が合理的です。乾燥肌は、保湿下地とリキッドで薄く均一に整えてから、テカりやすい鼻先だけパウダーをのせると、粉っぽさを避けながら清潔感をキープできます。敏感に傾いている日は、香料やアルコールに反応しやすいことも。そんな日は刺激になりにくい処方を選び、クレンジングは短時間ですませる設計のファンデを選ぶと、総合的な負担を抑えられます[8]。ノンコメドジェニックテスト済みやパッチテスト済みなどの記述は、あくまで目安として活用してください。
季節・環境・ライティング:意外と見落としがちな前提条件
湿度が高い環境では、粉体の拡散でふわっと見せるパウダーが安定し、空調で乾燥したオフィスや冬場の外気では、リキッドの薄膜が時間とともに肌となじみます[4]。蛍光灯の下はツヤが強調されすぎるとテカりに見えがちで、セミマットのほうが清潔感が出やすい一方、自然光では頬のツヤが生き生きとした表情に見せてくれます。撮影やプレゼンなど“見られる”場面がある日は、下地の段階で色ムラと凹凸を整え、ファンデは最小限にするのが、厚塗りに見えないコツです。
仕上がりを左右する道具とテクニック:同じファンデでも別物になる
リキッドは、ごく少量を手の甲で温め、顔の中心から外へスポンジで叩き込むと、毛穴の方向に逆らわずに密着します。厚みが出やすい小鼻や口角は、スポンジのエッジで余分を取り去る“引き算”が決め手。最後に何もついていないスポンジでフェイスラインをならすと、境目のない仕上がりになります。パウダーは、ブラシを使って面でのせると粉体が均一に広がり、磨くようにふわっと回すとソフトフォーカスが最大化します。コンパクトの付属パフはリタッチで威力を発揮しますが、朝は大きめブラシで薄さと均一感を優先したほうが、一日を通じて崩れ方が美しくなります。仕上げに極少量のフェイスミストを顔の上空にスプレーして、霧を浴びるように受け止めると、粉感がほどけて一体感が生まれます。
ありがちな失敗と、その場で立て直すコツ
粉っぽさが出たら、乳液を米粒一つぶだけスポンジに取り、頬の高い位置からスタンプのように軽く押さえると、粉体がなじんで艶だけが戻ります。リキッドの毛穴落ちは、乾いた綿棒で落ちた部分を一度やさしく取り、下地を米粒程度だけ置いてから極薄のリキッドを重ねて、最後にティッシュオフ。テカりは皮脂を吸う紙でこすらず押さえ、必要なところにだけパウダーを直づけせず、ブラシでごく薄く。時間がないときほど全部を足すのではなく、余分を引くほうがきれいに戻ります。朝3分で完成させたい人は、色補正下地+パウダーで土台を作り、クマと小鼻の赤みだけコンシーラーでポイントカバーという順で進めると、メリハリのある仕上がりになります。朝の効率的な支度術は『忙しい朝の時短メイク術』でも紹介しています(内部リンク)。
コスト・衛生・サステナブルの視点で考える
コストは、使用量とリタッチ頻度で変わります。パウダーは一回量が少なく、リフィル対応の製品も多いため、長期的なコストとゴミの両面で有利になりやすい傾向があります。リキッドは薄膜で済ませられれば意外と減らず、一本で下地いらずの多機能タイプなら、トータルコストが逆転するケースもあります[5]。衛生面では、スポンジやブラシの定期洗浄が品質を左右します。とくにリキッドはツールに油分が残りやすく、それがムラや崩れの原因に。週末に中性洗剤で洗って干すルーティンを組み込むと、仕上がりと肌トラブルの予防の両方に効きます。保管は直射日光と高温多湿を避け、開封後は12カ月前後を目安に入れ替えると、酸化臭や色ブレのリスクを減らせます。環境配慮の視点では、リフィルや再生プラスチックの採用など、ブランドの取り組みも選択基準に入れてみてください。メイクは日々の気分を上げるためのもの。心地よい選択が、生活の持続可能性もそっと後押ししてくれます。
結論:二刀流がいちばん自由。今日の肌と予定で選ぼう
どちらが“勝ち”かではなく、どちらも“使える”。これが、揺らぎ世代の現実解だと編集部は考えます。朝の肌が乾いて見える日はリキッドで薄く整え、Tゾーンだけパウダーで締める。湿度が高い日はパウダーで軽やかに仕上げ、ツヤは部分的にハイライトで足す。予定と環境に合わせて最適解を更新する柔軟さが、いちばん美しく、いちばん続きます。あなたが今日優先したいのは、速さですか、それとも質感ですか。5時間後の自分を想像して、選択肢を決めてみてください。最初の一歩として、ポーチの中身を見直し、下地・ファンデ・仕上げの役割をシンプルに整理してみましょう。色補正やミストの活用法は、関連記事から深掘りできます。明日のメイクが少し軽く、少し楽しくなりますように。
参考文献
- Google Trends. リキッドファンデ vs パウダーファンデ(日本、過去5年). https://trends.google.com/trends/explore?geo=JP&q=%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87,%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87&date=today%205-y(閲覧日: 2025-08-28)
- 資生堂ジャパン株式会社. <全国の女性5,000人に聞いたファンデーションに関する意識調査>「ファンデーションは肌に悪い」は都市伝説? 実験でファンデは「毛穴を埋めない」「肌呼吸を止めない」ことを実証. PR TIMES. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001273.000005794.html
- JP2005097246A. 皮脂吸収粉体および低臨界表面エネルギー粉体を含む化粧品組成物(ロレアル). https://patents.google.com/patent/JP2005097246A/ja
- 東京化成工業株式会社. 夏のお肌に。ファンデーションの化学. https://www.tcichemicals.com/JP/ja/support-download/cs_pickup/summer-fandation
- ノブ(ノエビアグループ). 敏感肌・乾燥肌のファンデーション – 種類と特徴. https://noevirgroup.jp/nov/brand/skincare/sensitive-skin16.aspx
- 資生堂 ビューティーインフォ. 毛穴カバー下地の使い方と選び方(毛穴をフラットに見せるテクニック). https://www.shiseido.co.jp/sw/beautyinfo/DB008159/
- ポーラ化成工業. 「粉体乳化」でリキッドファンデーションの皮脂くすみを克服(プレスリリース要約). Cosmetic Science. https://cosmetic-science.net/press-release/pr-2568
- ニットーメディック 肌周期ラボ. メイク落とし(クレンジング)で肌をいたわる基本. https://www.nittomedic.co.jp/hada-shuuki/article/6