メイクが崩れる理由と、テカリの正体
テカリは皮脂そのものだけでなく、皮脂と汗、そしてファンデーションの油剤が混ざり合って光を乱反射することで強調されます。皮膚生理をひも解くと、額や鼻は頬に比べて皮脂腺が多く、もともと崩れやすい地形にあります[1,2]。さらに、表情や会話でよく動く小鼻のわき、口角、眉間などは、ベースの膜が折れ曲がりやすい。**つまり、テカリや崩れは、量の問題と動きの問題が重なる“局所現象”**なのです。
もうひとつ見落とされがちなのが、水分不足です。朝の保湿を控えめにすると軽く仕上がりますが、角層の水分が足りないと皮脂が相対的に目立ち、数時間後にべたついた印象に傾きます。過度な洗浄や脱脂はかえって皮脂分泌を刺激しうるため、保湿は削らず、油分は必要な場所だけにとどめるのが得策です[4]。反対に、油分リッチなクリームを広範囲に使えば、ファンデーションの密着が甘くなり、ヨレの引き金になります。**水分はきちんと、油分は必要な場所だけ。**このバランスが、その日のメイクの“土台の安定度”を左右します。
編集部で検証したところ、同じファンデーションでも、下地の塗布範囲をTゾーン中心に絞り、頬は保湿のみで仕上げた場合のほうが、会議と外出が続いた日でもツヤは保ちつつテカリは目立ちにくいという結果になりました。質感を均一に整えたい気持ちは自然ですが、“全顔同じ仕上げにしない”ことが、崩れにくさにつながる合図と覚えておくと楽になります。

テカリを抑えるベース作り:朝の準備から下地まで
朝の洗顔は、ぬるま湯での予洗いに加え、Tゾーンだけを低刺激の洗顔料でさっと洗い上げると、頬の乾燥を避けながら余分な皮脂をリセットできます[5]。タオルは押さえるだけにして摩擦を避け[5]、すぐに水分を入れる準備に移りましょう。化粧水はコットンでも手でも構いませんが、指先の腹で吸いつきが軽く出るまで。ここで急がず、肌がしっとり落ち着くまで待つ“乾燥時間”を30〜60秒確保すると、後工程の密着が上がります(洗顔後の皮脂量が元に戻るには一定の時間を要するという報告があります)[3]。
乳液やクリームは頬と目のまわり中心、Tゾーンは量を控えめにします。ここで皮脂の気になる人は、皮脂を吸着するタイプのジェルや、肌表面をなめらかに整える成分を含むブースターをポイント使いすると、その後の下地との相性がよくなります。Tゾーン中心の“部分的なケア”は皮膚科医の一般的な推奨とも合致します[7]。**油分を足しすぎない、でも水分は抜かない。**この順行が日中のテカリを和らげます。
日焼け止めは、薄くのばすより必要量をしっかり取ってムラなく。顔全体の目安には“指2本分”というガイドがありますが、実際は小刻みに置いてから内から外へと運び、最後に肌表面をやさしく押さえて密着させると、次に重ねるベースとの一体感が上がります。ジェルやミルクの軽いテクスチャーを選ぶと、重ね塗りしても厚く見えにくく、メイクの邪魔をしません。
下地は、皮脂崩れ防止タイプを“面ではなく点や線”で使うイメージが鍵です。小鼻、眉間、額の中央だけに米粒大を薄くのばし、頬はトーンアップ系や保湿系で透け感をキープ。全顔をマットで固めるより、テカリやすいパーツのみに機能を集中させるほうが、時間が経っても立体感と清潔感を両立できます。毛穴が気になる日は、下地を塗る前に小さく円を描くように指でなじませ、最後に一方向へスッとならすと、凹凸の影が和らぎます。

崩れにくいファンデと仕上げ:薄膜・部分使いが鍵
ファンデーションは、タイプよりも“塗り方”がメイク持ちを左右します。リキッドなら、手の甲に出した量をスポンジの広い面で半分だけ取り、頬の高い位置から外へ薄く広げます。残ったごく少量で額と鼻筋に移動し、最後にスポンジの何も付いていない側で全体を軽く押さえ、余分な油分をスポンジに移して薄膜化します。パウダーファンデーションなら、ブラシでふわっとのせた後、崩れやすい小鼻の周りはスポンジの角を使って軽くスタンプするように密度を上げると、ムラになりにくくなります。特に鼻は顔のなかでも皮脂分泌が高い部位とされるため[1,2]、局所的に密度を上げるのが理にかないます。共通するコツは、“必要なところだけカバーして、他は素肌感を残す”こと。
コンシーラーは、クマや色ムラだけに点で置いて、境目を軽く叩き込んで消します。Tゾーンの赤みが気になるときも、面で厚く重ねるより、赤みの芯にだけ薄く足すほうが崩れにくい。ここで“隠したい”気持ちに引っ張られて厚みを作ると、皮脂と混ざった瞬間に膜がよれてしまいます。
仕上げのフェイスパウダーは、テカリ対策の山場です。大きなブラシで全顔にさらっと——は実は逆効果になりがちで、粉が肌の上で動き、数時間後にムラっぽく見えることがあります。パフに少量をもみ込み、手の甲で余分を落としてから、Tゾーンと小鼻の側面、まぶた、口角のわきに“置く→押さえる→軽く払う”の順で三拍子のリズムで仕込むと、微粒子が密に定着します。頬はツヤを残したいので、ブラシでベールのように薄く。フェイスパウダーはテカリ(シャイン)を視覚的に抑えるのに有用です[8]。パーツごとに粉の“量と圧”を変えるだけで、午後の見え方ががらりと変わります。
仕上げミストは、遠すぎても近すぎても効果が落ちます。顔から20〜30cmほど離し、X→Tの順でクロスに2〜3プッシュ。滴になるほどかけるのではなく、霧が均一に広がったところで、手のひら全体で空気を押すように包み込みます。マスクを使う日は、外す予定の直前ではなく、つける10分ほど前に仕上げミストまで完了しておくと、定着が安定します。

午後のリセット術:厚塗りしない直し方と持続テク
テカってきたと感じたら、いきなりパウダーを足す前に、余分な油分と汗をやさしくとる段取りが最優先です。皮脂は吸い取る力の強い紙や薄手のティッシュで、押さえて離すを繰り返し、摩擦はかけない[6]。小鼻のきわはティッシュを細く折り、境目に沿って軽く挟むと、メイク膜を壊さずにリフレッシュできます。そのあと、無色のプレストパウダーを小さなパフでスタンプするように重ねると、厚みが出ず、サラッとした見た目だけを取り戻せます[8]。
鼻先や眉間のメイクが崩れて筋っぽくなったときは、“半顔リセット”の発想が効きます。綿棒の先に乳液をほんの少し取り、筋になっている部分だけをやさしくなじませてオフ。そこに日焼け止めを米粒より少なめで補い、指先でトントンとなじませたら、スポンジで密着させ、パウダーで固定します。全部を塗り直さないから早く、仕上がりも軽い。**直しは足し算ではなく、余分なものを引いてから必要最小限を足す“引き算のリタッチ”**が鉄則です。
屋外と室内を行き来する日は、仕上げミストを小分けにして持ち歩くと便利です。直前に皮脂をオフしてから1プッシュだけ霧をあて、乾く前にパフでそっと押さえると、メイク膜が復活します。ファンデーションの重ね塗りは時間がないときほど頼りたくなりますが、短時間で仕上げたいときほど、ティッシュオフ→無色パウダー→ミストの三手で薄く整えるほうが、清潔感は長持ちします[8]。
夜のスキンケアも、翌日のメイク持ちに静かに効いてきます。角層がごわつくと皮脂がたまりやすく、テカリに拍車がかかります。週に1回程度、やさしい角質ケアを取り入れ、保湿は寝る前のベタつきが気にならない量に調整を。朝の“油分控えめ・水分しっかり”と夜の“角層を柔らかく保つ”がかみ合うと、翌朝のベースの伸びが変わります。

仕上がりの質感設計:ツヤとマットの配分をデザインする
大人の肌は、全面マットに固めると平坦に、全面ツヤだとテカリに見えやすいという二律背反を抱えています。そこで、ツヤは“点”で光らせ、マットは“面”で整えるという設計に切り替えると、光の扱いが格段に楽になります。頬骨の高い位置、まぶたの中央、上唇の山だけにごく薄く艶を残し、Tゾーンや小鼻のわきはマットに整える。写真や鏡に映るあなたの顔に、陰影と清潔感が同時に宿ります。
ハイライトを使う日は、クリーム系ならファンデ前、パウダー系なら仕上げの最後に“ちょん、ちょん”と置き、境目を指の腹で消す程度に留めます。ツヤの範囲が広がるほど、時間とともにテカリに見えやすくなるからです。リップやアイメイクも、質感の強弱でテカリの印象をコントロールできます。目元をつややかにした日は、口元をセミマットにまとめる。逆に、口元に透明感のあるツヤを持たせる日は、まぶたはサテン程度にする。メイク全体のバランスが整えば、Tゾーンの小さなテカリはむしろ生っぽい艶として見えてきます。

まとめ:明日の午後3時を変える、小さな積み重ね
テカリは“自分の肌が悪い”サインではなく、環境と工程の小さなズレが積み重なって光り方が暴れているだけ[3]。朝は水分をきちんと、油分は必要な場所だけに。下地は点と線で、ファンデは薄膜で、粉は押さえて置く。直しは引き算から始め、最後に透明パウダーとミストで膜を整える。やることは多そうに見えて、実はひとつひとつは簡単で、今日から変えられる選択ばかりです。
明日の午後3時、鏡をのぞいたときの自分に、少しだけ優しくなれるように。まずは朝の“乾燥時間”を30秒確保する、下地をTゾーンだけにする、ミストは20〜30cmからX→Tでかける——どれかひとつから始めてみませんか。ルールはあなたの肌が教えてくれます。小さな成功をひとつ積み重ねるたびに、テカリは“味方のツヤ”へと姿を変えていきます。
参考文献
- Pappas A, Fantasia J, Chen T. Regional differences in facial sebum excretion and correlation with acne-prone zones. PubMed. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15998330/
- Plewig G, et al. Regional distribution of facial sebum in acne and non-acne subjects. Archives of Dermatological Research. https://doi.org/10.1007/s00403-006-0666-0
- 皮膚生理機能におよぼす気温,湿度,季節,および洗顔の影響. 日本皮膚科学会誌. J-STAGE. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/97/8/97_953/_article/-char/ja/
- Oily Skin Care: Don’t overwash; it can stimulate more oil secretion. WebMD. https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/acne/features/oily-skin?page=#:~:text=Dermatologists%20agree%20that%20the%20most,actually%20stimulate%20more%20oil%20secretion
- Oily Skin Care: Use gentle cleansers; avoid scrubbing and friction. WebMD. https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/acne/features/oily-skin
- Oily Skin Care: How to blot oil—press 15–20 seconds, don’t rub. WebMD. https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/acne/features/oily-skin?page=#:~:text=areas%2C%20such%20as%20forehead%2C%20nose%2C,powdered%2C%20which%20further%20reduces%20shine
- Oily Skin Care: Apply toner/astringent only to the T‑zone. WebMD. https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/acne/features/oily-skin
- Oily Skin Care: Using powder helps reduce shine. WebMD. https://www.webmd.com/skin-problems-and-treatments/acne/features/oily-skin?page=#:~:text=areas%2C%20such%20as%20forehead%2C%20nose%2C,powdered%2C%20which%20further%20reduces%20shine