
ダブル洗顔とは何か?現代メイクと皮脂の関係
研究データでは、洗顔直後に角層水分量が平均で約20%低下し、バリア機能の回復には数時間を要することが示されています[1,2,3]。さらに、長時間耐水性のサンスクリーンやウォータープルーフ処方は、弱い洗浄剤だけでは1回の洗浄後に30%前後が肌表面に残存するという報告もあります(製品や条件により変動)[4]。編集部が各種文献や市場動向を読み解くと、落とし切れていない“残り”と、落としすぎによる“剥がし”の両方が、40代のゆらぎ肌を揺さぶっている現実が見えてきます。メイクやUVが高機能化する一方で、肌の回復力は年齢とともにゆるやかになる。だからこそ、ダブル洗顔を“する・しない”は正解がひとつではありません。必要な日は必要に、不要な日は不要に。この記事では、その見分け方と、肌負担を最小限にする実践のコツを、エビデンスに基づいて整理します。
ダブル洗顔は、クレンジング(油性やゲルでメイク・皮脂・UVを浮かす工程)と洗顔料(界面活性剤を含む泡で汚れを洗い流す工程)を連続して行う方法を指します。かつては濃いメイク=ダブル洗顔、薄いメイク=シングルという単純な区分が語られがちでしたが、いまはそう単純ではありません。理由は二つあります。ひとつは、メイクやサンスクリーンの“落ちにくさ”が年々進化していること[1]。もうひとつは、クレンジング自体も進化し、1ステップで完結できる処方(いわゆる“W洗顔不要”)が増えたことです[5]
皮脂の分泌や汗の量、花粉やPMなどの付着量は季節で変わります。特に暑い時期や湿度の高い日は皮脂が増え、メイクやUVが混ざって酸化しやすくなります[6]。この“混ざった皮脂・顔料・紫外線吸収剤・シリコーン”の複合体は、水だけでは十分に落とせません[1]。一方で、乾燥が強い季節や在宅勤務でノーメイクの日は、ダブル洗顔の意義は下がります。つまりダブル洗顔とは、固定化されたルールではなく、顔についた“もの”の種類と量に合わせて可変するメソッドだと捉えるのが実用的です。
“落ちにくい”が増えた時代の前提
ウォータープルーフや皮脂プルーフの設計は、汗・皮脂・摩擦に耐えることを最優先に作られます。耐水性や密着性が高いほど、洗浄に必要な力(溶剤・界面活性剤・時間・摩擦)が増えるのは化学的に当然です[1]。メイクの持続が伸びたぶん、落とす側の設計も“的確に、短時間で、摩擦少なく”が求められます。ここでダブル洗顔は、油性ベースで素早く溶かし、泡でやさしくオフして残りを拾うという分業で、摩擦の総量と接触時間を短縮する狙いに合致します[4,5]
編集部の実感:40代の肌は“回復に時間”がかかる
編集部スタッフA(40代前半・混合肌)は、真夏のフルメイク&SPF50+の屋外取材日だけダブル洗顔に切り替え、在宅のノーメイク日はぬるま湯+低刺激洗顔のみにしたところ、頬のつっぱりが減り、Tゾーンのざらつきも落ち着いたと話します。もちろん個人差はありますが、肌に触れる時間を減らしながら“必要な日はしっかり落とす”方が、回復に必要なリソースを残せるという実感は、多くの40代の肌にフィットします。

メリット:なぜダブル洗顔が肌を守ることがあるのか
ダブル洗顔の第1のメリットは、残存メイク・UV・皮脂酸化物の低減です。研究データでは、メイク残存は毛穴詰まりやくすみの一因となり、長期的には炎症性トラブルのリスクを高める可能性が示唆されています[6,7]。油性クレンジングで顔料や紫外線吸収剤を迅速に浮かせ、その後の泡洗顔で水溶性の汗や汚れを回収する二段構えは、1ステップよりも残存率が下がる設計になりやすいのです[1]
第2のメリットは、摩擦の総量を下げられる可能性です。強いこすり洗いは角層のはがれやバリア低下の原因になりますが[2]、油性クレンジングは“溶かして動かす”ことができるため、短時間でのオフがしやすい[4]。短いタッチでベースを浮かせた後、泡を転がすように流すと、同じ仕上がりでもこすり回数を減らせます。
第3のメリットは、ニオイやざらつきの元になる皮脂酸化のリセットです。皮脂は時間とともに酸化し、刺激物質へ変わることがあります[6]。夜に適切にオフできると、朝のテカリが穏やかになったり、ファンデーションのノリが安定したりする変化を感じやすくなります。
“W洗顔不要”処方との関係
最近は、クレンジングだけで洗顔まで完了できる設計も一般的です。商品に“W洗顔不要”と書かれている場合、処方内に油性汚れと水性汚れの双方を抱え込める界面活性剤が配合され、適切にすすげばダブル洗顔なしでも残存を抑えられるよう設計されています[4,5]。処方がそう設計されているなら、むしろ1ステップの方が肌負担が小さいこともあります[2]。パッケージの用法やメーカー推奨の使用量・時間に従うことが、最も肌に親切です。

デメリット:やり過ぎが招くバリア低下と乾燥
ダブル洗顔の最大のデメリットは、角層の水分・脂質の過剰な流出です。研究では、洗浄直後に角層水分が低下するだけでなく、セラミドや天然保湿因子の溶出も生じうることが示されています[1,2]。特に気温が低い季節や、ホルモンバランスの影響で乾燥が強いタイミングでは、ダブル洗顔がつっぱり感や赤みを助長することがあります。
次に、接触時間の延長による刺激のリスクです。クレンジングと洗顔を連続で行う分、皮膚が界面活性剤や溶剤に触れる総時間は長くなります。マイルドな処方でも、肌の状態が不安定な日や、生理前後・花粉シーズンには刺激感につながることがあります[1]
そして見落としがちなのが、誤ったやり方による摩擦の増加です。丁寧さを目指すあまり、長時間のマッサージや、乾いた手での強いこすり、熱いお湯でのオフなどを重ねると、ダブル洗顔の“利点”が“負担”に変わります[2]。落とすための行為が、肌の情報伝達機構(角層のきめや皮脂膜)を乱してしまうのは本末転倒です。
“毎日ダブル”が合わないサイン
洗い上がりのピリつき、数時間後のつっぱりや粉ふき、頬だけ赤くなる、いつもより香りがしみる——こうした小さな違和感が続くときは、頻度や方法を見直した方が賢明です。“必要な日だけダブル”という選択は、忙しい日常でも現実的に続けやすく、肌の変化も追いやすくなります。

どっちが正解?肌質・シーン別の判断基準と実践法
結論から言えば、ダブル洗顔は“人と日による”が正解です。フルメイク(下地・リキッド系ファンデ・密着系コンシーラー)、SPF50+・耐水性のUV、皮脂の多い真夏の屋外活動、PMや花粉の付着が多い日などは、ダブル洗顔が合理的に働きやすいシーンです[1]。反対に、ノーメイクや軽いミネラルメイクの日、暖房乾燥で肌が過敏な時期は、1ステップや低刺激の洗顔のみで十分なことが多いでしょう[2,5]。W洗顔不要設計のクレンジングを選んでいる場合は、まずはその設計を信頼して終える。手応えが重いと感じた日にだけ泡を追加する——この柔軟さが、40代の肌と生活にはよく馴染みます。
肌負担を減らす“正しい落とし方”のコツ
ダブル洗顔を選ぶ日は、まず乾いた手でクレンジングを適量とり、頬・額・鼻・あごの広い面から素早くのせ、アイメイク周りは最後に軽くなじませます。指先で強く押すのではなく、指の腹全体で“動かす距離を短く・回数少なく”が合言葉。ぬるま湯で乳化してから、こすらずに流します。続く泡洗顔は、額から鼻筋、頬、フェイスラインの順に泡を置き、肌には直接触れず泡だけを転がすイメージで20~30秒。ぬるま湯でよくすすぎ、タオルは押し当てて水分をとります[1]。その後60秒以内に保湿を開始すると、洗浄で下がった角層水分を早く立て直しやすくなります[5]。朝は基本的にダブル洗顔は不要で、皮脂が気になる場合のみ低刺激の泡で短時間にとどめるとよいでしょう[2]
“必要・不要”を見極める3つの視点
ひとつめは“今日つけたもの”。耐水・耐皮脂処方や重ね塗りが多い日はダブル寄り。ふたつめは“今日の肌”。赤みやかゆみ、つっぱりのサインがある日はシンプル寄り。みっつめは“時間”。長風呂や長いマッサージは避け、接触時間を短く・摩擦を少なく・すすぎを十分に[1,2]。この3点を、鏡の前で30秒確認するだけでも、翌朝の肌の機嫌は変わります。
ケーススタディ:編集部の使い分け
編集部B(40代後半・敏感寄り)は、花粉シーズンだけ夜をダブル洗顔に切り替え、クレンジングは短時間、泡は20秒で流すルールに。春先の赤みが出にくくなり、朝のメイクのりも安定したといいます。編集部C(30代後半・脂性肌寄り)は、夏の屋外取材日はダブル、オフィスワーク日はW洗顔不要処方で1ステップに。小鼻のざらつきが目立ちにくくなった実感があります。肌質も生活もバラバラでも、“日によって変える”という同じ原則は、無理なく続けられる共通解になりました。

まとめ:ルールに縛られず、肌の“いま”に合わせる
ダブル洗顔の価値は、白か黒かで決めるものではありません。落とし切れない日のリスクも、落としすぎの弊害も、どちらも私たちの肌に現れる現実です。だからこそ、必要な日にだけ、短時間で、摩擦少なく。これが、忙しい毎日の中で肌をいたわる現実的な選択です。今夜、鏡の前で自分に問いかけてみてください。今日はどれだけ重ねた?肌はどんなサインを出している?その答えに合わせて、ダブルにするか、1ステップで終えるかを選び、終えたら1分以内に保湿。小さな選択の積み重ねが、明日の肌のご機嫌をつくります。揺らぎの中で、あなたの“ちょうどいい”を見つけていきましょう。
参考文献
- Ananthapadmanabhan KP, Moore DJ, Subramanyan K, Misra M, Meyer F. Surfactants in skin cleansers: An overview. Dermatology Research and Practice. 2012. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3425021/
- Korting HC, Kober M, Mueller M, Braun-Falco O. Cleansers and their role in various dermatologic disorders. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3088928/
- [PubMed] Effects of facial cleansing regimen and cleanser pH on skin barrier/hydration (2019). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31157512/
- 日本化粧品技術者会誌(SCCJ). PGFE系界面活性剤のクレンジング応用と機能評価. 54(1):15–. https://www.jstage.jst.go.jp/article/sccj/54/1/54_15/_article/-char/ja/
- Skin Research. 新規洗浄剤の保湿性評価に関する二重盲検試験(前腕皮膚の角層水分量・TEWL等の評価). 15(6):486–. https://www.jstage.jst.go.jp/article/skinresearch/15/6/15_486/_article/-char/ja/
- Draelos ZD. The role of proper cleansing in acne vulgaris management. 2016. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27015773/
- Contemporary acne vulgaris therapies and the role of cleansing/adherence. 2024. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10748031/