ヴィーガンコスメとは? 定義・成分・表示・選び方ガイド

「動物由来成分なし」は本当にそう?クルエルティフリーとの違いや成分表示の読み方、日常メイクへの取り入れ方までをデータで検証。30代後半〜40代の編集部が、心と肌に無理のない賢い選び方を具体的にガイドします。今すぐチェック!

ヴィーガンコスメとは? 定義・成分・表示・選び方ガイド
ヴィーガンコスメの定義と、いま起きていること

ヴィーガンコスメの定義と、いま起きていること

世界のヴィーガンコスメ市場は2021年に約151.7億ドル、2030年まで年平均約6%台で拡大という推計があります(Grand View Research, 2022)[1]。一方、EUでは2013年から化粧品の動物実験と、動物実験された化粧品の販売を原則禁止[2]。規制と消費の両輪で、価値観の転換が静かに進んでいます。編集部が複数のデータを読み解くと、30代後半から40代の消費者ほど「自分と地球の両方に折り合いがつく選択」を重視する傾向が見えてきました。肌のゆらぎに向き合う時期に、メイクの心地よさと倫理性をどう両立させるか。「ヴィーガンコスメ」とは何かを、定義・成分・表示・実践の順に、日常の言葉でほどいていきます。

ヴィーガンコスメの定義と、いま起きていること

ヴィーガンコスメの基本はシンプルです。動物由来成分を使わないという点が核になります。はちみつ、ミツロウ、羊毛から採るラノリン、動物性コラーゲン、カルミン(昆虫由来の赤色色素)などを配合しない処方が、ヴィーガンと呼ばれます。ここでしばしば混同されるのが「クルエルティフリー」との関係です。クルエルティフリーは“動物実験をしないこと”を指し、ヴィーガンは“成分に動物由来を含まないこと”。両者は似ているようで別の軸だと覚えておくと、表示の理解がぐっと楽になります。米国FDAも「cruelty-free/not tested on animals」という用語に法的定義はなく、企業ごとに意味が異なる可能性があると注意喚起しています[3]。

近年は、国内でも「動物実験フリー」を掲げる企業や、植物由来・再生可能資源への関心が広がり、メイク品でもリップやチークの色設計にカルミン代替(合成色素や植物色素)を採用するブランドが増えています。主要企業が開発における動物実験の廃止方針を打ち出す動きも見られます[6]。ヴィーガンは“我慢”ではなく“選べる幅が広がった”カテゴリだと捉えると、日々のメイクが軽やかになります。

ヴィーガン=安全・低刺激、ではない。だけど選び方で心地よくなる

誤解したくないのは、ヴィーガンという表示自体が安全性や低刺激を保証するものではない点です。安全性は配合濃度や処方設計、個々の肌状態で決まります。とはいえ、ミツロウやラノリンに反応しやすい人が、代替ワックス系(植物ワックスや合成ワックス)へ切り替えることで快適になるといった、実感ベースのメリットは確かに存在します。ゆらぎ世代の肌は季節や体調で変わりやすいからこそ、表示に頼り切らず、テクスチャー・香り・落としやすさまで含めて“自分に合う”を確かめることが大切です。

表示と成分を読み解く:クルエルティフリーとの違いも整理

表示と成分を読み解く:クルエルティフリーとの違いも整理

パッケージでよく見かけるのが、**「Vegan」や「100% Vegan」**といった言葉、あるいは認証マークです。代表的なのはLeaping Bunny(動物実験フリーの国際認証)やThe Vegan Society/PETAのプログラムで、前者は試験体制を、後者は動物由来成分の不使用といった観点を確認します。日本の薬機法では「ヴィーガン」の定義が法的に固定されていないため、第三者認証の有無、あるいは成分表の確認が現実的な見分け方になります。なお「cruelty-free」等の表現は国により定義や運用が異なり得る点も踏まえて判断しましょう[3]。

成分表で鍵になるのは、赤色の顔料やワックス類、保湿・増粘に使われる素材です。カルミンはRed 4, CI 75470などと表記されることがあり[5]、避けたい場合は配合の有無を確かめます。ワックスはCera Alba(ミツロウ)やLanolin(ラノリン)が代表で、代わりにRice Bran Wax(コメヌカロウ)やCandelilla/Carnauba Waxなど植物系が使われます。コラーゲンやエラスチンも動物由来が一般的でしたが、いまは植物由来(バイオ由来)やペプチドなど、代替技術が進化。ヴィーガンであっても十分な密着感やツヤ設計が可能になっています。

“天然=ヴィーガン”ではない。“オーガニック=クルエルティフリー”でもない

ここはよく混線します。天然やオーガニックは“原料がどのように育てられたか・加工されたか”の話で、ヴィーガンは“原料の出どころが動物かどうか”。さらにクルエルティフリーは“試験の方法”。つまり三者は重なることもあれば、別々にも存在するのです。香りが好きでオーガニック精油を選びつつ、色材は合成色素でヴィーガン対応、動物実験はなし——そんな組み合わせも十分にあり得ます。ラベルの言葉を足し算し、最後は肌で引き算する。これが表示迷子にならないコツです。

メイクに落とし込む:ヴィーガンで組む日常ルーティン

メイクに落とし込む:ヴィーガンで組む日常ルーティン

理屈がわかったら、実際のメイクにどう落とし込むか。朝のベースは軽やかに、夜の落としやすさまで見据えて設計してみます。まず、下地はシリコーンや植物由来のポリマーを使った滑らかさで毛穴の影をやわらげ、ファンデーションは植物ワックスや合成ワックスで密着感を出したリキッドやスティックを選ぶと、マスク移りやテカりを抑えやすくなります。カバー力が欲しい日は、ピンポイントでヴィーガン対応のコンシーラーを軽く重ね、仕上げは米粉由来やミネラルベースのパウダーでニュアンスを整えると、厚みのない均一感が出ます。

カラーアイテムは、赤み設計が肝です。カルミン不使用の代替色でつくるローズやテラコッタは、黄み寄りの肌色にもなじみやすいよう近年の処方が進化。アイシャドウはクリームタイプでまぶたに薄く広げ、手持ちのブラウンで影を重ねると血色と立体感が両立します。チークはリキッドやバームを頬の高い位置から横へ薄くのばし、上から透明感のあるパウダーを重ねると持ちが安定。リップはバームの油分設計で差が出やすいので、ミツロウの代わりにキャンデリラやカルナウバを使った処方を選ぶと、べたつかずフィルム感のある仕上がりになります。

オフの時間までがメイクです。ウォータープルーフのアイテムでも、植物由来のエステル油やマイルドな界面活性剤で落とせるクレンジングを選ぶと、こする回数を減らせます。強い摩擦を避け、ぬるま湯で時間をかけて乳化するだけで、翌朝の赤みやざらつきが変わることは、編集部の検証でも実感がありました。最後は保湿を丁寧に。ヴィーガン処方のセラミド類似成分やヘミスクアランなど、軽いのに膜感のある保湿で、次の日のベースメイクが整います。

シーン別の“ムード設計”:仕事の日、オフの日、長時間の日

仕事の日は光を味方にします。ツヤはTゾーンを避けて頬骨の上だけに限定し、目元は影色を主役に。赤みはチークで“内側から”感じる程度にとどめると、画面越しでも疲れが見えにくくなります。オフの日はベースを最小限にし、カラーバーム1本で目・頬・口に統一感を出すだけで、顔全体の呼吸が楽になります。長時間の日は、密着力のある下地+薄膜ファンデに切り替え、皮脂と混ざっても濁りにくい色設計のリップを選ぶと、直しがシンプルです。どのシーンでも、持ち歩きはクリアパウダーとリップケアで十分。足し算より、崩れの原因を引き算する発想が、ヴィーガンメイクを長く心地よく保つコツです。

サステナビリティと心の納得——“選ぶ理由”を自分の言葉に

サステナビリティと心の納得——“選ぶ理由”を自分の言葉に

ヴィーガンコスメの背景には、動物福祉・環境負荷・サプライチェーンの透明性といった、いくつもの文脈が重なっています。動物由来を避けることで、畜産や採取に伴う負荷の一部を減らせるかもしれない。一方で、代替原料の生産や輸送にもエネルギーは要る。だからこそ、極端な“正しさ”競争から降りて、自分が納得できる基準を重ねていくのが現実的です。パッケージの再生材比率や詰め替えの有無、容器の分別のしやすさ、ブランドの動物実験方針やトレーサビリティの開示など、見える情報は積極的に活用していきたいところです。

また、文化や法規制の違いも理解しておくと混乱しません。EUは前述のとおり動物実験を原則禁止[2]。アメリカは州ごとにクルエルティフリー法が進む一方、用語の法的定義が連邦レベルで定まっていないためラベリングの解釈に幅が出ることがあります[3]。日本では化粧品の動物実験は義務ではなく、企業の自主的な方針に委ねられているのが現状です[4]。つまり、同じ“Vegan”の一言でも、どの国のどの基準かで意味が少しずつ変わる。ブランドサイトのポリシーやQ&Aまで目を通す習慣が、結果として“ブレない選択”につながります。

迷子にならないための、現実的な3ステップ

最初は、毎日使う1品だけをヴィーガンに置き換えて様子を見るのが続けやすい方法です。たとえばリップケアやクレンジングのように肌との接触時間が長いものから始めると、使い心地の差がわかりやすいはず。次に、カラーものは“好きな色が見つかるブランド”を起点に探します。カルミン不使用でも、ブラウンやベージュ、モーブなどのニュアンスカラーは選択肢が豊富です。最後に、詰め替えや容器回収などの仕組みを確認し、自分の生活動線に無理なく乗る仕組みを取り入れてみてください。選択が習慣になれば、倫理と快適は矛盾しません。

——関連で読みたいテーマとして、「クリーンビューティーとは」「成分表示の読み方・基本ガイド」「サステナブルなメイク道具の選び方」「敏感肌のためのUVとの付き合い方」もおすすめです。視点の引き出しが増えると、選択はより自分らしくなります。

まとめ:完璧を目指さず、“今日の最善”を選ぶ

まとめ:完璧を目指さず、“今日の最善”を選ぶ

ヴィーガンコスメは、完璧な正解を求めるラベルではありません。動物由来を避けるという明確な軸を持ちながら、使い心地・仕上がり・続けやすさという現実とのバランスをとるための、一つの道具です。データや表示を手がかりにしつつ、肌のコンディションと気分に耳を澄ませる。そうして選んだ1本のリップや1枚のパレットが、忙しい朝のメイクを少しだけ軽くし、鏡の前の自分に“うん、これで行こう”と言わせてくれる。そんな積み重ねが、あなたの暮らしの温度を静かに上げていきます。

今日、あなたが置き換えてみたいのはどの1品でしょう。手持ちのポーチを眺めながら、まずは“毎日使うもの”から。気になるブランドの方針ページや成分表示を確かめ、次の買い足しで一つ試してみる——それだけで、ヴィーガンコスメとの距離はぐっと縮まります。

参考文献

  1. Grand View Research. Vegan Cosmetics Market Size, Share & Trends Analysis Report (2022–2030). https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/vegan-cosmetics-market
  2. European Commission, Single Market – Cosmetics: Ban on animal testing. https://single-market-economy.ec.europa.eu/sectors/cosmetics/ban-animal-testing_en
  3. U.S. Food and Drug Administration. Cruelty-Free/Not Tested on Animals. https://www.fda.gov/cosmetics/cosmetics-labeling-claims/cruelty-freenot-tested-animals/
  4. 日本動物実験代替法学会(JAVA) 化粧品と動物実験の制度に関する解説(日本の状況). https://www.java-animal.org/animal-testing/cosmetics/system/
  5. 大分大学医学部 皮膚科「コチニール色素(カルミン)によるアナフィラキシー」資料内の表示名・色素情報. https://www.med.oita-u.ac.jp/dermatology/research_kochi.html
  6. 日本ヴィーガン協会(Vegan Cert) クルエルティフリー認証・国内企業の動向. https://vegancert.or.jp/cruelty-free-certification/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。