35〜45歳向け|服を長持ちさせる簡単サステナブル入門(5つ)

忙しい35〜45歳へ。服を長持ちさせる5つの簡単なサステナブル術を紹介します。素材選び、洗濯・修繕の時短テク、買い替え基準まで、今日から実践できる具体的な一歩が見つかる記事です。

35〜45歳向け|服を長持ちさせる簡単サステナブル入門(5つ)

サステナブルファッションとは何か――“正しさ”より“使い切る賢さ”

統計によると、ファッション産業は世界のCO2排出の約8〜10%を占め、年間廃水の約20%に関与していると推計されています。さらに、毎年約9200万トンの衣類廃棄物が生まれているという報告もあります。[1,2] 医学のような厳密さが求められる領域ではありませんが、研究データでは環境負荷の大きさが一貫して示されており、[3] 編集部が各種データを読み解くと、私たちのクローゼットの選択が地球にも、縫い手の暮らしにも直結している現実が見えてきます。とはいえ、仕事や子育て、体型や役割の変化が重なる35〜45歳の私たちにとって、完璧な選択だけを迫られても続きません。**大切なのは「全部」ではなく、今日の一着に意図を持つこと。**それがサステナブルファッション入門の出発点です。

サステナブルファッションは、地球環境への負荷を減らし、つくる人の権利を守り、私たちが長く心地よく着られる服を選び、使い切る姿勢を指します。研究データでは、素材の生産、染色・加工、輸送、着用・洗濯、廃棄までの全工程でエネルギーと水が使われ、温室効果ガスが排出されると整理されています。[3] つまり、どこか一箇所だけを“正す”より、小さな改善をいくつか重ねるほうが全体の負荷が下がりやすいのです。

ここで押さえたいのは三つの観点です。環境面ではCO2や水、化学物質、マイクロプラスチックの問題があり、社会面では最低賃金や労働安全、透明性が問われます。消費者側では、買う量・着る回数・ケアの仕方がインパクトを左右します。編集部が複数の調査を照合すると、服の寿命を約9カ月延ばすだけで環境負荷が20〜30%低減するとする分析が繰り返し提示されています。[4] 高価な“エコ服”を急に揃える必要はありません。手持ちの服の着用回数を増やす、次の一着を吟味する――この二つが最もリターンの大きい入口です。

環境負荷の現在地を、数字で掴む

研究データでは、綿花の栽培に大量の水が必要で、化学肥料や農薬の使用が地域の水質や生態系に影響すると報告されています。[5] 合成繊維は軽くて丈夫ですが、洗濯時に微細な繊維が流出し、海洋でマイクロプラスチックとして残る問題が指摘されています。[3] 染色・仕上げ工程でも化学薬品とエネルギーを多く使います。[1,2] 気候・水・化学の三点セットの負荷に向き合うことが、入門の地図になります。

つくる人の権利と透明性――“安さの理由”を見抜く

社会面では、最低賃金すら届かない地域や長時間労働の事例が依然残ります。[16] ここで万能の答えはありませんが、サプライヤー(生産工場)の公開、第三者監査の有無、生活賃金へのコミットメントに言及があるブランドほど透明性が高い傾向があります。[17] 完璧なブランドを探すより、情報開示が前進しているかを見守り、私たちの選択で後押しする視点が現実的です。

今日からの選び方――素材・認証・“着回す設計”

サステナブルファッションを難しくしがちなのが専門用語の多さです。ここでは、日常語で要点を絞ります。まず素材。綿は肌に優しい一方で水と農薬の問題があります。[5] オーガニックコットンは化学農薬の使用を制限し、土壌や生物多様性への配慮が進みます。[8] 亜麻から作られるリネンや、麻の一種であるヘンプは、比較的少ない水で育ち、涼しく丈夫です。木材パルプ由来のリヨセル(テンセル)は閉鎖循環型の溶剤回収プロセスを採る製造方法が主流で、[15] FSCなどの認証により原料木材の管理が担保される場合があります。[9] 合成繊維では、リサイクルポリエステルが廃プラスチックの再資源化に寄与する一方、洗濯時のマイクロファイバー流出の課題が残るため、**洗濯ネットやフィルターの併用、洗濯回数自体を減らす“ケアの設計”**が鍵になります。[7]

次に認証。環境と社会の両面を見渡すためには、ラベルの意味をざっくり理解しておくと安心です。GOTSはオーガニック繊維の含有と工程管理を第三者が厳しく審査します。[8] FSCは木材由来セルロース繊維の原料が適切に管理された森林であるかを担保します。[9] フェアトレードは生産者の取引条件改善を目指し、[10] OEKO-TEX Standard 100やbluesignは製品や工程で有害物質を厳しく管理します。[11,12] 動物由来ではRWS(ウール)やRDS(ダウン)が動物福祉の観点を含みます。[13,14] **ラベルは“完璧の証明”ではなく、比較のための“共通言語”**として活用すると、選ぶスピードと納得感が上がります。

最後に“着回す設計”。編集部のリサーチでは、着回しやすい色・形・素材の重なりが多いワードローブほど、購入点数が自然に減り、コストパフォーマンスが上がる傾向が見えます。コスト・パー・ウェア(1回あたりの費用)を意識すると、単価が高くても出番が多い服のほうが結果的に財布にも環境にもやさしいことが多いのです。“30回は着られるか?”と自分に問う。その一拍が選択の質を変えます。

素材の読み解き方――メリットとトレードオフを同時に見る

素材選びで迷ったら、肌と生活へのフィット感から考えてください。綿やリネンは汗ばむ季節に快適で、洗濯頻度が多くてもケアが簡単です。リヨセルは滑らかでドレープが美しく、オフィスでも休日でも品よくまとまります。ウールは冬だけでなく春秋も活躍し、実は匂いがつきにくいので洗濯回数を減らしやすいのが強みです。合成繊維はシワになりにくく乾きが早いので、忙しい平日の強い味方。ただし、静電気やマイクロファイバーの課題があるため、着用シーンを選び、洗濯では短時間・低温・ネット使用を意識すると負荷を抑えられます。[7] レザーは耐久性が高く、手入れ次第で10年以上が普通です。代替素材(Piñatexなどの植物由来)も登場していますが、耐久性やメンテナンスのしやすさは製品によってばらつくため、長く使う自信が持てるかで判断しましょう。

ラベルと情報の読み方――“言葉より仕組み”を確認する

ブランドのサイトで、仕入先の国や工場、第三者監査の有無、原材料の追跡、環境目標の進捗を見てください。写真映えする取り組みより、サプライチェーンの公開や年次報告、目標の数値化があるかが信頼のよりどころです。[17] 「エコ」「サステナブル」といった抽象的な表現だけで、数値やスキームが示されていない場合は慎重に。オフセット(排出量相殺)に頼り切りで、実際の削減策が乏しいケースもあります。完璧を求めすぎず、比較の軸を自分の中に持つことが入門のコツです。

買う以外の選択――ケア、リペア、循環に強くなる

研究データでは、服の寿命を延ばすことが最も効果的なアプローチの一つだと繰り返し示されています。寿命を9カ月延ばすと環境負荷が20〜30%低減という分析は象徴的です。[4] ここで効いてくるのがケアの技術。洗濯は低温・短時間にして、裏返しとネットで摩擦を減らし、乾燥機ではなく風通しの良い場所で陰干しする。[7] ウールやニットは毛玉取りとブラッシングで清潔感が戻り、シャツは襟と袖口の部分洗いで黄ばみを防げます。合成繊維は洗濯回数を減らし、必要なときだけ中性洗剤でやさしく。[7] “汚れたから洗う”から“着たら整える”へという意識の転換が、劣化の速度を緩めます。

リペアは難しく聞こえますが、実際は現実的です。裾上げ、ボタン付け、軽いほつれ直しは自宅で十分。シューズやレザーは専門店でメンテナンスすると、見違えるほど寿命が延びます。サイズの悩みには、お直し屋さんのウエスト出し・詰めや、ジャケットの肩線調整が頼りになります。体型が変化しやすい年代だからこそ、“同じ服を自分に合わせ直す”という発想を持つと、買い替えの頻度が下がり、愛着も増します。

循環の選択肢も増えました。セカンドハンドで質の良い定番を探す、フォーマルやトレンド強めのアイテムはレンタルで必要なときだけ使う、家族や友人とスワップ(交換会)を楽しむ。クローゼットの棚卸しで“今の私に合うか”を問い直し、合わないものは次の持ち主へ託す。編集部の検証では、これらを組み合わせると年間の購入点数が自然と減り、結果として一着あたりの着用回数が増えました。詳しいケアのコツは「服の手入れ完全ガイド」、ワードローブの見直しは「ワードローブの見直し術」、循環型の暮らしは「循環型消費のはじめ方」も参考になります。

最初の30日ロードマップ――“無理なく、でも確実に”

はじめの一週間は、クローゼットの“よく着る5着”を選び、理由を言語化してみてください。色、素材、着心地、洗濯のしやすさ、どのポイントが出番を増やしているのかが見えてきます。次の二週間は、出番が少ない服を“今日の私”の暮らしに合わせて再解釈してみます。丈を変える、ベルトでバランスをとる、インナーを機能素材に替える、わずかな工夫で復活する服が必ず出ます。最後の一週間は、欲しいものリストを3つに絞り、コスト・パー・ウェアと“30回は着られるか”を自分に問うて購入可否を判断します。もし迷うなら、一度見送り、手持ちで代替できるかを試してから再検討してみてください。ここまで進めると、衝動買いは減り、クローゼットの稼働率が上がり、支出も環境負荷も静かに下がります。

まとめ――完璧を手放し、“意図ある一着”から始めよう

サステナブルファッションは、特別な人のための専門競技ではありません。今日の一着に意図を持つこと、手入れで寿命を延ばすこと、次の一着を吟味すること。この三つの小さな選択が、積み重なるほど環境への負荷とムダな出費を減らし、クローゼットの満足度を上げていきます。忙しさも、体型や役割の揺らぎも、すべて現実。だからこそ、完璧さより“続く仕組み”をつくることが賢明です。次に買い物カゴへ入れる前に、自分に一つだけ問いかけてみませんか。「30回、胸を張って着られる?」その問いにうなずけたら、あなたの入門はもう、卒業に近いところまで来ています。

参考文献

  1. UN News. UN launches drive to highlight environmental cost of staying fashionable. 2019. https://news.un.org/en/story/2019/03/1035161
  2. United Nations Environment Programme (UNEP). Unsustainable fashion and textiles focus International Day of Zero Waste. https://www.unep.org/news-and-stories/press-release/unsustainable-fashion-and-textiles-focus-international-day-zero
  3. Ellen MacArthur Foundation. A New Textiles Economy: Redesigning fashion’s future. 2017. https://ellenmacarthurfoundation.org/a-new-textiles-economy
  4. WRAP. Valuing Our Clothes: the cost of UK fashion (Updated). 2017. https://wrap.org.uk/resources/report/valuing-our-clothes
  5. Better Cotton. Pesticides and crop protection in cotton farming. https://bettercotton.org/field-level-results-impact/key-sustainability-issues/pesticides-and-crop-protection-in-cotton-farming/
  6. 環境省. サステナブル・ファッション(マイクロプラスチック対策等の家庭でできる工夫を含む). https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion/
  7. Global Organic Textile Standard (GOTS). About GOTS. https://global-standard.org
  8. Forest Stewardship Council (FSC). https://fsc.org
  9. Fairtrade International. What is Fairtrade? https://www.fairtrade.net/issue/textiles
  10. OEKO-TEX. STANDARD 100 by OEKO-TEX. https://www.oeko-tex.com/en/our-standards/oeko-tex-standard-100
  11. bluesign. The bluesign system. https://www.bluesign.com
  12. Textile Exchange. Responsible Wool Standard (RWS). https://textileexchange.org/standards/responsible-wool/
  13. Textile Exchange. Responsible Down Standard (RDS). https://textileexchange.org/standards/responsible-down/
  14. Lenzing. TENCEL Lyocell fiber production and closed-loop process. https://www.tencel.com/sustainability
  15. International Labour Organization (ILO). Wages and working hours in the textiles, clothing, leather and footwear industries. 2019. https://www.ilo.org/global/publications/books/WCMS_669356/lang—en/index.htm
  16. Fashion Revolution. Fashion Transparency Index. 2023. https://www.fashionrevolution.org/about/transparency/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。