
マットと粉っぽいは別物。40代の正解定義
Google Trendsでは「マット ファンデ」の関心が秋から冬にかけて高まる傾向が見られます[1]。湿度が下がる季節ほど粉っぽさが目立ちやすいのに、テカリは抑えたい——そんな相反するニーズが同時に立ち上がるからです[2]。皮膚科学のレビューでは、加齢に伴い水分保持力は低下しやすい一方、Tゾーンの皮脂は日内変動と環境で増減することが示されています[3,4]。つまり35-45歳のマットは「乾燥を抱えたままテカリに向き合う設計」が要**。編集部は市場の配合設計や最新の塗布テクニックを精査し、粉っぽくならずに毛穴や凹凸をやわらかくぼかす現実的なアプローチをまとめました。**
まず前提をそろえます。マットとは光の反射を均一に拡散させる質感設計のこと。粉っぽさは角層の水分不足や厚塗り、粒子の浮きによって生じる視覚的なザラつきです。似ているようでメカニズムは異なり、上品なマットは「薄い膜で凹凸の影をやわらげる」状態を指します。全面を一律に消光して平板にするのではなく、顔の中に質感の緩急を残すことが今の時代の正解です。
40代の肌は頬の水分が落ちやすく、毛穴の開きやキメの乱れが“影”として映りやすい一方、小鼻や額は日中の皮脂でテカリやすいという二極化が起こりがち。だからこそ「しっかり保湿してから必要な部位だけをマットに整える」という設計に切り替えるだけで、粉っぽさを避けながら清潔感を高められます。フルマットの一枚膜ではなく、ソフトマットを基調に“部分マット”で輪郭を整える——この考え方が出発点です。
肌が平面的に見える理由は“影の消しすぎ”
顔がのっぺり見えるのは、光沢の過多だけが原因ではありません。凹凸の影までパウダーで埋めると、必要な立体感も同時に消えてしまいます。影の源泉である法令線や目の下のくぼみはパールで光らせるより、境界のぼかしと色ムラ修正で影のコントラストを下げるほうが自然です。質感の操作は「消す」ではなく「均す」へ。これが40代のマット思考です。

土台がすべて。保湿と皮脂コントロールの順番
粉っぽくならないマットの第一条件は、水分を角層に十分に抱え込ませること。洗顔直後の肌は一時的にアルカリ寄りで乾きやすい状態です[5]。そこで化粧水やブースターで素早く水分を与え、セラミドやスクワランなどの油分を“薄く”重ねて水分の蒸散を抑えると、その後の下地やファンデがムラなく密着します[6]。油分は多ければよいわけではなく、米粒大を顔全体にうすーく伸ばすイメージが適量です。
次にテカリやすい部位のコントロールです。皮脂吸着系の下地は顔全体に塗ると乾燥部位を引っ張って粉をふきやすくなります。小鼻の脇、眉間、額の中央のみに点で置き、指の腹で叩き込むと、必要なところだけをさらっとさせられます。乾燥しやすい頬は保湿力のある下地でクッションを作り、質感の差をあらかじめ仕込んでおきましょう。
日焼け止めは乳液タイプを薄く広げ、**30〜60秒ほど置いてから次の工程へ進む“待機時間”**をつくると膜が安定し、上から重ねるベースがヨレにくくなります。重ねる量を減らすほどマットは美しく見えるので、各工程で「薄く、均一に、時間を置く」を合言葉にしてください。季節のゆらぎが強い方は、保湿下地と皮脂抑え下地の比率を日替わりで調整すると、崩れにくさが安定します。関連するスキンケアの見直しは乾燥対策の基本も参考に。
“粉でマット”より“膜でマット”が崩れにくい
マット=粉の大量投入というイメージは過去のもの。近年のベースはシリカやポリマーの微細なネットワークで光拡散を作る設計が増え、薄い膜の均一さが美しいマットの決め手になっています。だからこそ最初の保湿と下地の整え方が勝負どころ。粉はあくまで仕上げの微調整に留めたほうが、時間が経っても表情に柔らかさが残ります。

ファンデは薄さが最大の武器。選び方と塗り方
仕上がりの決定要素はテクスチャー選びと塗布量です。40代の肌におすすめなのは、セミマット〜ソフトマットのリキッド。クッションなら“マット”表記でも保湿成分が入ったタイプを。色は黄みと赤みのバランスが取れたニュートラル系が失敗しにくく、顔の中心とフェイスラインの両方で確認するとなじみが良くなります。色迷子のときはファンデ色選びガイドもチェックを。
塗り方は、まず顔の中心に米粒大を点置きしてから、指で薄く伸ばします。次にスポンジを**叩くように当てて“余分を取る”**工程を挟むと、膜が均一に締まって毛穴落ちを防げます。頬の毛穴が目立つ場合は、毛穴の流れに逆らわない方向でスタンプ塗りに切り替えると、繊維が凹凸をならしてくれます。カバーが必要な部分には、全顔を厚くするのではなく、コンシーラーを点で足して境界をぼかすのが鉄則です。
スティックやクリームは密着力が高く、頬の高い位置やシミのピンポイントに便利ですが、全顔に使うと重く見えがち。ベースにリキッドの薄膜を仕込み、必要なところだけに重ねる二段構えが、清潔感とカバー力のバランスを保ちます。ツールはフラットブラシで置く→スポンジでならす二刀流にすると、誰でもムラになりにくい仕上がりに。
パウダーは“必要量だけ、必要な場所に”
仕上げパウダーは崩れやすい部位だけに使うのがコツです。小鼻の脇と眉間、目尻のシワが寄る部分は、粉をブラシに含ませたあとティッシュで一度オフしてから、皮脂の方向へやさしく払うと、粉感を残さずにサラッと整います。広い頬はルースの微粒子をほんの少し。マスクや髪の擦れが気になる日はプレストで押さえ、最後にフェイスラインをひとなでして質感の連続性を整えましょう。

部分ツヤで“今っぽいマット”。仕上げとアレンジ
上品なマットは、どこかに呼吸するようなツヤを残すと一気に洗練されます。ハイライトを額や鼻筋に強く入れるより、目の下のCゾーンやまぶた中央に薄い透けツヤを仕込むと、目元がいきいきと見えます。唇の山と顎先にバームを極薄でのせれば、顔の上下に微細な反射が生まれ、全体のマットが引き立ちます。チークはセミマットのパウダーを頬の高い位置より少し外側へ。血色の“温度”を足すことで、マットの清潔感と柔らかさが共存します。
メイク持ちを高めるには、仕上げに微細ミストを薄く。噴霧後に何も触れず30秒待つと、粉と液の界面がなじんで一体化します。日中のリタッチは、まずティッシュで皮脂を押さえてから、**透明パウダーを薄く重ねる“リセット”**が有効。さらに気になる部分だけを極少量のコンシーラーで整えると、厚みを増やさず朝の仕上がりがよみがえります。崩れやすい日は化粧直しのコツも併せてどうぞ。
季節と肌質で“比率”を変える
夏は皮脂が増えやすいので[4]、保湿を軽くしても水分はしっかり、皮脂抑え下地をポイントでやや広めに。冬は逆に保湿を手厚くし[7]、パウダーは最小限に抑えます。乾燥肌は保湿下地7:皮脂下地3、混合肌は5:5、脂性肌は3:7といった感覚で、その日のコンディションに合わせて比率を微調整すると失敗が減ります。紫外線と色ムラのケアは日焼け止めの基本や毛穴ケアの見直しも役立ちます。
よくある失敗と回避法
粉っぽく見えるのは、塗る量が多いか、待機時間なしで重ねているサインです。各工程の量を半分にし、30秒の“置き”を挟むだけで解決することが多いです。灰色っぽくくすむ場合は、色が寒色に寄りすぎているか、頬の保湿が不足している可能性があります。法令線にたまるときは、線の上を避けて両脇に薄く塗り、指の体温でならしてから、ごく少量のパウダーで固定しましょう。「薄く・待つ・部分で整える」。この三原則が、マットを美しく仕上げる最短ルートです。

まとめ——“薄く、待って、部分で整える”が答え
マットは敵ではありません。粉っぽさを避けながら清潔感をまとえる、成熟した肌の心強い味方です。角層に水分をたっぷり抱えさせ、皮脂を出やすいところだけを軽く抑え、ファンデは最小量で薄く均一に。仕上げに必要な場所へだけパウダーをのせ、どこかに小さなツヤを残す。この順番と比率を守れば、時間が経っても上品なマットが続きます。
あなたが明日の朝、鏡の前で試すとしたら、まずはベースの量を半分にして30秒の待機を。次に小鼻と眉間だけをポイントでマット化。最後に目の下へほんのりツヤを。小さな調整が仕上がり全体の印象を変えます。忙しい日々の中でも、自分の肌と対話しながら“比率”を微調整する余白を持てますように。うまくいったら、別の日のコンディションでもう一度。その繰り返しが、あなたの定番のコツになります。
参考文献
- Google Trends. 「マット ファンデ」検索関心(日本). https://trends.google.co.jp/trends/explore?geo=JP&q=%E3%83%9E%E3%83%83%E3%83%88%20%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%87 (アクセス日: 2025-08-28)
- 日比谷ヒフ科クリニック. 季節と肌の乾燥について(コラム). https://www.hibiya-skin.com/column/202002_01.html (アクセス日: 2025-08-28)
- 田中秀明ほか. 角層の保水機能と皮表および角質細胞間脂質の加齢による変化. 日本皮膚科学会雑誌. 1993;103(9):1165–1173. https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/103/9/103_1165/_article/-char/ja/
- PR TIMES. 季節・温度差と皮脂分泌に関する調査(プレスリリース). https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000013954.html (アクセス日: 2025-08-28)
- Lambers H, Piessens S, Bloem A, Pronk H, Finkel P. Natural skin surface pH is on average below 5, which is beneficial for its resident flora. Skin Pharmacology and Physiology. 2006;19(6):296–302. doi:10.1159/000094556
- 花王 研究開発. 乾燥性敏感肌と角層のバリア機能・セラミドについて. https://www.kao.com/jp/innovation/research-development/product-development/skin-care/sensitive-dry-skin/ (アクセス日: 2025-08-28)
- 荻野由里子ほか. 冬季の保湿環境(加湿器)使用が皮膚状態に与える影響. 日本衛生学会誌(JHEsj). 2019;24(2):23–30. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhesj/24/2/24_23/_article/-char/ja/