ガス(おなら・腹部膨満感)が溜まる原因と今日からできる対策 — IBSと生活習慣の視点

「夕方になるとお腹が張って苦しい」—原因は一つではありません。30〜40代女性の体と生活習慣に着目し、食べ方・食材・腸内環境・ストレス・ホルモン変化をつなげて解説。今日から試せる実用的なセルフケアと受診の目安まで、チェックリスト付きで分かりやすく案内します。

ガス(おなら・腹部膨満感)が溜まる原因と今日からできる対策 — IBSと生活習慣の視点

概要

世界の成人の約4〜10%が過敏性腸症候群(IBS)を抱え、主要症状として腹部膨満感やガスの悩みを訴えます[1,2]。IBSは器質的疾患ではなく「機能性消化管障害」に分類され、診断には症状基準と警告徴候(アラームサイン)の除外が用いられます[2]。研究データでは、IBSに限らず一般の人でも腹部の張りを日常的に感じる割合は決して少なくありません[3]。編集部が国内外の論文や公的データをたどると、女性では月経周期やストレスと連動して症状が強まるパターンが目立ちました[2]。つまり、単なる「食べ過ぎ」ではなく、からだ・こころ・生活のリズムが重なってガスが溜まるのです。

ここでは、日常語でしくみを解きほぐしながら、原因を現実的に見立て、今日から続けられる対策へとつなげます。大切なのは、原因を一つに決めつけず、少しずつ仮説を試して自分のパターンを掴むこと。そうすれば、会議や撮影、子どもの行事など「今日は張りたくない」日にコントロールできる余地が生まれます。

ガスが溜まるのはなぜ? しくみと現実

医学文献によると、お腹のガスは大きく二つの経路で増えます。ひとつは口から飲み込む空気、もうひとつは腸内での発酵です[3]。早食いや会話しながらの食事、ストローやガム、炭酸飲料は空気を多めに取り込みやすく、みぞおちや胸のつかえ感につながります[3]。もう一方の「腸内発酵」は、消化しにくい糖質(発酵性のあるFODMAP)や乳糖、糖アルコールなどが大腸で細菌に分解されるときにガスが生まれる現象です[4]。大豆や玉ねぎ、小麦、りんご、牛乳、ソルビトールやキシリトール入りのお菓子など、普段は健康的とされる食品でも、量や組み合わせ、タイミングによっては張りを誘発します[4]。

女性の場合は月経周期も無視できません。排卵後から月経前の時期はホルモンの影響で腸の動きがゆるみ、便秘がちになる人も増えます[2]。さらに、ストレスで自律神経が乱れると腸の感受性が上がり、同じガス量でも張りを強く感じやすくなります[2]。ガスの「量」だけでなく、腸がそれをどう「感じるか」も症状を左右するのです[2].

腸で起きていることを日常語で

朝食を抜いてコーヒーだけ、昼は慌ただしくパンを一気に食べ、午後の打ち合わせ前に無糖ガムで気を紛らわせる。夕方になるとウエストがきつくなり、帰り道で炭酸水を選ぶ。この一日の流れには、空気を飲み込む行動が何度も挟まり、FODMAPの多い小麦や人工甘味料が重なっています[4]。さらに座りっぱなしで腸の動きが停滞していれば、ガスは抜けにくくなります。

女性ホルモンとストレスの交差点

研究データでは、月経前に腹部膨満感が強まる傾向が示されています[2]。黄体期は腸の蠕動がゆるみ、便秘がちになる人も増えます[2]。加えて、タスクが立て込みやすい30代後半から40代は、睡眠不足や緊張で交感神経優位になりがちです。腸は脳と直結しており、緊張すると呼吸が浅くなり、横隔膜や腹筋の動きが硬くなるため、物理的にもガスが溜まりやすくなります[3]。月経×仕事の山場×睡眠不足が重なると、膨満の三重苦になりやすい。ここを理解しておくだけで、対策は無理なく絞れます。

ガスの原因を見極めるヒント

対策は原因の見立てから始まります。編集部では、三つの観点で「自分のパターン」を軽く記録することを勧めています。まず食べ方と食材の組み合わせです。朝の空腹で濃い乳製品と果物を一緒に取ると張りやすい、玉ねぎと豆のカレーは夕方に影響が出やすい、といった相性が見えてきます[4]。次に便通と腸内環境の状態です。数日続く便秘の後は特にガスが抜けにくく、匂いも強まりやすい[3]。発酵食品を増やした途端に張る人は、量を急に増やし過ぎた可能性があります。最後に体の使い方とストレスです。会議が続く日、長時間の移動、緊張する面談の前後など、腹式呼吸が浅くなる場面を思い出し、どのタイミングで張りが強くなるかを紐づけてみてください[3].

食べ方・食材のパターンを読む

乳糖不耐の傾向がある人は、牛乳やヨーグルトの量やタイミングを工夫すると変化が出ます[4]。小麦の量を控えて米中心にすると夕方の張りが軽くなる人もいます[4]。FODMAPの考え方をヒントに、玉ねぎ・にんにく・豆・りんご・小麦・蜂蜜・人工甘味料などを一度に多く重ねないよう意識すると、ガスのピークが和らぎます[4]。反対に、食物繊維は量や種類の調整がポイントです。不溶性を一気に増やすと張りやすいため、オートミールやもち麦、海藻、果物に含まれる水溶性繊維を中心に、少しずつ増やすのが現実的です。厚生労働省の食事摂取基準では女性の目標量は1日18g前後とされていますが[6]、40代女性の平均はそれに届かないとされます[7]。足りていないからと急増させず、1〜2週間かけて段階的にが肝心です。

便通・腸内環境・体の使い方

便秘が続くとガスは抜けにくくなります[3]。朝に温かい飲み物をゆっくり飲み、同じ時間にトイレに座る「儀式化」で反射を整えると、腸は合図を学習します[3]。日中は1時間に一度、30秒でも立って背伸びをし、みぞおちを広げるだけで横隔膜の動きが戻り、ガスの通り道が確保されます[3]。帰宅後に膝を抱えて深呼吸するだけでも、腹部の圧抜きになります[3]。腸内環境を整える発酵食品やプロバイオティクスは、種類によって相性が異なります。同じヨーグルトでも株が違えば反応も変わるため、一つの製品を2週間ほど試し、合わなければ切り替えるのが賢いやり方です[3].

今日からできる対策と具体的アクション

実生活に落とし込むには、食べ方、食材、呼吸と動きの三方向から少しずつ手を打つのが続けやすい方法です。まず食べ方では、一口20〜30回の咀嚼を意識し、会話しながらの食事では飲み込む前に一呼吸置きます。ストローやガム、炭酸は「今日は張りたくない」日の前後は控えめにします[3]。食材は、玉ねぎや豆、りんご、小麦、乳製品、人工甘味料など発酵しやすいものの量を一時的に減らし、米や卵、きゅうり、にんじん、バナナ、硬くないチーズなど比較的ガスが出にくい組み合わせに寄せます[4]。低FODMAPの発想は便利ですが、長期の厳格制限は栄養バランスを崩す可能性があるため、短期の「整理整頓」→合う食品を再び戻すというステップが現実的です[4].

呼吸と動きは効果が早く出やすい領域です。椅子に浅く座り、片手をみぞおち、もう片方を下腹に当て、鼻から4秒吸って6秒吐く腹式呼吸を5セット行います。息を吐き切る時に下腹が軽くへこむ感覚を確かめると、横隔膜が下がり、腸の前の壁がやわらぎます[3]。夜はベッドで仰向けになり、片膝を胸に近づけて深呼吸、次に反対側、その後に両膝を抱えて10呼吸。これだけでも翌朝の張りが違ってきます[3].

忙しい日の現実的な対策も用意しておきましょう。午前に会議が詰まる日は、朝食を温かいスープと白米おにぎりにし、玉ねぎや豆を使ったサラダは午後以降に回します[4]。移動の多い日は、炭酸水やストロー飲料を避け、ペットボトルの無糖のお茶に変えます[3]。月経前に張りが強く出やすい人は、この時期だけカフェイン量を控え、塩分とアルコールも少し控えめにすると、むくみと重なりにくくなります。

編集部の観察では、たとえば「朝にヨーグルト+バナナ+コーヒー」を常にセットにしていた人が、2週間だけヨーグルトを豆乳ヨーグルトか硬めのチーズに置き換え、コーヒーは食後にし、昼は米中心にしたところ、夕方のウエストの張りが目に見えて軽くなりました。大きく変えずに“置き換え”で調整すると、続けやすく、反動も起きにくいのが利点です。

体験を戦略に変える小さなメモ

手帳やスマホに、張りが強かった日の前日〜当日の食事、睡眠、緊張イベント、月経周期をひとことメモで残します。次に同じ条件がそろいそうな時に、食材の重ね方を減らす、呼吸を挟む、移動中にトイレタイミングを作る、といった対策を“先回り”で入れておく。こうして「自分だけの教科書」を作ると、再現性のあるコントロール感が得られます。

受診の目安と不安との付き合い方

一般的なガスや膨満感は生活調整で和らぐことが少なくありませんが、赤信号も覚えておきたいものです。急な強い腹痛や嘔吐、発熱、血便、黒色便、体重減少、夜間に目が覚めるほどの痛み、40代以降での便通の急な変化、鉄欠乏を指摘されている、家族に炎症性腸疾患や大腸がんがいる、といった状況があるなら医療機関で相談を[3]。乳糖不耐、小腸内細菌増殖症(SIBO)、セリアック病、胆のうや膵臓、婦人科の疾患など、背景に別の要因が潜むケースもあります[2]。“不安だから受診する”は十分な理由です。

予定に合わせたマネジメントという発想

大事な予定の前日は、夕食の量と食材の重ね方を控えめにし、温かい主食とスープで仕上げます。当日は朝に腹式呼吸と短いストレッチを挟み、移動の合間に立ち上がる時間を作ります。ウエストに余裕のある服を選ぶのも立派な対策です。完璧主義を手放し、できることから前倒しに。それが翌日の自分を助けます。

まとめ:張りやすい日は、選び方で軽くできる

ガスが溜まる原因は、飲み込む空気、腸内発酵、便通の停滞、呼吸の浅さ、ホルモンやストレスなどが折り重なった結果です[3,4]。原因は一つではないからこそ、食べ方・食材・呼吸と動きという三方向から、無理のない調整を少しずつ積み重ねることに意味があります。「今日は張りたくない」を叶える鍵は、完璧な食事ではなく、前日と当日の小さな舵取り。まずは明日の朝、温かい飲み物をゆっくり飲み、深い呼吸を10回だけ入れてから出発してみませんか。もし不安が続くなら、遠慮なく医療機関へ。あなたのからだは、あなたとチームで動けます。

参考文献

  1. Sperber AD, Bangdiwala SI, Drossman DA, et al. Worldwide prevalence and burden of functional gastrointestinal disorders, with Rome IV criteria: a systematic review and meta-analysis. Gastroenterology. 2021;160(1):99-114. https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(21)00748-8/fulltext
  2. Chey WD, Kurlander J, Eswaran S. Irritable Bowel Syndrome: A Clinical Review. JAMA. 2015;313(9):949-958. https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2111309
  3. Rao SSC, Lacy BE. Bloating and Abdominal Distension: Evaluation and Management. Am J Gastroenterol. 2021;116(7):1397-1407. https://journals.lww.com/ajg/Fulltext/2021/07000/Bloating_and_Abdominal_Distension__Evaluation_and.9.aspx
  4. Staudacher HM, Whelan K. The low FODMAP diet: mechanisms, evidence, and controversies. Nat Rev Gastroenterol Hepatol. 2017;14(12):696-705. https://www.nature.com/articles/nrgastro.2017.97
  5. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版/2025年版)食物繊維の目標量. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/syokuji_kijun.html
  6. 大塚製薬 体と病気のはなし. 日本人の食物繊維摂取量の現状(年代別). https://www.otsuka.co.jp/health-and-illness/fiber/intake/#:~:text=%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%8B%E3%82%89%E8%A6%8B%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%80%81%E9%A3%9F%E7%89%A9%E7%B9%8A%E7%B6%AD%E3%81%AE%E6%91%82%E5%8F%96%E9%87%8F%EF%BC%88%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E5%80%BC%EF%BC%89%E3%81%AF20%EF%BD%9E40%E4%BB%A3%E3%81%A7%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8A%E5%B0%91%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82”,

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